日本共産党の赤嶺政賢議員は3日の衆院沖縄北方特別委員会で、沖縄の「子どもの貧困」について質問し、若年出産に伴う保護シェルターや放課後児童クラブの重要な役割を指摘し、国による支援の拡充を求めました。
赤嶺氏は、沖縄戦で孤児が街にあふれ、戦後は27年に及ぶ米軍の統治のもと、日本国憲法が適用されずに社会福祉施策が後回しにされてきたと指摘。「こうした歴史的背景が社会福祉施策の立ち遅れとなり、今日の子どもの貧困につながっているとの認識はあるか」とただしました。西銘恒三郎沖縄北方担当相は「さまざまな要因がある中で、一概に申し上げることは難しい」と答弁。赤嶺氏は、本土では1947年の児童福祉法制定以降整備が進んできた母子寮について、沖縄の整備は復帰後だったことを指摘すると西銘担当相は「大きな要因の一つに入っているだろうと思う」と認めました。
赤嶺氏は、沖縄の若年妊娠率は全国平均の2倍で、一人親家庭の貧困率は58・9%に上る中、シングルマザーを保護するシェルターは民間団体が運営しているとして、民間団体への助成制度の創設を訴えました。西銘担当相は「現場を見ることも含めて対応したい」と答えました。
また赤嶺氏は、沖縄県の放課後児童クラブは9割が民設民営で、高い利用料が保護者の大きな負担となっていると指摘。西銘担当相は「沖縄県の月額利用料平均は9239円で全国平均より比較的高いと認識している。負担軽減に努める」と述べました。(しんぶん赤旗 2022年3月6日)
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議事録
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
今日は、西銘大臣を中心に、そして外務大臣にも一問用意しておりますが、どうぞよろしくお願いをいたします。
今年は、沖縄が本土に復帰してから五十年になります。半世紀がたとうとする今なお広大な米軍基地が存在し、沖縄の政治、経済、社会に大きな影響を与えています。
大臣は、一日の本委員会の所信表明で、子供の貧困を解決すべき課題の一つとして取り上げられました。
まず、大臣の基本的な認識を伺いますが、沖縄戦では県民の四人に一人と言われる多くの命が失われ、親を失い孤児となった子供たち、行き場を失った子供たちが町にあふれました。その光景は西銘大臣も覚えていらっしゃるだろうと思います。その後、二十七年に及ぶ米軍の統治下に置かれ、沖縄には日本国憲法や憲法の理念に基づく法律が適用されませんでした。また、仕事もままならない状況で、当時の琉球政府の税収も伸びず、社会福祉施策は後回しにされてきた経過があります。
こうした背景が復帰後の社会福祉施策の立ち遅れとなり、今日の子供の貧困につながっていると思いますが、大臣は、この問題の背景、どのように認識しておられますか。
○西銘国務大臣 赤嶺委員も、私も昭和二十九年の生まれ、先輩が二十二年のお生まれで、戦後の一九五〇年代、六〇年代の生活は肌身で感じていることと思います。
確かに、復帰の前は社会福祉の面で、児童福祉など、子供の保育所を見ておりますと、認可外の保育所と認可の保育所で預かっている子供の数がおおよそ三万人ぐらいで同数であったり、子供一人当たりに対する税金額を見ると、認可外の親からは、同じ子供で将来は税金も負担していくのになぜそういう、認可外と認可の現状に対する不満等も聞いている者の一人でございます。
沖縄において子供の貧困の実態が全国と比較して深刻な状況にある背景としては、やはり一人当たりの県民所得が低いこと、あるいは母子家庭の出現率が高いことに加えて、個々の家庭の状況など、様々な要因があるものと考えております。一概に申し上げることは難しいかと思っております。
いずれにしましても、内閣府としましては、この沖縄の子供の貧困の連鎖を断つため、県や市町村等とも連携しながら、沖縄独自の追加支援として、子供の貧困対策支援員の配置や子供の居場所の設置等の支援等を行いながら、私も首里の方の子供の居場所の現場を見させていただきましたが、沖縄子供の貧困緊急対策事業を行ってきたところであり、今後も支援の継続及び充実に努めてまいりたいと考えております。
○赤嶺委員 私は、沖縄県民の所得の低さや母子世帯が多いことなどの、その歴史的な背景の認識を聞いたんですが、そこは西銘大臣触れられずに、様々あるというおっしゃり方をしておりました。
やはり、そういう今の、今日の沖縄が置かれている歴史的背景というものをきちんと認識しないで、様々なことがあるだろうという程度の認識では、沖縄の問題に本格的に力を込めて取り組むことはできないと思います。誰が考えた答弁か分かりませんけれども、様々あるんじゃないですよ。
大臣、身にしみて分かるんじゃないですか。沖縄の背負ってきた沖縄戦や戦後の歴史、そういうものが今日の貧困につながっている、この認識はお持ちでしょう。
○西銘国務大臣 様々な要因がある中で、赤嶺委員御指摘の終戦後の、一九四五年に、戦後、終わって、四〇年代の後半から、私は五四年の生まれですけれども、その思いは肌身で感じております。それもベースとしてあるであろうということは理解をしております。
様々な要因がある中で、内閣府としましては、全力で子供の貧困対策に取り組んでいかなければならないと考えております。
○赤嶺委員 あくまでも、何か、様々な要因という言葉にとらわれていますけれども、西銘大臣が体験してきたその歴史的体験が、沖縄の貧困の大本の要因であります。様々な要因の一つではありません。
復帰に当たって、当時の琉球政府が県民の要求をまとめた、復帰措置に関する建議書、屋良建議書には、県民福祉の向上についての記述があります。社会福祉施設の絶対数は著しく不足しており、その整備は緊急かつ重要であるため、これまでの空白を早急に埋めるよう特段の配慮を要請するとして、財政上の措置を要求しています。
本土では、一九四七年に児童福祉法が制定をされ、児童福祉施設の建設が全国に広がりました。さらに、一九四九年には、衆議院の本会議で、「授産所、母子寮及び保育所を増設すること」という文言が盛り込まれた国会決議が可決され、一九四七年に二百十二か所だった母子寮、母子生活支援施設は、一九五五年代には六百五十か所となりました。その当時、沖縄は国政参加の権利を持ちませんでした。一方で、沖縄県において母子生活支援施設ができ上がったのは、復帰後の、一九七二年の後です。
こうした歴史的背景、これが今の子供の貧困につながっている、そういうことは西銘大臣も同意できると思いますが、いかがですか。
○西銘国務大臣 正確なデータは持ち合わせておりませんけれども、県議の頃から、国会になって政治活動する中で、保育園について、認可園と認可外の保育園、私自身の子供たちも認可外に預けたことがありますが、沖縄振興調査会、政府に入る前に党の調査会で認可外の保育園等を視察してみますと、確かに、狭い場所に多くの子供たちを預かっている認可外の施設を見ると、復帰前の、終戦直後からの影響もあって認可外ができていってというような事例を見ておりますと、全てその原因にあるかどうかは別にしまして、大きな要因の中の一つにも入ってくるであろうというぐらいの認識は、戦後生まれてきた者としては、私自身も持っているものであります。
それにしましても、内閣府としましては、認可外の認可化への移行を含めて、子供の貧困の対策についてはしっかり取り組んでいかなければいけないということを強く認識をしております。
○赤嶺委員 同じ地域社会を背景に歩んできた者同士であります。私の意見は決して西銘大臣の認識と大きく違うことを言っているんじゃない、そういうことを申し上げておきたいと思います。
今も出ておりましたが、沖縄県の若年妊娠率は全国平均の二倍であり、また、母子世帯なども、子供がいる大人が一人の世帯、一人親世帯の貧困率は五八・九%です。こうした背景もあって、昨年沖縄県で、民間団体による、若年出産や居場所のないシングルマザーを保護するシェルターが開設をされております。
こうした施設を開設したお一人、山内優子さんという方がいらっしゃいます。ちょうど十年前の沖振法の審議のときに沖縄から参考人として当委員会に来ていただいた方でありますが、その方も、施設開所の動機について、過去に出会った若年出産の女性の周りには、出産への不安を親身になって寄り添ってくれる人がいなかった、未婚や若年で子供を産む女性のための施設が欲しいとつくづく思ってきた、このようにおっしゃっておりました。また、琉球大学の上間陽子教授、最近いろいろな出版で、本屋の店員の賞もいただいている方ですが、上間教授なども若年出産のためのシェルターの開設をされました。
こうした民間団体の運営は寄附が中心なんですね。企業からの寄附だとか、本当に、お金を集めるために必死になっている。二十四時間体制で母子を支援しているわけです。
政府は、こうした県民の受皿、命の受皿になっている民間団体への助成制度、これをつくるべきだと思いますが、内閣府が特にそういうところに力を入れるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○西銘国務大臣 かつて県知事の秘書をしている頃、あるいは県議会で活動している頃から、今、赤嶺委員御指摘の山内優子さん、児童相談所等々、児童福祉に関するお話をしていたことを思い出しながら、お話を聞いておりました。
若年妊産婦に対する支援につきましては、沖縄子供の貧困緊急対策事業において、若年妊産婦の居場所の設置などを通じ取り組んでおり、これによるニーズの掘り起こしなどを契機として、沖縄県において取組が広がっていることはすばらしいことであると認識をしております。
今年度から新たに開所した若年出産のシェルターとしては、赤嶺委員御指摘の「おにわ」のほかにも「まりやハウス 風のいえ」もあると認識をしております。寄附金を募って、あるいはクラウドファンディング等々で運営している話等を聞いておりますが、内閣府の担当者が琉大の上間教授と意見交換を行ったり、昨年の十月には、「まりやハウス 風のいえ」を訪問して視察をし、運営者と意見交換等を行っているということを聞いております。
これらの運営者の御希望としましては、二年ほど運営実績をつくってから、母子生活支援施設として運営補助をもらうことを希望しているとお聞きしております。
引き続き、これらの運営者の方々と意見交換をしながら、沖縄県と連携して、必要な支援等をしっかり考えてまいりたいと思っております。
○赤嶺委員 二年後というのは、今支援している企業の支援があと二年間という意味でしょうけれども。
このシェルターの問題というのは、沖縄の子供の貧困問題の本当に中核的な、核心的な課題であります。もっと本腰を入れて、西銘大臣の時代にやはりシェルターも充実をしていったということが言われるようになれば、かつて西銘大臣のお父さんの下で働いていた山内優子さんも大変喜ばれるだろうと思いますから、ここは是非決意して頑張っていただきたい。
シェルターにも力を入れると一言おっしゃってください。
○西銘国務大臣 担当者が現場を視察したという報告を受けておりますが、まだ私自身が現場を見ておりませんので、現場を見ることも含めて、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。
○赤嶺委員 現場を見にいらっしゃるときは、政府から来たぞという雰囲気を出さないで、山内さんや上間教授の御苦労に敬意を表して、そして見ていただきたいと思いますよね。
著書もたくさんあります。この著書は、本当に、涙ながらに、沖縄の少女たちが置かれている現状について、県民の心を揺さぶっていますので、是非、御苦労をかけました、政府ができることは何かありませんでしょうかと御用聞きの態度で行くべきだと委員会で指摘されたという姿勢で臨んでいただきたいと思います。
現場には行かれるということですよね。(西銘国務大臣「行きたいと思っております」と呼ぶ)答弁で言ってくれますか。
○西銘国務大臣 赤嶺委員のお話を聞くと、公務で行くよりも政務で一人で行けという方に聞こえますが、いずれにしましても、やはり現場を見るというのは基本だと思っておりますので、しっかり対応していきたいと思っております。
○赤嶺委員 私が申し上げたいのは、政務でなくても公務でなくても、難しいことは言いませんよ、ちゃんとシェルターに対する政府の姿勢が伝わるように、そういう立場で臨んでいただきたいと思います。
子供の貧困対策事業というのにもう一つ大事なのが、私は、放課後児童クラブだと、沖縄では思っております。
実は、内閣府の居場所づくりの支援員、これは私の家族も、教職を退職して仲間を集めていろいろ協力してやっている事業ですが、やはり放課後児童クラブの充実は必要だということを強く言われます。
沖縄県における放課後児童クラブは、民設民営が約九割です。全国は二割以下で、大きな差があります。民設民営の場合、家賃、つまり賃借料がかかるため、公設が多い他県と比べて利用料が高くなっている。保護者の大きな負担となっています。
今、沖縄県は公的施設を活用した児童クラブの整備を進めていますが、こうした沖縄県の取組と連携して支援を拡充していくべきだと思いますが、この点、いかがですか。
○西銘国務大臣 沖縄県の放課後児童クラブにおける平均月額の利用料につきましては、沖縄県の調査によりますと、令和二年度において九千二百三十九円となっております。
一方で、厚生労働省の令和三年の調査によりますと、全国の放課後児童クラブにおける平均月額利用料につきましては、四千円以上六千円未満が全体の二七・四%と一番多く、次に六千円以上八千円未満が全体の二一・二%となっております。沖縄県の平均月額利用料を超える一万円以上については、全体の一四・九%となっております。
これらを踏まえますと、沖縄県の放課後児童クラブにおける平均月額利用料につきましては、比較的高いものと認識をしております。
沖縄県では、低所得世帯の児童を対象にした放課後児童クラブの利用料軽減に取り組む市町村への補助事業を実施をしております。
引き続き、沖縄県と連携をしながら、放課後児童クラブを利用する際の負担軽減に努めてまいりたいと考えております。
○赤嶺委員 沖縄県もいろいろ苦労しながら保育料の低減に取り組んでいるわけです。だから、協力しながらというのは非常に大きなポイントになると思います。
厚労省が新しい事業を始めているわけですが、二〇一五年度以降に新設された放課後児童クラブについては賃借料の補助を行っています。これは、沖縄も本土も同様の制度です。ただ、二〇一四年度以前からある既存の放課後児童クラブについては対象外になっているんですね、厚労省の制度として。
沖縄の事情を考慮した場合に、二〇一四年度以前からある既存の放課後児童クラブについても賃借料の補助ができるように、新たな仕組み、これを政府内でも是非検討していただきたいのですが、内閣府が新設するのか、厚労省の制度の中でその仕組みを入れていくのか。この点も、西銘大臣も事情、現場、県議の時代は無認可保育所の問題、確かに大きな問題でした。今、放課後児童クラブ、これも、やはり保育料が高いと、放課後の一人親家庭、留守家庭の子供たちの支援というのがどうしても中途半端になってしまいます。
その二〇一四年以前に父母が力を合わせてつくった学童クラブの家賃にも家賃補助が出るような制度と仕組み、西銘大臣、是非考えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○阿部委員長 お時間ですので簡略にお願いいたします。
○西銘国務大臣 関係省庁とも連携しながら、しっかり相談してまいりたいと思います。
○赤嶺委員 時間ですという注意を受けました。
外務大臣、大変申し訳ありません。また来週も、何か外務大臣が要求ベースで出席なさるという具合に伺っていますので、そのときのお楽しみに取っておきたいと思います。
ありがとうございました。