今後5年間(2016~20年度)の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の支出根拠となる特別協定が3月10日の衆院本会議で、審議入りしました。質問に立った日本共産党の赤嶺政賢議員は、5年間の負担総額の上積みや、過去最高額の米軍再編経費といった安倍政権の対米財政支援にふれ、「政府の対米従属姿勢を根本から改めるべきだ」と同協定の廃止を主張しました。
現行協定は3月末で期限が切れるため、政府・与党は月内の承認を狙っています。
特別協定は、5年間の日本側負担の総額を約9465億円と見込み、これまでの5年間の総額から133億円上積み。労務費を負担する基地従業員数も過去最高に引き上げます。
特別協定は1987年度から更新が繰り返されており、赤嶺氏は、日米地位協定上も負担義務のない駐留経費をさらに払い続けることは、「事実上の恒久化に等しいものだ」と追及。岸田文雄外相は「(思いやり予算は)あくまで暫定的、限定的、特例的な措置との判断を改めて行った」などと釈明しました。
さらに赤嶺氏は、辺野古新基地や米領グアムの基地増強による米軍再編経費の膨張、F35戦闘機やオスプレイの地域整備拠点まで日本の負担で進められていることを指摘し、「日本の財政は米国の国防予算を肩代わりするためのものではない」と批判しました。(しんぶん赤旗 2016年3月11日)
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議事録
○赤嶺政賢君
私は、日本共産党を代表し、在日米軍駐留経費負担特別協定について質問をいたします。(拍手)
初めに、米軍普天間基地問題です。
辺野古への新基地建設をめぐり、政府と沖縄県との和解が成立し、埋立工事は中止されました。
安倍首相は沖縄県の翁長知事と会談し、今後は、誠意を持って沖縄県と協議を続け、円満解決に向けて話し合いたいと述べました。
ところが、政府は、そのわずか三日後、協議は始まってもいないのに、直ちに沖縄県に是正の指示を出したのであります。これでどうして円満解決に向けた協議ができるのですか。
和解の成立に先立ち、裁判所が提示した和解勧告文があります。
そこでは、現在の政府と沖縄県の対立について、国と地方公共団体が、独立の行政主体として役割を分担し、対等、協力の関係になることが期待された九九年地方自治法改正の精神に反すると指摘しています。
この指摘は、選挙で示された民意を無視し、私人の権利救済を目的とした行政不服審査制度を濫用し、県の権限を剥奪する代執行訴訟に訴えてまで新基地建設を強行してきた安倍内閣の民主主義、地方自治無視の姿勢に向けられたものではないのですか。
政府は、和解勧告の趣旨を重く受けとめ、国の結論を一方的に押しつける姿勢を改め、沖縄県と誠意を持って協議を行うべきです。答弁を求めます。
来月十二日で、橋本・モンデール会談から二十年になります。普天間基地の返還が実現しなかったのはなぜか。政府はその根本に目を向けるべきです。
この二十年、政府の計画は、SACO合意当時の海上へリポート案、軍民共用空港案、米軍再編合意に基づくL字案、そして現在のV字案へと、何度も変更を余儀なくされました。
そのやり方も、自衛隊の掃海母艦「ぶんご」を投入した環境調査の強行、沖縄防衛局による県庁守衛室への未明の環境アセス評価書の提出、仲井真前知事による県外移設の公約と、環境保全は不可能との立場を覆した埋立承認、そして安倍内閣による代執行訴訟など、前代未聞の暴挙の連続でした。
それでも、基地はできなかったのであります。政府は、このことを重く受けとめるべきです。
戦後七十年以上にわたり基地の重圧に苦しめられてきた沖縄で、新たな基地を受け入れられるはずがありません。
基地のたらい回しは許さない、これが県民の揺るがぬ民意であります。
これ以上、普天間基地の危険性を放置することは許されません。米軍占領下で、国際法にも違反して住民の土地を強奪してつくった基地は、無条件で撤去するのが当然ではありませんか。
政府は、建白書に込められた県民の願いに応え、辺野古への新基地建設を断念し、普天間基地を直ちに閉鎖、撤去することを決断すべきであります。答弁を求めます。
次に、特別協定です。
新協定の交渉を開始した昨年四月、日米両政府は、新たな軍事協力の指針、ガイドラインに合意をいたしました。
日米共同声明は、ガイドラインのもとで、日米が長期にわたり、地域とグローバルな安全保障上の課題に共同して対処するとし、日本における安定的で長期的な米軍のプレゼンスがその基礎だと述べています。
これは、日米安保条約を文字どおり地球規模の軍事同盟に転換し、在日米軍の駐留と日本政府による経費負担をその不可欠の要素に位置づけたものではありませんか。
政府が思いやりと称して米軍駐留経費の負担を開始してから四十年、最初の特別協定の締結から三十年になろうとしています。
一九七八年、アメリカの要求に応え、基地従業員の福利費などの負担に踏み切り、隊舎や家族住宅などの施設整備、給与本体、光熱水料、訓練移転へと拡大され、七八年以降の負担総額は七兆円に達しようとしています。
そもそも、日米地位協定二十四条は、米軍の維持経費は、日本国に負担をかけないで合衆国が負担すると規定しています。米軍のさまざまな特権を定めた地位協定からいっても、日本には負担義務はないのであります。
にもかかわらず、四十年にわたり、世界に例のない負担を継続してきたことを国民にどう説明するのですか。
これをさらに続けることは、事実上の恒久化に等しいものと言わなければなりません。明確な答弁を求めます。
政府は、特別協定締結当時、アメリカの財政赤字を最大の理由とし、暫定的、限定的、特例的な措置だと説明しました。我が国自身が巨額の財政赤字を抱え、国民生活の予算を次々と削り、消費税をさらに引き上げようとしているもとで、どうしてこのような負担を継続するのですか。
政府の財政制度審議会でさえ、聖域視せず見直しを行い、縮減する必要があると指摘していたのではありませんか。にもかかわらず、日本が負担する基地従業員数を過去最高に引き上げ、五年間の負担総額を百三十三億円の増額としたのはなぜですか。国会と国民に、その明確な積算根拠を示すべきです。
思いやり予算だけではありません。辺野古の新基地建設や米領グアムの米軍基地増強を初めとする米軍再編経費は過去最高額です。さらに、米軍のF35戦闘機やオスプレイの地域整備拠点まで日本の財政負担で整備しようとしています。
日本の財政は、アメリカの国防予算を肩がわりするためにあるのではありません。政府の対米従属姿勢を根本から改めるべきではありませんか。
以上、新ガイドライン実行のための戦争法とともに、思いやり予算と特別協定を廃止することを求め、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣菅義偉君登壇〕
○国務大臣(菅義偉君)
普天間飛行場の辺野古移設についてのお尋ねがありました。
政府が行った代執行の手続は、翁長知事が行った埋立承認の取り消し処分という違法な行為を是正するために、やむを得ない措置として講じたものであります。
その上で、裁判所から和解勧告を受けた新たな状況を踏まえて、総理のリーダーシップのもとに熟慮した結果、国と沖縄県とが訴訟合戦を延々と繰り広げるよりは、国と沖縄県との将来にとって適切な選択であると判断をし、沖縄県と和解することを決定したのであります。
和解条項では、国と県との訴訟の手続と協議の手続を同時並行的に行うこととされています。今回、国土交通大臣が行った是正の指示は、和解条項の中で訴訟を一本化するための手続として定められており、これは沖縄県も合意している事項であります。
政府としては、和解条項が定める手続に従って誠実に対応し、沖縄県との協議に丁寧に粘り強く取り組んでまいる所存であります。
辺野古への移設の断念と普天間飛行場の即時の閉鎖についてお尋ねがありました。
政府として、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中で、日米同盟の抑止力の維持と普天間飛行場の危険除去を考えたとき、辺野古移設が唯一の解決であると考えております。
辺野古への移設により、普天間は全面返還をされます。沖縄の皆さんの願いを現実のものとするためにも、一日も早い返還を実現する、このことがこの問題の原点であると考えております。
抑止力を維持しながら、目に見える形で負担軽減を図っていく、この二つの両立を図ることは難しい課題ではありますけれども、だからこそ、実現するために力を尽くすのが政治の責任であると考えます。
政府としては、今般の和解を受け、普天間飛行場の危険性除去と辺野古移設に関する政府の考え方や、沖縄の負担軽減を目に見える形で実現するという政府の取り組みについて、改めて丁寧に説明をし、普天間飛行場の一日も早い返還に向けて粘り強く取り組んでまいる所存であります。(拍手)
〔国務大臣中谷元君登壇〕
○国務大臣(中谷元君)
赤嶺議員にお答えいたします。
普天間飛行場の返還についてのお尋ねがありました。
最も大事なことは、住宅や学校に囲まれ、市街地の真ん中にある普天間飛行場の固定化は絶対に避けなければならないということです。
この問題について、約二十年前、沖縄県知事の要請を受けて、普天間飛行場の全面返還を日米で合意いたしました。その三年後には、当時の県知事及び名護市長の同意のもと、普天間飛行場の辺野古への移設を閣議決定いたしました。その後、さまざまな事情により、移設は遅々として進みませんでしたが、安倍政権となってようやく、仲井真前知事から公有水面の埋立承認をいただきました。
政府は、県や関係自治体と、代替施設の建設計画や環境影響評価手続、普天間飛行場の危険性の除去などについて協議を重ねてきており、また、沖縄の負担軽減のためできることは全て行うという方針のもと取り組んできており、政府のやり方が前代未聞の暴挙の連続であるという御指摘は当たりません。(拍手)
〔国務大臣岸田文雄君登壇〕