国会質問

質問日:2025年 6月 12日  第217国会  安全保障委員会

沖縄「捨て石」認識あるか 自衛官教育を赤嶺氏追及

衆院安保委

 日本共産党の赤嶺政賢議員は12日の衆院安全保障委員会で、陸上自衛隊の幹部候補生学校が、沖縄戦で「戦略持久」作戦を実行し多大な住民犠牲をもたらした旧日本軍の第32軍を肯定する学習資料を作成していたことを厳しく批判し、資料の使用中止を求めました。

 報道によると、同資料(2024年度)は第32軍が「米軍に対して、孤軍奮闘3カ月にわたる強靱(きょうじん)な持久戦を遂行し、本土決戦準備のために偉大な貢献をなした」とする一方、「集団自決」の強制など住民犠牲に言及していません。赤嶺氏は、本土決戦を遅らせるため沖縄を捨て石にした作戦を反省しないどころか美化する教材は適切でないと追及。中谷元・防衛相は資料の見直し作業を進めていると答弁しました。

 赤嶺氏は、沖縄戦が住民にどういう犠牲を強い、日本の侵略戦争がいかに人命を軽んじるものだったかを学ぶことが自衛隊には求められると強調。沖縄戦は捨て石作戦だったのかとただすと、中谷氏は「自衛隊と旧日本軍は全く異なる」と述べ、捨て石作戦だったとは答えませんでした。

 赤嶺氏は、防衛省編集協力の広報誌『MAMOR(マモル)』22年3月号の幹部自衛官500人を対象にした「好きな幕僚」アンケート調査で上位6人を旧軍幹部が占め、5位は第32軍で持久戦継続決定を主導した八原博通だと指摘。自衛隊教育で旧軍の加害の歴史を伝えないことが、旧軍への肯定的な認識を広げていると批判しました。(しんぶん赤旗 2025年6月17日)

 

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沖縄「捨て石」認識あるか(衆院安保委)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 まず、防衛大臣に伺います。
 陸上自衛隊の幹部候補生学校の二〇二四年度の学習資料で、沖縄戦の旧日本軍第三二軍の戦いについて肯定的に評価していることが報じられました。具体的には、作戦経過の概要について述べた章で、圧倒的な空海からの支援を有する米軍に対して、孤軍奮闘三か月にわたる強靱な持久戦を遂行し、米軍を拘束するとともに多大の出血を強要して、本土決戦準備のために偉大な貢献をなしたのであると記載しています。その一方で、住民を根こそぎ戦争に動員したことや、沖縄県民をスパイとみなした住民の殺害、ごうからの追い出し、食料の略奪、集団自決の強制などについての言及はありません。
 本土決戦を遅らせるための捨て石作戦について、反省どころか、偉大な貢献として描く教材が自衛隊の学習資料として適切でないことは明らかであります。大臣は、この資料について、どう認識していますか。使用を中止し、内容を検討すべきではありませんか。

○中谷国務大臣 私の認識としましては、沖縄で、さきの大戦の末期において、県民を巻き込んだ凄惨な地上戦が行われて、その結果、軍民合わせて二十万人もの貴い命が失われた。特に、本島南部一帯におきましては、多くの住民の方々が犠牲になったと認識をいたしております。
 幹部候補生学校では、こうした認識の下に、嘉数高地、そしてひめゆりの塔、平和祈念資料館等において現地教育を行っており、沖縄戦において多大な犠牲が払われたこと、住民避難の実態についても理解をさせており、国民の生命と財産を守る幹部自衛官としての責任感、そして使命感の涵養に努めております。
 私もこの現地戦術の研修を受けた一人でございまして、沖縄のこうした悲惨な歴史、これを十分認識しております。
 防衛省としましては、この沖縄の人々の筆舌に尽くし難い困難と癒えることのない深い悲しみ、これらを胸に刻みながら、戦争の惨禍を二度と繰り返してはならない。そして、我が国は、憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本理念に従いまして、さきの大戦の終戦までの経緯に対する反省も踏まえて厳格な文民統制を確保しております。こうした体制の下で活動している自衛隊と、旧憲法下で存在をしていた旧日本軍、これは全く異なるものであるということは言うまでもございません。
 このため、幹部候補生が使用する沖縄戦史にかかる学習資料につきましては、御指摘の記載を修正することも含めて、学校において見直し作業を進めていると承知をいたしております。

○赤嶺委員 県民の動員は、沖縄戦の末期だけではないですからね。米軍が上陸する前から、沖縄県内に十六の飛行場を造るために学業を放棄させられ、あるいは飛行場造りに動員させられていますから、末期の県民動員という認識そのものが、防衛大臣、間違っていますから。
 学習資料を見直すということでありますけれども、具体的にどのような内容に改めていくのかという問題です。
 幹部候補生学校をめぐっては、昨年五月にも、沖縄の現地教育の要領で、日本軍が長期にわたり善戦敢闘し得たと評価していたことが問題になりました。繰り返されているんですね。
 沖縄戦がどのような性格の戦争で、一般住民にどのような犠牲を強いたのか、日本の侵略戦争によってアジア太平洋諸国の人々と日本国民にどれだけの犠牲を負わせたのか、それがいかに人命を軽んじるものだったのかを学ぶことが、二度と同じ過ちを繰り返さないために、旧軍と断絶しているはずのものです。また、防衛大臣もそれは認められました。
 自衛隊員に求められているそうした内容、これは、毎年指摘されながら、同じような考え方が続いている。しかし、あの戦争は捨て石作戦だった、住民を犠牲にした戦争であった、抜本的にそういう立場に改めていく必要があるのではないか。先ほどの大臣の答弁からしても、そうなるべきじゃないかと思いますが、いかがですか。

○中谷国務大臣 私も教育を受けた者の一人でありますが、あの作戦が捨て石であったとか、住民を犠牲にして当然であったとか、そういう教育は受けておりませんし、そういう考えも一切持っておりません。
 とにかく、さきの大戦におきまして、県民を巻き込んだ非常に凄惨な地上戦が行われて、貴い命が失われたということで、その事実をやはりしっかり認識をすると同時に、自衛隊は昔の旧軍ではないんだ、やはり憲法の下に専守防衛に徹して、シビリアンコントロールの下に、平和の理念に従って活動していくというものが自衛隊であるという認識の下に勤務をしましたし、また現在もそういう教育をしているというふうに認識しております。

○赤嶺委員 大臣、後半は、旧軍と自衛隊は分離しているという点についても、後でちょっと質問しますが、あの戦争は捨て石作戦ではなかったんですか、違うんですか。大本営はどういう命令を出していましたか。三二軍はどういう命令を出していましたか。あれが捨て石作戦でないという大臣の認識、自衛隊の中の教育でそういう認識を持つに至ったんですか。もう一度答弁してください。

○中谷国務大臣 私の思いは、先ほど申し上げたとおり、さきの大戦において大変大きな犠牲があった、もう二度とそのようなことを繰り返してはいけないんだというようなことを認識いたしております。
 幹部候補生の教育におきましては、幹部自衛官としての教育を行うわけでございますが、戦争による悲惨な歴史などはしっかりと教えているはずでございますので、そういったことを美化したり、それを評価するというような教育は行っておりません。

○赤嶺委員 美化するなんて、それはとんでもない話ですよ。ただ、大臣が自衛隊員時代の教育を受けて、あの沖縄戦は捨て石作戦ではなかったという認識を持っていると言うから、それを問いただしているんです。そこから改めていただきたいと思います。
 三二軍は沖縄県民を捨て石にしたんですよ。大本営だって同じですよ。戦争前に十六の飛行場を造りながら、一つとて使わなかったじゃないですか。それだけ米軍と日本軍との間の圧倒的な力の差がありながら、あえて地上戦に臨んだ。それは、本土決戦を長引かせる捨て石作戦であったというのは明確であります。是非考え方をこの点で改めることを強く求めたいと思います。
 それで、旧軍と今の自衛隊は違うんだというお話なんですが、私、疑問に思っているのが、防衛省が編集協力をしている「マモル」という広報誌がありますよね。これの二〇二二年三月号で、幹部自衛官五百人を対象に行った、好きな幕僚に関するアンケート調査の結果が掲載をされています。これによると、上位十人のうち六人を旧軍の幹部が占めています。この中には、満州事変を主導した石原莞爾も含まれています。第五位とされているのは、第三二軍の高級参謀だった八原博通氏です。南部に撤退しながら、持久戦を継続する決定を主導した人物です。
 自衛官のコメントを見ると、アメリカ軍の嫌がる陣地戦、持久戦などを採用し、粘り強く任務を完遂しようとしたことからという意見が掲載をされています。当時の決定が多大な住民の犠牲を強いたことへの反省は全く感じられません。旧軍への肯定的な認識が自衛隊の中に相当広がっているのではないかという危惧を持ちます。
 旧軍の加害の歴史についてきちんと伝えていないことがこうした現状を生んでいるのではありませんか。教科書を見直すといっても、実際にはそういう考えが広がっていることに危惧を持っているんですが、いかがですか。

○中谷国務大臣 御指摘をいただきました二〇二二年三月の「マモル」、この掲載記事は承知しておりますが、この記事は、防衛省による調査結果ではなくて、同誌が隊員の個人的意見を調査して集計したものでございます。また、人物の評価につきましても、これは人によって様々な個人的意見があるものだと思っております。
 その上で、さきの大戦につきましての政府の認識としましては、平成二十七年八月十四日に閣議決定をされた内閣総理大臣談話で述べられたとおりでありますが、我が国は、憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本理念に従い、さきの大戦の終戦までの経緯に対する反省も踏まえて厳格な文民統制を確保している。そうした体制の下で活動している自衛隊と、旧憲法下で存在していた旧日本軍、これは全く異なるものであるということは言うまでもございません。
 こうした認識の下に、防衛省・自衛隊としては、隊員一人一人に対して、戦史又は隊史などの教育を行っている次第でございます。

○赤嶺委員 元陸上幕僚長の火箱芳文さんは、毎日新聞のインタビューで、陸上自衛隊は旧陸軍の思想や戦術を継いでおり、一命を賭して国を守るのは同じだと述べています。その上で、靖国神社に国家の慰霊施設を復活し、一命をささげた自衛官を祭るようにすべきだと主張しております。繰り返される自衛官のこういう発言は認められるものではありません。
 次に、外務大臣に伺います。
 昨年九月、米軍横須賀基地所属の米兵が、横須賀市内で乗用車を運転中、オートバイに衝突し、二十二歳の男性を死亡させた事件で、横浜地裁横須賀支部は、五月二十七日、禁錮一年六月、執行猶予四年の判決を言い渡しました。
 重大なことは、この裁判の過程で、在日米海軍司令部が裁判官に、仮に執行猶予判決が言い渡され、確定した場合には迅速に米国へ移送すると書簡で事前通知していたことであります。代理人の呉東正彦弁護士は、一国の軍隊とか政府機関から裁判所に書簡が出てくれば、司法の独立を脅かすような圧力がかかるのは間違いない、日本人であれば実刑になってしかるべき事案だ、米兵だから忖度されてしまったのではないかと判決への影響を指摘しています。
 米軍の方針に合わせて執行猶予つきの判決が出されたとすれば、これは司法の独立性に関わる重大問題であります。
 外務大臣、米軍に要求の上、この書簡を提出していただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○熊谷政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘の書簡に係る報道でございますが、私ども承知しているところでございまして、米側に対して事実関係を照会しているところでございます。

○赤嶺委員 照会して、提出していただけるんですね。

○熊谷政府参考人 お答え申し上げます。
 現在、米側に対しまして事実関係を照会しているところでございますので、対応につきましては、この段階で予断を持ってお答えするということは差し控えたいと思います。

○赤嶺委員 外務大臣、一九五七年に群馬県の米軍演習場で薬きょう拾いをしていた女性を米兵が射殺する事件が起こりました。皆さん御存じの、いわゆるジラード事件であります。
 日米両国で大問題になった事件ですが、そのときに、米側は裁判権を放棄し、日本側は最も軽い罪にするという密約を取り交わしていたことが米軍の公文書で明らかになっています。その後、この事件について、裁判所は執行猶予つきの判決を出し、米兵は本国に帰国し、自由の身となりました。当時と変わらない米軍の特権を保障する仕組みが温存されているのではないかということを指摘せざるを得ません。
 書簡の存在を確認の上、大臣としても、書簡の提出、執行猶予になったら本国に帰ってしまって補償要求もできなくなるような実態、これを改めていくべきだと思います。
 米兵が賠償責任に向き合わない現状に今はなっています。刑事で判決が出て、民事で裁判になったら、刑事で執行猶予が出ている米兵は、民事の裁判に応じずに全部帰ってしまうんですね。沖縄では、ほとんどそういう事件ばかりです。これじゃ、損害賠償を米兵に求めることもできなくなる。そういう意味でも、この検証をするためにも、この文書の提出を米側に求めていくべきだと重ねて外務大臣にも求めたいと思いますが、外務大臣の御意向はどうでしょうか。

○岩屋国務大臣 引き続き、米側に照会をしてまいります。
 それから、一般に、日本の裁判所において被告に損害賠償を命ずる確定判決を得た原告が、外国の裁判所に対して日本の裁判所による確定判決の承認を求めて訴えを提起し、これが認められたときは、当該国の強制執行の規律に従って、その手続を取ることとなります。
 こうした手続については、米軍関係者に限られず、広く適用されるものと承知をしているところでございます。

○赤嶺委員 米軍犯罪について、きちんと賠償責任が日本側から求められる、個人任せにしない、政府が責任を持つという点も含めて、今の文書を求めて質問を終わります。

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