国会質問

質問日:2021年 5月 26日  第204国会  内閣委員会

住民監視の土地利用規制法案 売買不利益 国は補償せず

赤嶺議員が批判

 日本共産党の赤嶺政賢議員は26日の衆院内閣委員会で、政府が、基地周辺や国境離島などの住民を監視する土地利用規制法案によって、不動産売却価格の下落などの不利益をもたらす可能性があると認めながら、補償はしないとしていることを批判し、「善良な市民が不利益を被るのは許されない」と強調しました。

 法案は、司令部機能などを有する基地周辺を「特別注視区域」に指定し、一定規模以上の土地・建物の売買に氏名、住所、利用目的などの事前届け出を義務付けます。届け出義務があることは宅建業法の「重要事項説明」の対象として、契約前に説明を義務付けるとしています。

 赤嶺氏は、区域内の物件が敬遠される可能性があると指摘。天河宏文内閣官房土地調査検討室次長は「取引や地価に影響を及ぼす可能性は小さい」としつつ、「個別のケースに応じないと分からない」と、不利益を及ぼす可能性を認めました。

 赤嶺氏は、売り主の売却の機会が奪われた場合に「誰が責任をとるのか」と迫りました。

 天河次長は「政府として補償する予定はない」と答弁。赤嶺氏は、「売り主が不利益を被る可能性があるのに、政府は損失補償をしない。善良な市民が基地近くに土地や建物を持っているだけで不利益を被るのは許されない」と批判しました。

 赤嶺氏は、宅建士が届け出義務に関する重要事項説明を怠った場合どうなるのかと質問。天河次長は、宅建業法に基づく業務停止命令などの行政処分となり、これに反して業務を継続した場合、懲役2年以下または罰金300万円の刑事罰の対象になると述べました。また、事前届け出の義務がない「注視区域」についても「重要事項説明」の対象とするかを政府内で検討していることを明らかにしました。(しんぶん赤旗 2021年5月27日)

 

 

監視対象区域を例示

防衛省・横田・宮古島など

 政府は26日の衆院内閣委員会理事会に、土地利用規制法案に基づく区域指定の候補リストを提出しました。

 それによれば、自衛隊基地の周囲おおむね1キロ圏内の住民などを監視対象にする「注視区域」として4類型を示し、陸自習志野駐屯地(千葉県船橋市)などを例示。また、一定規模の土地の所有権移転にあたって事前届け出を義務付ける「特別注視区域」として4類型を示し、防衛省本省がある市ケ谷庁舎(東京都新宿区)、在日米軍司令部が置かれる横田基地(同福生市など5市1町)や、ミサイル基地化が進む宮古島駐屯地(沖縄県宮古島市)などを例示しました。

 「生活関連施設」として政令で定めることを検討している類型として、(1)原子力関係施設(2)自衛隊が共用する空港―をあげています。「現時点において」これ以外は予定していないとしていますが、政府は将来的に対象が拡大する可能性を認めています。

 「原子力関係施設」について、政府は26日の衆院内閣委で、(1)原発(2)核燃料サイクル施設(青森県六ケ所村)―をあげました。

 

 

政府提出資料「注視・特別注視区域の候補」

 

基地被害 苦難の声無視

土地法案めぐり赤嶺氏告発 徹底審議を

 日本共産党の赤嶺政賢議員は26日の衆院内閣委員会で、基地周辺や国境離島の住民らを監視する「土地利用規制法案」をめぐり、米軍基地から日常的に被害を受けている周辺住民の声を聞かないまま議論を進めるのはおかしいとして、参考人質疑など徹底審議を求めました。

 赤嶺氏は、法案について、米軍機の事故や日米合意に反する深夜早朝の飛行、環境汚染など日常的に基地に苦しめられている住民を政府による監視の対象とするものだと指摘。沖縄の住民が米軍占領下で一方的に土地を奪われ、基地周辺に住むほかなかった歴史的経緯にふれたうえで、法案提出にあたり政府が設置した有識者会議に基地の歴史や実情を知る専門家が入っていなかったとし、「基地被害を全く念頭においていないのか」と追及しました。

 中尾睦内閣官房土地調査検討室長は、有識者会議で基地被害に関する議論がなかったと認めました。

 赤嶺氏は、「沖縄をはじめ基地で苦しむ自治体や住民の声をまともに聞かずに法案を提出した」と批判。法案は「基地からの被害者が加害者として監視される性格を持つ」と強調し、「声を切り捨てたまま、こういう法律をつくることは許されない」と追及しました。

 また赤嶺氏は、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設に抗議する県民の座り込みについて、政府が「機能阻害行為」の対象となりうるとの見解を示していることを批判。「選挙や県民投票で何度も示した民意を無視してきた政府の民主主義・地方自治否定の姿勢に頬かむりして、住民側を弾圧の対象にするなど本末転倒だ。断じて認められない」と強調しました。

質問の映像へのリンク

売買不利益 国は補償せず(衆院内閣委)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 今日は、民間の経済活動に与える影響について質問をいたします。
 特別注視区域では、一定規模以上の土地等の売買に、氏名や住所、面積、利用目的などの事前の届出が義務づけられています。
 まず確認ですが、この届出は、土地だけでなく、建物も対象で、そして売主と買主の双方に義務づけられるという理解でよろしいでしょうか。

○小此木国務大臣 御指摘のとおりです。
 特別注視区域における事前届出は、特別注視区域内にある土地建物のうちで、政令で定める面積以上のものについて売買等を行う場合に、譲渡し人と譲受人の双方に対し事前届出を義務づけるものでございます。

○赤嶺委員 前回の質疑の中で、買主は宅建業法に基づく重要事項説明として事前届出義務がある旨の説明を受けることになるという答弁がありました。売主への説明はどうなるんですか。

○天河政府参考人 お答えいたします。
 特別注視区域における事前届出につきましては、区域内の土地所有者等に制度の内容を十分に理解いただくことが重要であると考えております。
 このため、地方公共団体、不動産業関連団体等を通じまして、制度の趣旨、求められる対応等の周知徹底を図るとともに、内閣府の担当部局に相談窓口を設置いたしまして、制度の円滑な運用に支障が生ずることがないよう取り組んでまいりたい、このように考えております。
 以上でございます。

○赤嶺委員 売主には周知を図っていくような御説明でありましたが、これは、周知漏れとか、きちんとした説明が行われる保証がないということになると、自分の土地建物が制度の対象であることを知らずに、宅建士からも明確な説明がないまま、気づけば届出義務違反を犯していたというケースが出てくる、そういう懸念はありませんか。

○天河政府参考人 そういうことがないようにしっかり周知徹底に努めていきたい、いろいろな手段を使いまして周知徹底に努めていきたいというふうに考えております。
 以上でございます。(発言する者あり)

○赤嶺委員 かみ合っていないというより、答弁になっていないです。そういうことがあるんじゃないかという懸念がないかと言ったら、そういうことがないようにと言って。
 もし宅建士が重要事項説明を怠ったとき、これはどうなるんですか。

○天河政府参考人 御指摘は、宅建士に何か罰則がかかるか、そういう御趣旨でございますでしょうか。
 特別注視区域につきましては、事前届出の義務を課すことから、重要事項説明の対象とすることを想定をしております。
 重要事項説明の対象とした場合、売買契約が成立するまでの間に説明することが必要になりますが、宅地建物取引士が説明を怠った場合には、宅地建物取引士及び宅地建物取引業者は、宅地建物取引業法に基づく指導、助言、勧告のほか、指示、業務停止命令等の行政処分の対象となり、業務停止命令に違反して業務を営んだ場合には、宅地建物取引業者は罰則の対象となることもございます。
 以上でございます。

○赤嶺委員 そうなりますと、宅建業者は個々の取引について政府から説明を求められることもありますか。取引の記録を残しておくことは求められるんですか。

○天河政府参考人 お答えいたします。
 本法に関しまして、宅地建物取引業者に説明を求めることは想定をしておりません。
 なお、宅地建物取引業者は、宅地建物取引業法第四十九条におきまして、事務所ごとに、取り扱った取引に関する事項、これは取引年月日でありますとか所在地でありますとか面積等でございますが、こうした事項を記載した帳簿を備え、これを、各事業年度終了後、原則として五年間保存する義務が課せられているところでございます。
 以上でございます。

○赤嶺委員 今度は注視区域の場合ですが、その場合は、重要事項説明の対象になりますか。

○天河政府参考人 お答えいたします。
 宅地建物取引業法におきましては、宅地建物取引業者に対しまして、契約締結の判断に大きな影響を与える重要事項につきまして、売買契約の成立までの間に買主に説明することを義務づけております。
 特別注視区域につきましては、区域内の土地等の買主等に対しまして事前届出義務を課すことから、重要事項説明の対象とすることを想定しております。
 一方、注視区域につきましては、買主等に対しまして義務を課すものではありませんけれども、重要施設の施設機能等を阻害する行為の用に供すると認められるとき等には、内閣総理大臣による報告徴収、勧告、命令の対象となります。
 このため、今後の詳細な制度設計の中で、国土交通省におきまして、業界団体等と連携しながら、買主等の契約締結の判断に及ぼす影響等につきまして慎重に見極めた上で、重要事項の説明の対象とすべきか、今検討中であるというふうに聞いております。

○赤嶺委員 今の答弁は、重要事項の説明の対象にすることも検討しているということですか。

○天河政府参考人 今後検討するということでございます。まだ決めていないということでございます。

○赤嶺委員 特別注視区域はもちろん、注視区域についても、不動産の取引については、特別重要事項、ここは基地のそばだよ、それを覚悟の上で買いなさいよという買主への負担、売主も負担、宅建士もまたそれに伴ういろいろな負担が伴うと思うんです。
 さっき、善人ならば何か調べられても大丈夫じゃないかと。だけれども、こんな悔しいことないですよ。基地のそばに住んでいて、何で調べられるんですか。何で調べられるかと言ったら、あんた何かよくないことをやっているんじゃないかと疑われる。こんな風潮ができ上がるのが非常に悔しい、基地のそばに住んでいる人間としては。
 政府による個人情報の取扱いについて懸念を持っておられる方もたくさんいらっしゃいます。今回のような制度に違和感を持たれる方もいらっしゃいます。そうした方々が、購入後に政府による個人情報の収集や現況調査の対象とされ、報告徴収や場合によっては勧告、命令まであることを知り、なぜそういうことを事前に説明してくれなかったのかと宅建士が責任を問われることはない、こういうことが言い切れるんでしょうかね。この地域での土地取引についていろいろなトラブルが起こると思いますが、宅建士が責任を問われるということがないかどうか、いかがですか。

○天河政府参考人 お答えいたします。
 重要事項説明の義務を果たさなかった場合は、先ほど申し上げましたように、指導、助言、勧告のほか、指示、業務停止命令等の行政処分の対象になる、場合によっては宅地建物取引業者は罰則の対象になるということはございます。
 以上でございます。

○赤嶺委員 基地の周辺に住んでいる善良な住民が土地の取引をやろうとする場合にはそういう問題になってくる。仲介に立つ宅建士も同じでありますが。
 ちょっと具体的に聞きますが、例えば同じような物件が二つあって、一方は区域の中、もう一方は区域の外という場合に、区域の中にある物件が敬遠されるということはないのでしょうか。ないとは言い切れないと思いますが、いかがですか。

○天河政府参考人 済みません、お答えになるかどうか分かりませんが、その区域の内外で差が出るかということだと思いますけれども、それはやはり個別具体のケースに応じて見ないと何とも言えないということだと思っております。
 以上でございます。

○赤嶺委員 個別具体的なケースにぶつからないと分からないんじゃなくて、こういう場合にはやはりいろいろな障害が生まれてくる。
 絶対にないんですか。だって、新たな条件を加えているわけでしょう。やはり、買主にも売主にも影響が出てくる。場合によっては地価に与える影響も出てくるんじゃないですか。

○天河政府参考人 お答えいたします。
 本法案に基づきます報告徴収あるいは事前届出等の措置につきましては、不動産の通常の使用収益あるいは処分を制約する可能性は低い。したがって、不動産取引、地価に影響を及ぼす可能性は小さいのではないかと考えております。
 以上でございます。(発言する者あり)

○赤嶺委員 そうそう、大きい声で。委員長、お願いしますね。
 私、影響が出てくるんじゃないかと言ったら、影響は小さいと言いました。あるということじゃないですか、影響は。そういうような状況であります。
 そうすると、買手に敬遠された場合に、売主は売却の機会を奪われることになりますが、その売主が被った不利益について、これは誰が責任を取りますか。

○天河政府参考人 宅地建物取引業者等が取るということはないと考えます。

○赤嶺委員 これは政府の制度によって出てくる結果じゃないですか。宅建士が責任を取ることはあり得ないですよ。
 政府はどうなんですか。

○天河政府参考人 お答えいたします。
 注視区域、特別注視区域の指定、及びこれらに伴う措置につきましては、法の目的を実現するための必要最小限度のものと考えておりまして、政府として補償するという予定はございません。
 以上でございます。

○赤嶺委員 政府として補償もしない。結局は、売主が不利益を被る可能性があるのに損失の補償はしない、そのことだけは非常にはっきりしているわけですね。
 機能阻害行為とは全く無縁な人たちですよ。善良な市民がただ基地のそばに土地を持っている、建物を持っているというところで、土地取引、建物の売買にこんな不利益を被る、こういうことは許されないと思いますよ。本当にこの点でも重大問題だ。
 次に、基地周辺住民との関係について伺います。
 今回の法案は、日常的に基地に苦しめられている住民を政府による監視の対象として、土地建物の利用を規制するものであります。住民からすれば、米軍機の事故や基地からの環境汚染を調査もできない、日米合意に反する深夜早朝の飛行も野放しにされたまま。こうした理不尽な現状を放置しながら、住民の側を調査の対象にするというのは一体どういうことなんだと。
 この間の内閣委員会で、多分あれは辺野古の話だと思いますが、弁当殻が基地に飛んでいくという話が出ておりましたが、地元からは、早速、弁当殻が基地に飛んでいくことはないと。大体、弁当は持参ですから。問題は、基地の中から流れ出てくる有害物質だ、PFOSだ、そこを心配しろ、議論が逆立ちしている、そういう新聞投書もありましたけれども。
 しかも、沖縄の住民は、米軍占領下で一方的に土地を奪われ、基地周辺に住むほかなかった歴史的な経緯があります。
 今回の法案提出に当たって政府が設置した有識者会議で、こうした基地をめぐる歴史や被害の実情を知る専門家は入っていません。基地周辺住民に関わる問題であるにもかかわらず、有識者を選定する際に、なぜ基地問題の専門家を入れなかったんですか。

○小此木国務大臣 昨年開催した有識者会議ですが、骨太方針二〇二〇に示された安全保障等の観点からの土地利用、管理等の在り方について検討を深め、政府の政策対応の方向性について提言をいただくために開催したものであります。
 そのような有識者会議の趣旨を踏まえ、有識者には、国際関係者、行政学、民法、土地制度といった分野の専門家の方々に御参加いただいたところであります。

○赤嶺委員 ですから、基地のそばに住んでいて、基地の被害を実感していることをよく知っている、そういう人が有識者会議に入っていないということは、基地から受ける被害を全く念頭に置いていない、視野に置いていないということに、そういう批判を受けると思うんですが、大臣、いかがですか。
○小此木国務大臣 沖縄には、戦後七十五年以上経た今もなお、大きな基地負担を負っていただいているという現状については重々認識しておりますし、有識者の方々もそのとおりだと存じます。
 政府としては、引き続き沖縄の基地負担軽減に全力を尽くしているということに変わりはございません。
○赤嶺委員 有識者の人たちもそのことはよく知っているとおっしゃっていたんですが、有識者会議の中でそういう議論もあったんですか。

○中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 先般も御質問いただき、お答えいたしたと思いますが、明確なそういった切り口からの議論はなかったところでございます。

○赤嶺委員 何でそういう切り口というか、基地からの被害を受けている人たちが、何で我々が監視されなければいけないのかと。被害者が加害者から監視されているような気持ちだ、そういうことについて何で議論しなかったんですか。大臣。

○小此木国務大臣 本法に基づく調査や規制措置は、我が国の安全保障と自由な経済活動の両立を図るべく、取得規制といった私権制限の程度が大きい措置は導入しておりません。
 そのため、通常の国民生活や経済活動を妨げることはないものと考えております。

○赤嶺委員 今、何について答弁されたか、私、よく聞き取れなかったんですが。
 私が聞いているのは、とにかく基地からの被害を受けている人たちは、基地機能の阻害の加害者の対象になる前に基地からの被害者だ、そういう被害者が現に存在するのに、そのことについて有識者会議で、法案を準備する過程で議論しなかったのはなぜですかと聞いているんですよ。

○中尾政府参考人 お答えいたします。
 先ほど大臣から御答弁申し上げましたとおり、本法案の制度設計に先立って有識者会議において、自由な経済活動と安全保障の確保の両立を図る観点から、私権制限を必要最小限にするという観点からの制度設計を行ったという趣旨を大臣から御説明したところでございます。
 それから、従前来、繰り返し御答弁申し上げておりますけれども、御指摘の反対運動で想定される、例えば単に外部から防衛関係施設を見ている場合や平穏に集会等を行っている場合などについては、いずれも施設機能を阻害するものではないと考えられることから、本法案に基づく措置の対象とならないことが明らかであり、これらを除外するため、明らかでないということも繰り返し御説明させているところでございます。

○赤嶺委員 かみ合いませんけれども。今の法律には、基地からの被害者が加害者として監視される、そういう性格を持った法律になっている。基地周辺自治体や住民の声を聞いていないということですが、要するに、沖縄を始め基地で苦しむ自治体や住民の声をまともに聞かずに法案を提出したということであります。
 今、普天間基地周辺の住民は第三次爆音訴訟の提訴に向けた準備を進めています。五月二十二日に採択した定期総会の決議案では、この法案について、市民監視と権利制限を日常化させる人権侵害法である、基地や原発等によって日常的に被害を受ける住民の取組を分断、弾圧するもので、私たちは知らないうちにその監視対象とされる。非常に強い懸念と怒りの声を上げています。
 私は、法案の内容からすれば、沖縄で地方公聴会をやるべきだと思います。大臣、ちゃんと沖縄県民の声も聞くべきですよ、あれだけ基地が集中している地域の声を。最低でも、参考人の質疑はこの委員会でやるべきだ。
 こういう基地に苦しめられている県民の声を切り捨てて、安全保障のためだと言って監視の対象にする。安全保障というのは、国民の支持が、何よりも基地周辺の住民が、基地からの加害に対して反対の感情を増していく、こんなことで安全保障なんて存立できませんよ。
 よく、沖縄の保守の政治家の方が言います。そういう被害を放置しておけば安保体制にひび割れが起こるということを、これは沖縄の保守の人が言っているんですよ、保守の政治家が。大臣も何度も、そういう沖縄の政治家とのおつき合いもありますから、聞いたことがあると思いますけれども、やはり沖縄の声を切り捨てたままこういう法案を作ることは許されないということを申し上げておきたいと思います。
 次に、機能阻害行為について伺います。
 前回の質疑で、注視区域内において、重要施設への機材等の搬入や搬出を阻止する行為を恒常的に行っている場合には勧告、命令を行うことがあり得るとの見解を示しておられました。しかし、法案第九条は、あくまで利用者に対して勧告、命令を出す仕組みです。利用者というのは一体どういう人たちのことですか。

○中尾政府参考人 お答えいたします。
 御質問は、法案第四条第二項第四号に規定する利用者の内容についての御質問かと存じます。
 これにつきましては、土地等の所有者、及び、その土地等について賃借権、地上権といった土地等の利用、管理等を行うための権原を有し、その権原に基づき土地等の利用又は収益を行う者を指すものでございます。

○赤嶺委員 そうしますと、キャンプ・シュワブゲート前では、政府による新基地建設の強行に抗議して座込みが続けられています。しかし、抗議している人たちは、ゲート前に土地を持っている人たちではありません。所有権や賃借権も持っておりません。そういう人々がなぜ勧告、命令の適用対象になるんですか。利用者が対象なんですから、そもそも勧告、命令の対象にはならないんじゃないですか。

○中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 利用者の意味につきましては、先ほどお答えしたとおりでございます。
 御指摘のような、例えば道路などのような自らが所有も賃借もしていない土地において座込みを行っているような場合には、それらの方々は土地等の利用者には当たらないことから、そもそも勧告、命令の対象とはならないものでございます。

○赤嶺委員 もっと詰めたいところなんですが。
 ただ、さっき、道交法違反だとかなんとか、いろいろな声が聞こえましたけれども、この問題の根本は、沖縄県民が選挙や県民投票で何度も民意を示しているのに、それを無視してきた政府の民主主義、地方自治否定の姿勢にこそあります。だから、やむにやまれずゲート前で抗議の座込みを続けているわけです。(発言する者あり)

○木原委員長 御静粛にお願いいたします。

○赤嶺委員 こうした政府の姿勢の問題には頬かむりして、住民の側を弾圧の対象にするということは、本末転倒であり、断じて認められません。
 調査の内容について伺います。
 大臣は、十一日の本会議で、思想、信条等に係る情報を収集することは考えていないと答弁をいたしました。しかし、機能阻害行為やその明らかなおそれがあるかどうかを、氏名や住所、国籍などの公簿情報や利用者からの報告徴収だけで判断できるとは思えません。
 政府が安全保障上問題のある土地利用かどうかを判断するためには、例えば、その人が外国政府と何か関係を持っていることはないのか、職歴や海外渡航歴、交友関係に怪しいところはないのか、基地や原発などに対してどういう考え方を持っているか、こういうことは当然調べるということになるんじゃないですか。

○小此木国務大臣 本法案に基づく調査では、不動産登記簿等の公簿の収集による氏名、住所、国籍など、土地等の利用者の把握、現地・現況調査や報告徴収を通じた土地等の利用実態の把握、特別注視区域における事前届出制度を通じた土地等の買手の利用目的の把握などを行うこととしています。
 また、防衛関係施設等の重要施設を所管する関係省庁や当該施設を管理する事業者等から機能阻害行為の兆候等に係る情報提供を受けることも想定しております。
 このように、多様な方法を通じて具体的な土地等の利用実態の把握を徹底し、適時適切に必要な利用規制を発動することによって、機能阻害行為を防止するための実効性の確保に努めていきます。

○赤嶺委員 提供や報告を求める情報は土地利用に関するものに限定だということを繰り返しておりますけれども、その土地利用が安全保障上問題かどうかを判断するには、その人の考え方や行動を調べないと分からないと思いますよ。公簿情報だけでどうやってそれを判断できるんですか。

○小此木国務大臣 その公簿を使って調査をするということでございます。

○赤嶺委員 それだけでは、皆さんの法案の目的で言う安全保障上の問題、基地機能を阻害するということは、やはり、法案ができ上がってそれが実行されていくと、またどんどんどんどんつけ加えられていって、結局は、思想、信条、そういうところまで調べられていく大変危険な方向を持った法案だということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

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