衆院憲法審査会
衆院憲法審査会は27日、憲法54条の「参議院の緊急集会」について自由討議を行いました。日本共産党の赤嶺政賢議員は同規定について、「政府の独裁を排し、国民主権と民主主義を貫くために日本国憲法に導入されたものだ」と強調しました。
これまで憲法審査会では、自民党などが、緊急集会での対応は臨時的なものであり緊急時に対応できないとして、国会議員の任期延長や内閣に権限を集中させる緊急政令など「緊急事態条項」を盛り込む改憲論を主張してきました。
赤嶺氏は、同規定はかつて日本政府が明治憲法の緊急勅令や戒厳などを乱用して「国民の権利と自由を抑圧し、侵略戦争へと突き進んだ痛苦の反省に基づくものだ」と強調。戦後の憲法制定議会で金森徳次郎憲法担当相は、緊急勅令などの規定を排除し、民主主義を徹底させるために参院の緊急集会を設けたと説明していると指摘し、緊急事態条項の議論は「歴史の反省と憲法の原則を根底から踏みにじるものだ」と批判しました。
また、緊急集会での措置が一時的・暫定的である点も、権力の集中と乱用を防ぐ上で重要だと強調。2023年の憲法審査会で陳述した長谷部恭男・早稲田大学教授が、衆院議員の任期延長は選挙を経ていないにもかかわらず「全ての権能を行使しうる『ある種の国会』が存在することになる」「衆議院に支えられた政権の居座りを許し、緊急事態の恒久化を招く」と述べていることを挙げ、「政権を延命し権力を維持するために乱用される危険性は極めて重大だ」と批判しました。(しんぶん赤旗 2025年3月28日)
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議事録
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
参議院の緊急集会を考える上で重要なことは、日本国憲法にこの規定が導入されたのは、内閣への権力の集中を排除し、議会制民主主義を徹底するためだということです。これは、かつて日本政府が国民の権利と自由を抑圧し、侵略戦争へと突き進んだ痛苦の反省に基づくものです。
明治憲法は、緊急勅令や緊急財政処分、戒厳、非常大権など、行政府への広範な権限の集中を認めていました。当時の政府は、それを濫用し、戦争に反対する国民の声を弾圧するために用いました。議会で廃案になった治安維持法の重罰化法案を議会閉会後に緊急勅令によって成立させたことは、これを象徴するものです。
法制局の説明にもあるように、敗戦後、当時の政府は、新憲法の制定に当たり、災害など緊急の必要を理由に、法律や予算に代わる閣令を制定できるよう盛り込もうとしました。しかし、明治憲法と同様の制度を復活させる規定は総司令部との交渉で退けられました。そうした中で取り入れられたのが参議院の緊急集会です。
憲法制定議会で、金森徳次郎担当大臣は、緊急集会を定めた趣旨について、明治憲法の緊急勅令や緊急財政処分などによって民主主義政治の運用に遺憾な結果を生じさせたことから、民主政治を徹底するために、こうした規定を排除し、参議院の緊急集会を設けたと明言しています。緊急集会が憲法に導入された目的が、政府の独裁を排し、国民主権と民主主義を貫くことにあるのは明確です。
もう一つ重要なことは、憲法が緊急集会の措置を一時的、暫定的なものだとしていることです。憲法五十四条三項は、参議院の緊急集会で取られた措置は臨時のものであり、次の国会開会後十日以内に衆議院の同意が得られなければ失効すると明記しています。これも権力の集中と濫用を防ぐ上で重要です。
憲法審査会で参考人として意見陳述をした長谷部恭男早稲田大学教授は、緊急時の対応は平時の制度と明確に区別すべきだと述べた上で、緊急集会を行い得るのは暫定的な臨時の措置で、権限にも限界があるからこそ、平時の状況が回復したときは可及的速やかに通常の制度へと復帰することができるのだと評価しています。
その上で、長谷部参考人は、衆議院議員の任期延長は、選挙を経ていないにもかかわらず、国会に付与された全ての権能を行使し得るある種の国会が存在することになると指摘しています。その下で、緊急時の名をかりて、通常時の法制度そのものを大きく変革する法律が制定されるリスクがある、衆議院と、それに支えられた政権の居座りを許し、緊急事態の恒久化を招くことになると述べています。
政権を延命し、権力を維持するために濫用される危険性は極めて重大です。
ところが、こうした憲法の成り立ちや専門家の指摘を無視して、緊急集会では長期にわたって総選挙ができない事態に対応できないなどと想定外の上に想定外を重ね、国会議員の任期延長の改憲が必要だという議論が繰り返されています。
さらに、国会による法律を待ついとまがない場合を理由に内閣の緊急政令や緊急財政処分を盛り込む主張までされていることは、日本国憲法に緊急集会が導入された目的に真っ向から反するものだと言わざるを得ません。
憲法に緊急事態条項を設け、国会の権限を奪い、内閣に権力を集中させるための改憲議論は、この歴史の反省と憲法の原則を根底から踏みにじるものであり、絶対に許されないと強調して、発言を終わります。