国会質問

質問日:2001年 2月 27日  第151国会  沖縄北方特別委員会

2001年2月27日 第151国会 衆議院沖縄北方特別委員会

議事録

○赤嶺委員

 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 きょうは、三次振計、これと関連をいたしまして、北部の訓練場におけるヘリパッド移設問題、これらについてお伺いをしていきたいと思います。

 一九九九年の三月十二日に、琉球大学と広島大学の琉球列島動植物分布調査チームというチームの方々が、沖縄島北部訓練場内ヘリパッド建設予定地の見直しに関する要望書を出されました。この要望書の中では、当該予定地、この地域の生物は、日本及び沖縄の生物の由来を研究する上で欠くことのできない、人類共通の遺産だ、このように指摘をいたしまして、さらに、この地域は東洋のガラパゴスとも呼ばれている、そして、特異な地史を持つ島嶼性のために、これまで生物地理学及び進化学に関する多くの研究成果をもたらしてきた、こういう要望書でありました。学問的にも日本の生物の進化を探る上でも、そして自然環境という点でも世界でも一流の地域だ、この地域にヘリパッドをつくってほしくない、こういう要望書が出されました。

 そういう世論もあって、防衛施設庁では当該地域の自然調査をしてきたわけですが、広島大学や琉球大学の合同調査チームに劣らないような、豊かな環境、豊かな自然、とてもヘリパッドをつくれるような場所ではない、そういう認識もうかがわせるような調査報告書が最近出されました。

 それで伺いたいんですが、ヘリパッドの移設地について、これまでの予定地を撤回して、そして環境調査の結果を踏まえて新しい場所を決めるということなのか、それとも今後の移設予定地は現在の予定地を含めて検討していくということなのか、どちらなのか、これは防衛施設庁、よろしくお願いします。

 

○伊藤政府参考人

 北部訓練場におきますヘリコプターの着陸帯の移設に当たりましては、北部訓練場の過半約四千ヘクタールを返還し、もって沖縄県民の負担を軽減するという観点とともに、沖縄島北部地域山原の自然環境の保全に最大限配慮するという観点が極めて重要であると認識しておるところでございます。

 このような観点を踏まえまして、主として米軍の運用上の観点から選定されました五区域七カ所のヘリコプター着陸帯移設候補地並びにその周辺区域合計約七百ヘクタールにおきまして、環境影響評価法等の適用外ではございますけれども、当庁の自主的判断によりまして、動物、植物、生態系等十一項目について現況調査等を行ったところでございます。その結果、多くの貴重な動植物が確認されたわけでございます。

 今回調査いたしましたヘリコプター着陸帯移設候補地が最終的な移設先として決定し得るか否かについても検討いたしましたが、その結果、ヘリコプター着陸帯等の整備区域を決定するためには、さらに新たな区域等につきまして環境調査を継続する必要があるというふうに考えております。したがいまして、ヘリコプター着陸帯の移設先の決定に当たりましては、今後行います継続調査の結果を踏まえて総合的に判断することが必要だというふうに考えております。

 

○赤嶺委員

 ですから、現在の七カ所のところは、皆さんは、当初はうかつにも米軍が基地をつくりやすい場所として選定をされた。そこに環境の問題意識もないまま手がけてみたけれども、いざ手がけたら生物学者、動物学者からの大変な批判と世論の集中を浴びたので、調査をしてみたら、やはり同じように環境上大事な地域だったという結果が出ているわけですね。それで、今までの七カ所は全部白紙に戻して新しい場所を選定しようとしているのか、それとも今までの七カ所も含めてやはりつくっていきますよということなのか、このことをさっき伺っているんです。

 それにつけ加えまして、私がもう一つ伺いたいのは、やはりこれまでの、SACO合意だといって実行しようとするときの政府の姿勢ですね。全世界からあの自然は大事な場所だという声が上がっているにもかかわらず、アメリカが平地で基地がつくりやすいからこの七カ所の場所を選定しますよと言ったら、そこに建設するために皆さん推進しようとしていた、世論の反対がない限りやろうとしていたわけですね。ですから、今度のSACO合意による七カ所のヘリパッド建設予定地は自然環境に対する配慮が浅かった、こういう反省はあるかどうか。この点も含めて、先ほどの点と一緒にお伺いしたいと思います。

 

○伊藤政府参考人

 SACO合意をさらに実行いたすために日米合同委員会合意をしておりますが、その際、今後返還のための移設事業を進めていくことになりますけれども、その実施に当たりましては、特に北部訓練場等につきまして、環境への影響を最小限にとどめる考えであるということを既に申し上げているところでございます。そのような観点から先ほど申し上げましたような調査を行ったということでございます。

 なお、ヘリコプターの着陸帯の移設につきましては、米側によりますと、練度を維持するために、米軍が現在のヘリコプター着陸帯を使用して実施している訓練を返還後においても残余の区域において引き続き実施するために必要だということでございました。

 そのような観点を踏まえまして、ヘリコプター着陸帯移設候補地につきましては、米軍の運用上の観点からの移設候補地として米側から提示されたものの中で、森林の伐採とかあるいは土地の形状変更を可能な範囲で少なくいたしまして移設による自然環境への影響を最小限にとどめる、そういう点も考慮して選定された、そういうところにつきまして調査を行った、こういうことでございます。

 

○赤嶺委員

 そういうところを環境への影響が余り大きくないだろうと思って調査してみたら、大変な影響を与えるということが皆さんの調査でもはっきりわかったわけですね。ですから、本当に環境という認識がないまま、アメリカが練度の維持だ、そのために必要なヘリパッドだと言ったら、世界に誇る自然環境までも破壊して手をつけようとした、この姿勢はやはり厳しく反省すべきだと思います。

 それで、皆さんは、今後の問題として、これからあくまでもSACOの実施だということで場所選定に当たるとするのであれば、どういう基準を考慮して決めるのか。多少なりとも動植物への影響はやむを得ないといって、既定方針どおりその場所にヘリパッドをつくるのか。あるいは、環境への影響が少ない候補地がどんなに探してもなかったという場合、ヘリパッドの移設は自然環境を守るために白紙に戻すのか。それとも、移設の箇所、七カ所でなくてもいいじゃないか、この地域に二十二カ所別にあるのだから。ですから、それをいわばそのまま移すのか、減らすのか、白紙撤回をするのか、この点についてお答えを願いたいと思います。

 

○伊藤政府参考人

 先ほども申し上げましたが、移設に当たりましては環境への影響を最小限にとどめるというのが基本的な方針でございます。

 それから、これも冒頭に御答弁申し上げたところでございますが、引き続き継続調査を行うということでございまして、その継続調査の結果を踏まえまして総合的に判断をさせていただくということでございます。

 なお、ただいま委員、二十二カ所という御指摘でございますが、いわゆる返還部分に七カ所ございます。それを移設しよう、こういうことでございます。

 

○赤嶺委員

 ですから、移設先にもヘリパッド基地はあるわけですよね。過半の基地を返還したらヘリパッドがなくなるわけじゃないのです。

 私が聞いたのは、自然環境にこれだけ重大な影響を与えるとするならば、減らすということも選択肢に入るのか、白紙撤回も選択肢に入るのか、いずれの場合も選択肢には入らない、環境に影響の少ないところをあくまでも探して七カ所をやろうとするのか、どちらなんですか。

 

○伊藤政府参考人

 私どもが今後予定しております継続調査でございますが、今回調査した区域に比べましてより自然環境に与える影響が少ないヘリコプター着陸帯移設候補地があるかどうかという観点から行うものでございます。新たに調査を行う地域につきましては、こうした観点に沿うように、例えば林齢や人工林か天然林か、そういったような点等を考慮いたしまして選定するということを考えている次第でございます。

 

○赤嶺委員

 山原の自然がそもそも貴重なのは固有種が多いことですよね、そしてその固有種が絶滅危惧種になっているという点で。固有種が多いということはあの地域の自然の島嶼性にあるわけです。島国だったというところにあるわけですね。ところが、島嶼性の生物というのは外からの影響に攪乱されやすい、そして自然が破壊されやすい。だから、生物学者や動物学者はあの自然に手をつけないでほしい、このように言っているわけです。

 そういう点では、今SACO合意の実践だといって皆さんがやろうとしていることは、本当に世界にも誇るような亜熱帯雨林、イタジイの自然、ちょうど今のこの時期が一番山原の自然が美しい時期です。その場所に行ったら本当に自然が息づいているのが見えます。そういうような自然を破壊してでもSACO合意をやろうとするという感覚は、国民的には絶対に受け入れられないと思いますよ。そういう点ではやはり白紙撤回をやるべきだと思いますけれども、いかがですか。

 

○伊藤政府参考人

 繰り返しで恐縮でございますが、北部訓練場の過半約四千ヘクタールを返還するということがSACO合意の第一でございます。そして、その返還のために、先ほど来御指摘のヘリパッドの移設という問題が生じてきているわけでございます。そして、それにつきましては、これも繰り返しで恐縮でございますが、自然への影響をできる限り少なくするという方向で私どもはいろいろ勉強しておるところでございます。

 

○赤嶺委員

 あそこの自然は、ごらんになったらはっきりわかると思うのですが、当初、地形に影響を与えないでヘリパッドを建設するといって平地を選んだわけですね。ところが、この平地は調べてみたら貴重な自然が残っている。では、あそこでほかに基地をつくるような場所があるかといえば、地形を変更しなければできないのですよ。谷とか沢とか、そういうところしか残っていないのです。そうなった場合には、今の計画以上に大きな自然破壊をもたらすことになります。ですから、今皆さん方が進めようとしているSACO合意に基づく山原の森へのヘリパッド建設は無謀な建設ということを指摘して、次に、沖縄担当の橋本大臣にお伺いをしたいと思います。

 今回の施設庁の報告では、より自然環境に与える影響が少ないヘリコプター着陸帯の移設候補地があるかどうかという調査をするため環境調査を引き続き行うと先ほど答弁がありました。これを無謀だと指摘いたしました。今回発見された動植物は北部地域の一帯を生息地としているものが多くあり、その意味では、今後より自然環境に与える影響の少ない地域を選定するということ自体が不可能だということを私は考えています。

 ところで、橋本大臣は、首相の時代に提唱しました、先ほどから論議になりました沖縄経済振興二十一世紀プランで、二十一世紀の沖縄振興の目玉として観光、リゾートの発展を大きく打ち出しています。この中で、沖縄の豊かな自然環境の保全、維持の前提として、エコツーリズムの拠点としてこの場所を位置づけていく、これは二十一世紀プランでもエコツーリズムがうたわれています。

 米軍基地の移設にかかわって、世界に誇る沖縄の貴重な自然環境を破壊することのないように、毅然とした態度で臨まれることを改めて私は期待するわけですが、大臣の考え方を伺っておきたいと思います。

 

○橋本国務大臣

 ヘリコプター着陸帯の整備区域を決定するに当たりまして、自然環境に与える影響を最小限度にとどめる、そのために、防衛庁と環境省、沖縄県などの関係機関との間で調整を図りながら、今後行う継続調査の結果も踏まえて総合的に判断し適切に対応されるもの、そのように考えております。

 

○赤嶺委員

 先ほども議論がありました次期振計に向けて、産業振興という場合に、農業も非常に大事だし観光も大事だし、そしてこの地域ではエコツーリズムということで、今地元の住民が海外にまで出かけていってそのノウハウを身につけようと頑張っておられます。あの山が保存をされているから、また、皆さんがつくろうとしている海上基地、辺野古にはジュゴンがすんでいる、こういう自然の生きた関係があるわけですね。

 それで、エコツーリズムで、今全国的には屋久島が注目されているわけですが、屋久島は原生林、そして世界遺産に登録をされて、屋久島を訪れる人たちが、登録をされる以前は年間平均約十一万人だったのが、登録をされて以降は二十五万人にふえたと聞いています。あの豊かな自然をふやせば観光客もふえるし地域経済の活性化にもつながる、このような関係にあります。ですから、橋本大臣は本気になって、もし沖縄担当大臣、沖縄の振興開発に責任を持つということであれば、私は、こういう自然には手をつけないで、エコツーリズムとして発展させていこうではないか、そういう立場をとるべきだと思います。

 次に、時間がありませんので河野大臣に伺いたいのですが、去年の十月、アンマンの総会で、ジュゴンやノグチゲラ、ヤンバルクイナ、沖縄本島周辺の自然保全の問題が決議をされました。この中で、基地建設予定地の今の山原の自然、これはヘリパッド七カ所とそれらを結ぶ軍用道路の建設が、残存する最も重要な自然林地域において固有種の生息地の劣化を引き起こす危険があることを懸念し、山原の世界自然遺産への登録を検討することを要請すると、アンマンの国際会議で決まりました。残念ながら、日本政府の代表はそのときに棄権をしているのですね。

 しかし私は、今日、沖縄の価値に注目をした場合に、あの地域は、基地の建設ではなくて世界自然遺産への登録のための努力をすべきだと思いますが、いかがですか。

 

○河野国務大臣

 自然がいかに貴重かということは私どもも十分に承知をしているつもりでございます。ですから、先般委員会でも、ジュゴンも重要だし、あの山原の森にはノグチゲラを初めとして貴重な鳥類もいるし、その他貴重な生態系があるということを私は申し上げたつもりでございます。ただ、そうした生態系、あるいはそうした貴重な動物、植物をどうやって守るかという方法論になりますと、いろいろな条件、状況というものがあって、一概に言えない部分があることは、それは、そのそれぞれの地域の抱えている問題からあるのですね。

 したがいまして、重要性は認めつつも、理解しつつも、それを守れという議論、その守り方等について細かく踏み込んだ議論になると、残念ながらあの当時は棄権せざるを得なかったのだろうというふうに、これは私は推測をしております。

 沖縄の自然というものが非常に貴重なものだということは、もう議員が繰り返しおっしゃった、そのとおりだと思います。どうやってその自然を守るか、あるいは、その自然を守るだけではなくて、今の議員のお話を聞いていると、エコツーリズムによって、つまり大勢の人にそれを見てもらう、あるいはその自然そのものを一種の観光の資源にしていく、こういうことを考えておられるのだと思いますが、そうしたことについては、これまたいろいろと考えなければならないことがあると思うのです。

 どうやってそこに、どういうアクセスをつくるか。沖縄の島嶼性というものは、確かに自然を守る意味で非常に重要でありました。しかし、そこに観光客を集めるためには、アクセスをどういうふうにするかということもまた重要になってくるわけでございます。船で来るというだけでは十分ではないでしょう。飛行機で観光客を呼ぶということになれば、その飛行場はどうするのかという問題も出てくるではありませんか。

 したがって、さまざまな角度から考えなければならないのであって、一カ所だけを論じて全体について主張をなさるというのでは、お気持ちはよくわかりますけれども、その具体化、実現性ということになると、まだまだ、もっと研究をし、調査をしなければ結論は出せないというふうに思います。

 

○赤嶺委員

 私、今の河野外務大臣の問題をそらすような答弁の仕方に、率直に言ってがっかりをいたしました。世界自然遺産に登録をすれば、エコツーリズムということについても、いろいろな自然を守りながらのアクセスというのが可能であるし、そういう見通しの上に立ってやった質問です。

 実は、日本政府、あなた方とアメリカとの間に、沖縄の基地の使い方についての五・一五メモがありますよね。五・一五メモで北部訓練場について記載されていることを御存じですか。答弁してください。

 

○河野国務大臣

 存じません。

 

○赤嶺委員

 ですから先ほどのような答弁になると思うのですよ。

 橋本大臣は御存じですか。

 

○橋本国務大臣

 存じません。

 

○赤嶺委員

 沖縄基地の使い方で、皆さんがずっと秘密にして、大田知事の時代に要求して公開した五・一五メモでは、北部訓練場について、その使用条件のC項の中で、「合衆国政府は、本施設・区域内にある指定された水源涵養林並びに特に保護すべきものとして指定された鳥類及びそれらの自然生息地に対し、いかなる損害も与えないようあらゆる合理的予防措置を講ずる。」このように述べているのです。五・一五メモの中で、あの自然の貴重さをうたい、あの自然を守るということをうたっているわけです。そして、今度新しく基地を建設しようとしたら、この五・一五メモにも違反するような事態が生ずるわけです。

 ですから、こういうメモに基づいてでも、SACO合意を撤回し、あの自然を守るという立場に立つべきではありませんか。そしてしっかり、外務大臣も沖縄担当大臣も、そういう沖縄基地について沖縄の気持ちを受けとめるというのであれば、きちんと認識すべきではありませんか。お二人に手短に答えていただきたいと思います。

 

○橋本国務大臣

 私は、自分なりに今まで努力をしてきてSACOの合意にこぎつけたと思っております。なかなか勇気を持って取り組む方がいないと言われておりました問題に取り組んできたつもりであります。その上で、今議員からいただきましたようなおしかりを受けるとすれば、では、私どもはかえってSACOの合意を結ばなかった方がよかった、今のままの基地が残ることを求められるということですか。私は、それはいいことだとは思っておりません。

 

○河野国務大臣

 今橋本大臣がお話しになりましたように、一つ一つの沖縄振興に対して、あるいは現状に改良、改善を加えようとする努力というものがなされてきているということもまたお認めをいただかなければ、我々としては、極めて残念な思いがしております。

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