衆院委・赤嶺氏 機能阻害めぐり
日本共産党の赤嶺政賢議員は28日の衆院内閣委員会で、「土地利用規制法案」による中止勧告・命令の対象となる「機能阻害行為」は航空法など既存の法律で対応できることを示し、まともな根拠もなしに同法案を提出した政府の姿勢を厳しく批判しました。
赤嶺氏は、政府が「機能阻害行為」に挙げる飛行場施設の運用の妨げとなるような構造物の設置については、すでに航空法49条2項で空港周辺で高さ制限を超える物件の除去を求めることができると指摘。国土交通省の鶴田浩久航空ネットワーク部長は、最近3年間の除去件数について「2018年に樹木を751本、19年に44本、20年に144本除去した」と答弁。防衛省の川島貴樹総括審議官も「樹木を伐採した事例はある」と答弁しました。
赤嶺氏は「現行法で規制され除去もされてきており、新しい法律は必要ない。それでも必要というなら具体的な根拠を示すべきだ」と追及。木村聡内閣審議官は「安全保障上の脆弱(ぜいじゃく)性を自ら明らかにし、類似行為を誘発しかねない」と述べ、答弁を避けました。
赤嶺議員は「新たな刑罰規定を設けるのに既存の法律との関係もまともに検討していない。しかも、共謀罪法と同様、おそれの段階で刑罰を可能にするものだ」と批判し、「こんな法案を通したら、国会の見識が問われることになる」と強調しました。(しんぶん赤旗 2021年5月29日)
土地利用規制法案 採決強行
塩川氏反対討論 「住民を監視・処罰対象」
衆院内閣委
自民、公明両党は28日の衆院内閣委員会で、全国の基地周辺や国境離島などの住民を監視する土地利用規制法案の採決を強行し、維新、国民民主両党を含む各党の賛成多数で可決しました。日本共産党は違憲立法だとして反対し、立憲民主党は質疑の継続を求め、採決することに反対しました。
法案は、自衛隊・米軍基地、原発などの周囲約1キロや国境離島を「注視区域」に指定し、「機能阻害行為」には中止を勧告・命令します。特に重要な基地周辺などは「特別注視区域」に指定し、土地売買に事前届け出を義務づけ、応じなければ刑事罰が科せられます。
日本共産党の塩川鉄也議員は反対討論で、「基地被害に日常的に苦しめられている住民、特に米軍占領下の土地強奪で基地周辺での生活を余儀なくされた沖縄県民を、監視と処罰の対象にするのは断じて容認できない」と厳しく批判しました。
その上で、法案の核心部分を政府に白紙委任していることを批判し、思想・信条の自由を侵す危険は重大だと指摘。政府が法案の根拠に挙げる、北海道千歳市と長崎県対馬市の自衛隊基地周辺での外国資本による土地購入や自治体からの意見書提出についても、意見書は16件にとどまり、両市は含まれていないことが明らかになったと強調しました。
さらに、政府が土地・建物の取引価格の下落を招く可能性を認めたことに言及。「(法案の規制とは)全く無縁の国民が経済的不利益を被ることは認められない」と強調しました。
政府・与党は、6月1日の衆院本会議で可決、4日の参院審議入りを狙っています。通常国会の会期が残りわずかとなる中、法案への懸念の声が急速に広がっており、会期末(16日)まで緊迫した情勢が続きます。
廃案へ徹底的にたたかう
土地利用規制法案 田村政策委員長が表明
日本共産党の田村智子政策委員長は28日、国会内で記者会見し、同日の衆院内閣委員会で強行採決された土地利用規制法案について問われて、「憲法にかかわる重大な法案を出してきたことが異常だ。廃案にすべき法案として徹底的にたたかっていく」と表明しました。
田村氏は、法案の必要性について政府は外国資本による基地周辺の土地購入などの報道をあげてきたが、「政府は、それらの事実を確認したかを問われれば、『つかんでいない』と言う。自治体からも次々と意見書が上がっていると言うが、名前が挙がった自治体からは意見書が上がっていないこともわかった」と指摘しました。
その上で、「何のために、自衛隊施設や米軍基地の周辺1キロの住民を監視対象とし、土地取引について事前の届け出を求めるのか。不動産価格にも影響する。財産権に影響を与え、プライバシー権の侵害にもなる。違憲立法としかいえないような法律をなぜ提案してきたのか、その説明さえまともにできない」と厳しく批判しました。
質問の映像へのリンク
議事録
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
先ほどから質問を聞いていますと、野党議員の質問の一問ごとに闇が深まっていくというか、訳が分からなくなっていく、阿部議員はやぶの中と言っておりましたが、手探りでも実態がつかめないような法案を今日採決するということは本当にとんでもないことだということを、もし採決するのであれば、強く抗議を申し上げ、直ちにやめるように要求しておきたいと思います。
委員長、いかがですか。
○木原委員長 まずは質疑をお続けください。
そして、採決については理事会にて協議をしてございますので、質疑をお続けください。どうぞ。
○赤嶺委員 冒頭の防衛省の答弁をちょっと確認したいんですが、区域を指定したら官報で公示をするわけですよね。しかし、さっきの防衛省の答弁だと、今は安全保障の懸念があるのでということで明らかにできないというのは、これはおかしいんじゃないですか。どんなふうに官報で公示するんですか。
○川嶋政府参考人 お答え申し上げます。
先ほども御答弁申し上げましたとおり、防衛省としての対応ということで申し上げますと、特に守りたいと防衛省が考えております施設につきまして、一覧性を持って公表することについては懸念があると申し上げたところであります。
他方で、やがて御指摘のように公表されることになるわけでございますけれども、それに当たりましては、区域指定を行うに当たりましては、周囲からの機能阻害行為を防止し得るだけではなくて、一覧性のある公表にならないよう配慮するなど、適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。
○赤嶺委員 区域の指定は、この間も私質問をしたように、地権者の権利の侵害にもなります。防衛省の都合だけで区域の指定については曖昧にしたやり方で公示をするというのは、これは法律ですか、こんなの法律と言いませんよ。いかがですか。
○木村政府参考人 お答え申し上げます。
防衛関係施設を含めました重要施設の周辺、そして国境離島等における対象区域の指定につきましては、基本方針に照らしまして各区域を評価させていただく。その上で、新設いたします審議会の御意見を伺った上で政府として適切に判断するという、そういった法律にのっとった手続に従って指定作業を進めさせていただくということでございます。
以上でございます。
○赤嶺委員 皆さんの言う法律にのっとった手続というのは、法案審議のときに一切何も明らかにしない、いわば質疑の中身を議員には、国会には一切説明しないで強行して、あとは政府の都合によっていろいろな公示をしていくというやり方は、とても許されないと思います。それだけでも極めて欠陥のある法案だと思います。
機能阻害行為と、それから、現行法との関係について質問をいたします。
政府は、機能阻害行為の事例として、重要施設の機能に支障を来す構造物の設置を挙げております。具体的には、飛行場の運用の妨げとなるような構造物の設置を念頭に置いている、このように聞いておりますけれども、そういうことでよろしいですか。
○木村政府参考人 お答え申し上げます。
私どもの法案の中で、利用規制の対象となります重要施設の機能を阻害する行為として想定しておりますものにつきましては、そうした施設の機能に支障を来す構造物、構築物の設置についてもそれを想定しているところでございます。
以上でございます。
○赤嶺委員 飛行場周辺の構造物の設置については、既に航空法で規制をされております。航空法の四十九条二項は、空港周辺で高さ制限を超える物件を設置した所有者に物件の除去を求めることができる、こう明記をしております。
国土交通省と防衛省に、それぞれ、最近三年間の除去件数、これを明らかにしていただけますか。
○鶴田政府参考人 お答え申し上げます。
過去三年間の国土交通省が管理する空港の周辺におきます実績でございますが、平成三十年に……
○木原委員長 大きな声で御答弁お願いいたします。
○鶴田政府参考人 平成三十年に樹木などが七百五十一件、平成三十一年、令和元年に樹木などが四十四件、令和二年に樹木など百四十四件除去されてございます。
○川嶋政府参考人 お答え申し上げます。
防衛省におきまして、過去三年間に自衛隊の飛行場周辺の高さ制限を超える建物を除去した実績はございません。
なお、自衛隊の飛行場周辺の樹木が成長し、航空機の離着陸に支障を来す場合に伐採した事例はございます。
○赤嶺委員 大臣に伺いますけれども、高さ制限を超える構造物の設置については、既に航空法で規制され、現に除去もされてきています。なぜ現行法では駄目なんですか。大臣。
○木村政府参考人 お答え申し上げます。
私ども、利用規制で、勧告、命令の対象とさせていただきますものは、現行法では規制の対象とならない事案でございます。こういったものを対象に勧告、命令の仕組みを設けさせていただいているということでございます。
以上でございます。
○赤嶺委員 現行法の規制で機能障害になるような余地は残されていないんですよ。現行法で規制されない分野をこの法律で規制をすると言いますけれども、既に現行法で高さを超えるものがあれば除去もされてきているわけです。新しい法律など必要ないですよ。
それでも必要だと言うなら、さっき、現行法でできないところが対象になると言いましたが、具体的な根拠、現行法で取り締まることができないような、そういう具体的な根拠、そして事実、これを示していただけますか。
○木村政府参考人 お答え申し上げます。
過去にございました機能阻害行為ということで、現行法では対象にできないものの有無についてでございますが、その点につきましては、法案で想定しております機能阻害行為が実際に過去にあったのかということでございますけれども、その有無も含め、いつ、どこで、どのような態様で行われたかをお示しすることは、安全保障上の脆弱性を自ら明らかにし、類似行為を誘発しかねないことから、お答えは差し控えさせていただきたいということでございます。
○小此木国務大臣 その上で、例えば、この前も答弁いたしたんですが、電波法において、電波妨害行為を行うような無線局を総務大臣の免許を受けずに開設した場合には、無線局の不法開設として電波法違反になり得ますが、この無線局の設置の準備行為は同法違反とはなりません。
この点、例えば、不法無線局の開設の準備行為を行っている場合で、電波法違反の状態に至らなくても、その者が防衛関係施設に対する電波妨害行為を行う明らかなおそれがあると認められれば、本法案に基づく勧告、命令の対象とすることができると考えております。
○赤嶺委員 今、私、航空法について聞いているんです。航空法について、高さ制限で足らざるところがあって、国土交通省は法の改正等を検討していますか。いかがですか。
○鶴田政府参考人 お答え申し上げます。
現在、航空法の運用におきまして、足らざるところにつきましては承知してございません。
○赤嶺委員 どんなに想像をたくましくしても、安全保障という考え方からしても、空港の高さ制限というのは現行法で十二分に規制されているわけですよ。
さっき空港の話、自衛隊の航空基地の話を聞いたら、大臣、電波法とおっしゃいましたけれども、航空法では現在の規定で十分じゃないですか。大臣、そこを答えてください。
○木村政府参考人 お答え申し上げます。
法案で想定をしております機能阻害行為が過去にあったのかというお尋ねかと存じますけれども、その有無も含めまして、いつ、どこで、どのような態様で行われたかをお示しすることは、安全保障上の脆弱性を自ら明らかにし、類似行為を誘発しかねないということから、答弁は差し控えさせていただきたい、こういうことでございます。
○赤嶺委員 同じ答弁を繰り返していますけれども、私の質問は、過去にあったかというのは、皆さんに聞いたんじゃなくて、防衛省や国土交通省に聞いたんですよ。過去、そういう空港周辺の構造物は、高さ制限にひっかかるものはみんな除去しているわけですよ。それは今後もそうですよ。今後もそうですが、それで足らざるところがあって、なお強化する方向、国土交通省あるかと聞いたら、ないと言う。だのに、皆さん、足らざるところがあると言う。
あるんですか。あるんだったら、具体的に根拠、事実を言ってくださいよ。大臣。
○木村政府参考人 足らざるところがあるような過去の事例があったのかということにつきましては、重ねての答弁になりますけれども、安全保障上の脆弱性を自ら明らかにし、類似行為を誘発しかねないということで、答弁は差し控えさせていただきたい、御理解を賜りたいと存じます。
以上でございます。
○赤嶺委員 全く陳腐な答弁です。
過去、そういうことがあったかどうかを明らかにすることは、安全保障上の脆弱性を示すものになると。だって、防衛省、過去、全部やってきたと言っているじゃないですか、高さ制限の構造物。全部やってきているのに、あなた方が何で作り話を作るんですか。本当に虚言ですよ、これ。
既に同様の行為を規制する法律があるにもかかわらず、それとの関係もまともに検討しないまま法案を提出するなどあり得ないことであります。低潮線の形質変更についても、既に低潮線保全法で規制をされております。電波妨害も、施設への侵入行為も、全て現行法で規定をされております。
新たな刑事罰規定を設けるのに、既存の法律の活用をしないままこういうものを強行するのは絶対に許されない。既存の法律との関係も検討されていない。大変いいかげんなやり方は許されるはずがないと思います。
しかも、共謀罪と同様に、刑法の基本的な考え方とは違う……
○木原委員長 赤嶺君に申し上げます。
申合せの時間が来ておりますので、お取りまとめください。
○赤嶺委員 はい。終わりますので。
おそれのある段階での処罰を可能にするものであります。
こんな法案を通したら国会の見識そのものが問われることになるということを強調して、質問を終わります。