衆院憲法審査会が11月17日に開かれ、憲法に関する各派代表の意見表明と自由討論が行われました。自民党は改憲に向けた議論の推進を主張。野党の委員からは自民党改憲草案を批判する発言が相次ぎました。
日本共産党の赤嶺政賢議員は「国民の多数は改憲を求めていない。改正原案の審議の場である審査会を動かすことは、改憲の発議に向かうもので、動かすべきではない」と強調。「憲法の前文を含む全条項を守り、平和・民主主義の原則を現実の政治に生かすことこそ政治に求められる責任だ」と述べました。
赤嶺氏は、「国防軍創設」などを掲げる自民党改憲草案をベースにして改憲を狙う安倍政権を批判するとともに、現在も戦争法強行や沖縄米軍基地問題などで憲法無視の政治が行われていると指摘。沖縄では、米兵による事件・事故など“基地があるが故の苦しみ”が続いている上に、米軍新基地建設が強権的に進められ「『沖縄に憲法はないのか』というのが現実だ。沖縄の現状を放置することは9条蹂躙(じゅうりん)の違憲状態を日本全体に広げることになる」と訴え、9条改悪を許さないたたかいを進めていくと表明しました。
自民党の中谷元氏は、審査会で議論すべきテーマとして「自衛隊の認知」や「緊急事態条項」などを例示し、「憲法改正の必要性と内容についての熟議を重ね、国民の合意形成をめざす」と発言。公明党の北側一雄氏は、「加憲」の立場としつつ、現行憲法について「70年、国民に広く浸透し、支持されてきた。『押し付け憲法』という主張自体、今や意味がない」と語りました。
民進党の武正公一氏は、自民党改憲草案について「個人よりも国家が前面に出ている。近代立憲主義の共通の土俵にたてるのか」と指摘しました。
自由討論で日本共産党の大平喜信議員は、1年半前の同審査会で、自民党推薦を含む3人の憲法学者の参考人が戦争法について、そろって「立憲主義違反」「憲法違反」と述べたにもかかわらず、安倍政権が数の力で強行成立させたことを批判。「憲法を踏みにじり続けていながら、次は憲法そのものを変えたいなどというのは言語道断であり、国民はこれを許さない」と述べました。(しんぶん赤旗 2016年11月18日)
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議事録
○赤嶺委員 日本共産党を代表して発言します。
私たちは、憲法審査会は動かす必要はないという立場です。
憲法審査会は、憲法改正原案、改正の発議を審査するための場です。ここでの議論は、改憲項目をすり合わせ、発議に向かうことにつながります。国民の多数は改憲を求めておりません。したがって、審査会を動かすべきではありません。日本共産党は、憲法の前文を含む全条項を守り、平和、民主主義の原則を現実の政治に生かすことこそ政治に求められている責任だと考えます。
そういう点から考えまして、看過できないのは、安倍首相の改憲発言です。安倍首相は、参議院選挙の翌日に、憲法改正に向けて、我が党の案をベースにしながら三分の二を構築していく、それがまさに政治の技術だと発言をしました。
首相が改憲のベースと言った自民党改憲草案の中身は、前文の平和的生存権を削除して、国民に国防義務を課し、九条を変えて国防軍を明記した集団的自衛権の全面行使に踏み切るものです。また、九十七条を全文削除していることは、基本的人権条項を否定するものと言わなければなりません。こういう考えのもとで安倍政権が改憲の動きを進めていることが重大です。
日本国憲法の公布七十年に当たり重要なことは、日本国憲法の制定が、ポツダム宣言の受諾に始まり、侵略戦争の反省の上に立って、軍国主義を全面的に排除し、国民主権と民主主義を掲げる平和国家として国際社会に復帰しようとしたものだということです。日本国憲法は、アジアと国際社会に対し、二度と戦争をしないということを約束したものであります。それを押しつけというのは、日本が起こした侵略戦争による痛苦の歴史に背を向けるものです。
次に、私は、安倍政権の憲法無視の政治について二点述べておきたいと思います。
一つは、昨年、安倍政権が強行採決した戦争法、安保法制です。我が国が攻撃を受けてもいないのに日本が武力を行使できるなどという法律が、戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認を明記した憲法九条に違反することは明白です。
にもかかわらず、存立危機事態などと称して、日本を攻撃していない国に対して日本から武力行使を行うということになれば、その国との間に武力抗争状態をつくり出すことになります。憲法九条一項で禁止された国際紛争を解決する手段としての武力行使にほかなりません。集団的自衛権を認めて他国防衛の海外派兵を可能とすることが憲法九条二項に反することも明らかです。
そもそも、歴代政府は、自衛隊は日本の防衛のための必要最小限の実力組織であるから合憲だと言い、海外派兵はできない、集団的自衛権の行使はできないとしてきました。それは国会における論戦で積み重ねられた政府見解であり、一内閣で覆せるものではありません。
憲法の平和主義を踏みにじった違憲立法に反対する運動が大きく発展したのは当然です。国会前や各地域で多くの人が戦争法反対、立憲主義守れの声を上げました。この声にこそ耳を傾けるべきです。
ところが、政府は、十五日、駆けつけ警護と宿営地の共同防護を新たに付与した南スーダンPKO実施計画の変更を閣議決定しました。これは、内戦状態にある南スーダンに自衛隊を派遣して海外での武力行使に道を開こうとするもので、憲法違反は明白です。断じて許されません。
二つ目は、沖縄と米軍基地の問題です。
沖縄は、来年五月で復帰四十五年になります。
アメリカの直接統治下の一九七一年、琉球政府の屋良主席が日本政府に向けた建議書を策定いたしました。その建議書には、県民が最終的に到達した復帰のあり方は、平和憲法のもとで日本国民としての諸権利を完全に回復することである、即時無条件かつ全面返還でありますと記されています。
復帰の原点は、日本国憲法のもとでの基地のない平和な沖縄でありました。
しかし、実際には、復帰後も憲法の上に安保が置かれ、米軍優先で苦しめられているのが実情です。米兵による婦女暴行事件や強盗、殺人、レイプ、米軍機の墜落事故、実弾射撃訓練による原野火災、土壌や水質汚染など、七十年たっても占領当時と変わらない、基地あるがゆえの苦しみが続いております。
沖縄において負担軽減の名で行われる基地の返還はいつも移設条件つきで、新たな基地強化につながってきました。
その典型が辺野古新基地建設です。辺野古新基地は、二百年耐用で、二本の滑走路や強襲揚陸艦が接岸できる護岸、弾薬搭載エリアを備えるなど、一大軍事拠点の新設です。
もともと、沖縄の基地は、占領下で県民が収容所に入れられている間に住民の土地に勝手につくったものです。さらに、サ条約締結後、銃剣とブルドーザーで土地を強奪し、国際法に違反し構築したものです。危険な普天間基地は直ちに閉鎖し、無条件撤去されるべきです。新たな基地をつくらなければ返還しないというのは道理が通りません。
高江のオスプレイ着陸帯の建設も全く同じです。使用していない訓練場の過半を返還するかわりに、既に十五個もあるところに新たな着陸帯を建設することがどうして負担軽減になるというのでしょうか。高江の住民の暮らしを破壊し、貴重な自然を破壊することは到底認められません。
新基地建設反対は県民の強固な思いです。それはこの間の選挙で繰り返し示されてきました。しかし、政府は、民意を尊重するどころか、権力総動員で基地建設を強権的に推し進めており、民主主義や地方自治は踏みにじられ、沖縄に憲法はないのかというのが現実です。
沖縄の現状を放置することは、九条じゅうりんの違憲状態を日本全体に広げることになります。沖縄に配備されたオスプレイは低空飛行や夜間訓練を繰り返し、さらに全国に訓練を展開し、横田基地にも配備されようとしています。岩国基地に配備されるF35は、伊江島で訓練し、佐世保を母港とする強襲揚陸艦に搭載されて海外に展開するものです。沖縄の米軍基地強化は、全国各地の基地強化と一体となって、アメリカの世界戦略に基づく一大拠点を構築することになります。九条をじゅうりんするこの実態は、米国から求められるままに日本の再軍備を行い、日米安保のもと、違憲の海外派兵に道を開いてきた米国追随政治の到達点です。
私たちは、国民とともに、九条じゅうりん、改悪を許さない闘いを進めていきたいということを表明し、発言を終わります。