国会質問

質問日:2025年 4月 10日  第217国会  憲法審査会

改憲国民投票で広報協議会がファクトチェック 恣意的な判断にも

衆院憲法審 赤嶺氏が批判

 衆院憲法審査会は10日、国民投票法を巡りインターネット上でのフェイクニュース対策などをテーマに自由討議を行いました。

 自民党の寺田稔議員は、国会に設置する国民投票広報協議会がファクトチェックを行うことも含めて議論するよう求めました。

 日本共産党の赤嶺政賢議員は、ネット上の書き込みや動画などへの同協議会によるチェックは「国民の自由な意見表明に対する検閲に他ならない」と指摘。また、同協議会の委員の多くは改憲に賛成した会派から選ばれる仕組みで、「その判断は恣意(しい)的なものになりかねない」と批判しました。

 赤嶺氏は、悪質なデマや誹謗(ひぼう)中傷の意図的な発信はいかなる場合も許されないと述べた上で、表現の自由など国民の基本的人権の問題として、システムやサービスの基盤を提供するプラットフォーマーの責任や個人情報保護制度の強化も含め議論すべきだと指摘。「国民投票法ありきで議論すれば誤った方向に向かう」と述べ、同法とからめて議論すべきではないと強調しました。(しんぶん赤旗ホームページ)

 

質問の映像へのリンク

広報協議会がファクトチェック(衆院憲法審)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 前回も述べたように、私たちは、国民が改憲を求めていない中で、改憲のための国民投票法の整備を進める必要はないという立場です。
 今日のテーマとなっているインターネットでのフェイクニュースなどの問題も、これに対応するために国民投票法を整備するべきだという声は上がっていません。もちろん、意図的に悪質なデマや誹謗中傷を発信することはいかなる場合でも許されません。システムやサービスの基盤を提供しているプラットフォーマーなど、事業者の責任も重大です。しかし、政府や国会が言論の内容に直接介入することは、国民の表現の自由の抑圧につながります。国民の基本的人権に関わる問題であり、国民投票法ありきで議論を進めれば、誤った方向に向かいかねません。
 実際に、これまでの議論でも、国会に設置する広報協議会にファクトチェックの役割を担わせるべきだという主張がされています。しかし、協議会の委員の大多数は、改憲に賛成した会派から選ばれる仕組みです。改憲を進めるのに有利な意見がまかり通り、少数派の意見が抑圧される危険性を持つものです。改憲派が多数である協議会がファクトチェックを行えば、その判断は恣意的なものになりかねません。
 そもそも、国家権力である国会がネットの書き込みや動画の内容を調べ、措置することは、国民の自由な意見表明に対する検閲にほかなりません。そのための危険性は、この審査会に出席した参考人も指摘しています。国民投票法と絡めた議論はやるべきではありません。ましてや、広報協議会を具体化する規程作りを進め、ファクトチェックまで担わせることは絶対に認められません。
 その上で、インターネットをめぐる政治的課題について意見を述べます。
 この問題を考える上で重大なことは、政府が企業の利益のためにデジタルデータの利活用を優先させ、個人情報や保護をないがしろにしてきたことです。
 ネットやSNSで虚偽情報や誹謗中傷が拡散されやすい要因の一つに、利用者の関心に合った動画や広告を表示させる仕組みの問題が指摘されています。そこでは、プラットフォーマーなどの事業者は、視聴履歴や行動履歴などの膨大な情報を基に、利用者の趣味、嗜好や性格などを分析し、それに合わせた情報を表示するようになっています。この仕組みが偏った情報に陥りやすい環境を生んでいると言われています。
 こうした個人情報の収集やプロファイリングは、プライバシー権や内心の自由、人格権など、国民の基本的人権を侵しかねない重大な問題です。だからこそ、EUは、自己情報へのアクセス権や忘れられる権利、プロファイリングなどによる意思決定を拒否する権利を個人の基本的権利として保障し、その下でプロファイリングやレコメンドシステムなどを規制しています。
 日本の個人情報保護法制も、国民の人権を拡充させる方向で強化することが求められています。山本龍彦参考人は、自己情報コントロール権を保護法制の中に位置づけるべきだと強調されました。
 ところが、日本政府は、企業による個人データの利活用を優先させ、個人情報の保護を置き去りにしてきました。デジタルデータの利活用を成長戦略と位置づけ、官民が保有する個人情報を企業が利用しやすいよう制度化し、自治体が持つ個人情報まで企業が利用できるようにすることを強制しています。
 一方で、保護対象となる個人情報は限定的なものにとどまっています。個人情報の収集や利用は、そのほかの規約などと一緒に通知、公表されていれば、利用者に自覚がなくても同意したとみなされます。海外への移転も禁止されていません。国民の個人情報を企業のもうけに利用し、人権を脅かすもので、断じて認められません。
 インターネットが国民の当たり前の通信手段となる中で、個人情報保護法制を抜本的に変革し、国民の人権を保障することこそ必要です。そのための議論を憲法審査会ではなく予算委員会や内閣委員会などの各常任委員会、特別委員会で大いにやるべきだと申し上げて、発言を終わります。

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