衆院安全保障委員会は12月13日、北朝鮮の核・ミサイル問題についての参考人質疑を行い、東京国際大学の伊豆見元・教授と政策研究大学院大学の道下徳成教授が意見陳述しました。日本共産党から赤嶺政賢議員が質問に立ちました。
伊豆見、道下両氏は、北朝鮮の核・ミサイル開発が進展する現状を指摘する一方、対話の枠組みとして、「6カ国協議は依然として有効なツールだ」(伊豆見氏)、「6カ国協議は重要な枠組みだ」(道下氏)と述べました。
北朝鮮に対するこれまでの国際社会の対応の問題点についてただした赤嶺氏に対し、伊豆見氏は、「国際社会が、北朝鮮を普通の国家としてまともに相手にしてこなかったことが問題だ」と指摘。「国際社会は、今のままの北朝鮮を交渉対象にし、取引することを拒んできた。まずまともな相手として扱ってやるかどうかが大事だ」と提起しました。
赤嶺氏は、「日米軍事協力の新指針(ガイドライン)」に盛り込まれた自衛隊と米軍の共同計画の策定・更新について参考人の意見をただしました。
道下氏は、「集団的自衛権が限定的とはいえ行使できるようになり、朝鮮半島有事に自衛隊がとれる行動も幅が広がっている」と指摘。米韓、日米の共同計画が一体のものとして連接される可能性についても言及しました。戦争法の下で、朝鮮半島有事に対する米軍主導の共同計画づくりの危険性が浮き彫りになりました。(しんぶん赤旗 2016年12月14日)
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議事録
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
きょうは、お二人の先生、本当にありがとうございました。
最初に、伊豆見参考人にお伺いをいたしますが、北朝鮮の核・ミサイル開発に対する国際社会の対応について、先ほどからるる議論になっておりますが、私の問題意識から伺いたいと思います。
北朝鮮がNPTからの脱退を宣言したのは一九九三年でした。以来、翌年にかけての核危機とカーター元大統領の訪朝による米朝枠組み合意、その後の日米ガイドラインの見直しや六カ国協議など、北朝鮮の核開発をめぐっては、さまざまな経緯がありました。
参考人は、マスコミのインタビューに答えて、ついにここまで来てしまったという印象を述べた上で、北朝鮮はこれまで全てをなげうって核開発をしてきたわけではなく、核開発をめぐって米国との取引を考えた時期もあった、阻止できる時間はあった、このように指摘しておられます。
北朝鮮の核開発をめぐって、これまでの国際社会の対応に関して、どこに問題があったとお考えですか。参考人の御意見を伺えたらと思います。
○伊豆見参考人 ありがとうございます。
私は、恐らく、国際社会の大きな問題は、北朝鮮をまともな、普通の、これはちょっとおかしいですね、まともではないんですね、破綻国家でもありますし、いろいろ問題もあるんですが、ただ、やはりそこには国民がいて、普通の暮らしもしている、そしてそれを一応統治する政府がいて、それなりに機能しているという、そういう意味での普通の国家であるという観点が我々には非常にやはり不足しているんだろうと思うんですね。ですから、まともに相手にしないということですかね。
私は、今まで国際社会がうまく北朝鮮を扱えなかった大きな要因は、まともに相手にしてこなかったからだと思いますし、まともに相手にしないというのは、今のままの北朝鮮をそのままとりあえず対象として交渉をする、取引をするということを基本的には拒んできたからだ。北朝鮮が態度を改め、姿勢を正したらまともな取引も考えられるけれども、今の北朝鮮にはそれは無理だということで、まともな扱いをしない。
そうすると、我々の方も、実は、厳密に言うと約束をきちっと守っているとは言えないわけですけれども、北朝鮮に対して約束を守らないことに対する罪悪感というのは余りないんだろうと思うんですね、国際社会には。それはしようがない、相手が北朝鮮なんだから、そもそも北朝鮮はうそつきだし約束を守らないんだから、それはそれでいいんだというような感覚があります。これがやはり私は相当まずいんだろう、それが今までうまくいかなかったかなり大きな要因ではないか。
ですから、一応、北朝鮮をまともに相手にして交渉をする、交渉するということは取引をするということですし、取引をするということは北朝鮮にもプラスになることを与えるということですから、それをまともな相手として扱ってやるかどうかが私は一番大事だと思うんですが、その姿勢が欠けていたと思っております。
○赤嶺委員 ありがとうございました。
次に、道下参考人にお伺いいたしますが、最近のアメリカと韓国の動きについてであります。
韓国軍は、昨年八月、北朝鮮が核兵器などの大量破壊兵器を使用する兆候が見られた場合に、北朝鮮の指導部を除去する、いわゆる斬首作戦の概念を導入したことを明らかにいたしました。ことし三月の米韓合同軍事演習でも、この概念に沿った、北朝鮮に対する先制攻撃の演習が行われたと報じられております。
国際社会からのたび重なる抗議と制裁措置にもかかわらず、北朝鮮が核・ミサイル開発を推し進めているもとで、アメリカや韓国の対北朝鮮政策にどのような変化が生じているのか、参考人の御意見をお聞かせください。
○道下参考人 韓国あるいはアメリカ軍の戦略の変化、斬首戦略を導入したということですが、まず、これはやはり抑止力を向上させるためということと、あと人道的配慮というものがあったと思います。
と申しますのも、相手がかなり独裁政権で何を考えているかわからない、意図が変化しやすいということもありますので、本当に何か悪いことをしたら自分がやられると思いますとやはり抑止される可能性が高まるということがありますし、斬首戦略というのは何となく残酷に聞こえるんですが、最も残酷ではない戦略でして、民間人を巻き込まない、そして相手の軍に対する被害も、軍だって一種の民間人ですから、軍人もなるべく被害を減らすということで、責任者だけをやっつける、人道的にも好ましい戦略だと思っております。
ただ、斬首戦略の難しいところは、好ましい戦略なんですけれども、やはり北朝鮮のリーダーシップというのは最もかたく守られていますので、これを軍事的に攻撃して除去するというのは事実上難しい。これはアメリカがイラクでもやって失敗していましたし、いろいろなところでやってうまくいっていない、リビアでうまくいっていない、最終的には狩り出しましたけれども、ビンラディンに対しても、結局、当面、短期的にはうまくいっていないということで、その辺の限界はあると思っております。
ただ、私の答えといたしましては、非常に合理的な動きである、人道的な戦略であると思います。
○赤嶺委員 ありがとうございました。
あと一点、道下参考人に伺います。
今回のガイドラインの問題にかかわって、日米両政府が自衛隊と米軍による整合のとれた運用を円滑かつ実効的に行うためとして、共同計画を策定し、更新することが今度は明記されているわけですが、この点にかかわって、先生の著作を拝見しておりましたら、二〇〇二年に第二次ガイドラインを具体化させるための概念計画五〇五五が日米間で合意されたことに触れておられました。
そこでお聞きしたいのは、そもそも概念計画とはどういうものなのか、また、それとの関係で、今回のガイドラインに盛り込まれた共同計画の策定、更新という言葉、これをどのように理解すればよいのか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
○道下参考人 まずお断りしておきたいのは、それはあくまで概念計画であり、作戦計画であり、秘密情報ですので、報道ベースで記述しております。
それを前提にいたしまして、まずコンプランといいますか、概念計画というのは何かといいますと、大きく、軍事作戦をやるための計画には作戦計画というものと概念計画というものがありまして、作戦計画はオペレーションプラン、概念計画はコンセプトプラン、コンプランと呼びます。
その最大の差、相手は似たようなものなんですけれども、どういう目的を達成するためにどういう軍事作戦を実施するというものですが、作戦計画の方は、実は鉄道の時刻表みたいな、実際に物をどう動かすかという細かい規定まで、情報、兵たん、作戦、全部入っております。ですから、戦争が勃発したらどこの船をどこの港からどこに持っていって、どこの道を通って移動させるかとか、そこまで入っているのが作戦計画でして、そこまで入っていないのが概念計画でございます。
報道ベースですから、私は実際のものを見たことは当然ございませんし、どのぐらいの分量のものかも知りませんが、ただ、一般論として考えますと、当然、今、集団的自衛権が限定的とはいえ行使できるようになっておりますので、朝鮮半島の有事に自衛隊がとれる行動も幅が広がっております。ですから、それに従ってこの概念計画を改定するというのは自然なことではないかと思っております。
○赤嶺委員 ありがとうございました。