国会質問

質問日:2022年 3月 3日  第208国会  憲法審査会

オンライン出席「可能」報告議決 「越権」と共産党反対 衆院憲法審

 

 衆院憲法審査会は3日、国会の本会議へのオンライン出席をめぐる総括的な討議を行い、「憲法56条1項の『出席』の概念について」の報告を衆院議長に提出することを賛成多数で議決しました。日本共産党は反対しました。赤嶺政賢議員は「憲法の個々の条文の解釈を多数で確定させるなどというきわめて乱暴なやり方は断じて認められない」とし、「憲法審査会があたかも憲法条文の解釈権を持つかのようにふるまうのは越権行為だ」と厳しく批判しました。

 

 

 憲法56条1項は本会議について「総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない」としています。報告は同条について、「緊急事態が発生した場合」等に「例外的に『オンラインによる出席』も含まれると解釈することができる」というのが「意見の大勢」だとしています。

 赤嶺氏は報告について、「参考人の意見を一切無視したものだ」と批判。参考人の高橋和之・東大名誉教授は「56条1項は憲法上の明確なルールであり、権力の乱用を防止するための規定だ」として、オンライン出席は認められないと明確に主張し、只野雅人・一橋大教授も「慎重な検討が必要だ」と繰り返し指摘したと述べ、「両参考人が提起した問題に向き合おうとしないばかりか、憲法解釈上の疑義が提起されている問題について、『意見の大勢』だと結論づけようとしており、絶対に認められない」と強調しました。

 自民党の新藤義孝議員は、報告をまとめたことについて「議論はこれで終了したのではない」として、「緊急事態条項を憲法に整備しておくことについて、包括的に議論することは喫緊の課題だ」と発言。日本維新の会の三木圭恵議員は「緊急事態条項を議論し、不測の事態に備えることは有用だ」などと述べました。

 赤嶺氏は「『緊急事態』を口実に、権力を縛る憲法の規定を緩め、立憲主義を踏みにじることは許されない」と批判しました。(しんぶん赤旗 2022年3月4日)

 

質問の映像へのリンク

オンライン出席「可能」報告は「越権行為」(衆院憲法審)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 私たちは、現下のコロナ対策と絡めて国会の本会議へのオンライン出席について議論することは憲法審査会の問題ではないと指摘をしてきました。ましてや、憲法審査会で憲法五十六条一項の解釈を多数で確定させるなどということは断じてやるべきではなく、反対であります。
 議論のやり方も問題です。前回、参考人としてお二人の憲法学者に出席いただき、この問題を考える上でとても大切な意見を伺いました。両参考人の意見を無視することは許されません。
 参考人の意見陳述ではっきりしたのは、五十六条一項は、国会という権力を統制し、その濫用を防ぐための極めて重要な規定だということです。
 高橋参考人は、この規定について、憲法上の明確なルールであると同時に、少数者を保護し、権力の濫用を防止するために憲法に定めたものであり、厳格に解釈、適用することが要求されると述べられました。また、議院の自律権は権力分立との関係で構成されたものであり、憲法条文の解釈権を与えているものではないと指摘されています。
 只野参考人は、オンライン出席を認めた際の公開の原則や議決権の一身専属性の確保などの課題を挙げ、憲法解釈上の疑義を残す形で行うのは好ましくないとして、慎重に検討するよう繰り返し指摘されました。
 お二人の参考人が強調されたのは、憲法の例外を認めることによる権力濫用の危険性です。
 高橋参考人は、権力行使の要件を緩めれば、それに比例して濫用の危険も増大するというのが常識だとして、権力行使の便宜のために統制を外そうというのは、憲法の精神、趣旨に反すると厳しく批判されました。
 また、高橋参考人は、コロナ禍や東日本大震災でも国会が定足数を満たせない状況にはなっておらず、立法事実がないと述べ、極端な事例を出して法律や憲法の改正を行うと、かえって危険の方が大きくなると強調されました。
 只野参考人も、一旦例外を認めると、それが際限なく広がっていくのではないかという問題がある、濫用の可能性は否定できないと述べられておりました。だからこそ、慎重な検討が必要だと強調されたのだと思います。
 これらはいずれも大変重要な指摘であり、真摯に受け止めるべき問題です。しかし、今日の審査会では、参考人の意見陳述などなかったかのように、例外的にいわゆるオンラインによる出席も含まれると解釈することができるのが意見の大勢だという、結論だけが先行した報告が示されています。
 一体、前回の参考人を呼んでの議論は何だったのか。余りにも参考人の意見をないがしろにするものであり、どこが丁寧な議論なのでしょうか。憲法の専門家である参考人の意見を無視し、憲法解釈上の重大な疑義を残したまま、意見の大勢だとして結論ありきの報告をまとめたとして、それは何の意味も持たないのだと言わざるを得ません。
 国会議員として恥ずべきものであると指摘し、発言を終わります。

○赤嶺委員 報告案について反対の討論を行います。
 憲法審査会において、憲法の個々の条文の解釈を多数で確定させるなどという極めて乱暴なやり方は、断じて認められません。しかも、多数により結論づけた報告を衆院議長に提出し、憲法審査会があたかも憲法条文の解釈権を持つかのように振る舞うことは越権行為であり、これも断じて認められません。
 内容も重大です。報告案は、憲法五十六条一項について、例外的にいわゆるオンラインによる出席も含まれると解釈することができるというのが意見の大勢だと一方的に述べていますが、これは先週の参考人の意見を一切無視したものです。
 高橋参考人は、五十六条一項は憲法上の明確なルールであり、権力の濫用を防止するための規定であるとして、オンラインでの出席は認められないと明確に主張いたしました。只野参考人も、議員が物理的に議場に現存していることが原則だとして、慎重な検討が必要だと繰り返し指摘しました。
 今日の議論は、両参考人が提起した問題に向き合おうとしないばかりか、憲法解釈上の疑義が提起されている問題について、意見の大勢だと結論づけようとしており、絶対に認められません。
 今、緊急事態をあげつらって改憲に結びつけようという議論がされておりますが、高橋参考人は、極端な事例を出せば出すほど、誰か一人に権限を全面的に集中するしかない、かえって危険の方が大きくなると指摘し、緊急事態を理由にした改憲をいさめました。この指摘を真摯に受け止めるべきです。
 緊急事態を口実に、権力を縛る憲法の規定を緩め、立憲主義を踏みにじることは許されないと指摘し、討論を終わります。

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