衆院憲法審査会は11月24日、立憲主義を主なテーマに各会派の自由討議を行いました。安保法制=戦争法が立憲主義に反することが改めて問題となりました。
日本共産党の大平喜信議員は「安保法制ほど立憲主義を踏みにじったものはない」と強調。「集団的自衛権の行使は、憲法上認められない」との歴代内閣の憲法解釈・政府統一見解の形成過程に言及し、「長年の議論によって積み重ねられたのが憲法解釈だ。これを一内閣の判断によって覆したのが安倍政権だ」と批判しました。
大平氏は、安保法制と集団的自衛権の行使容認の閣議決定が立憲主義に反するとの声が、歴代の内閣法制局長官や最高裁判事、学者・研究者など幅広い層から上がっていると指摘。「集団的自衛権容認の閣議決定を撤回するたたかいを国民とともに進める」と述べました。
民進・枝野幸男氏は「40年にわたって積み重ねてきた解釈を、権力側が一方的に覆すことは立憲主義に反する。立憲主義に反するがゆえに憲法違反になってくる」と批判しました。
これに対し自民・中谷元氏は「立憲主義に反すると言うが、単なる政権に対する好き嫌い(の批判)ではないか」と開き直りました。
日本共産党の赤嶺政賢議員は、「日本国憲法を超える日米安保体制の存在」を問題視し、米国の圧力によって9条違反の再軍備や自衛隊、日米安保条約がつくられたこと、自衛隊の海外派兵、日米ガイドライン(軍事協力の指針)の実行としての戦争法、さらに「沖縄には憲法がない」という現状を指摘。その上で、「日本の立憲主義を問題にするにあたって、このことを根本的に問い直すべきだ」と主張しました。
枝野氏は、「自民党改憲案」について「立憲主義に反し、憲法を統治の道具のごとく考えている」と批判し、撤回を求めました。(しんぶん赤旗 2016年11月25日)
議事録
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
私は、立憲主義について米国との関係を三点指摘したいと思います。
第一に、日本の再軍備の問題です。
一九四八年一月にロイヤル米陸軍長官が日本を極東における反共の防壁にすると演説したのを契機に、米国防総省が日本の限定的再軍備計画をまとめました。これが再軍備の出発点です。計画には、日本の限定的軍備は、米国によって主として組織、訓練され、厳重にコントロールされるべきとあります。日本の再軍備、自衛隊は、米軍への従属のもとにつくられたものでした。
そして、一九五一年、サ条約の調印の際に、沖縄を切り離した上で日米安保条約を国民に秘密裏に締結しました。米軍の駐留を認める安保条約を合憲とした砂川最高裁判決は、駐日米大使が当時の田中最高裁長官に直接面会して圧力をかけたのが歴史の事実であります。九条に反する再軍備と自衛隊、日米安保条約が、米国の圧力のもとにつくられたことを忘れてはなりません。
次に、自衛隊の海外派兵の動きも米国の要求に基づいていることを指摘したいと思います。
一九九一年、湾岸戦争の際に、米国の要求に従って、日本は、閣議決定による政府声明のみでペルシャ湾の機雷除去のため自衛隊を出動させました。それ以来、米国の自衛隊派兵圧力が強まります。
二〇〇一年の同時多発テロを契機とした米国のアフガニスタン報復戦争に、小泉内閣は、テロ特措法をつくってインド洋への海上自衛隊の補給艦と護衛艦を派遣しました。
二〇〇三年には、米国のイラク戦争にいち早く支持を表明し、イラク特措法をつくってイラク本土へ自衛隊を出動させました。その際、航空自衛隊の輸送部隊は、米軍の武装兵士や弾薬を運び、米軍の戦争を直接支援しました。これは名古屋高裁からも憲法違反と断罪されました。
第三に、今回の安保法制は、日米新ガイドラインの実行法としてつくられたものであることです。
安保法制の核心は、地球上のどこであれ、どのような戦争であれ、自衛隊が出動して米軍を支援するところにあります。そのために、集団的自衛権の行使容認を初め、米軍支援のさまざまな内容を決めました。
特に重大なのは、日米一体となって共同対処に当たる同盟調整メカニズムを設置したことです。これは、日米統合司令部にほかなりません。そのもとで、垂直離着陸機オスプレイやF35、グローバルホークなど、日米軍事一体化と基地の再編強化を進められています。こうした動きは、アジア太平洋地域に米軍兵力を重点的に配備し、同盟国の役割拡大を求める米軍の軍事戦略に沿ったものにほかなりません。
今私が挙げたこの三点と、前回指摘した、沖縄に憲法がないという問題は何を示しているか。そこには、日本国憲法を超える日米安保体制の存在を指摘しておかねばなりません。日本の立憲主義を問題にするに当たって、このことを根本的に問い直すべきです。