沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設のため、国土交通省幹部・職員のべ18人が防衛省に出向していることが分かりました。同省沖縄防衛局と石井啓一国交相は、国民の権利救済が目的の行政不服審査制度を乱用し、同県の埋め立て承認撤回の効力を停止させましたが、両省が文字通り一体で自作自演の効力停止を行った実態が明らかになりました。
出向の事実は16日の衆院安全保障委員会で、岩屋毅防衛相が日本共産党の赤嶺政賢衆院議員に認めたもの。出向を求めた理由をただされた岩屋防衛相は「海洋土木工事に関する経験・知見を有する職員が必要だった」と説明。国交省出向者は10月31日現在、防衛省「普天間飛行場代替施設建設事業推進チーム」副チーム長の大臣官房審議官や同チーム事業班長の大臣官房参事官、沖縄防衛局次長ら10人で、同チーム設置(2015年4月)以降では、のべ18人にのぼります。
赤嶺氏は「辺野古が唯一の選択肢」との政府方針のもと、防衛・国交両省一体で建設を進めているのが実態で、審査請求や執行停止申し立ての決裁文書には国交省から出向中の遠藤仁彦沖縄防衛局次長の印が押されていることを明らかにし、「行政不服審査制度の乱用以外の何物でもない」と批判。岩屋氏は「(国交省と)連帯してやっているわけではない」などの弁解に終始しました。(しんぶん赤旗 2018年11月20日)
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議事録
○赤嶺委員 赤嶺政賢です。
法案については、人事院勧告に基づく国家公務員全体の給与引上げの一環であり、賛成です。
きょうは、まず、辺野古の基地建設にかかわる国土交通省から防衛省への出向状況について質問をいたします。
防衛大臣に伺いますが、二〇一六年一月以降、辺野古の基地建設にかかわり、国土交通省の職員が防衛省に出向していることが報じられています。そもそも防衛省が国土交通省に職員の出向を求めた経過と理由、これまでの出向した職員の延べ人数と現在の人数、出向者の選定基準と出向後の具体的な職務の内容を明らかにしていただけますか。
○岩屋国務大臣 普天間飛行場の一日も早い返還を実現するために、防衛省としては、普天間飛行場代替施設建設事業を着実に進めていきたいと考えております。その際、環境や住民への影響にも配慮しながら進めていくとともに、工事の安全な実施に努めていくことが重要だと考えております。
したがいまして、こうした点を踏まえて、国土交通省から海洋土木工事に関する経験、知見などを有する職員が出向し、担当部局において防衛省職員として業務に従事をしております。
これまで出向した延べ人数は、平成二十七年四月に普天間飛行場代替施設建設事業推進チームが設置されましてから同チームへの国土交通省からの出向者数は、延べで十八名、平成三十年十月現在での出向者数は十名でございます。
そして、普天間飛行場代替施設建設事業を進めていくために、国交省から海洋土木工事に関する経験、知見などを有する職員が防衛省に出向して、担当部局において防衛省の職員として業務に従事をいたしております。
さらに、本省内部部局に出向している職員は、このFRFチームにおいて、工事計画に係る事務の総括に関すること、法令及び制度上の検討に関することの業務に従事をいたしております。
沖縄防衛局に出向している職員は、防衛施設の建設工事に係る業務に従事をいたしております。
○赤嶺委員 防衛省はこれまで岩国飛行場の沖合移設事業、埋立工事を行った実績もあるはずだと思いますが、出向をなぜ求める必要があったのか。具体的にどういう点で国交省の持つ専門的な知見が必要であったということでしょうか。先ほどもちょっと述べておられましたが、岩国の経験を持つ防衛省がなぜあえて出向を求める必要があったのか。
○西田政府参考人 お答えを申し上げます。
先ほど大臣も申し上げましたように、普天間飛行場の一日も早い返還を実現していくこと、これは極めて重要だと考えております。
そのために、普天間飛行場代替施設の建設事業を着実に進めていくことは非常に重要だと考えておりまして、その際に、環境、住民への配慮、あるいは工事の安全な実施ということを確保しながら、しっかりと行っていくということが極めて大切だと考えております。
こうした観点から、国土交通省から必要な経験、知見を有する職員の方に出向してもらい、防衛省職員として仕事をしていただいている、そういうことでございます。
○赤嶺委員 まあ、全く同じ答弁なんですけれども。
沖縄防衛局は、当初は大浦湾側のK9護岸から工事を進めていました。その後、K9護岸の工事は中断をしまして、辺野古側の工事に移行をいたしました。大浦湾の方では、当初想定されていなかった軟弱な地盤も確認をされています。
国交省に出向を求めた背景には、そうしたことへの対応もあったという理解でよろしいでしょうか。
○西田政府参考人 お答えを申し上げます。
ただいま委員御指摘のございました大浦湾側の地盤についての御指摘でございますけれども、こうした地盤の強度等につきましては、適切にボーリング調査を実施し、現在実施中のものも含めましたボーリング調査の結果等を踏まえまして、地盤の評価を総合的に判断をすることとしてございます。
他方、防衛省といたしましては、代替施設の建設事業を着実に進めていくためには、国土交通省から経験、知見を有する職員に出向してもらい、担当部局において防衛省職員として業務に従事をしてもらうことが必要と考えて出向をしてもらっているということでございますので、御指摘は当たらないものと考えてございます。
○赤嶺委員 防衛省が国交省からの出向者を受け入れるために、防衛省の組織令も改定をしているんです。本省で大臣官房審議官、大臣官房参事官、これを一人ずつ、沖縄防衛局でも次長を一人増員する、こういうことを閣議決定し、そこに国交省からの出向者をつけております。
専門的な知見を有する一般職員だけでなく、幹部ポストもふやして、そこに出向者を充てた。本省にもいるということを、大臣、御答弁になりましたが、それはどのような理由からですか。
○西田政府参考人 委員御指摘のように、大臣官房審議官、大臣官房参事官、沖縄防衛局次長、この三名につきましては、組織令の改正をポスト上する必要がございますので、御指摘のように、改正を行って出向をしているということでございます。
これは、先ほど来申し上げておりますように、海洋土木工事に関する必要な経験、知見を有するこうした職員が事業を進めていく上で必要だということで行っているところでございます。
なお、この大臣官房審議官等の出向につきましては、これは防衛省全体の定員の増減を伴うものではなく、また、経費面でも、防衛省内で既存のポストの見直し等を行った上で行っているところでございまして、本件によって人件費の増等を伴うものではございません。
○赤嶺委員 国土交通省にも伺いたいんですが、防衛省からの依頼があったとき、どのような判断で応じることを決めたんですか。
○浅輪政府参考人 お答えいたします。
防衛省から国土交通省に対して、海洋土木工事の経験の豊富な者を出向させてほしいという協力依頼があり、人数、ポスト等、防衛省と調整の上、国土交通省から防衛省に職員を出向させることといたしました。
○赤嶺委員 事前にいただいた資料を見ますと、先ほどから説明があるように、港湾局を中心に十名を出向させているわけです。
国交省は、これだけの職員を出向させることを決めた。これだけの出向者を出して体制的に大丈夫なんですか。
○浅輪政府参考人 他省庁への出向により欠員が生じた際には、順次、人事異動で補充をいたしてございます。
○赤嶺委員 幹部職員も含めてこれだけの人を異動させてやっている。国交省というのは、そんな簡単に人を出せる、そういう役所なんですか。
○浅輪政府参考人 お答えいたします。
御指摘の人事異動につきましては、二十八年一月二十九日に発令してございます。当該異動で出向した職員の欠員につきましては、幹部職員も含めて、平成二十八年四月一日までの人事異動で順次補充をいたしました。
○赤嶺委員 いろいろ私が求める説明にはなかなかたどり着かないんですけれども、防衛大臣に確認したいと思いますが、今防衛省が進めている辺野古の建設工事というのは、今までの説明にもあったように、国交省の協力を得ながら進めている、そういう理解でいいわけですよね。
○岩屋国務大臣 国交省からの出向者は、先ほど来御説明しておりますように、その専門的な知見のゆえに出向してもらい、防衛省の職員として働いてもらっているわけでございますから、防衛省としてこの事業に当たっているということであって、国交省と連帯、もちろん関連する事柄はたくさんございますけれども、何というか……(赤嶺委員「連帯でいいんですよ」と呼ぶ)連帯してやっているということではないと御理解をいただきたいと思います。
○赤嶺委員 もう少し具体的に伺います。
防衛省は、辺野古の基地建設を推進するためのチーム、普天間チームを省内に設けております。現在、国交省から出向している宮崎大臣官房審議官は、そのチームの副チーム長についています。西尾大臣官房参事官は、工事計画を総括する事業班の班長であります。沖縄防衛局でも遠藤次長がその職についています。
国交省から出向した幹部職員は、防衛省、沖縄防衛局の意思決定に直接かかわって事業を推進している、そういうことですね。
○西田政府参考人 お答えを申し上げます。
御指摘のありました三名につきましては、それぞれの立場で、この代替施設建設事業につきまして、防衛省職員として業務に従事をしているということでございます。
○赤嶺委員 国交省の職員が重要なポストにいるということであります。
防衛大臣に伺いますが、政府は、今回の沖縄防衛局による審査請求と執行停止申立て、そして、国土交通大臣による執行停止決定は法律に基づいた手続だ、このように繰り返し説明してまいりました。
しかし、私が予算委員会でも申し上げましたが、そもそも辺野古の基地建設は、二〇〇六年の閣議決定に基づく国の事業であります。内閣の一員である国土交通大臣に公正中立な判断などできるはずがありません。しかも、辺野古の基地建設は、実態として、防衛省が国交省からの協力を得て進めている事業であります。
こうした実態があるにもかかわらず、行政不服審査法に基づく手続だけは別だ、こんな説明、およそ通らないのではありませんか。
○岩屋国務大臣 行政不服審査法は、私人だけではなくて、国あるいは地方自治体も審査請求ができる仕組みだと私ども考えておりますので、その法令にのっとって審査請求をし、国土交通大臣は、まさにその法令に基づいて審査庁としての御判断をいただいたというふうに思っております。
○赤嶺委員 まあ、形はそう整えたわけですよ。
私は、きょうは、今回の防衛局における審査請求と執行停止申立ての決裁文書、これを取り寄せて見てみました。中嶋局長の横に印鑑を押しているのは、遠藤次長の印鑑がきちんと押してあるんです。国交省の出向者もかかわって出された執行停止申立てに国交省が応じるというのは、到底納得できるものではありません。辺野古の基地建設は、辺野古が唯一の選択という安倍政権の統一した方針のもとで、防衛省と国交省が一体となって進めているのが実態です。その両者の間で行政不服審査制度を使うということは、これは到底、法律の制度の濫用以外の何物でもないということを厳しくして、質問を終わりたいと思います。