国会質問

質問日:2018年 12月 3日  第197国会  沖縄北方特別委員会

自治体の基地調査実現を 赤嶺議員 地位協定の改定主張

 

 日本共産党の赤嶺政賢議員は3日の衆院沖縄北方特別委員会で、2016年に米軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)周辺の浄水場などから高濃度の有機フッ素化合物(PFOS)が検出された問題で、米側が県の立ち入り調査を拒んでいるとして、自治体が調査できるよう日米地位協定を抜本的に改定すべきだと主張しました。

 赤嶺氏は、県の調査で現在も高濃度のPFOSが検出されているとして「米軍は今もPFOSを使用しているのではないか」と指摘。防衛省の中村吉利地方協力局長は、基地内のPFOSを含む消火システムが「交換されたか(米側から)回答は得ていない」などと述べ、使用している可能性を否定しませんでした。赤嶺氏は、PFOSの使用が国内法で禁じられているとして「県民の命を預かっているのに米軍追従で無責任だ。今すぐ使用を禁止させるべきだ」と要求しました。

 赤嶺氏は、安倍政権が15年に日米地位協定を補足する形で署名した「環境補足協定」を地位協定締結以降初めての成果と強調しているが、「今回のような米軍による環境汚染が疑われる場合に、基地に立ち入って調査するためのものではなかったのか」と追及。河野太郎外相は、補足協定での立ち入り申請は「米側からの情報提供が端緒」と答弁。赤嶺氏は「全国知事会は自治体が必要なときに無条件で基地に入れるよう求めている。補足協定は全く役に立っていない」と批判しました。(しんぶん赤旗 2018年12月4日)

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自治体の基地調査実現を(衆院沖北特別委)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 先ほど、期せずして沖縄の農業の発展の問題が出ました。私は最初に、その農業にかかわって、台風二十四号、二十五号に伴う農産物の被害対策について伺いたいと思います。
 立て続けに沖縄を襲った二つの台風は、サトウキビ、野菜、花卉、タンカン、シークワーサーなどの果樹生産農家に大きな被害をもたらしました。
 私は、台風直後の農産物の被害を調査をするため、県内各地を回り、農家の声を聞いてまいりました。二十四号の直後に畑を回っていたら二十五号の台風が近づいてくるという、経験したことのない被害調査でありましたが、その中でも、例えば、沖縄の小菊の出荷というのは今日本一なんです。沖縄県内で小菊の生産沖縄一という糸満市、ここは本島の最南端に位置するわけですが、海岸沿いは菊畑が広がっております。
 菊は、お正月やお彼岸、ちょうど今ごろ出荷の時期を迎えてくるわけですが、そこに向けて出荷できるように、夜に電気をつけて花の咲く時期を調節しております。いわゆる電照菊であります。
 ところが、今度の台風では四日間停電があったために、その影響でつぼみが早期について市場に出荷できないため、根こそぎ引き抜かれている光景を目にいたしました。
 これらの被害から農家が一刻も早く立ち直れるよう、菊だけにとどまらず、野菜や果樹なども含めて、農産物被害への国の支援策、これは強く求めていきたいと思います。
 また、その農家の声を聞いていたら、停電のために国営地下ダムからファームタンクへの送水がストップし、スプリンクラーによる散水もできず、塩害被害が拡大した。停電時に地下ダムの機能が失われないように、発電機を設置してほしい。これは被害に対する支援というよりは、今後の農業基盤整備にもかかわっていくと思うんですが、そういう声もありました。
 台風時にも、あの糸満市の地下ダム、この利用が滞らないように万全の対策をとっていただきたいと思いますが、宮腰大臣、いかがですか。

○宮腰国務大臣 私も、大臣就任後、初めて沖縄を訪問させていただいたときに、沖縄県南部のサトウキビの被害状況とこの菊の被害状況を視察をしてまいりました。この時期にやられるとやばいというふうに思ってきたわけであります。
 今、農業用水が台風の影響でとまったというお話であります。農業用水の安定供給は、沖縄の特性を生かした収益性の高い農業を展開していく上で重要な役割を果たしていると認識しております。
 この沖縄本島南部地区の国営かんがい事業、実はこの竣工式に、私は当時、農水副大臣として出席をしてまいりました。これをもって沖縄県南部の農業用水の不足を解消して多様な農業が展開できるなというふうに、その竣工式に出て可能性を確認しておったところでありますが、今回、台風の影響で停電になって水の供給ができなかったということであります。
 この地下ダムの水を利用するために、ファームポンドをつくって、実は自然流下式でこの送水をいたしております。今回、揚水機場が停電をして、糸満市で菊に塩害が生じたということであります。台風による停電時におきましても塩害防止の農業用水を確保するためには、蓄電施設の設置のほかには、このファームポンドの運用改善、これが必要だ。
 具体的には、台風接近前にファームポンドに水を満タンにして揚げておく。停電のときであっても、そこから自然流下式で、ファームポンドにたまっている水は停電時でも全部使えるというような状況にしておくというのが一番大事ではないかなというふうに思っております。
 内閣府といたしましては、関係機関とも連携しつつ、農業者が安心できるようなファームポンドの運用改善、さらに、どうしても必要であれば蓄電施設の設置ということもあるわけですけれども、まずは、ファームポンドの運用改善、大きな台風が来る前にはファームポンドを満タンにしておくということで安心していただけるように努力をしていきたいというふうに思っております。

○赤嶺委員 宮腰大臣とはこれまでも、離島の振興や沖縄のサトウキビ、菊、いろいろ議論をしてまいりました。離島振興法は一緒に提案したこともありました。
 それで、今、ファームポンドを満タンにしておけば改善されるというお話を私も事前に伺ったものですから、地元の農家に聞いたら、いや、あれは夜中に満タンにしてあるよと言うんですよ。だが一日で使い終わったと言うんですよ。
 塩害は菊だけじゃなくて、御存じのようにサトウキビも、二十四号、二十五号が続いて来たものですから、サトウキビの倒れる向きも変わったりして大きな被害が出ておりますから、満タンにしておけばというのは、やはりもう一回現場の状況も調査していただいて、発電機が必要であれば発電機も設置する。
 これは、宮腰大臣の、そういう起工式にも参加されてあそこのダムの役割についてもよく御存じだと……(宮腰国務大臣「竣工式です」と呼ぶ)竣工式ですか、大変失礼しました。竣工式で地形もおわかりだと思いますので、ぜひその努力をなさっていただきたいと思います。調査もして実現していただきたいと思います。
 次に、沖縄の米軍基地にかかわる環境汚染問題について質問をいたします。
 沖縄県企業局は、二〇一六年一月、嘉手納基地周辺の北谷浄水場などから高濃度の残留性有機汚染物質PFOSが検出されたことを明らかにしました。企業局は、嘉手納基地内を流れる大工廻川から千三百二十ナノグラムの高濃度のPFOSが検出されたことから、発生源は嘉手納基地の可能性が高いとして、同基地内でのPFOSの使用を直ちに中止するよう強く要請をいたしました。しかし、企業局のその後の調査では、今でも水源から高濃度のPFOSが検出されています。
 きょうは資料を出しておりますが、資料をごらんになればおわかりだと思いますが、今年度の沖縄県の調査でも、大工廻川、嘉手納基地に流れている川です。そこは、最大八百四十一ナノグラムものPFOSあるいはPFOAが検出されています。
 米軍は嘉手納基地内で今でもPFOSを使用しているのではありませんか。

○中村政府参考人 お答えを申し上げます。
 御指摘いただきましたPFOSに関係しまして、平成二十八年七月、米側から提出された文書によりますと、嘉手納飛行場の消防車はPFOSを含む水成膜泡消火薬剤を使用していないこと、二点目といたしまして、PFOSを含む水成膜泡消火薬剤は試験目的や訓練目的でも使用されていないこと、他方で、三点目になりますが、PFOSを含む消火システムが稼働している施設が一つ残っているということなどの回答を得ているところでございます。
 この回答に鑑みますと、平成二十八年七月の時点におきましては、PFOSを含む消火システムが一つ稼働しているという状況ではなかったかと考えているところでございます。

○赤嶺委員 PFOSをまだ使っているというんですね。
 日本の国内では、化審法によってPFOSの使用は禁止をされています。日米の関係法令のうち、より厳しい基準を選択するのが、二〇〇〇年の、環境原則に関する共同発表での日米の合意だったはずであります。
 化審法の基準を踏まえて、基地内でのPFOSの使用を直ちに禁止させるべきではありませんか。

○中村政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど申し上げましたとおり、嘉手納飛行場におけるPFOSの使用状況につきましては、平成二十八年七月の米側回答によりますと、PFOSを含まない泡への交換がまだ済んでいない消火システムが稼働している施設が一つ残っているという情報がございます。
 この消火システムの取りかえ作業につきましては米側に問い合わせているところでございますが、現在のところ、取りかえ作業を完了したとの回答は得ていません。
 いずれにいたしましても、防衛省といたしましては、沖縄県民の方々がPFOS等の検出に対し不安を抱いておられることは重く受けとめているところでございます。
 沖縄県、米側、さらには関係機関等で密接に連携してまいりたいと考えております。

○赤嶺委員 二年前にも同じ答弁をして、米軍は今にもPFOSは使わなくなるようなことを言って、しかし、二年前と全く変わらない状態が今でもあるわけです。PFOSは、国内での使用禁止が、米軍基地の中ではいまだに使い続けている。これは県民の命と安全にかかわる問題であります。米軍は直ちに使用禁止するよう強く求めたいと思います。二年間同じような答弁を繰り返すことは許されません。
 米軍は、当時、沖縄防衛局への覚書で、嘉手納飛行場では水成膜泡消火薬剤といった製品については、業界の標準的な慣行に従って使用します、このように述べていますが、具体的な保管方法や処理方法については言及しておりません。
 私は二〇一六年四月十一日に提出した質問主意書で、業界的な慣行に従って使用しますという点について、米軍又は日本、国際約束のうち、いずれの基準に基づく慣行を指しているかを含めて、その意味、内容を明らかにするよう求めました。
 防衛省は、少なくとも二年前のことですから、この点は確認しておりますね。

○中村政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘の覚書につきましては、嘉手納飛行場周辺で検出をされましたPFOSに関する平成二十八年二月の米側回答文書のことであろうかと考えております。
 この米側の文書に記載をされております「水成膜泡消火薬剤といった製品については、業界の標準的な慣行に従って使用しています。」という文言につきまして、その意味するところを米側に照会をしているところでございますが、今日に至るまで直接的な回答は得られておりません。
 他方、先ほども申し上げましたところではございますが、平成二十八年七月、米側からは、嘉手納飛行場の消防車はPFOSを含む水成膜泡消火剤を使用していないこと、PFOSを含む水成膜泡消火薬剤は試験目的や訓練目的でも使用されていないこと、PFOSを含む消火システムが稼働している施設が一つ残っていることといったような回答は得ているところでございます。

○赤嶺委員 有害性が指摘され、日本の国内法令で使用が禁止されている。しかし、米軍基地内で使用しているかどうか、あるいは使用している、そういうことになっているにもかかわらず、その管理、保管状況もいまだにわからない。二年たっても返事が来ない。これは余りにも、県民の命を預かる水の問題という点からしても、米軍追従で、無責任だと言わなければなりません。
 沖縄県企業局は、PFOSの検出が明らかになった当初から、発生源の特定のための嘉手納基地内への立入りとサンプル調査を米軍と沖縄防衛局に要請をしています。しかし、企業局の立入調査はいまだに実現していません。なぜ三年もたつのに立入調査が実現しないんですか。

○中村政府参考人 お答え申し上げます。
 平成二十八年一月に沖縄県より、嘉手納飛行場周辺の河川等の水質調査で高濃度の有機弗素化合物であるPFOSが検出された旨発表されているところでございます。
 それ以降、沖縄県が米側に対しまして嘉手納飛行場における水質調査を要望してきているものの、いまだ実現をされていないと承知をしております。
 いずれにいたしましても、防衛省としましては、沖縄県民の皆様がPFOSなどの検出に対し不安を抱いておられることは重く受けとめております。
 沖縄県、米側及び関係機関と密接に連携してまいりたいと考えております。

○赤嶺委員 いまだに基地の中に入ってサンプル調査ができていない。
 外務大臣に伺いますが、結局、米軍が認めないわけですよ。基地内でのサンプル調査が行えなければ安全性が全く確認できないわけです。
 二〇一五年に締結された環境補足協定は、このような米軍基地による環境汚染が疑われる場合に、関係自治体が基地内に立ち入って調査できるようにするためのものではなかったんですか。

○河野国務大臣 政府としては、地元の方々の関心に応えられるよう、環境関連の日米合同委員会合意や補足協定を適切に運用していくことが重要だろうと考えております。
 環境に関連した立入調査につきましては、アメリカ側からの情報提供を端緒として立入り申請を行う環境補足協定に基づく手続に加えて、日本側としては、環境汚染を疑う場合に、アメリカ側に調査要請や立入り許可申請などを行うことを可能とする既存の日米合同委員会合意も存在をしております。
 政府としても、周辺の住民の方々がこのPFOSなどの検出に対して不安を抱いていることを重く受けとめております。施設・区域内外の環境対策が実効的なものとなるよう、こうした日米合同委員会合意や補足協定を適切に運用しながら、米側との連携を含め、引き続き必要な努力を尽くしてまいりたいと考えております。

○赤嶺委員 日米合同委員会合意で基地の立入りというのが全く実効性がなかったわけですよ。これまでも、実効性がなかったから環境補足協定をつくって、これはもう歴史的な意義を持つ地位協定の見直しに値する、環境の問題が起きたら基地内に立ち入れることになる、そういうことを今まで国会でるる説明してきたじゃないですか。
 何で今回、PFOSの問題で基地の立入調査、これが環境補足協定によって認められないんですか、外務大臣。

○河野国務大臣 先ほど答弁したとおり、環境補足協定に基づく立入り申請はアメリカ側からの情報提供が端緒となっておりますが、米側から通報がない場合であっても、日本側として環境汚染を疑う場合には、別途、既存の日米合同委員会合意に従って、米側に調査要請や立入り許可申請などを行うことは可能でございます。
 実際、環境補足協定が締結された以降でも環境補足協定に基づかない形での立入りは行われておりまして、例えば、普天間飛行場において燃料漏れが二〇一六年六月十五日に発生をしたときに、八月三日、宜野湾市及び沖縄防衛局職員が飛行場の中に立ち入り、現場確認を行った、こうしたことがございます。
 日米地位協定は合意議事録などを含んだ大きな法的な枠組みであり、政府としては、日米地位協定について、これまで、手当てすべき事柄の性格に応じて効果的にかつ機敏に対応できる最も適切な取組を通じ、一つ一つの具体的な問題に対応してきているところでございます。
 引き続きこのような取組を積み上げていくことにより、日米地位協定のあるべき姿を不断に追求してまいりたいと考えております。

○赤嶺委員 一九七四年の日米合同委員会合意で基地に立ち入ったことがあるということで、一例、今外務大臣説明しましたけれども、いかにも外務省らしい答弁だなと思いました。
 環境補足協定は、結局、米側が通報しなければ基地の中に入れない、こういう仕組みになっているわけです。
 ところが、全国知事会の日米地位協定の抜本改定の中には、日本側が、あるいは自治体側が必要だと認めたら、無条件に基地に入れるようなそういう地位協定の改定をやるべきだ、このように申し入れているわけですよ。現にドイツではそういうことができている。いわば、日本政府の、自治体のコントロール下に基地を置くという意味では環境補足協定は何の役にも立っておりません。
 地位協定の改定、基地の立入り、無条件に認めるように改定をすべきだということを申し上げて、質問を終わります。

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参考資料

PFOS等検出状況

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