国会質問

質問日:2022年 3月 15日  第208国会  安全保障委員会

台湾有事 平和外交こそ 赤嶺氏「沖縄が戦場に」警告

衆院安保委

 日本共産党の赤嶺政賢議員は15日の衆院安全保障委員会で、「日本が台湾有事に軍事介入すれば、沖縄は戦場になる」と警告し、平和的解決を働きかける外交努力に徹するよう求めました。

 赤嶺氏は、日本が紛争当事国の場合、「自衛隊の航空機や艦船、車両は軍事目標として取り扱われ、搭乗する民間人は国際人道法による保護を受けられない」と指摘。台湾有事で日本が集団的自衛権を行使し、紛争当事国となった場合、「台湾在留邦人をいったいどうやって安全に避難させるのか」とただしました。岸信夫防衛相は「在外邦人の安全確保に万全を期す」と述べるにとどまりました。

 赤嶺氏は、台湾有事に介入すれば、米軍基地が集中する沖縄が戦場となるとして「砲弾の雨の中、潜水艦が待ち構える中で、145万人の県民をどう避難させるのか」と追及。岸防衛相は、「沖縄県民の避難は、県と各市町村が実施する」とし、自衛隊は武力攻撃の排除という「主たる任務に支障のない範囲で可能な限り行う」と述べました。赤嶺氏は、いったん戦闘が始まれば、民間船舶の運航も止まるとして「多くの県民が戦場に取り残され、多大な犠牲を生むことになる」と強調しました。

 赤嶺氏は「他国の紛争に自ら介入すれば日本に戦火を呼び込むことになる」と指摘し、「国民に重大な犠牲をもたらす武力介入など絶対にやってはならない」と主張しました。(しんぶん赤旗 2022年3月16日)

 

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台湾有事 平和外交こそ(衆院安保委)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 法案について質問をいたします。
 先週八日の本会議で、在外邦人等の輸送に関して、自衛隊は国際法上軍隊として取り扱われることから、その航空機や船舶、車両に搭乗する民間人は国際人道法による保護を受けられないのではないかという質問がありました。これに対して、国際人道法は基本的には武力紛争の当事国の関係を規律しており、我が国が邦人輸送を行うことで紛争当事国になることはなく、軍事目標主義の適用を論じる意義はないというのが政府の答弁でありました。
 日本が武力紛争の当事国の場合はどうなるんですか。

○岸国務大臣 自衛隊法第八十四条の四に基づく自衛隊の活動は、外国における緊急事態に際しまして生命又は身体の保護を要する邦人を本邦等の安全な地域に輸送する活動です。当該輸送は国際法上禁じられた武力の行使に当たるものではなく、我が国がこうした活動を行うこと自体によって紛争当事国になることはありません。
 その上で、武力攻撃事態において武力攻撃を排除するために武力を行使している状況において、我が国は紛争当事国となっていると考えられます。その場合、自衛隊が自衛隊法第七十六条に基づく防衛出動等によって武力攻撃を排除するという主たる任務に当たる中で、在外邦人等の生命身体の保護については、何がそのときの状況に応じた最適な手段であるかを政府全体で判断し、対応してまいります。
 さらに、我が国が紛争当事国となった場合において、仮に自衛隊が在外邦人の輸送を実施した場合には在外邦人は国際人道法上の保護を受けられないのではないかという問いがございましたけれども、個別の事案に対しては、状況に応じて判断される必要があり、そのお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
 その上で、一般論として申し上げれば、ジュネーブ条約に代表される国際人道法において、文民は保護の対象であると承知をしております。

○赤嶺委員 文民は保護の対象である。
 私がお聞きしましたのは、武力行使の正当性についてではありません。武力行使の性格のいかんにかかわらず、全ての紛争の当事者が最低限守らなければならない基準を定めた国際人道法との関係についてであります。
 ジュネーブ条約の第一追加議定書は、民用物への攻撃と復仇を禁止し、攻撃は厳格に軍事目標に限定することを定めています。日本が武力紛争の当事国の場合、自衛隊の航空機や艦船、車両は民用物でないことから、当然、軍事目標として取り扱われる。これは、具体的な事例を待たずして明らかではありませんか。

○岸国務大臣 武力攻撃事態における自衛隊の具体的な行動についてはお答えを差し控えますが、在外邦人等の生命身体の保護については、何がそのときの状況に応じた最適な手段であるか、政府全体で判断してまいります。

○赤嶺委員 まあ、お答えにならないわけですが。
 九九年のガイドラインのときの外務省条約局長の答弁では、当然、国際法上民用物とは考えられない、むしろそういう意味では軍事目標の方に該当すると答えているわけですね。検討を待たずして武力紛争の当事国の場合に軍用機を使ったら、それが攻撃の対象というものになっていきます。
 一般的な考え方に立つと、軍事目標である自衛隊の航空機や艦船、車両に搭乗する民間人は国際人道法による保護は受けられないということになるのは明らかじゃないですか。

○増田政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど大臣よりお答えをさせていただきましたけれども、武力攻撃事態におきまして、自衛隊は、防衛出動等によりまして武力攻撃を排除するという主たる任務に当たっております。また、在外邦人等の生命身体の保護ということにつきましても、政府全体として懸命に取り組まなくてはいけない責務でございますが、そのときにどのような手段でどのように保護することが適切かということは、政府全体で判断することだというふうに思っております。

○赤嶺委員 どのようなやり方にするかということを聞いているわけではありません。そのときに今のような自衛隊機を使うようなことになれば、国際人道法に基づく保護の対象にはならないのではないかということを聞いておりますが、ちょっと具体的に伺います。
 今年一月の日米の2プラス2の共同発表は、ルールに基づく秩序を損なう中国への懸念を表明した上で、地域における安定を損なう行動を抑止し、必要であれば対処するために協力することを決意した、このように述べております。
 この間、政治家による台湾有事に関する発言が繰り返され、安倍元首相は、台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもあるなどと述べております。
 台湾海峡をめぐる問題が武力紛争に発展し、日本政府がそれを存立危機事態と認定して集団的自衛権を行使した場合、日本は紛争当事国になります。自衛隊の航空機や艦船、車両は軍事目標として取り扱われ、そこに誰が搭乗していようと攻撃対象とされます。
 防衛大臣は本会議の答弁で、いかなる事態にも対応できるよう万全を期していくと述べておられますが、このような状況下で、台湾に在留する邦人を一体どうやって安全に退避させるんですか。そんなことはできないのではありませんか。

○岸国務大臣 台湾有事という仮定の御質問にはお答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、台湾をめぐる情勢については、当事者間で対話によって平和的に解決されることを期待しているというのが我が国の立場であります。
 その上で、一般論として、我が国として、在外邦人の安全についてもしっかりと確保できるように万全を期してまいりたいと考えております。

○赤嶺委員 私が聞いているのは、そんな場合にどうやって安全に退避することが可能かということを伺っているわけですが、答えておられません。
 台湾に在留する邦人だけではありません。日本が台湾問題に軍事介入すれば、中国政府は、当然、内政問題への不当介入とみなして自衛権を行使することになります。米軍基地が集中し、出撃拠点となる沖縄は戦場になります。砲弾の雨の中、潜水艦が待ち構える中で、百四十五万人もの沖縄県民を一体どこにどうやって避難させるんですか。

○岸国務大臣 仮に武力攻撃事態が生起した場合には、自衛隊は、武力攻撃を排除して国民への被害を局限化するという主たる任務に支障のない範囲内で、可能な限り、国民保護措置を行うことになります。
 その上で、沖縄県民の方々の避難については、沖縄県及び各市町村がその国民保護計画に基づいて国と協力しつつ実施することとなります。防衛省・自衛隊として、警察及び消防等とも連携しつつ、被害状況の確認、人命救助、住民避難の支援等の措置を実施することとなります。また、島外への避難が必要となった場合には、防衛省・自衛隊も保有する航空機や船舶により避難住民の輸送を実施することになります。
 防衛省として、沖縄県や各市町村含めて、関係機関と平素からの訓練などを通じて連携向上を図ることとし、いかなる事態においても国民の命と財産を守るために万全を期してまいります。

○赤嶺委員 今の答弁を聞いていて、いかなる場合でも県民の命と安全を守っていくと言いますが、到底不可能だ、そんなことはできっこないということを改めて感じました。
 なぜなら、今防衛大臣もお答えしたように、国民保護法では避難住民の誘導はあくまで市町村の役割とされています。自衛隊は、大臣の答弁にもありましたように、主たる任務である武力攻撃の排除に支障の生じない範囲で可能な限り支援するということにすぎません。十分な輸送手段を確保できず、住民を避難させることができなければ、市町村の責任とされてしまうのが今の国民保護法の体系です。
 一旦戦闘が始まってしまえば、そこは自衛隊法上の自衛隊の行動に係る地域ということになって、民間船舶の運航も止まります。結局、多くの県民が戦場に取り残される、そういうことになるのではありませんか。去った沖縄戦の捨て石作戦のように、こういう事態は、台湾海峡をめぐる武力紛争の突発は、いや応なしに沖縄県民を戦場に取り残し多大な犠牲を生じさせる、そういうことになるのではないかと危惧しておりますが、いかがですか。

○増田政府参考人 お答え申し上げます。
 台湾有事ということから、南西の防衛の関係の御質問がありました。
 台湾有事という仮定の質問にお答えすることは差し控えますが、我が国としては、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待するというのが、従来から一貫した立場でございます。
 その上で、我が国が整備している防衛力、これは特定の国を対象とするものではございませんが、我が国周辺の厳しい安全保障環境を踏まえますと、南西地域の防衛体制の強化は我が国の防衛にとって喫緊の課題だと思っております。
 我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜くために、警戒監視活動や対領空侵犯措置に万全を期すとともに、海上優勢、航空優勢を確保するため、平素から安全保障環境に即した部隊配置を行いまして、南西諸島における防衛体制を目に見える形で強化してきております。
 このような部隊配置は、我が国への攻撃を抑止する効果を高めているものであると考えておりまして、我が国に対する、南西諸島に対する侵攻というものが起きないようにするということが一番重要だと思っております。

○赤嶺委員 南西諸島に強大な軍事拠点を設けて、沖縄本島の米軍基地も対中国を念頭に強化されている中で、幾ら平和解決を望んでいると言われても、そこには、偶発的な軍事衝突への危機感、これをずっと抱いているわけです。政府の答弁が絵空事に聞こえてなりません。
 安保法制に基づく存立危機事態や重要影響事態は、日本が武力攻撃を受ける事態ではありません。受けていないにもかかわらず、他国の紛争にアメリカが介入したときに、日本がそれを支援し、自ら軍事的に介入する仕組みです。そのようなことをすれば、日本に戦火を呼び込むことになるのは明らかです。
 日本がやるべきことは、南西諸島における軍事的な強化、沖縄本島における米軍基地の強化ではなくて、あくまで紛争の平和的解決を働きかける外交努力であって、国民に重大な犠牲をもたらす武力介入など、絶対にやってはならないと思います。そのように考えていった場合に、危険極まりない安保法制の廃止は急務だということを強調しておきたいと思います。
 次に、外国軍隊への麻薬などの譲渡について伺います。
 今回、麻薬及び向精神薬取締法の特例を設けて、自衛隊が、厚生労働大臣の許可を得なくても、外国軍隊に医療用麻薬などを提供できるようにするとしています。
 まず、この規定を法案に盛り込むことになった経緯から伺いますが、事前の説明では、陸上自衛隊が現在、南西諸島の防衛についての研究を重ねており、日米共同作戦の際に負傷した米兵の治療が手遅れになることへの懸念の声が上がっていたことから、厚生労働省と調整を行い、今回の特例を設けることになった、このように聞いておりますが、そういうことでよろしいでしょうか。

○岸国務大臣 防衛省におきましては、自衛隊と外国軍隊との協力関係が進展していることを踏まえて、両者が共に活動する場合における衛生分野での課題について鋭意検討を進めてきたところであります。
 その結果、麻薬や向精神薬に該当する医薬品について、これらを自衛隊から外国軍隊に速やかに譲り渡すことができれば、自衛隊及び自衛隊と共同して活動する外国軍隊のより円滑な運用に資すると判断し、麻薬及び向精神薬取締法の所管省庁である厚生労働省と協議を行ってきたところであります。
 今般、厚生労働省との間で協議が調ったことから、当該法案の速やかな成立を図るべく、今国会に改正案を提出したところであります。

○赤嶺委員 自衛隊と米軍の協力関係が発展している中で、今回の医薬品の提供、このことが法案になったということですが、具体的には、どんな場面でどのような医薬品を提供することを想定しているんですか。

○鈴木政府参考人 お答えいたします。
 今回、特例規定に基づき麻薬等を譲り渡す場合としては、例えば、国内で共同して活動を行っている外国の軍隊に負傷者が発生し、その治療に必要な麻薬等に該当する医薬品の提供を求められ、自衛隊から提供する場合などを想定しております。
 また、譲り渡すことを想定している具体的な医薬品としては、麻薬に該当するものとしてはモルヒネ塩酸などの鎮痛薬を、向精神薬に該当するものとしてはジアゼパムなどの鎮静薬などを想定しているところでございます。

○赤嶺委員 日米の共同の軍事活動の中で、こういう必要性まで出てきたという説明であります。
 去年の十二月に、共同通信が、米軍と自衛隊が台湾有事を想定した新たな共同作戦計画の原案を策定したことを報じました。台湾有事を安保法制に基づく重要影響事態と認定し、南西諸島の約四十か所の離島を対象に米軍が臨時の軍事拠点を置き、相手の攻撃をかわすために島々を転々としながら中国艦艇への攻撃を続けるという内容であります。自衛隊には、輸送や弾薬の提供、燃料補給など、後方支援を担わせるとしています。
 政府は公式には認めていないわけですが、やはりそういう検討をやっていることではないかと思います。今回の改定も、そうした共同作戦計画の検討の中から出てきたものではありませんか。

○岸国務大臣 米軍との間では平素から様々な情報交換を行っているところでございますが、日米共同作戦については、事柄の性質上、お答えを差し控えさせていただきます。

○赤嶺委員 答弁を差し控えるということでありますが、実態としては、例えば今年一月の2プラス2の共同発表、これは、緊急事態に関する共同計画作業についての確固とした進展を歓迎した、こう2プラス2で明記されているわけですね。県民の命が懸かった重大な問題であります。しかし、それを問い詰めると、日米間で秘密裏に事を進め、説明できないと答える。
 しかしながら、突然県民が戦火に巻き込まれるという危機感もあります。偶発的な軍事衝突、今のような軍事の拡大強化、これがずっと続いていきますと、そういう軍事衝突が偶発的に起こる危険さえあります。県民が突然戦争に巻き込まれる、そういう事態になることを危惧しております。危惧どころか、これは沖縄戦の再来だと。
 台湾有事は日本有事、そして、南西諸島の軍事を強化しよう、沖縄の米軍基地は日米同盟にとって必要だと。こんな、県民の苦しみを離れた、しかも勇ましい、そういう議論は是非とも慎んでいただきたい。大臣がおっしゃっていたような平和解決、この姿勢で臨むのであれば、そういう姿勢がはっきり見えるような形で、南西諸島への軍事強化もやめていただきたいと思います。
 時間の範囲内であと一問伺いますが、引き続き日米ガイドラインとの関係です。
 政府はこれまで、日米間の役割について、米軍が矛の役割を果たし、自衛隊は盾の役割を果たすと述べてきました。
 一九九七年に改定されたガイドラインでは、武力攻撃事態における航空侵攻や周辺海域の防衛、弾道ミサイル攻撃について、それぞれ、米軍による打撃力の使用に言及しておりました。
 ところが、二〇一五年のガイドラインでは、米軍による打撃力の使用に言及しているのは、一か所だけ、領域横断作戦のところで触れるだけになっています。個々の作戦での言及はなくなっております。しかも、打撃力の使用を伴う作戦を実施することができるとなっており、必ず使用するわけではなく、使用を考慮するだけになっています。なぜこういう書きぶりに変わっているんですか。

○増田政府参考人 お答え申し上げます。
 一九九七年の日米ガイドラインから、二〇一五年のガイドラインを新しくつくるに当たりまして、その間の二十年近くの防衛政策の進展、日米協力の進展を反映させまして、かなり充実した内容になって、大部なものになってまいりました。
 御指摘の打撃力の件につきましては、米軍が打撃力を使用する作戦を実施する場合、様々な領域において様々な様相を取ることがあり得る、そのために、二〇一五年に策定した日米ガイドラインにおきましては、ほかの様々な活動、例えばISR活動や宇宙・サイバー空間における脅威への対処などを陸海空といった個別の作戦様相の一つ一つにおいて記述するのではないということと同様に、米軍による打撃力の使用についても、個別に記述するのではなくて、領域横断的な作戦の項にまとめて記述することとしたものでございます。

○赤嶺委員 紙が来ましたので、質問を終わります。

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