日米の攻撃力増強 地域に緊張生む
日中共同声明 首相「両国間で確認」
衆院本会議は4日、岸田文雄首相から安保3文書について報告を受け、質疑を行いました。日本共産党の赤嶺政賢議員は、日米一体の敵基地攻撃能力増強が地域の緊張を生み、戦争の危険を引き寄せると批判し、包摂的な平和の枠組みを発展させる外交にこそ取り組むべきだと訴えました。
赤嶺氏は、敵基地攻撃をめぐる議論で欠かせない視点として在日米軍の存在を提起。世界で唯一空母打撃群と海兵遠征軍が前方展開し、さらに近年は、オスプレイや無人偵察機の配備、海兵沿岸連隊への改編など、新たな部隊の増強が進められていることをあげました。
赤嶺氏は、公然と先制攻撃戦略を掲げ、国際法違反の侵略戦争を繰り返してきた米軍の強大な攻撃戦力の存在が周辺諸国に脅威を与え、軍拡を誘発する要因になってきたと強調し、そこに日本が加わり、他国に脅威を与える攻撃的兵器を日米一体で増強することは「憲法9条に反することは明らかだ」と批判しました。首相は敵基地攻撃能力保有が「抑止力・対処力の向上につながる」と従来の答弁を繰り返しました。
赤嶺氏は、2008年の日中共同声明が「双方は、互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならない」と確認したことに言及し、「こうした土台を再確認し、平和と友好の関係を確かなものにしていく外交に取り組むべきだ」と主張。首相も08年の共同声明の確認事項は「日中間のさまざまな意思疎通の場で確認している」と述べ、建設的で安定的な関係を構築する考えを示しました。
赤嶺氏は「今必要なのは戦争の準備でなく平和の準備だ」と強調。憲法9条を生かした平和外交を求めました。(しんぶん赤旗 2023年4月5日)
衆院本会議 安保3文書
赤嶺氏の質問(要旨)
日本共産党の赤嶺政賢議員が4日の衆院本会議で行った、安保3文書に関する質問の要旨は次の通りです。
岸田政権が閣議決定した安保3文書は、歴代政府が建前としてきた専守防衛さえ投げ捨て、敵基地攻撃能力の保有に公然とふみきるものです。さらに、国民には歳出削減と増税を押し付け、GDP(国内総生産)2%への大軍拡を推し進めるものです。
総理は「平和国家としての歩みを変えるものではない」と言いますが、憲法9条に基づく日本のあり方を根底から覆し、外交も内政も軍事最優先の「軍事国家」そのものではありませんか。
敵基地攻撃能力をめぐる議論で欠かせない視点は、在日米軍の存在です。1952年に発効した日米安保条約に基づき、全国130カ所以上の米軍基地が存在し、世界最大の約5万4000人の兵力が駐留しています。世界で唯一、空母打撃群と海兵遠征軍が展開し、横須賀の原子力空母や長距離巡航ミサイル・トマホークを搭載した11隻のイージス艦、数百機もの空母艦載機や戦闘攻撃機、沖縄の海兵隊や佐世保の強襲揚陸艦などがいつでも出撃できる体制をとっています。オスプレイや無人偵察機の配備、海兵沿岸連隊への改編など、新たな部隊の増強も相次いでいます。
戦後、米国は先制攻撃戦略を公然と掲げ、国際法違反の侵略戦争を繰り返してきました。こうした米国の強大な攻撃戦力が日本に存在し、周辺諸国に脅威を与えてきたことが、地域の緊張を生み、軍拡を誘発してきたのではありませんか。
そこに日本も加わり、他国に脅威を与える攻撃的兵器を日米一体で増強することが、憲法9条に反することは明らかです。こうした敵基地攻撃能力の増強は、地域の緊張をいっそう高め、戦争の危険を引き寄せることになるのではありませんか。
いま米国は、同盟国を巻き込みながら、敵基地攻撃とミサイル防衛を一体化させた統合防空ミサイル防衛=IAMDを構築しています。総理は「日米は独立した指揮系統で行動する」と言いますが、トマホークの使用で必要な地形情報も、攻撃目標の位置情報も、米軍から入手するのではありませんか。
南西諸島から南シナ海の島々に長射程ミサイルを配備する計画は、米国の軍事戦略から始まったものです。日本の敵基地攻撃能力がIAMDに組み込まれ、米軍の指揮統制のもとで運用されることになるのは明らかです。
米国はイラク戦争以降、同盟国や同志国を戦争の最前線に立たせるやり方に変えています。米中の覇権争いが軍事衝突に発展したとき、戦場になるのは沖縄をはじめ日本列島や東アジアの国々です。この地域で絶対に戦争をさせないために、米中双方に緊張を高める行動をやめるよう働きかけ、地域のすべての国を包摂する平和の枠組みの発展に全力をつくすべきです。
2008年の日中共同声明は、国交正常化以降の両国間の合意をふまえ、「双方は、互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならないこと」を確認しています。こうした共通の土台を再確認し、平和と友好の関係を確かなものにする外交に取り組むべきです。いま必要なのは、戦争の準備ではなく、平和のための準備です。憲法9条を生かした平和外交を求めます。(しんぶん赤旗ホームページ)