国会質問

質問日:2025年 4月 4日  第217国会  安全保障委員会

共同訓練拡大導く 訪問軍地位協定実施法案可決 赤嶺氏批判

衆院安保委

 自衛隊と他国軍が相互に訪問して共同訓練などを行う際の地位や手続きを定めた訪問軍地位協定(軍事円滑化協定)の実施法案が4日の衆院安全保障委員会で、日本共産党以外の賛成多数で可決しました。

 政府はこれまでオーストラリアやイギリスと同協定を締結し、個々の締約相手国ごとに協定と国内実施法を国会に提出してきました。法案は国内実施法を一般法化し、今後は国会提出を不要とします。

 日本共産党の赤嶺政賢議員は討論で、「国会審議を形骸化させ、国会の審議権・立法権を侵害するもので断じて認められない」と批判しました。

 赤嶺氏は、法案について「アメリカの軍事戦略に基づき、自衛隊の海外派遣とアメリカの同盟国・同志国との共同訓練や警戒監視活動を拡大するもので、憲法9条に真っ向から反する」と指摘。日本国内の共同訓練を拡大し、基地被害のさらなる拡大を招くとして、「米軍と自衛隊による事件・事故に苦しめられてきた国民に新たな負担を押しつけることは許されない」と強調しました。

 赤嶺氏は質疑で、昨年南シナ海で実施されたフィリピン軍と米軍との合同軍事演習で、自衛隊、米、比、豪軍との間で、敵基地攻撃と「ミサイル防衛」を一体化させた「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」に関する意見交換を行ったとの報道に言及。さらに米軍のIAMDセンター所長のサベージ大佐が昨年の論文で、日米豪で行われた軍事演習では「『指揮統制』が参加国間で共有された」と明記しているとして、「米軍指揮下で同盟国や同志国を巻き込んだ一体のシステムとしてIAMDを構築しようとしているのではないか」とただしました。中谷元・防衛相は「日米統合ではない。日米のIAMDは別物だ」と従来の答弁に終始しました。(しんぶん赤旗 2025年4月5日)

 

 

道路整備 軍事費への組み込みやめよ

安保3文書 赤嶺議員が追及

衆院委

 日本共産党の赤嶺政賢議員は4日の衆院安全保障委員会で、政府が安保3文書に基づく公共インフラ整備の対象施設に道路を追加した問題を取り上げ、軍事費への組み込みをやめるよう求めました。

 政府は1日の関係閣僚会議で、空港・港湾に加え、新たに道路を対象施設とし、沖縄県内では、那覇北、小禄、豊見城東の3区間の国道を指定しました。

 赤嶺氏は、これらは沖縄振興の継続事業だとして、「これまでと変わる点はあるのか」と質問。国土交通省の佐々木俊一道路局次長は、那覇市街地の交通混雑の緩和や那覇空港へのアクセス向上が事業の目的だとし、「これまで同様、民生利用を前提に整備を進める。道路幅や舗装の厚さの変更は考えていない」と述べました。

 赤嶺氏は、空港・港湾で整備の条件としたインフラ管理者との円滑な利用に関する確認事項や連絡・調整体制の構築はどうするのかと質問。防衛省の大和太郎防衛政策局長は「道路を使用する場合は、利用調整は生じない」として、行っていないことを明らかにしました。

 赤嶺氏は、那覇空港や石垣港でも既存事業を安保3文書に基づくインフラ整備事業に指定しているが、「従来通り民生目的で進めればいいだけだ」と指摘。米国が求める軍事費の国内総生産(GDP)比2%の要求を達成するために公共事業を軍事費に組み込んだとして、「こんないびつなやり方はやめるべきだ」と批判しました。(しんぶん赤旗 2025年4月7日)

質問の映像へのリンク

共同訓練拡大導く(衆院安保委)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 法案について質問をいたします。
 これまで、部隊間協力円滑化協定、いわゆる訪問軍地位協定の国内実施法は、個々の締約相手国ごとに単行法として整備をしてまいりました。今回の法案はこれを一般法化するものです。
 政府は、二〇二三年の通常国会に、初めてオーストラリア、イギリスとの円滑化協定の承認案件と国内実施法を提出いたしました。承認案件が付託された外務委員会には外務大臣が、国内実施法が付託された安保委員会には防衛大臣がそれぞれ出席し、質疑が行われました。ところが、今回の法案により、今後は、政府が新たな協定に署名したとしても国内実施法の提出は不要となり、本委員会での質疑も行われなくなります。
 協定を実際に運用するのは防衛大臣です。その防衛大臣が、個々の協定の締結に際して、委員会に出席し、国会と国民への説明責任を果たすのは当然のことではありませんか。それをなぜやめてしまうのですか。

○中谷国務大臣 この件は先ほど本会議で長時間にわたって説明をさせていただきましたけれども、これまでオーストラリアまたイギリスと締結をしまして、今回いろいろと検討した結果、これにつきましては、今後締結される円滑化協定がこの法案の範囲内の内容となる場合には法律改正が必要となることはないということで、それぞれ、このことにつきまして御理解をいただいて、実施をした方がいいんじゃないかなと。同様の内容で行いますので、これにつきましては同意をしていただきたいというふうに思っております。

○赤嶺委員 私が聞きましたのは、協定を運用するのは防衛大臣ですよね。その防衛大臣が、協定の締結に際して、法案を提出し、国会と国民への説明責任を果たすことをなぜやめてしまうのかという点です。

○中谷国務大臣 それは、今後締結をされる円滑化協定がこれまでの法案の範囲内の内容となる場合がありますので、その実施のためには法改正の必要となることはならないと考えたわけでございます。

○赤嶺委員 説明責任を放棄していくことにつながってしまいます。
 私は、二年前の質疑で、協定にある両締約国が相互に決定して部隊が実施する協力活動とは何か、その範囲に限定はあるかという点をただしました。共同訓練や災害救助を強調する政府の説明に対して、日米ガイドラインや安保法制に基づく重要影響事態や存立危機事態、武力攻撃事態における軍事支援活動が対象になるかを聞いたところ、協定上は排除されていないというのが当時の防衛省の答弁でありました。この答弁を受けて、私は、オーストラリアやイギリスなどの第三国の軍隊が日本列島を足場にしてアメリカ主導の軍事作戦を支援するための体制をつくるものだということを指摘させていただきました。
 一方、この通常国会に提出されているフィリピンとの円滑化協定は、この後の質問でもただしていきたいと思いますが、おのずと協力活動の性格や内容は異なるはずであります。日本と同じように、台湾海峡に近接し、また中国とは南シナ海の領有権をめぐる問題を抱えている国です。
 二年前に質疑が行われた当時の浜田防衛大臣は、協力活動の内容は、自国の法令、時々の状況や政策活動に基づき検討し、その都度、両国間で適切に判断し、相互に決定すると述べています。そうであれば、協定締結の都度、締約国との協力活動がどういったものになるのか本委員会で明らかにする責任があるのではありませんか。

○大和政府参考人 今いただいた御質問にお答えする前に、ちょっと先ほどの大臣の答弁に補足をさせていただきたいと思います。
 ほかの委員からのお尋ねに応じて私どもから申し上げているとおり、確かに今回の法案について、この国会で御承認いただけたならば、今後締結される円滑化協定がこの法案の範囲内の内容となる場合には、その実施のための法改正が必要となることはございません。
 ただ一方で、国の防衛政策について、この安全保障委員会の委員の皆様を含む国会議員の皆様の御理解を得ることは重要であると考えておりまして、防衛省といたしましても、新しく円滑化協定が締結される場合には、御質問などに応じてきちっと説明に努めてまいりたいと考えているところであります。
 それから、フィリピンとの円滑化協定に基づく協力活動の内実ということでありますけれども、先ほど御指摘いただいたとおり、円滑化協定における協力活動というものの内実は、両締約国の法令の定める範囲でその都度各国が判断し、相互に決定をするということになります。
 その上で申しますが、フィリピンとの円滑化協定にあっても、協力活動の具体的なアイテムとしては、基本的にはこれまでにも実績のある共同訓練あるいは災害救助といった活動が中心になるものと考えているところであります。

○赤嶺委員 運用の中身は締約国との関係でその都度検討されるべきと言いながら、結局は同じだからというような形で説明責任を逃れるわけにはいかないと思います。
 円滑化協定の国内実施法は、自衛隊の海外派遣や国内の基地負担の増大など、憲法や人権に関わる重大な法案です。防衛大臣もよく御承知のとおり、自衛隊の海外派遣をめぐっては、テロ特措法やイラク特措法、安保法制など国論を二分するような議論が行われてきました。法案への賛否をめぐって立場の違いはあったとしても、自衛隊を海外に出動させるということの重大性、軽々に扱ってはならない問題だということへの認識は党派を超えてあったはずであります。
 ところが、今回の法案を通じて感じるのは、政府・与党の中でそうした認識さえ薄れてきているのではないかということです。国会審議を形骸化させる一般法化は再考すべきだということを強く申し上げておきたいと思います。
 今回新たに円滑化協定を締結するフィリピンとの協力活動について伺います。
 先月三十日、日米防衛相会談が行われました。防衛省の会談要旨によると、自由で開かれたインド太平洋を実現するため、日米を中核として、豪州、韓国、フィリピンを始めとする地域のパートナーとの間で情報共有や運用面を含む協力を進展させていくことで一致したとしています。
 防衛大臣に伺いますが、運用面での協力とは具体的にどういうことを指しているのでしょうか。

○中谷国務大臣 今回の会談では、日米同盟の抑止力、対処力を一層強化して、自由で開かれたインド太平洋を実現するため、豪州、韓国、フィリピンを始めとする地域のパートナーとの間で情報共有や運用面を含む協力を進展させていくということで一致をいたしました。
 これまでも我が国は運用面の協力としまして、例えば、最近では、先月に実施された日米比三か国による海上協同活動、MCAを始めとする米国及び地域のパートナーとの様々な共同訓練を実施するなど、具体的な協力を積み重ねてまいりました。
 防衛省としましては、引き続き様々なレベルで意思疎通を継続しましてこうした取組を発展させていくということで、地域のパートナーとの連携強化を図るとともに、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた地域的、国際的な協力を推進していく考えでございます。

○赤嶺委員 日米防衛相会談に先立ち、二月二十四日には日本とフィリピンの防衛相会談も行われております。ここでは、日本とフィリピンとの間で運用面の戦略的連携について協議するハイレベルの枠組みを新設することで一致した、このようにしています。
 この運用面の戦略的連携とはどういうことを指しているんですか。どのような枠組みで、何を協議するんですか。

○大和政府参考人 お答えいたします。
 フィリピンは戦略的要衝に位置する日本の戦略的パートナーでありまして、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、フィリピンとの間で様々な分野における防衛協力を強化することが重要であります。
 二月に実施いたしました日比防衛相会談では、地域と国際社会の平和と安定に貢献していくために、両国の防衛面での協力と連携を更に一段高いものに引き上げていくことでフィリピン側と一致した点において、大変有意義なものでありました。
 その上で、御指摘のように、運用担当者間のハイレベルでの戦略的対話を新たに立ち上げ、その場において、より深い情報共有や高度な運用面での連携に向けて具体的に議論を進めていくことで一致したということであります。
 この内容の詳細は今後議論してまいりますが、フィリピン側とも調整した上で適切な形で公表をしたいというふうに考えておるところであります。

○赤嶺委員 フィリピンでは、昨年四月に行われた米軍とフィリピン軍との合同軍事演習で、米陸軍の中距離ミサイルシステム、タイフォンが一時配備されました。ところが、演習の終了後も撤収されずにフィリピン軍が運用訓練を行ってきたことが報じられております。その後、昨年十二月には、フィリピン軍がタイフォンを取得する計画を明らかにいたしました。
 今年の合同軍事演習バリカタンでは米海兵隊の地対艦ミサイルシステム、NMESISを展開させることも、先日、アメリカのヘグセス国防長官がフィリピンを訪問した際に明らかにしております。
 これらの事実関係について、防衛省はどのように把握しておられますか。

○大和政府参考人 お答えいたします。
 御指摘の点につきましては、米太平洋陸軍が、二〇二四年四月、米・フィリピン共同演習サラクニブ24において地上発射型の中距離ミサイルシステム、タイフォンをフィリピンに初めて展開した旨公表したこと、フィリピン政府が同年十二月タイフォンの取得の意向を表明したこと、先日、三月二十八日に行われた米・フィリピン防衛大臣会談においてヘグセス米国防長官が、今年春の米比主催多国間共同演習バリカタン25において米海兵隊の地対艦ミサイルシステム、NMESISを展開する旨発表したこと、こういったことを承知しているところであります。

○赤嶺委員 防衛大臣に伺いますが、防衛相会談で確認した運用面の戦略的連携には、日本とフィリピンの長射程ミサイルを連携させて運用するということも含まれるのですか。具体的に決まったことはありますか。

○中谷国務大臣 運用の担当者間のハイレベルでの戦略的対話につきましては、深い情報共有、また高度な運用面での連携に向けて具体的に議論を進めていくということで一致をしましたが、その内容などの詳細につきましては今後議論することとしておりまして、フィリピン側とも調整をした上で、適切な形で公表させていただきたいと考えております。

○赤嶺委員 ただ、昨年のバリカタンには自衛隊も参加しております。具体的に、自衛隊のどの部隊から何人が参加したのか、そこでどのような訓練が行われたのか、これを明らかにしていただけますか。

○大和政府参考人 お答えいたします。
 昨年の米比主催多国間共同演習バリカタン24には、航空自衛隊から三名がオブザーバーとして参加し、IAMD、統合防空ミサイル防衛に係る専門家交流に参加して、米国、豪州及びフィリピンの参加者との間でIAMDに関する取組や関心事項について情報交換を行いました。
 また、現地の地対空ミサイル部隊との交流を通じ、地域における防空及びミサイル防衛について相互理解を深めたというところであります。

○赤嶺委員 アメリカの太平洋空軍のホームページに掲載された昨年五月六日付の記事によると、昨年のバリカタンでは、演習の準備の過程で、同軍の太平洋IAMDセンターを中心に、アメリカ海兵隊や空軍、陸軍、フィリピン空軍の協力を得て、統合防空ミサイル防衛、IAMDに関する共通理解を得るための意見交換を行ったことを明らかにしております。今、局長の説明にもあったとおりであります。
 航空自衛隊のホームページでも、アメリカ、オーストラリア、フィリピンの参加者との間でIAMDに関する取組や関心事項について情報交換を行ったと認めております。
 IAMDに関し、具体的にどういう意見交換を行ったんですか。

○大和政府参考人 お答えいたします。
 航空自衛隊がオブザーバー参加したIAMDに係る専門家交流では、参加国である米国、豪州及びフィリピンに加え航空自衛隊から、それぞれ各国で実施するIAMDに係る取組について発表し、意見交換を行いました。
 防衛省・自衛隊といたしましては、米国及びフィリピンを始めとする地域のパートナーとの連携強化を図るとともに、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた協力を推進していく考えであります。

○赤嶺委員 先ほどの記事によると、インド太平洋軍のIAMDに関するミッションは米国が同盟国とシームレスに統合することだと述べています。
 また、IAMDセンター所長のサベージ大佐が昨年ミリタリーレビューという雑誌に寄稿した論文でも、同様の考え方を持つ国々と地域の多国間のIAMD網を構築する考えを示しています。日米豪が参加した演習では、指揮統制が参加国間で共有されたことにも言及をしております。
 アメリカのIAMD構想に従って同盟国との間で指揮系統を一元化する演習が行われているということではありませんか。先日の日米防衛相会談での確認は、事実上の米軍指揮下で同盟国や同志国を巻き込んだ一体のシステムとしてIAMDを構築していく考えを示したものではありませんか。

○中谷国務大臣 昨年四月の日米首脳会談においては、日米が共同対処を行う場合に、様々な領域での作戦、能力を切れ目なく密接に連携させていくという観点から、作戦及び能力のシームレスな統合を可能とするために、日米それぞれの指揮統制の枠組みを向上するということで一致したところであります。
 このように、日米間で様々な能力の発揮のために緊密な連携を図ることは当然でありますが、御指摘のような自衛隊と米軍の統合、これを意味するものではございません。
 その上で、我が国の統合防空ミサイル防衛能力というのは、米国の要求に基づくものではなくて、また、米国が推進するIAMDとも異なる我が国の主体的な取組でございまして、自衛隊の全ての活動は、何といっても主権国家たる我が国の主体的な判断の下に憲法、関係法令に従って行われているということ、また、自衛隊及び米軍がそれぞれ独立した指揮系統に従って行動することに変わりはありませんので、御指摘は当たらないと考えます。

○赤嶺委員 アメリカのヘグセス国防長官は、防衛省内で行われた共同記者会見で、日本は我々が西太平洋において直面するいかなる緊急事態でも最前線に立つと述べました。米中間で軍事衝突が起こった場合に最前線となる第一列島線でアクセスを拡大すると述べ、南西諸島での日米共同訓練を強化する考えも示しました。
 長官の発言は、日本を米中対立の矢面に立たせ、なお沖縄を戦場にすることも辞さないという考えを示したもので、絶対に許すことはできません。
 危険極まりない長射程ミサイルの配備、フィリピン軍を始めとする第三国軍隊と一体のIAMD網の構築はやめるべきだと思いますが、いかがですか。

○中谷国務大臣 ヘグセス長官からは、日本は西太平洋で我々が直面するかもしれない有事の最前線にいるということ、また、そのような状況において、何といっても日米同盟がインド太平洋地域における平和と安全の中核であるということ、日米が共に日米の安全保障と繁栄を拡大していくという力強いメッセージが示されたものだと考えます。
 会談でも、一層厳しく複雑な安全保障環境に関する認識を共有しまして、その中で、日米同盟が並外れた力を持ち、インド太平洋の平和と安定を維持するという共通の認識に至りました。まさに、こうした認識を踏まえて、日米の抑止力、対処力を強化する必要があるということを強調した発言であると認識をいたしております。今般の会談におきましても、同盟の抑止力、対処力の更なる強化に向けた取組を継続していくことが必要だと。
 今後も、ヘグセス長官を始めとして、トランプ政権の間で緊密に意思疎通をしていく考えでございます。

○赤嶺委員 この地域での軍事衝突が起これば、取り返しのつかない事態になります。緊張を高める軍事体制の強化ではなく、対話と協力を拡大するための外交にこそ取り組むべきだということを強く申し上げておきたいと思います。
 次に、安保三文書に基づく公共インフラ整備について質問をいたします。
 政府は、四月一日、持ち回りで行われた関係閣僚会議で、二五年度の事業内容について決定をいたしました。インフラ整備の対象施設に、これまでの空港、港湾に加えて新たに道路を追加いたしました。
 防衛大臣、今回、新たに道路を追加した理由について説明していただけますか。

○中谷国務大臣 申すまでもなく、道路というのは、災害においても、また危機管理においても必要なものなんですね。ですから、総合的な防衛体制の強化に資する公共インフラの整備については今非常に厳しい環境にありますので、この対応を実効的に行うためには、平素から自衛隊、海上保安庁が民間の空港、港湾を円滑に利用できるようにインフラ管理者との間で円滑な利用に関する枠組みというものを設けて、これらを特定利用空港、港湾としてまいりました。また、特定利用空港、港湾につきましては、民生利用を主としつつも、自衛隊、海上保安庁の艦船、航空機の円滑な利用にも資するように必要な整備等を行ってきたところでございます。
 こうした取組を進める中で、平素から自衛隊が円滑に人員、物資の輸送等を行うためには、特定利用空港、港湾と自衛隊の駐屯地の間のアクセスの向上を図る必要があると判断しまして、令和七年度からこの取組の対象に道路を追加したところでございます。
 本取組に基づく道路ネットワークの整備によりまして、平素における円滑な自衛隊の通行、ひいては災害の対応等、効果的な実施が見込まれると考えております。
 特に、輪島や他の災害において、道路の整備がいかに大切かということは我々も強く認識をいたしておりますので、こういった道路整備の必要性のために公共インフラ整備に指定したということでございます。

○赤嶺委員 復帰前の沖縄では、現在の国道五十八号線、名前も軍用道路一号線でした。あれをほうふつさせるようなことにならないかと、このニュースを聞いたときに危惧したものであります。
 国土交通省に伺います。
 沖縄では、三つの道路が対象施設に指定されています。しかし、いずれも以前から沖縄振興の一環として継続的に実施されてきた事業です。具体的な事業内容として何をやるのか、今回公共インフラ整備に位置づけたことで道路の規格などでこれまでと何か変わる点はあるのか、その点を説明していただけますか。

○佐々木政府参考人 お答え申し上げます。
 公共インフラ整備の取組について、今般対象とした沖縄県内の道路事業は、国道五十八号那覇北道路、国道五百六号小禄道路、国道五百六号豊見城東道路の三つの道路です。いずれの道路も、整備によりまして、那覇市街地部の交通混雑の緩和を図るとともに、沖縄本島北部から那覇空港へのアクセス性の向上が期待される高規格道路です。
 これら三つの道路につきましては、これまで同様、民生利用を前提に道路整備を進めるものであり、今般対象といたしましたことによりまして道路幅や舗装の厚さといった道路規格を変更するということは考えておりません。

○赤嶺委員 これらの道路整備はそれぞれいつ着工したものかも説明していただけますか。

○佐々木政府参考人 お答え申し上げます。
 一般国道五十八号那覇北道路につきましては平成二十六年度に、一般国道五百六号小禄道路につきましては平成二十三年度に、一般国道五百六号豊見城東道路につきましては平成三年度に、それぞれ事業化をいたしております。

○赤嶺委員 元々自衛隊が使うことが想定され、何年も前から着工している道路の規格を、今になって変更するとは考えられません。
 空港、港湾の場合は、管理者との間で円滑な利用に関する確認事項に合意し連絡調整体制を構築するとしています。しかし、道路については、元々、民間であれ、自衛隊であれ、同じように自由に使用しております。道路の場合、円滑な利用に関する確認事項や連絡調整体制の構築はどうしていくんですか。

○大和政府参考人 お答えいたします。
 自衛隊が道路を通行するに当たり、空港、港湾を利用する際のようなインフラ管理者との利用調整は生じません。したがいまして、本取組に基づく整備の対象となる道路については、インフラ管理者との間で円滑な利用に関する確認事項を取り交わすことや、これに基づく連絡調整体制を構築することはしておりません。
 なお、この取組は道路を自衛隊が優先的に通行するためのものではございませんで、自衛隊はこれまでどおり道路法等の既存の法令に基づき道路を通行してまいります。

○赤嶺委員 当然そういうことになると思うんですよね。
 空港では那覇空港、港湾では石垣港が既に指定され、今回、平良港が追加指定をされました。いずれも従来から進めてきた事業を継続しているにすぎません。そうであれば、従来どおり民生目的で進めればいいだけのことであります。
 防衛大臣に伺いますが、結局この公共インフラ整備というのは、アメリカから軍事費をGDP比二%に引き上げるよう求められて、それを達成するために公共事業を軍事費に組み込んだということではありませんか。こんないびつなやり方はやめるべきではありませんか。

○中谷国務大臣 私も時々沖縄に参りますけれども、沖縄の道路の混雑というのは異常でありまして、最近、海底道路とか湾岸道路ができまして非常にスムーズになって、多くの方々が利用をされるわけでありますし、また、我々も、何か有事、災害等においては緊急に行動する必要があり得ますので、やはり道路の整備というのは必要ではないでしょうか。
 この取組によって、民生利用を主としつつ自衛隊のニーズを踏まえて道路ネットワークの整備を図ることは、平素における円滑な自衛隊の通行、ひいては災害対応の効果的な実施につなげるものであるというふうに考えております。

○赤嶺委員 特定利用道路ということまでして軍事費に数え上げる。でなくても、そういう道路の渋滞というのは民生用にずっと取り組んでやればいいことですよね。私はこの点で非常に疑問に思っております。
 最後に、昨日の連合審査で質問できなかった点を伺います。
 日米ガイドラインは、重要インフラやサービスを防護する理由として、自衛隊や米軍が任務を達成する上でそれらに依拠していることを挙げています。防衛大臣、これはどういう意味ですか。

○中谷国務大臣 二〇一五年に、日米防衛協力のための指針、ガイドライン、これが締結をされました。これにおいては、「日米両政府は、適切な場合に、民間との情報共有によるものを含め、自衛隊及び米軍が任務を達成する上で依拠する重要インフラ及びサービスを防護するために協力する。」というふうになっております。
 一般に、自衛隊、米軍は、任務を遂行する上で、例えば電力、通信といった重要インフラに依拠しております。サイバー空間における脅威動向を踏まえれば、こうした重要インフラに対するサイバー攻撃というのは自衛隊や米軍が任務を遂行する上で阻害要因になる可能性がありますので、自衛隊・防衛省としましては、こういった問題意識も踏まえまして、日米間でサイバーセキュリティーの重要性について意見交換を行ってきたところでございます。

○赤嶺委員 今回の法案は、個々の国民や中小企業のサイバー犯罪対策を進めるためのものではありません。防護対象として真っ先に挙げているのは、政府や企業が保有する軍事機密であります。
 国民生活に不可欠なインフラでさえ、米軍や自衛隊の軍事行動に不可欠という視点から捉えております。いかに政府が、国民の生命や安全よりも、日米軍事同盟の強化に重きを置いているかを示すものであります。日米安保のためと言って、県民の人権よりも米軍の運用が優先される沖縄の実態と同じです。
 軍事同盟強化のための法案は廃案にすべきだということを申し上げて、質問を終わります。

○遠藤委員長 お疲れさまでございました。赤嶺政賢君の質疑は終了いたしました。
 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
○遠藤委員長 これより討論に入ります。
 討論の申出がありますので、これを許します。赤嶺政賢君。
○赤嶺委員 日本共産党を代表して、部隊間協力円滑化協定実施法案に反対の立場から討論を行います。
 本法案は、これまで個々の締約相手国ごとに単行法として整備してきた部隊間協力円滑化協定、いわゆる訪問軍地位協定の国内実施法を一般法化するものであります。
 円滑化協定と本法案は、アメリカの軍事戦略に基づいて、自衛隊の海外派遣とアメリカの同盟国、同志国との共同訓練や警戒監視活動を拡大するもので、憲法九条に真っ向から反するものです。
 今国会に協定の承認案件が提出されているフィリピンとの間では、運用面の戦略的連携が確認され、長射程ミサイルを一体的に運用する動きが進んでおります。台湾有事を想定し、同盟国、同志国を巻き込んだアメリカ主導のIAMD計画の具体化にほかなりません。
 さらに、協定と本法案は、日本国内における二国間、多国間の共同訓練を拡大し、基地被害の更なる増大を招くものです。米軍と自衛隊による航空機騒音や事件事故に苦しめられてきた日本国民に新たな負担を押しつけることは、到底許されるものではありません。
 このような重大な内容を持つ法案であるにもかかわらず、成立後は、新たな協定の締結に伴う国内実施法の整備は原則として不要になっていきます。国会審議を形骸化させ、国会の審議権、立法権を侵害するものであり、断じて認められません。
 政府は、地域の緊張を高める軍事体制の強化ではなく、戦争の心配のない東アジアをつくるための憲法九条を生かした平和外交にこそ取り組むべきであります。
 以上を指摘し、討論を終わります。

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