国会質問

質問日:2015年 6月 15日  第189国会  安保法制特別委員会

2015年6月15日 第189国会 衆議院安保法制特別委員会

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「安保環境変容」立証できず

議事録

○赤嶺委員

 日本共産党の赤嶺政賢です。

 政府が六月九日に提出した見解について質問をします。

 見解の内容は、これまでの政府の説明を繰り返したものにすぎません。いろいろ書いていますが、憲法解釈変更の根拠として挙げているのは、結局のところ、安全保障環境の根本的な変容という抽象的な言葉だけであります。午前中からの議論でも、変化の中身についていろいろと議論がありましたが、具体的な説明はありませんでした。

 そこで、政府が集団的自衛権行使の具体的な事例として挙げている、ホルムズ海峡における機雷掃海の問題で聞きます。

 まず、この議論自体は今に始まったものではありません。イラン革命以降、イラン政府がホルムズ海峡の封鎖に言及したことは数え切れないほどあります。しかし、実際に封鎖したことはありません。イラン自身の石油輸出に致命的な打撃を与え、みずからの首を絞めることになるからです。

 中谷大臣に伺いますが、ホルムズ海峡の問題をめぐって具体的にどのような変化があったんですか。

 

○中谷国務大臣

 一九七〇年代の半ばに日量約五百万バレル弱あった原油の輸入量は、オイルショックを契機とした石油代替政策また省エネルギー政策の推進によりまして、一九八〇年代の半ばには日量約三百二十万バレルまで減少しました。その後、一九八〇年代後半には原油価格の下落に伴って原油輸入量は増加に転じましたが、一九九〇年代の半ば以降は石油の代替エネルギーの利用進展などによりまして減少基調で推移いたしました。

 二〇一〇年代には日量約三百六十万バレルとなっておりまして、石油需要は近年減少傾向にありますが、今後もその傾向は続くと考えておりますが、非常に我が国にとりましては中東に対する原油の依存度は高いままで来ているということでございます。

 

○赤嶺委員

 いや、私が聞いたのは原油の話じゃなくて、ホルムズ海峡をめぐって、イランは機雷の封鎖ということは今まで何度も言ってきたけれどもそれを実行に移さなかった、なぜならイランにとっても自分の首を絞めることになるからだと。安全保障の環境の変化と言うのなら、何があったのか、どんな安全保障上の環境の根本的な変容があの海峡であったのかということを聞いているんです。

 

○中谷国務大臣

 現在も、中東情勢というのは混沌といたしている現実がございます。

 冷戦のときは、アメリカとソ連という超大国の力のバランスによって、いろいろな地域紛争、宗教紛争、民族紛争、こういうことは如実に出なかったわけでありますが、冷戦が崩壊した途端に湾岸危機が発生をいたしました。また、グローバルなパワーバランスも変化してきておりますし、弾道ミサイルの配備、中国の台頭、そしてアルジェリア、シリア、チュニジアにおきまして邦人が犠牲となった国際テロの脅威などが挙げられるし、海洋、宇宙、サイバー空間に対する自由なアクセスなどいろいろなリスクというものが深刻化しているということで、こういった国際情勢が変化をしてきているということでございます。

 現に湾岸戦争が発生したときは、イランはクウェート、イラクに対して機雷をまいたという事実もございます。

 

○赤嶺委員

 私がホルムズ海峡の安全保障環境をめぐる根本的な変容は何かと聞いたら、宇宙、サイバーの話まで飛び出してくるものですから。私が聞いているのは、ホルムズ海峡に機雷が設置されて、日本が集団的自衛権を行使して機雷の掃海に至るような根本的な変容。まさにあの海峡にとって。中東の話でもないんです。やはりイランをめぐる国際社会の話だと思うんですよね。

 今、イランの情勢認識について言いますと、ISILをめぐってアメリカとイランの関係は接近している、このように言われていますが、これはいかがですか。

 

○岸田国務大臣

 イランとアメリカの関係について御質問をいただきました。

 イランとアメリカの関係を考えますときに、今最大の懸案事項として核問題が存在いたします。イランの核問題については、EU3プラス3、要するに米国、英国、フランス、ドイツ、そしてロシア、中国、この六カ国とイランとの間において協議が行われ、今現在、六月末、今月末を目指して最終合意に向けて交渉が行われている、このように承知をしております。国際的な不拡散体制強化の観点から、あるいは中東の安定という観点から、最終合意の形成と完全履行が重要であると認識をしています。こうした協議が米国を初めとする関係国とイランの間において進められております。

 我が国としましても、こうした交渉の進展をしっかり後押ししなければならないということで、我が国はもともと、イランとは伝統的な友好関係を持っています。私自身もイランのザリーフ外相と四度会談しておりますし、私自身もイランを訪問しております。こうした伝統的な友好関係を生かしながら、今御紹介させていただきました国際的な交渉をしっかり後押しするべく役割を果たしていく、これが我が国の立場であります。

 

○赤嶺委員

 まさにイランと日本の関係についても述べましたが、国際社会が懸念していたイランの核問題についても今前向きの方向で取り組みが進んでいる、日本も役割を果たしたいということでありますが。核開発の問題をめぐっても前向きの動きが進んでいる。ISILの台頭によってアメリカとイランとの関係も近づいてきている。

 中谷大臣に伺いますが、むしろホルムズ海峡の問題というのは今前向きの変化が生まれているということではありませんか。もともとホルムズ海峡の封鎖はほとんど考えられない上、核開発の問題も解決に向けた動き、そういう状態があるにもかかわらず、何で集団的自衛権の行使という話になるのか。ホルムズ海峡の問題をめぐる根本的な変容とは何なのか。これは何だという挙証責任は皆さんにありますから、具体的に示していただけますか。

 

○中谷国務大臣

 ペルシャ湾におきましては、二度、機雷の敷設がございます。一つはイラン・イラク戦争、このときはイランがまきました。二度目は湾岸紛争のときにイラクがまきました。それから、二度のオイルショックが起こっているんですね。このときは非常に日本の経済も大混乱になりました。

 これは経済的な話でございますが、ある海運会社の経営者の方に聞きますと、ホルムズ海峡というのは本当に日本にとって大事なところでありまして、ここで船舶が通らないということは、本当に日本は大変な事態になるよというお話がございました。したがいまして、このホルムズ海峡というのは日本のエネルギー安全保障上ずっと潜在的な危険性があるということで、非常に日本にとりましては大事な地域であるということでございます。

 

○赤嶺委員

 潜在的な危険ということで現に今私たちに事例を出して、安全保障環境が根本的に変わった、そういう証明をできる話はないわけですね。

 昔、イランがあのホルムズ海峡で対応しました、イラクが対応しました。しかし、現に今、アメリカとイランとの関係、イランと日本との関係は前向きな方向であります。イラクが以前のようにあの海峡に機雷を設置するというような情勢は考えられません。

 ただ、根本的な変容というわけですから、あれから根本的に変わったわけですよね。何が変わったんですか。どんな危険が今あるんですか。

 

○中谷国務大臣

 外交というのは良好であってほしいと思いますし、そのような努力を全力で挙げるものでございますが、現実にはシリアにしてもイラク国内にしても非常に混沌な状況が続いておりまして、この先どういう状況が生じるのか、それはわからない状況でございます。しかし、日本の国民にとりまして、生活の安全、暮らしを守る、そして国の存立を維持する、こういうことにつきましては、やはりいざというときにしっかりとこれを確保するための手段というものは持っておかなければなりません。

 ですから、そのときのために法律はしっかり制定しておいて、国の存亡にかかわるような事態におきましてはこういった機雷を除去できるようなことも必要になるため、その根拠というものはしっかりとつくっておかなければならないということでございます。

 

○赤嶺委員

 私が聞いていることに大臣は答えておりません。私が聞いているのは、ホルムズ海峡に機雷が設置されるほどの安全保障環境をめぐる根本的な変容とは何か、これを聞いているんですよ。イラクがどうだとか、そんなことは聞いていないんです。

 まさにホルムズ海峡の問題で安全保障環境が根本的に変わった、だから憲法解釈の変更が許される、こう言っているわけですよ。それほどの根本的な変容とは何なのか、ホルムズ海峡の問題をめぐって何が根本的に変わったのか、これをきちんと説明してくださいということなんですよ。

 ほかの話ばかりやって、ホルムズ海峡で何が変わったかということは言わないで、憲法の解釈を変えるほど大きな出来事が起こっておりますと言っても、これは説明にならぬですよ。もう一回きちんと説明してください。

 

○中谷国務大臣

 冷戦後の四半世紀、二十五年を見ましても、やはり明らかに世界的なパワーバランスの変化というものがございます。

 当時は米ソの冷戦によって強大な軍事力が均衡していろいろな紛争がとめられてはいたわけですが、冷戦が崩壊した途端に湾岸戦争が始まったり、またその後いろいろな民族問題、宗教問題が発生してきておりますので、大きな変化といえば、私は、パワーバランスが変わってしまったということが挙げられるのではないかと思います。

 

○赤嶺委員

 答えていないことは非常にはっきりしていると思うんですね。ホルムズ海峡の根本的な安全保障環境の変容は何だと。

 環境の変容によって憲法解釈を変えたんだというわけですから、ホルムズ海峡について答えなきゃいけないですよ。パワーバランスの変化なんて聞いていないですよ。ちゃんと答えてください。委員長、お願いします。

 

○中谷国務大臣

 ホルムズは事例の一つでございますが、グローバルなこのパワーバランスの……(発言する者あり)聞いてください。変化や大量破壊兵器などの脅威等によって我が国を取り巻く安全保障環境は根本的に変容し続けておりますけれども、もはや、脅威が世界じゅうのどの地域において発生しても、我が国の安全保障に直接的な影響を及ぼす状況になってきております。ホルムズ海峡を擁する中東地域におきましても、ISILの勢力の拡大、大量破壊兵器の拡散懸念、イエメン情勢の混乱など、近年、安全保障環境はますます厳しさを増してきております。

 このような中東地域の安全保障環境の変化が直ちにホルムズ海峡の航行に悪影響を及ぼす危険があるというわけではございませんが、仮に、我が国が輸入する原油の約八割、天然ガスの約三割が通過する、エネルギーの安全保障の観点から極めて重要な輸送経路でありますホルムズ海峡に機雷が設置された場合には、我が国に深刻なエネルギー危機が発生するおそれがあります。

 我が国には石油備蓄は約六カ月ありますけれども、機雷が除去されなければ危険がなくなりません。ずっと機雷が設置されたままで、中東から石油が入ってこなくなるんです。ですから、六カ月備蓄はありますけれども……(発言する者あり)

 

○浜田委員長

 静粛に。

 

○中谷国務大臣

 こういったものに対してきちんと対応していく必要がございます。こういう中で、ホルムズに機雷が設置されたことあるいはエネルギー源の供給が途絶されたことのみをもって新三要件に該当するわけではありませんが、新三要件を満たす場合にはホルムズ海峡において武力行使に該当する機雷の掃海を行うことが可能になってくるということでございます。

 では、どういう事態が存立事態かというと、るる御説明しているように、国民生活に死活的な影響、すなわち国民の生活にかかわるような深刻、重大な影響が生じるか否かを総合的に評価して判断をするわけでございます。

 

○浜田委員長

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

 

○浜田委員長

 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

 

○中谷国務大臣

 ホルムズ海峡でそのような危機が発生するかというような御質問でございますが、ホルムズ海峡を擁する中東地域におきましても、ISILの勢力の拡大、大量破壊兵器の拡散懸念、イエメン情勢の混乱など、近年、安全保障環境はますます厳しさを増しております。現に、核、ミサイル、テロ、こういった問題もございます。

 こういったことでございますので、我々といたしましては、直ちにホルムズ海峡の航行に悪影響を及ぼす危険性があるというわけではございませんが、将来こういったことに端を発してホルムズ海峡に機雷がまかれるというようなことも想定する必要があるのではないかということでございます。

 

○赤嶺委員

 直ちにホルムズ海峡に機雷が設置されるような情勢にはならないがというようなお話であれば、情勢の根本的な変容によって憲法の解釈まで変える、その場合に、集団的自衛権は限定的だからホルムズ海峡の機雷の掃海だけだ、これは日本国民の命と安全にかかわっているからだというのが全部うその説明になるじゃないですか。

 ホルムズ海峡にかかわって直ちに機雷の掃海の危険はないというわけですから、これは全然納得できません。もう一回ちゃんと説明してください。

 

○中谷国務大臣

 ホルムズ海峡というのは、あくまでも海外派兵の例外でございます。やはり国の安全保障というのはあらゆる事態に備えて対応をしておくということでございまして、そういった事態に際して我が国としてとり得ることが可能であるような条項をつくっていくということが、国の安全保障につながるということでございます。

 

○赤嶺委員

 全然答弁になっておりません。

 ISILの危機も持ち出しましたが、もちろんISILの活動は絶対に許せるものではありません。しかし、ISILの台頭で、今まで懸案であったアメリカとイランの関係というのは、むしろこの問題をめぐって共通の利益を共有するようになって近づきつつある。核問題でも先ほど外務大臣がおっしゃったように国際情勢の前向きな変化が起こっていることはわかるんですが、憲法の解釈まで変えなきゃいけない根本的な変容というのは起こっていないということを強く申し上げたいと思います。

 外務省のイラン大使だった駒野欽一さんという方がこう述べています。

 イランが、機雷によるホルムズ海峡封鎖というラストカードをみずから切ることはほぼないだろう。この海峡はイランにとっても重要な生命線だからだ。

 石油の大半はホルムズ海峡経由で輸出される。イランは海峡を封鎖すれば自分の首を絞めて経済的に破滅することを深く認識している。

 イランがペルシャ湾に機雷を敷設するといった想定がひとり歩きして、あたかもそういう事態があり得るとの前提で議論が進んでいるように見える。ペルシャ湾の現実はもっと複雑だ。

 昨年誕生したロハニ政権は融和的な政策を打ち出し、制裁強化をきっかけに核開発問題の交渉にも弾みがついた。時間はかかるが、日本は国際社会とともにじっくりと地域の安定に取り組むべきだ。こう述べております。

 きょうの答弁にもありましたが、中谷大臣が繰り返し、このような安全保障の環境の変化、これが直ちにホルムズ海峡の航行に悪影響を及ぼす危険があるというわけではないと述べてきました。結局、憲法解釈の変更というのは現実の国際政治の動きと無関係に行われた、そういうことではありませんか。

 

○中谷国務大臣

 今、現実の国際政治というお話がありましたが、私が一番強烈に印象に残ったのはやはり一九九〇年の湾岸紛争でありまして、私は現にクウェートへ行きました、イラクとの国境まで行きました。あの石油の油井に火をつけた、また戦車が残骸としていっぱい残っている、これが冷戦の終わった、世界に平和が来ると期待した時代に現実に起こったことでございます。

 確かに外交においてこういったことが起こらないように努力すべきでありますが、安全保障というのは万が一そういうことが起こった場合に国民生活をどう守っていくかということでありまして、現実に、二度にわたってオイルショックというものがありました。そして、二度にわたってペルシャ湾に機雷がまかれた、こういう事実もございます。

 もちろんこういうことは起こさないように国際社会で努力をいたしますが、現実にこういう事態が起こった場合に、では日本のエネルギー源である石油が入ってこなくなったらどうなるのかというようなことも考えた措置、対応ということも、私は国家の安全保障の一つだと思っております。

 

○赤嶺委員

 憲法解釈を変える話をしているときに、憲法解釈の変更の根拠に国際情勢の根本的な変容というときに、あの海域で、ホルムズ海峡で今、平和の流れが、動きが、国際社会の努力が始まっているときに、現に直ちにホルムズ海峡に機雷敷設の危険はないと言いながら、しかしそれを根拠に憲法の解釈を変えて集団的自衛権を行使できるようにする、これは私は全く説明になっていない、このように思います。万々が一という、そんな発想で憲法解釈なんかを変えるべきではないということを強く申し上げたいと思います。

 それで、いつも持ち出される議論ですが、政府はこの問題をめぐって、原油の八割、天然ガスの三割が通過する極めて重要な輸送経路だと強調しているわけですね。

 資料を見ていただきたいと思います。一九七〇年代の二度の石油ショックを受けて、エネルギーの中東依存度を下げる方向で政府は対応しました。一九六七年には九一・二%だった依存度は、一九八七年には六七・九%にまで下がりました。ところが、その後再び上昇し、二〇一二年には八三・二%になっています。

 中東依存度が再び上昇することになったのはなぜですか。その間、政府はどういう対策をとったんですか。

 

○中谷国務大臣

 お話しのように、一九七〇年代前半に約八割強だった中東の原油の依存度が、中国そしてインドネシアからの原油の輸入の増加など、輸入先国の多様化によって一九八〇年代後半には約七割まで低下したということでありますが、その後これらのアジアの産油国内の石油需要が増加いたしまして輸出が減少したために、結果として再び中東の依存度が上昇したということでございます。

 

○赤嶺委員

 今のお話を聞いていても、結局、新興国からの輸入が難しくなった、そしてコストの低い中東産原油に回帰したと。

 私は、そういうことであれば、幾らでも対処の仕方があると思います。現在の政府のエネルギー政策を前提にしたとしても、調達先の多角化を進めたり、海峡を迂回するパイプラインを建設したりすればいいことであります。しかも、今、シェール革命だとか、そういうことも言われているわけです。日本全体のエネルギー需要も今後は縮小していくことは経産省の資料でも明らかです。

 なぜこれほどホルムズ海峡の問題に議論を集約させようとするのか。政府のエネルギー政策をめぐっては私たちもいろいろと意見はありますが、要するにこれは経済政策、産業政策の問題であって、集団的自衛権の問題ではありません。石油の確保の面からいっても立法事実はないということを強く申し上げておきたい、このように思います。

 よくわからないのは、何で政府がこれほど機雷掃海にこだわるのかということであります。

 四月末に合意された新ガイドラインを見たら、機雷掃海という言葉がガイドラインのあちらこちらに出てまいります。日本に対する武力攻撃が発生した場合、あるいは日本以外の国に対する武力攻撃が発生した場合、グローバルな日米協力などの分野で機雷掃海が明記されております。

 中谷大臣にさらに伺いますが、新ガイドラインにおいて機雷掃海が日米間の軍事協力の項目として各所に位置づけられているのはなぜですか。

    〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕

 

○黒江政府参考人

 日米のガイドラインの中で機雷の掃海についての記述が多いということでございますけれども、日本としまして、その種の掃海能力、極めてすぐれた掃海能力を持っておる、これはペルシャ湾における機雷の掃海という湾岸戦争後の活動ということでも実証されておる、そういったことを踏まえた記述であるということでございます。

 

○赤嶺委員

 大変すぐれた機雷掃海能力を日本は持っていると。

 私は、海上自衛隊の幹部学校が定期的に発行している海幹校戦略研究という論文集がありますが、ここにアメリカ海軍大学の研究者の論文が翻訳されて掲載されているのを目にいたしました。

 そこでは、確かにおっしゃっていますように、日本の掃海部隊について、近代的かつ有能な対機雷戦部隊を保有している、このように高く評価しています。一方、米軍については、掃海部隊については脆弱、このように指摘しておりまして、その理由として、歴史上、海軍の計画、運用の年間全予算の一%にとどまっていることを挙げております。

 アメリカの機雷掃海能力と日本の機雷掃海能力、なぜアメリカが脆弱と言っているのか。中谷大臣の認識はいかがですか。

 

○黒江政府参考人

 ただいま先生御指摘のアメリカの研究者の見方について、我々としてその理由といったものを承知する立場にはございませんけれども、単純に隻数の比較ということを仮にいたしますれば、現在米海軍では、アベンジャー級と言われます掃海艦、これは上空からの機雷の対処であるとか水上、水中といったものそれぞれについてバランスよく運用ができるという艦艇でございますけれども、これを全米海軍合わせまして十一隻保有しておると聞いてございます。

 他方、海上自衛隊につきましては、現在、自衛艦隊に所属しております掃海隊群及び五つの地方隊のもとに、合計で掃海艇等計二十七隻という規模を持っております。

 そういったことで、単純な隻数の比較ということからすると、かなり日本の海上自衛隊の掃海艇の数というのは米軍と比較して多いということは言えるんだと思います。

 

○赤嶺委員

 私が読んだその論文というのも、海上自衛隊の幹部学校が定期的に発行している雑誌の論文ですから、まさに今の答弁のとおりだと思うんですよ。

 私はここで疑問が起こるんです。何であれだけの国家予算を軍事費に投入するアメリカで、掃海部隊には予算を振り向けないのだろうか。いろいろ考えていくと、既に同盟国の軍隊が依拠できる掃海部隊を持っているから、それに振り向ける必要がないということではないだろうか、このように考えますが、大臣、いかがですか。

 

○黒江政府参考人

 米軍の考え方といったものにつきまして、これを我が方として解釈するというのはなかなか難しいということだと思いますけれども、先ほど先生御指摘になられました日米のガイドライン、新しいガイドラインの中でも、実際にどのような支援業務を行うのかというのはそれぞれの政府が判断するということが明記をされてございます。

 ですので、仮に先生御指摘の論点といいますのが米軍が当然に日本の支援を当て込んでいるという御趣旨であるとすれば、そういうことではなく、それぞれの協力支援というのはあくまでも、我が国でありますれば我が国政府の判断によるものであるということでございます。

 

○赤嶺委員

 日米関係で日本がアメリカの軍事要請を主体的に考える、こんなふうな答弁をされたら、さんざん安全保障体制、日米関係を議論してきた我々としては納得できるものではありません。あれだけの軍事費を投入しているわけですよ。でも、掃海部隊には予算を振り向けないから、同盟国を組み込むことをあらかじめ前提にしているとしか考えられません。

 ガイドラインには、自衛隊による機雷掃海が先ほど申し上げたように各所に位置づけられているのであります。何らかの事態が発生して必要が生じた場合には、ガイドラインに沿って、日米の軍事協力の指針に沿って、日本は必ず掃海部隊を派遣することになると思います。

 ならないというお答えが先ほどありました。それでは、過去の事例はどうだったか、見ていきたいと思います。

 自衛隊の海外派兵に風穴をあけたペルシャ湾への掃海艇派遣に関して、アメリカ政府の公文書が公開されてきています。原典を資料としておつけしてお配りしてありますが、これは二〇一二年六月、ジョージ・ワシントン大学の国家安全保障アーカイブが、一九九〇年八月のイラクによるクウェート侵攻を受けて日米両首脳間で行われた電話会談の記録を入手し公開したものであります。

 侵攻から十日ほどたった八月十三日夜、当時のブッシュ米大統領は海部首相に電話をかけ、次のように求めています。

 英国、フランス、オランダ、オーストラリアは海軍部隊を提供することに同意した。スペインとイタリアも同様の対応をとると思う。私がぜひともお願いしたいのは、日本が経済面と軍事面でできる限りの支援を行うことだ。多国籍海軍部隊への直接的な支援を検討してほしい。日本の戦後史における分岐点になることはわかっているが、何とかなるのであれば、日本が西側同盟の完全な一員であることをはっきりと示すことになるだろう。このように述べまして、具体的な協力事例として、機雷掃海やサウジアラビア向けの海上輸送を挙げているわけです。

 イラクによるクウェート侵攻後、アメリカ政府が自衛隊の派遣、とりわけ機雷掃海部隊の派遣を要求した事実があるのではありませんか。

    〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕

 

○岸田国務大臣

 まず、御指摘の資料ですが、政府として、米国において公開された米国政府作成文書の中身について、一々コメントすることは控えなければならないと思います。

 そして、このやりとりに該当する電話会談ですが、平成二年八月十四日、海部総理とブッシュ米大統領の電話会談につきまして我が国において公表されています概要を見る限り、大統領より、できるだけの協力をしてほしい、日本の協調姿勢を示してほしいと述べた、このようにあります。

 しかし、いずれにしましても、これは我が国の対応ですので、我が国が主体的に判断して我が国の行動を決定する、これは当然のことでありまして、そうした観点から我が国の対応が決定されたものと承知をしております。

 

○赤嶺委員

 私は、我が国も合意してきたガイドラインのあちこちに機雷掃海の話が日米の軍事協力として出てきて、非常に役割分担が明確になっているわけですから、そういえば湾岸戦争のときもブッシュ大統領は海部首相に対して機雷掃海の要請をしていた事実があるのではないか、このように聞いたわけであります。

 この文書では、ブッシュ大統領の要求に対して海部首相は次のように述べています。

 大統領が触れた軍事面については、憲法上の制約と国会決議のために軍事分野に直接参加することはほとんど考えられないというのが、この問題での国是と言ってもいい。直ちに多国籍海軍部隊に参加することはできない。このように述べているわけですね。憲法九条と海外派兵を禁じる国会決議を挙げて、どうにか当時のブッシュ大統領の要求をかわそうとしたのであります。

 その後、政府は国連平和協力法案を提出し、国民の反対の声で廃案になりました。それでも政府は、アメリカの要求に応えるために、当時、法律もつくらないで、政令によって湾岸戦争後の機雷掃海活動に自衛隊を派遣したのであります。

 今回、憲法解釈を変えて存立危機事態の仕組みをつくれば、当時はできなかったような多国籍海軍部隊への参加が可能になるのではありませんか。いかがですか、防衛大臣。

 

○中谷国務大臣

 今回の法案というのは、我が国の安全保障を考えまして、あらゆる事態に切れ目のない対応ができるという観点で考えてきたところでございまして、あくまでも我が国の安全保障、防衛を自主的にやっていくという判断に基づくことでございます。

 

○赤嶺委員

 これはもう否定できないと思うんですよね。新三要件というのは非常に極めて曖昧であります。

 やはり当時は、湾岸戦争のときから話を起こしました中谷大臣の説明もありましたが、あのときは多国籍海軍部隊への参加も結局はできなかった。しかし、今回は政府の判断次第、こういうことになっていきます。米軍が軍事行動をとる場合にはいつでもどこへでも自衛隊の掃海部隊を派遣し、米軍の補完部隊として危険な掃海任務を担うことになるということです。

 政府は、日本が戦争に巻き込まれることはない、このように言いますが、九〇年から九一年にかけてアメリカ政府からどういう要求があり、どういう協議が行われたのか、当時の会談記録は公開すべきであります。外務大臣はアメリカ政府の公文書で知らないようなお話でありましたが、あれだけのやりとりです、日本政府の側にも探せば必ず残っているはずでありますし、日米間の会談記録はそれにとどまるものではありません。

 私は改めて、政府に対して、イラクによるクウェート侵攻以降の自衛隊派遣をめぐる日米交渉の全ての会談記録を提出するように求めたいと思います。委員長、よろしくお願いします。

 

○浜田委員長

 理事会で協議いたします。

 

○赤嶺委員

 それでは、次に、日米新ガイドラインの問題について伺います。

 六月四日の憲法審査会で小林節参考人は、今回のガイドライン、安保法制と日米安保条約の関係についてこう述べておられます。「日米安保条約というのは、これまでの私の理解では、アメリカと日本が一緒になって世界の警察をやるという話ではなかったと思うんですね。もっと事項とか地域に制限があったはずなんです。それをどうオペレーションするかのガイドラインでありまして、本体が変わっていないのにガイドラインで世界警察に広げてしまうというのは、これは全く筋違いだと思います。」

 小林節先生のこの発言、外務大臣はどのように受けとめていますか。

 

○岸田国務大臣

 ガイドラインにつきましては、従来のガイドラインにおいても日米安全保障条約及びこの関連の取り決めの具体的規定に直接の根拠を置くものもありましたが、それ以外にも、それらの規定に直接根拠を置かない協力も定められておりました。こうしたグローバルな協力も従来のガイドラインにおいてしっかり定められているからこそ、今日まで我が国としましても、ソマリア沖の海賊対策を初めさまざまなグローバルな協力を日米間で行ってきました。

 今回、新ガイドラインにおきましても構造は同じであります。日米安全保障条約とその関連取り決めの具体的な規定に直接根拠を置くもののほかに、グローバルな平和と安定のための協力、それら規定に直接根拠を置かないこうした協力も含んでいるということであります。こうした構造は今までのガイドラインも新ガイドラインも変わらないということを申し上げたいと思います。

 

○赤嶺委員

 安保条約を超えたガイドラインになっている、こういうことをお認めになるということですね。

 

○岸田国務大臣

 新ガイドラインも今日までのガイドラインも同じ構造になっているということで、グローバルな協力をしていくという部分につきましては従来のガイドラインも新ガイドラインも同じであるということを申し上げております。

 

○赤嶺委員

 アメリカはそうは言っていないですよ。アメリカのカーター国防長官は新ガイドラインについて、日米同盟を一変するものだ、こう述べているわけですよ。外務大臣はそういう認識ではないということですか。

 

○岸田国務大臣

 今も申し上げましたが、ガイドラインの基本的な構造は、従来のガイドラインも今回の新しいガイドラインも同じであります。日米安保条約とその関連取り決めの具体的規定に直接根拠を置くもの以外に、グローバルな協力について定めています。それがあるからこそ、例えば二〇一〇年のハイチ地震への対応あるいはソマリア沖・アデン湾への海賊対策における協力、こういった実績を積み重ねてきたわけであります。

 従来のガイドラインもそういった構造だからこそこういったグローバルな協力を行ってきたわけですので、新ガイドラインにおいてもこうしたグローバルな協力を行うことができる、基本的な構造は同じであると申し上げております。

 

○赤嶺委員

 アメリカの方は、日米同盟を一変する新ガイドライン、このように言われているけれども、日本の外務大臣は、どこも変わっていない、こうおっしゃっているわけですね。私は、この新ガイドラインというのは、日本政府が主体的な判断をするんだという体裁をとりながら、結局は、盛り込まれた内容が実施される仕組みになっていると思います。

 具体的に聞きます。

 今回のガイドラインは、グローバルな日米協力に関する規定を盛り込んでいます。これまでのインド洋、イラクでの米軍への兵たん支援活動は、テロ特措法、イラク特措法、時限立法に基づくものでありました。しかし、今回の規定は、日米間の軍事協力の基本にグローバルな日米協力を位置づけるものです。海外派兵の一般法、恒久法も提出をしております。

 日米間の軍事協力の基本にグローバルな日米協力を位置づけるということは、日米安保条約の基本的な性格を変更する、そういうことではありませんか。

 

○岸田国務大臣

 まず、先ほども申し上げましたように、ガイドラインの基本的な構造は変わっておりません。

 そして、これはガイドラインの中にも明記されているわけですが、日米安保条約及びその関連取り決めに基づく権利義務関係は変更されないとされています。そして、このガイドラインはそれぞれの国の憲法、法律に従って実行される、こうした当然のことも明記をされています。あくまでも我が国の憲法、法律の範囲内でこうした協力が行われるものと承知をしております。

 

○赤嶺委員

 改めて確認しますが、今度のガイドラインというのはグローバルな日米の軍事協力を日米間の基本に位置づけたもの、そういう認識でよろしいですね。

 

○中谷国務大臣

 新ガイドラインにおける協力を含めて、自衛隊の派遣につきましては我が国としてみずからの国益に照らして主体的に判断するものでありまして、我が国の平和及び安全の確保、国際社会の平和と安定への貢献とおよそ関係なく自衛隊を派遣することはあり得ません。

 また、その際、自衛隊が特定の活動を行うためには根拠となる法律が必要であることは当然でございまして、したがって、我が国による対米協力が無制限に広がるという御指摘は当たらないと思います。

 

○赤嶺委員

 日米軍事協力の基本にグローバルな軍事活動を入れて、無制限にそれが行われるものではないという答弁ですけれども、そもそも多国籍軍への活動、これは今までだと、イラクだとイラクの問題に即して特措法がつくられました。アフガンも同じであります、その事態に応じた対応というのがありました。

 しかし、今回のガイドラインのように、あらかじめグローバルな軍事協力、こう位置づけてみても、そもそも多国籍軍の活動というのは、その場所も、それからどういう国々が参加するかという参加国もそのときになってみないとわからない、あらかじめ計画が立てられるような性格の活動ではないと思います。にもかかわらず、グローバルな日米の軍事協力をわざわざガイドラインに書き込んでいるのか。そのことを答えてください。

 

○中谷国務大臣

 先ほど外務大臣がお答えになりましたけれども、日米両国は、日本の平和と安全のみならず、例えば二〇一〇年のハイチ地震、二〇一三年のフィリピンの台風災害、このような人道支援、災害救援における協力、またソマリア・アデン湾での海賊対処、こういった協力に見られるように、地域とグローバルな平和と安全のための協力を実際に積み重ねてまいりました。

 このような活動というのは非常に地域にも感謝され評価されていることでございまして、このような地域における課題に対して実効的な解決策を実行するための協力を、ガイドラインにおきましては、日米両国のおのおのの主体的な判断によって、アジア太平洋そしてそれを越えた地域の平和と安全のために国際的な活動に参加することを決定する場合の協力について協議をして、やはり地域にとって価値のあることにおいては日米で協力していきましょうという考え方でございます。

 

○赤嶺委員

 今まではイラクでアメリカが無法な戦争を起こしたときに、アフガニスタンで戦争を起こしたときに、今回の安保法制というのは恒久法、一般法となって、いつでも参加できるような仕組みをあらかじめつくっておくわけです。そういうような無法な戦争にこれまでも巻き込まれてきた、今からは恒久的に、いつでもいいですよ、こういう体制をつくっている。

 ここに、具体的なガイドラインの表現ぶりですが、「日米両国は、アジア太平洋地域及びこれを越えた地域の平和、安全、安定及び経済的な繁栄の基盤を提供するため、パートナーと協力しつつ、主導的役割を果たす。」というわけですから、主導的な役割を果たす国が、いやいや、これは待ってくださいというわけにはいかぬだろう。アメリカの戦争にいつでもどこでも参加していくという仕組みがつくられているということは、今後またこの委員会で議論していきたいと思います。

 時間が来ましたので、終わります。

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