日本共産党の赤嶺政賢議員は18日の衆院安全保障委員会で、米軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)や普天間基地(同宜野湾市)周辺の河川や湧水で、高濃度の有機フッ素化合物(PFOS、PFOA等)が検出されている問題を取り上げ、沖縄県が求める基地内への立ち入り調査の実現を政府に求めました。
沖縄県はPFOS検出の事実を公表した16年1月以降、汚染源を特定するための基地内への立ち入り調査を求めてきましたが、今も実現していません。
赤嶺氏は、米国防次官補代理(環境問題担当)が米議会に提出した報告書(18年3月)をもとに、米国防総省が国内外の3266カ所の米軍基地のうち2542カ所で汚染状況のサンプル調査を実施していることを指摘。「米軍自身が包括的な調査を行いながら、沖縄県の立ち入り調査を認めないのは不合理だ」と追及しました。
河野太郎外相は「実際的になし得る施策を実施していく」と述べるにとどまりました。
赤嶺氏は、地元紙の報道で嘉手納基地でも調査を行っていたことが明らかになっているとして、「調査結果は共有されていないのか」と質問しました。河野氏は「共有されている」と答弁しましたが、結果の提出については外務省の鈴木量博北米局長が「米側との合意が必要」と否定的な姿勢を示しました。(しんぶん赤旗 2019年6月20日付)
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議事録
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
米軍嘉手納基地や普天間基地周辺の河川や湧き水で高濃度の有機弗素化合物、PFOSやPFOAが検出されている問題について質問をいたします。
沖縄県の玉城知事は、今月十二日に上京し、この問題で政府に要請を行いました。これまで政府が行ってこなかったPFOSやPFOAの基準値の設定を求めたのに対し、厚生労働省は、今後目標値の設定に向けた検討を進め、来年四月ごろまでに方向性を出す考えを明らかにいたしました。
米国ではこれまで、環境保護庁、EPAが、人が一生涯摂取しても健康に悪影響を及ぼさない生涯健康勧告値を一リットル当たり二百ナノグラムと定めていましたが、二〇一六年五月には七十ナノグラムへと改めました。ことし二月には包括的な行動計画を公表し、年内に飲用水の基準値を提案する方針を明らかにしています。また、保健福祉省や州レベルでは更に厳しい値を定める動きも起こっています。
今後、厚生労働省に設置されている検討会で議論が行われることになると思いますが、こうした国際的な動向も踏まえ、科学的な知見に基づいて、実際にその飲用水を口にする県民が納得できる目標値を定めていただく必要があります。
厚生労働省としては、最近の国際的な動向や知見をどのように認識し、また、目標値の設定に向けてどのように取り組む方針ですか。
〔委員長退席、山本(と)委員長代理着席〕
○宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘のありました有機弗素化合物のPFOS、PFOAにつきましては、我が国の水道の水質基準におきましては、平成二十一年に、必要な情報、知見の収集に努める要検討項目として、水道水における検出状況や最新の科学的知見等の情報収集に努めているところでございますが、毒性評価が定まらないこと等から、目標値は設定しておりません。
一方、米国においては、御指摘ありましたが、飲用水に関して、二〇一六年に、生涯健康勧告値として、PFOS、PFOA合計で七十ナノグラム・パー・リットルに強化したこと、また、本年二月に、PFOS、PFOA等に対する今後の行動を記載した包括的全国PFAS行動計画を公表したことなどの動きがあることは認識しております。
厚生労働省といたしましては、引き続き、御指摘のありました米国の動きも踏まえた最新の科学的知見を収集しつつ、専門家等の意見を伺いながら、目標値の設定について検討を進めてまいります。
○赤嶺委員 既に世界に立ちおくれている状況でありますが、厚労省の検討会のホームページを見せていただきました。過去の議事録が全文で公開されておりました。今回のPFOSをめぐる議論も同様に全文が公開されるということで、これはよろしいですか。
○宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。
基本的には議事録等については公開していくという考え方でございますので、今後につきましても、特に支障がないということであれば、公開していくことになるというふうになります。
○赤嶺委員 では、全文公開するわけですね。
○宮嵜政府参考人 議事録として公開させていただきます。
○赤嶺委員 防衛省もぜひそれを見習っていただきたいと思います。質問ではありません。防衛省は全然全文公開しないものですからね。
今の厚労省の答弁については、今後の議論を注視していきます。また機会があれば質問させていただきます。
それで、環境省はどうされるかということです。
これまでに、環境リスクに関する知見の集積を進める要調査項目に指定してきましたが、これを見直す考えはあるんですか。具体的な指針値を定めて、一段階上の要監視項目に指定することはあり得るのでしょうか。
○城内副大臣 赤嶺政賢委員にお答えいたします。
まず、有機弗素化合物、PFOS等につきましては、基準等を設定する際に基本となる耐容一日摂取量、すなわち、人が継続的に摂取した際の健康影響を生じない限度量、これがWHO等の国際機関においていまだに確定していないため、要調査項目に位置づけており、情報、知見の収集を鋭意行っているところでございます。
環境省といたしましては、沖縄県民の皆様の思いをしっかり受けとめ、また、沖縄県民の皆様の心と体の健康にも寄り添ってまいる所存でございます。
いずれにしましても、厚労省の水道水に係る目標値の検討状況を踏まえつつ、必要な対応についてしっかりと対応してまいりたいと考えております。
○赤嶺委員 見直す考えはあるということですね。
○城内副大臣 お答えいたします。
今お答えしたとおり、環境基準項目、その下に要監視項目、要調査項目とございますけれども、いずれにしましても、繰り返しになりますけれども、WHO等の国際機関においていまだ先ほど申しました耐容一日摂取量について確定しておりませんので、現時点では要調査項目として位置づけながら、情報、知見の収集を鋭意行いつつ、その後についてはまた検討していきたいというふうに考えております。
○赤嶺委員 私、この問題、三年前に取り上げて、そのときと全く答弁のスタンスが変わりませんが、ぜひ、厚労省も含めて、今の知見の集積で世界の流れにおくれることがないようにしていただきたいと思います。
防衛省は、四月二十五日に今年度の民生安定助成事業の実施計画を公表いたしました。そこで、沖縄県が行う北谷浄水場の活性炭設備の改良工事に助成を行うことを明らかにいたしました。
事業全体の内容と工期、事業費と補助率、今年度の具体的な計画を明らかにしていただけますか。
○中村政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘の北谷浄水場でございますが、沖縄県が管理をしております。昨年五月に沖縄県から、防衛省の補助事業による整備の要望が行われておりまして、委員御指摘のとおり、今年度から補助金を交付することとしております。
事業内容といたしましては、水中の有機物ですとかにおいなどを活性炭を用いて取り除くための施設の設備を改良するというものでございます。沖縄県が計画をしております工期は、令和元年度から令和五年度になっております。全体事業費は約十三億円を見込んでおります。当該事業に関します防衛省の補助率は三分の二でございまして、今年度は設備改良に関します設計を計画しているところでございます。
沖縄県において、PFOSなどに関し懸念が生じていることは承知をしているところでございます。本件事業は、申し上げたとおり、沖縄県からの要望に基づき実施するものであり、米軍とPFOS等の因果関係は現時点では確認はされていないものの、基地周辺住民への安心、安全な飲料水の供給に寄与するものと考えているところでございます。
〔山本(と)委員長代理退席、委員長着席〕
○赤嶺委員 沖縄県は、県が実施するPFOS等の対策費用を過去の負担分を含めて補償することを求めていますが、この点についてはどのように対応されるんですか。
○中村政府参考人 お答え申し上げます。
沖縄県からは、先ほど申し上げました北谷浄水場におきます粒状活性炭の取りかえなど、過去に県が実施をしましたPFOSなどの対策に要した費用の補償ですとか、今後県が実施をしますPFOS対策に関します費用の負担について要請を受けているところでございます。
防衛省といたしましては、沖縄県の要望に対し、いかなる対応が可能か検討してまいりましたが、米軍とPFOSなどの因果関係が確認をされておらず、日本国内でのPFOSなどを規制する基準がない中で、補償を行うべき状況にあるという結論には至っておりません。
引き続き、沖縄県が実施をするPFOSなどの対策費用の負担も含めまして、沖縄県及び関係省庁と協議しながら検討してまいりたいと考えているところでございます。
○赤嶺委員 今の問題はさんざんこれまで議論してきているわけですが、今回の補助事業で、米軍基地由来の水質汚染に県の予算で対応しなければならないという理不尽な現状が若干緩和されることにはなりますが、米軍が基地への立入りに応じない、そして汚染源の特定に至っていない、肝心の米軍は何の責任も問われないスキームになっているわけです。
外務大臣に伺いますが、沖縄県は三年以上にわたり、基地への立入りとサンプリング採取を求めてきましたが、いまだに実現していません。なぜ実現していないんですか。
○河野国務大臣 沖縄県の調査で、嘉手納基地あるいは普天間飛行場の周辺の河川などからPFOS、PFOAが検出されたということは承知をしております。しかし、この有機弗素化合物、PFOS、PFOAにつきましては、WHOなどの国際機関において、人が継続的に摂取した際の健康影響が生じない限度量が確定していないことなどから、引き続き、リスクに関する知見の集積が必要な物質であると承知をしております。
この件については、平成二十九年度に沖縄防衛局が、米側と調整の上、嘉手納飛行場への立入調査を行っているところでございます。沖縄県民の皆様がPFOSなどの検出に対し不安を抱いておられることは重く受けとめており、皆様の不安を払拭できるよう、沖縄県、米側及び関係省庁と連携し、実際的になし得る施策について、引き続きしっかりと実施してまいりたいと思います。
○赤嶺委員 そうすると、今、アメリカと日本側ではこの問題について議論は行っていない、沖縄県の基地の立入調査要求は宙に浮いたままだ、そういうことですか。
○河野国務大臣 沖縄県が要請している立入調査については、アメリカ側に要請を伝達している、防衛省からアメリカに対し要請を伝達していると承知をしております。
○赤嶺委員 伝達して、今どうなっているんですかね。
○中村政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど外務大臣から御答弁ありましたとおり、沖縄県の要望に関しましては、防衛省沖縄防衛局から直ちに米側の方に伝達をしているところでございます。その後も累次の機会に、立入りが実現するよう働きかけは継続をしているところでございます。
○赤嶺委員 具体的にどこまで話は進んでいるんですか。
○中村政府参考人 お答え申し上げます。
繰り返しになりますが、累次の機会に働きかけを行っているところでございますが、先ほど外務大臣から御答弁がありましたとおりの理由により、立入り自体は実現をしていないというところでございます。
○赤嶺委員 伝達というのは、もう交渉じゃないですよね。県民の命がかかっている飲み水について、PFOSやPFOAが見つかり、やっているのに、累次にわたって伝達した。こんなんじゃ実現しないですよ、絶対に。もうアメリカということになったら物も言えないのかというような感じがいたします。
そのアメリカで、昨年九月二十六日付で、米政府監査院、GAOが、PFOSに関する米国防総省の取組について報告書をまとめています。
それによると、米軍自身が国内と海外の米軍基地の包括的な調査を行ってきていることがわかります。EPAが生涯健康勧告値を七十ナノグラムに強化したのを受けて、陸海空海兵隊全てで、過去にPFOSやPFOAの流出があったか、あるいはその疑いのある場所を特定し、施設・区域外に居住する住民を含めた人の健康への影響を明らかにすることや、飲用水にEPAの勧告値を超える汚染がないかどうかの調査を行っていることが明記されています。
米軍はこうした調査を行っているのではありませんか。
○鈴木(量)政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘の米会計検査院、いわゆるGAOの報告書が公表されていることは承知しておりますが、これは連邦議会の補助機関であるGAOの報告書でございまして、彼らによる独自の調査に基づくものでございます。したがって、米行政府の立場と同じではないというふうに承知しておることもあって、その内容の逐一について政府としてコメントすることは差し控えたいと思います。
○赤嶺委員 これを受けて昨年三月には、環境問題を担当する米国防次官補代理、これが調査結果を取りまとめ、議会に提出しています。そこには基地ごとの調査結果が一つ一つ列挙されています。アメリカの国内だけでなく、韓国やベルギーやディエゴガルシアなど、海外の米軍基地の調査結果も明記されております。
具体的には、二〇一七年八月三十一日時点で、米国と米国領、海外にある三千二百六十六カ所の基地のうち二千五百四十二カ所でサンプリング調査を行い、うち三十六カ所の飲用水でEPAの勧告値を上回る数値が検出されたとしています。
また、基地周辺の公共、民間の飲用水についても調査をしております。二千四百四十五カ所を調査し、五百六十四カ所で勧告値を上回ったとしています。
外務大臣、米軍自身は世界じゅうの基地で調査を行っているのに、沖縄県の立入調査は認めないというのは、これはおかしいと思いませんか。
○河野国務大臣 沖縄の県民の皆様がこのPFOS等の検出に対して不安を抱いておられることは重く受けとめており、皆様の不安を払拭できるよう、沖縄県、米側及び関係省庁と密接に連携し、実際になし得る施策については、引き続きしっかりと実施してまいりたいと思います。
○赤嶺委員 私が伺っているのは、米軍、国防総省は、海外の米軍基地も含めて、このPFOS、PFOAの調査をやっているのに、沖縄県が基地の中の調査をやりたいということについて、それがいつまでたっても認められないのはおかしいのではないですかということですが、いかがですか。
○河野国務大臣 繰り返しになりますが、沖縄県、米側及び関係省庁と連携し、なし得る施策については、引き続きしっかりと実施してまいりたいと思います。
○赤嶺委員 外務大臣のそういう態度では、なし得る施策も見つからないと思いますよ。
米軍は、実は嘉手納基地でも調査を行っていたことが、ことし一月十日の日付の地元紙の報道で明らかになっています。
情報公開請求で入手した米軍の内部文書に基づいて、二〇一四年から一七年にかけて、米軍が嘉手納基地内の十三カ所で調査を行っていた事実を明らかにしています。嘉手納警察署からフェンスを隔てて約百五十メートル、町役場から約二百メートルに位置するため池で九万pptが検出されていた、このようにしています。
こうした米軍による調査結果は、日本と、政府と共有されているんですか。
○河野国務大臣 されております。
○赤嶺委員 じゃ、その結果を、共有している中身を出していただけますか。
○鈴木(量)政府参考人 提供されている内容について公表するかどうかについては米側の了承をとる必要がございますので、今後、適切に対応、対処させていただければと思います。
○赤嶺委員 米側は、米軍は、みずからが調査した海外の米軍基地について、一覧表まで出して公開しているんですよ。沖縄だって海外でしょう、米軍にとってはね。しかも、それは、嘉手納基地を自分たちで調査していた、それを政府が共有している。そんなの、米軍が公表しているものだから、嘉手納基地も当然、日本政府は公表すべきじゃないですか。隠す必要がどこにありますか。
米軍が自分たちがやっているように、日本政府もやればいいじゃないですか。今まで隠していたんですか、この資料。いつ手に入れたんですか。いかがですか。
○鈴木(量)政府参考人 先ほど御指摘のございました環境安全担当の米国防次官補代理による議会報告でございますけれども、いろいろと先生御指摘のとおりの記述があることは承知しておりますけれども、この国外の調査結果についてでは、韓国、ベルギー等については掲載されておりますが、日本についての言及はないというふうに承知しております。
○赤嶺委員 ですから、嘉手納は、嘉手納基地を米軍自身が調査した、その結果は皆さんが共有していると言っている、それを出せと言っているんですよ。
○鈴木(量)政府参考人 お答え申し上げます。
繰り返しになって恐縮でございますけれども、公表するかどうかにつきましては米側との合意が必要でございますので、適宜対応、対処させていただければと思います。
○赤嶺委員 アメリカは、ベルギーや韓国やディエゴガルシアについては公表しているんですよ。何で沖縄だけ公表できない理由があるんですか。日本政府は隠すんですか。これはもう、米軍自身が調査の必要性を認め、海外を含めた包括的な調査を行いながら、沖縄県による立入調査を認めないというのは全く不合理であります。
一九七三年の環境協力に関する日米合同委員会合意は、米軍基地に起因する汚染が発生し、地域社会の福祉に影響を与えていると信じる合理的理由のある場合は、米軍に調査を申請することや、自治体による基地内の視察やサンプル入手を許可することができる、このように明記しています。
高濃度のPFOSが現に検出され、米軍自身も嘉手納基地で調査を行っている今回の事例が、合理的理由がある場合に該当するのは明らかであります。沖縄県による立入調査の実現を強く求めたいと思いますが、この合同委員会合意は、これがあるから基地の中に入れるということを、外務大臣、繰り返し答弁してきております。いかがですか。
○岸委員長 時間が経過しておりますので、簡潔にお願いします。
○河野国務大臣 沖縄県、米側、関係省庁と、実施できる施策についてはしかるべく実施してまいりたいと思います。
○赤嶺委員 全く前向きな態度が感じられない姿勢でありますが、県民にとっては命にかかわる飲用水の毒性の問題であります。その汚染源は米軍基地であります。
米軍基地の立入調査を強く認めるよう改めて求めて、質問を終わります。