国会質問

質問日:2025年 4月 10日  第217国会  安全保障委員会

先島住民避難計画を批判 衆院委で赤嶺氏 平和外交に徹せよ

 

 日本共産党の赤嶺政賢議員は10日の衆院安全保障委員会で、有事の際に沖縄県・先島諸島の住民ら約12万人を九州7県と山口県に避難させる政府の計画を批判し、戦争を起こさないための平和外交に徹すべきだと求めました。

 赤嶺氏は、沖縄戦の住民疎開をほうふつとさせる同計画に県民の怒りが渦巻いていると指摘。九州地域では長距離ミサイル配備や、自衛隊基地の司令部地下化、弾薬庫増設など南西諸島への出撃拠点としての強化が進められ、「先島諸島に戦火が及ぶ事態なら九州・山口にも及ぶ。安全に避難できる場所ではない」とただしました。

 中谷元・防衛相は「有事の具体的対応を予断するのは困難」だと答弁。赤嶺氏は「台湾有事という特定の事態を想定して避難計画を具体化しているのは明らかだ。有事にならないと分からないとの言い逃れは許されない」と断じました。

 さらに赤嶺氏は、「避難先の九州・山口に戦火が及んだ際、住民はどこに避難するのか」と追及。門前浩司内閣審議官は「その時の情勢に応じて総合的に判断される」としか答えられませんでした。赤嶺氏は「現実性を欠いた計画だ」と批判しました。

 政府は先島諸島の空港・港湾を使用して自衛隊の部隊展開と住民避難を同時に進める考えを示しています。赤嶺氏は米軍の那覇市などへの空襲(1944年10月)で、当時の日本政府が学校や病院などへの攻撃は国際法違反だと米国に抗議したが、軍事物資の荷揚げ港だった那覇港への攻撃には抗議できなかったと指摘。「住民避難に不可欠な空港・港湾を自衛隊や米軍が使用すれば軍事目標とされ、攻撃されても抗議できない」と強調し、「台湾有事に介入する体制づくりを進めているから避難が必要になる。やるべきは戦争を起こさないため米中双方に緊張緩和と対話を働きかけることだ」と主張しました。(しんぶん赤旗 2025年4月12日)

 

質問の映像へのリンク

先島住民避難計画を批判(衆院安保委)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 今日は、別の委員会とも重なっておりまして、冒頭の質問に御理解をいただきましてありがとうございます。
 早速、質問に移らせていただきます。
 安保三文書に基づく住民避難について質問いたします。
 政府は、三月二十七日、先島諸島の住民など約十二万人を九州・山口に避難させるための初期的な計画を公表しました。
 八十年前の侵略戦争で、沖縄は凄惨な地上戦の場となり、県民の四人に一人が犠牲になりました。地上戦を生き延びた人々が、戦争の準備ではなく外交で平和を築く努力を訴える中で、島々にミサイルを配備し、当時の住民疎開をほうふつとさせる計画を出してきたことに、言葉では言い表せないほどの怒りと不信が渦巻いております。
 まず、内閣官房に伺いますが、住民の避難先として九州・山口を選んだ理由は何ですか。

○門前政府参考人 お答えいたします。
 我が国を取り巻く厳しい安全保障環境の中、万が一の事態に備え、平素から関係機関が連携して様々な訓練、検討を行っておくことは重要であり、先島五市町村からの離島避難の検討においては、県域を越える広域避難を検討するための訓練上の一つの想定として、御指摘のとおり、九州・山口各県を避難先として設定しているものでございます。
 この理由でございますけれども、国民保護基本指針におきまして、沖縄県の住民の避難については、国は、九州各県を始めとする地方公共団体との広域的な連携体制を整えることとされていること、九州・山口・沖縄九県において武力攻撃災害等時相互応援協定が締結されており、県域を越える住民の避難、受入れを検討する余地があることでございます。

○赤嶺委員 疎開ですよね。沖縄戦のときも九州に疎開いたしました。疎開先に行きたくないというのが疎開した先輩たちの言い分です。ヤーサン、ヒーサン、シカラーサン、ひもじい、怖い、寂しい、寒い、こういう非常に重い思いを抱いていて、戦争の準備ではなく平和の準備をというのが強い県民の願いであります。
 そこで、防衛大臣に伺いますが、先日、防衛大臣は、アメリカ製の長距離巡航ミサイル・トマホークを佐世保基地のイージス艦「ちょうかい」に配備する方針を明らかにしました。長射程化した一二式地対艦誘導弾の配備先は決まっていないとしていますが、大分県の湯布院駐屯地の第八地対艦ミサイル連隊に配備し、弾薬庫の増設が進む大分分屯地に貯蔵することが取り沙汰されています。
 さらに、佐賀空港にはこの七月に陸上自衛隊のオスプレイが配備され、航空自衛隊築城基地、新田原基地では、司令部の地下化や、普天間基地の緊急時機能を移転するための滑走路の延長、弾薬庫の増設などが進められてきています。南西諸島への出撃、攻撃拠点としての強化が進められているのがこの地域であります。
 防衛大臣に伺いますが、先島諸島に戦火が及ぶような事態であれば、九州・山口に及ぶ可能性も十分にあるのではありませんか。住民が安全に避難できる場所ではないのではありませんか。

○中谷国務大臣 有事につきましては、具体的な対応を予断するということは困難でございますけれども、あらゆる事態を想定した上で、事態がいかなる状況であっても、まずは住民の生命、安全、これをしっかりと確保するために、我が国に対する武力攻撃に十分先立って住民の迅速な避難を実現するということが何より重要だと考えております。
 そこで、先島諸島から避難住民の受入れ先につきましては、やはり九州・山口各県を想定して検討が行われているわけでございますが、これは、県域を越える広域避難を検討するための訓練上の一つの想定であるというわけでございます。
 他方、実際この事態時に避難先はどうするかということにつきましては、そのときの状況に合わせて、国の対策本部が恐らく政府の方に設けられますけれども、その対策本部が実際の情勢に応じて総合的に判断され、決定することになります。
 いずれにしましても、防衛省としましては、関係省庁と連携を深めまして、引き続き、国民保護の実効性を高めてまいりたいと考えております。

○赤嶺委員 有事の際には九州・山口も戦火を逃れられないんじゃないかという質問でした。答えはありませんでした。有事になってみなければ分からない、そういう答えでありました。とんでもないことであります。
 台湾有事という特定の事態を想定して避難計画を具体化しているのは明らかであります。有事になってみないと分からないという言い逃れは許されません。
 内閣官房に伺いますが、九州・山口に戦火が及んだときに、避難した先島住民、九州・山口の住民はどこに避難するんですか。

○門前政府参考人 お答えいたします。
 先般公表させていただきました九州・山口各県での受入れ検討でございますけれども、沖縄先島からの五市町村の住民約十一万人につきまして、九州・山口各県の八県三十二市町で受け入れる計画とさせていただいているところでございます。

○赤嶺委員 いや、この計画の中身というよりも、九州や山口が有事になった際に、戦火が九州・山口に及んだ際に、沖縄からの避難、まあ疎開ですよ。あるいは、九州・山口の人たち、これはどうするんですか。どこに避難するんですか。

○門前政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたとおり、九州・山口各県を避難先として設定させていただいておりますのは、国民保護基本指針や武力攻撃災害等時相互応援協定を勘案しまして、訓練上の一つの想定として設定しているものでございます。
 先ほど防衛大臣からも御答弁ございましたけれども、実際の事態発生時に要避難地域や避難先地域をどう設定するかにつきましては、国の対策本部において、そのときの実際の情勢などに応じて総合的に判断されることとなるものでございます。

○赤嶺委員 要するに、それ以上のことは何も考えていないということですよね。
 現に、九州・山口の方でも基地が強化され、南西諸島への後方部隊として軍事体制が強化されている。こういう中で、結局、今の国民保護計画、そういうところまでは考えていないと。
 自治体の関係者からも、机上の空論だという批判が相次いでいます。国がやると言うからつき合っているだけという声が出ています。大体、基地が集中する沖縄本島は屋内避難です。現実性を欠いた計画になっているということをまず指摘しなければなりません。沖縄戦の体験者が、今頃疎開の話を政府が持ち出してくるなんてばかばかしいというようなものを、保守的な立場の人たちからも怒りを持って報道されておりました。
 次に、住民避難と軍事行動の関係についてであります。
 政府は、先島諸島の空港、港湾を使って自衛隊の部隊展開と住民避難を同時に進める考えを示しています。しかし、自衛隊や米軍が使用する空港、港湾は、国際人道法上の軍事目標として扱われ、攻撃が正当化されます。
 一九四四年、一〇・一〇空襲が沖縄でありました。米軍の五次にわたっての攻撃で那覇市の約九割が焼失いたしました。当時の政府は、学校や病院、民家などが攻撃対象になった四次、五次の攻撃については、アメリカ政府に国際法違反の無差別攻撃として抗議しています。ところが、那覇港などが攻撃対象になった一次から三次までの攻撃については抗議しておりません。
 外務大臣に伺いますが、これは当時の那覇港が軍事物資の主要な積み上げ港だったために軍事目標に該当し、抗議の対象から外さざるを得なかったということではありませんか。

○岩屋国務大臣 一九四四年に、当時の重光葵外務大臣から須磨駐スペイン公使に対する、那覇空襲に関する対米抗議の件と題する公電の決裁が行われた公文書が存在しているということは承知しております。
 その上で、当時の状況については様々な見方があり得るということで、御指摘のような歴史的な事象に関する評価につきましては、一般的に専門家等によって議論されるべきものであることから、政府として、本件抗議に関する認識についてお答えすることは差し控えたいというふうに思います。
 なお、軍事目標に当たるか否かは、実際に武力紛争が生じた場合において、その時点における状況等で判断する必要があるため、一概にお答えすることは困難であると考えております。

○赤嶺委員 当時の那覇港が軍事物資の積卸しをしている場所であって、攻撃の対象になっているというのは、衆目が一致する、歴史家が一致する、また、県民の体験からいっても、そのような認識は持っているのであります。軍事利用されている空港、港湾が攻撃された。
 住民避難に不可欠な空港、港湾を自衛隊や米軍が使用することになれば、軍事目標として扱われ、攻撃されても抗議さえできないということになるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○岩屋国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、実際に軍事目標に当たるか否かは、武力紛争が生じた場合において、その時点における状況で判断する必要があると思いますので、繰り返しになって恐縮ですが、一概にお答えすることは困難であると考えております。

○赤嶺委員 防衛大臣に伺いますが、住民避難が必要になるのは、政府が台湾有事に介入する体制づくりを進めているからであります。そのために、米軍や自衛隊が南西諸島の島々に展開して攻撃を繰り返すという、まるでそこに住民の暮らしがないかのような許し難い計画を立てようとしています。
 沖縄戦で戦場になったのは軍隊が展開した島であります。軍隊が展開しなかった島には米軍も攻めてこなかった。
 なぜ、今、島という島を戦場にするような計画を立てるんですか。住民への被害を最小限に抑えるという視点さえ欠落しているのではありませんか。

○中谷国務大臣 あらゆる脅威や事態等に対して備えをしなければなりませんけれども、まず、住民への被害を最小限にするという観点におきましては、武力攻撃より先立って、住民の迅速な避難を実施することが重要でありまして、国民保護措置の実施に当たりましては、関係機関と連携して対応していきたいと考えております。
 よく沖縄戦のお話もされますけれども、あのときは、軍隊が住民を盾にし、また住民とともに移動することによって、かえって住民の被害が大きくなりましたけれども、今回、住民の避難につきましては、政府は先立って住民を安全なところに避難していただくということで、政府の全ての機関がそういうことを誘導して計画を立てていく、そして地元の自治体にも協力していただくということが住民避難の一番の基本でございますので、あらゆる事態を想定の上、そして各種訓練等を行うとともに、関係省庁、地方自治体との連携を強化して、国民の命、平和な暮らしを守るために万全を期してまいりたいと考えております。

○赤嶺委員 島々を戦場にする計画が展開されていて、今度は住民を守るんだと言っても、誰も信用できるものではありません。
 武力攻撃の可能性を低下させるための抑止力と言っておりますけれども、安保三文書自体が、抑止に失敗して、日本に脅威が及ぶ場合があることを認めています。一旦戦端が開かれれば、取り返しのつかない事態になります。
 政府がやるべきことは、この地域で絶対に戦争を起こさないために、米中双方に緊張緩和と対話を働きかけることであります。どんなことがあっても住民に被害が及ばないようにすることです。ところが、それに逆行することばかりやっています。政府は戦争を起こさないための平和外交に徹すべきだということを強く申し上げておきたいと思います。
 終わります。

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