衆院憲法審査会が23日開かれ、自由討議を行いました。日本共産党の赤嶺政賢議員は国民投票法について、公平・公正を確保する大前提として、放送事業者の自主性・自律性が保障されているかが問題だと主張しました。
赤嶺氏は、政府が放送法4条を事業者への行政指導の根拠とし、「電波停止もあり得る」(電波法76条)としていることが「『放送による表現の自由』を蹂躙(じゅうりん)する」と批判。2015年に当時の高市早苗総務相が放送法4条を根拠にNHKを「厳重注意」したことについて、「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の放送倫理検証委員会が意見書で厳しく批判したことを紹介しました。
同意見書が「政府は放送法の規定に依拠して個別番組の内容に介入することは許されない」としたことをあげ、赤嶺氏は「これが本来放送法の大原則だ」と強調。政府と政権党による「放送の自由」への侵害行為を明らかにすべきだと主張しました。
立憲民主党の中川正春議員は、国民投票の公平性の観点から「政府による番組介入はあってはならない」と述べました。自民党の新藤義孝議員は、国民投票法の有料広告の公平性の確保について、民放連が量的自主規制を行うとして、「一定の方向性が出ている」などと主張しました。(しんぶん赤旗 2023年3月24日)
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議事録
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
国民投票法をめぐる問題について意見を述べます。
私たちは、国民が改憲を求めていない中、改憲の手続法である国民投票法を整備する必要はないという立場です。現行の国民投票法については、国民の民意を酌み尽くし正確に反映させるという点で、重大な欠陥があると考えています。
具体的には、最低投票率の規定がないこと、公務員や教育に携わる者の投票運動を不当に制限していること、改憲案に対する広告や意見表明の仕組みが公平公正なものになっていないことの三点を指摘してきました。
こうした根本的な欠陥に加えて、前回の審査会で、国民投票法の公平公正を確保する大前提の問題として、自民党政権が放送行政をゆがめ、放送による表現の自由が根底から揺らいでいることを挙げました。他の委員からも、安倍政権が放送法の解釈を変更し、政治的公平性を番組全体ではなく一つの番組のみで判断できるとしたことは、国民投票の結果をゆがめる危険があるという懸念が指摘されました。これは、国民投票法を考える上で、ゆるがせにすることのできない問題です。
国民投票におけるテレビ放送の有料広告をめぐって、放送事業者の自主的な取組で公平性が担保されるのかということが議論されてきました。その前提として、放送事業者の自主自律が保障されているのかということが問われなければなりません。
私は、前回、放送法による表現の自由は憲法二十一条によって保障されていること、にもかかわらず、歴代の自民党政権が放送法の趣旨をねじ曲げ、放送番組に干渉してきたこと、とりわけ安倍政権の下で、安保法制や改憲、沖縄基地問題などで、政権の意に沿わない番組を狙い撃ちにして圧力をかけ、放送の自由を侵害してきたことを指摘しました。
改めて、憲法二十一条と放送法の原則について述べておきたいと思います。
政府は、放送法四条を根拠に、放送事業者に対して行政指導を行うことができるとし、さらには、電波法七十六条に基づく電波停止もあり得るという見解を取っています。この見解は、政府による番組介入を正当化する論理にほかなりません。放送による表現の自由をじゅうりんするものです。
この点について、放送倫理・番組向上機構、BPOの放送倫理検証委員会が二〇一五年に出した意見書に耳を傾けるべきだと思います。
安倍政権下の二〇一五年四月、総務大臣、当時、高市総務大臣は、NHKに対して、番組「クローズアップ現代」の報道内容を問題として、厳重注意を行いました。厳重注意の根拠としたのが、放送法四条第一項の報道は真実を曲げないとの規定でした。これに対してBPOは、放送法四条は、放送事業者が自らを律するための倫理規範であり、総務大臣が個々の放送番組に介入する根拠ではないと厳しく批判しました。次のように述べています。
放送法第一条が定める不偏不党、真実や自律は、放送事業者や番組制作者に課された義務ではない、これらの原則を守るよう求められているのは政府などの公権力である。放送法第四条も、政府が放送内容について干渉する根拠となる法規範ではなく、放送事業者が自律的に番組内容を編集する際のあるべき基準、倫理規範である。したがって、政府がこれらの放送法の規定に依拠し、個別番組の内容に介入することは許されない。
極めて明確であります。これが本来の放送法の大原則です。この原則に照らして、政府と政権党による放送の自由に対する侵害行為を明らかにすべきです。
総務省が公表した行政文書では、安倍首相や礒崎補佐官、高市大臣は個別の番組名やキャスターの名前を挙げて批判し、今までの放送法の解釈がおかしいなどと迫っています。政権による言論封じにほかなりません。
安倍政権の下で自民党がNHKや民放の経営幹部を呼びつけて、番組内容について説明させ、電波法に基づく電波停止もあり得ると威嚇したことは、放送法三条が保障する番組編成の自由への政権党による圧力そのものです。
岸田政権は、安倍政権の解釈変更を踏襲し、批判的な放送や報道を萎縮させながら大軍拡を推し進めています。
自民党政権が憲法違反の政治を進めるために憲法二十一条や放送法に反する行政を行ってきたことは、極めて重大です。この憲法違反と放送法侵害の実態を明らかにし、放送の自由を取り戻すことなしに国民投票法の公平公正を議論することはできないと指摘して、私の発言を終わります。