日本共産党の赤嶺政賢議員は4月20日の衆院外務委員会で、安倍晋三首相が3月末の日米首脳会談で沖縄米軍新基地建設の方針は「不変だ」と米側に伝えたことを批判し、県民の立場に寄りそった交渉を行うよう主張しました。
新基地建設をめぐっては、政府と沖縄県との間で成立した和解には「円満解決に向けた協議」を行うとの条項が盛り込まれていますが、実質的協議はまだ行われていません。
赤嶺氏は「沖縄県との協議が始まってもいないのに、首脳会談の場で『辺野古は不変だ』と誓約したのは、『和解条項』の趣旨を踏みにじるものだ」と批判。「普天間基地の“5年以内の運用停止”については、日米首脳会談や外相会談の場で取り上げたのか」とただしました。
岸田文雄外相は「具体的なやりとりは行っていない」と答弁。赤嶺氏は「5年以内の運用停止は、国も県も宜野湾市も一致している。まず、その点を優先して行うべきだ」と強調しました。
赤嶺氏は和解で県の埋め立て承認取り消し処分が有効となったのに、辺野古・大浦湾の臨時制限区域が撤廃されていない法的根拠は何かと追及。防衛省の山本達夫審議官は「(埋め立て工事の)中止とは、工事を進めず、現状を維持することだ」と述べるだけで、法的根拠は示せませんでした。(しんぶん赤旗 2016年4月24日)
質問の映像へのリンク
議事録
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
私も、十年以上も九州沖縄比例代表ということで、熊本、大分の被災地、大変ふだんから大きな御支援をいただいたところであります。改めて、犠牲になられた皆さん、被害に遭われた皆様に心からの哀悼とお見舞いを申し上げたいと思います。
そこで、きょうは米軍普天間基地問題について質問をいたします。
三月四日、辺野古への米軍新基地建設をめぐり、政府と沖縄県との和解が成立をいたしました。和解条項には、政府と沖縄県が円満解決に向けた協議を行うことが盛り込まれています。
三月二十三日、政府・沖縄県協議会が開かれましたが、和解条項に基づく協議については、作業部会の設置を確認したにすぎません。
ところが、安倍首相は、三月三十一日に行われた日米首脳会談で、辺野古が唯一の選択肢、解決策とする立場は不変だと伝えました。岸田外務大臣も、四月十一日に行われた日米外相会談で同じ説明を行いました。
外務大臣に伺いますが、和解条項に基づく実質的な協議が行われていない段階で、辺野古は不変だと米側に説明したわけですか。
○岸田国務大臣 御指摘の点については、まず、三月三十一日の日米首脳会談において、安倍総理から、辺野古埋立承認に関する訴訟について、辺野古が唯一の解決策とする立場は不変であり、急がば回れの考え方のもと和解を決断したものであるという説明を行い、そして、辺野古移設を一日も早く完了することにより普天間返還を実現したい旨述べるとともに、沖縄の負担軽減について引き続き取り組んでいきたい、こうした旨、安倍総理からオバマ大統領に述べた次第です。
そして、オバマ大統領の方からは、和解については安倍総理の戦略的な判断と理解している、引き続き緊密に協力していきたい、こういった趣旨が述べられました。
そして、四月十一日、日米外相会談においても、私の方から日本政府の立場を伝達いたしました。ケリー長官からは、和解に関する日本政府の立場を十分に理解する、こういった旨の発言がありました。
こうしたやりとりを日米の間で行った次第であります。
○赤嶺委員 つまり、和解協議には入ったけれども、実質的には、和解の内容に立ち入っての日本政府と沖縄県との話し合いはまだ全く行われておりません。いない中で、辺野古が唯一の選択肢だということを、外務大臣も総理も日米外交の場で繰り返しているわけですね。
一方で、福岡高裁の那覇支部は、この和解を通して、円満な解決、円満解決に向けた協議というのを求めております。
しかし、今、政府がとっているのは、辺野古が唯一の解決策という一方的な立場ですね。この一方的な立場が今回の混乱を生み出したのに、まだ今なおそういうことを言っている。では、一体、円満な解決に向けた協議というのを政府はどのようにしていくおつもりですか。
○岸田国務大臣 このたび、政府と沖縄県の間において和解案を受け入れるということで合意したということ、これは大変重要なことだと認識をしております。そして、合意がなされたわけですので、ぜひこの和解案を誠実に履行していくこと、誠実に対応していくこと、これは大変重要であると考えます。
そして、この和解案の中身ですが、和解案の中身は、日本政府も従来の立場を放棄しろというものではありません。これは、沖縄県も従来の立場を放棄しろというような中身にはなっておりません。あくまでも、和解案の中身は、司法の手続を進めながら、それと同時に話し合いを行うというものであります。
ぜひこの和解案の中身、これを誠実に理解し、そして実行していく、これを両者の間においてしっかりと努力していく、こういったことが重要であると考えます。
○赤嶺委員 和解案の一番の特徴で注目を集めるのが、円満な協議ということを政府にも沖縄県にも求めている。
翁長沖縄知事は、円満解決に向けた協議について、もともとお互いに考え方を持っているわけであり、そういうものを持ちながら議論を進めるということだ思うと臨む姿勢を明らかにしているわけですね。ところが、皆さんは一方的に、和解の話し合いの中身には入らないのに、是正指示を出してみたり、あるいは、外交の場で日本政府の立場は不変だと言ってみたり、これでは、和解に向けて円満に話し合おうというような、そういうものをつくれないと思うんですね。まず、一方的な政府の立場を改めるべきだということを申し上げておきたいと思うんです。
そこで、普天間基地の五年以内の運用停止の問題について、政府は日米首脳会談あるいは外相会談で取り上げたんでしょうか。
○岸田国務大臣 普天間飛行場の五年以内の運用停止を初めとする沖縄県の要望につきましては、従来から、首脳会談あるいは外相会談においてたびたび取り上げ、米国側に伝えております。
そして、委員の御質問が、直近の首脳会談あるいは直近の外相会談で取り上げたのかという御質問であるとしたならば、直近の首脳会談は、先日の核セキュリティーサミットの際の首脳会談であります。そして、外相会談は、G7外相会談の日程の合間で行われたものであります。これは時間が限られておりました。沖縄の負担軽減等については議論は行ったわけでありますが、具体的にその場で五年以内の運用停止ということについて議論をしたかということであるならば、直近のその二つの会談においては具体的なやりとりは行っていないということであります。
○赤嶺委員 どうも、外務大臣、まどろっこしいんですが、これまでは行ってきたけれども、今度は行わなかったということであるわけですね。
ただし、辺野古の問題についてオバマ大統領も関心を持ったとされております。沖縄の負担軽減というのであれば、普天間基地の五年以内の運用停止が一番核心的なテーマであります。これについて今回は取り上げなかった。
一月の宜野湾市長選挙で五年以内の運用停止を公約した佐喜真市長を政府・与党は応援しました。そういう佐喜真市長が当選した直後、五年以内の運用停止ということを訴えていたその直後の、初めの首脳会談、外相会談で、何でこの問題を取り上げなかったんですか。
○岸田国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、首脳会談、外相会談においては、普天間基地の移設の問題、そして沖縄の負担の軽減の問題、こうしたものについてはしっかりと議論を行いました。その中で、特に具体的に御指摘の部分について議論をしたのかということでありますので、先ほど来お答えをしているわけであります。
基本的に、重要なポイントにつきましては、首脳会談、外相会談でしっかり議論を行っております。
○赤嶺委員 普天間の危険性の除去が原点だと繰り返しおっしゃるわけですね。沖縄の負担軽減という場合は、誰が考えても、普天間の危険性の除去、これを最優先してやるべきだと。
それで、沖縄県と政府が対立しているとはいえ、五年以内の普天間基地の運用停止については、国も沖縄県も宜野湾市も一致しているんですよ。みんなが一致しているんですよ。そういう一致した問題を、大事な外交交渉の場でなぜ取り上げないんですか。政府の立場が疑われる結果になりませんか。
○岸田国務大臣 大事な点を取り上げなかったという御指摘ですが、取り上げなかったということではありません。
先ほど来申し上げておりますように、まず、普天間飛行場の移設の問題において、普天間飛行場の五年以内の運用停止を初めとする沖縄からの要望につきましての我が国の取り組み、あるいはこの考え方、これは全く変わっておりません。そうした考え方はしっかり伝えた上で、その五年以内の運用停止について明示的に何か述べたのかという質問に対して、これは明示的に言葉として取り上げなかったと言っているだけであります。
基本的な考え方、そして重要性については、しっかり米国側に伝え、そして意見交換を行った次第であります。
○赤嶺委員 明示的に皆さんが取り上げたのは、辺野古が唯一の選択肢だということの繰り返しなんですよ。
しかし、仲井真知事が日本政府との間で五年以内の運用停止ということを約束したときには、辺野古の基地の完成は十年後ですよ。つまり、辺野古の基地の完成を待たずに普天間は五年以内に運用停止するんだ。こういうことを、皆さん、仲井真知事との間にも約束し、翁長知事もそれはそのとおりだと、宜野湾市長もそのとおりだと、政府もそのとおりだと。
つまり、辺野古の基地は予定どおりやりますやりますと言いながら、普天間の五年以内の運用停止については取り上げない。誤解されるんじゃないですか。一番大事な問題を皆さんは言っていないんじゃないですか。
○岸田国務大臣 大事なやりとりを米国側とやっていないという指摘は当たらないと思います。しっかりとこの問題について議論を行っております。
ただ、具体的に、言葉を明示的にやりとりしたかという点につきまして申し上げているだけであります。
○赤嶺委員 明示的にやりとりして、みんながわかるようにすることが大事なんです。そういうことを申し上げておきたいと思います。
次に、臨時制限区域の問題ですが、四月十四日の作業部会では、沖縄県がブイやフロートの撤去を求めたのに対し、政府は、フロートの撤去には応じる姿勢を示したわけですが、ブイの撤去や臨時制限区域の撤廃については応じませんでした。
防衛省に確認をいたしますが、和解の成立を受けて、沖縄防衛局は、埋立承認取り消し処分の審査請求と執行停止申し立てを取り下げました。現在、翁長知事が昨年十月に行った埋立承認取り消し処分が有効になっていると思います。その点の確認と、有効になっているのであれば、フロートに限らず、ブイや臨時制限区域も撤去すべきじゃないかということを伺いたいんですが、いかがですか。
○山本政府参考人 お答え申し上げます。
三月四日の和解合意によりまして、沖縄防衛局長は、行政不服審査法の審査請求及び執行停止申し立てを取り下げたところでございます。それによりまして、国土交通大臣による沖縄県知事の埋立承認取り消し処分に対する執行停止は効力を失っているというふうに考えております。
一方、今回の和解によりまして、政府といたしましては、和解で中止の対象となる埋立工事とは、埋立承認の対象である工事、作業であり、中止とは、工事を進めず現状を維持することであると考えており、保存、管理行為、原状回復工事などは中止には含まれないと考えており、その旨を、先般、十四日の作業部会においても御説明したところでございます。
○赤嶺委員 一方的な態度ばかりとっているんですよ。
あそこにブイやフロートが設置されたり、臨時制限水域が改めて設けられたのは、皆さん、埋立工事をするためですよね。しかし、今、埋立工事をする根拠はないわけですよ。翁長知事の埋立承認取り消しが有効なわけですから。
だから、埋め立てのためのフロート、フロートはもちろん撤去しますね、これも確認いたしますけれども、フロートは撤去するんですか。であれば、ブイや臨時制限区域も撤廃すべきじゃないですか。どういう根拠に基づいてそれを撤去しないと言っているんですか。
○山本政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど申し上げましたように、和解で中止の対象となる埋立工事とは、埋立承認の対象である工事、作業であり、中止とは、工事を進めず現状を維持することであると考えており、保存行為、管理行為、原状回復工事などは中止に含まれない旨、さきの作業部会で御説明をいたしました。
その上で、政府側からは、和解条項上の中止についての考え方は変わらないという前提で、さらに調整が必要だが、和解に基づく協議の趣旨を踏まえ、フロートについては撤去につき前向きに検討してまいりたい旨御回答したところでございます。
○赤嶺委員 フロートが撤去されるのは、やはりこれは埋立承認が取り消されたことが大きく影響しているわけですね。
ブイの設置も臨時制限区域も、埋立承認が取り消されたならば法的根拠がなくなるわけですよ。撤去しないという法的根拠はありますか。
○岸委員長 山本審議官、時間が来ております、簡潔にお願いします。
○山本政府参考人 お答え申し上げます。
政府といたしましては、和解条項上の中止についての考え方は変わらないという前提で、さらに調整が必要だが、和解に基づく協議の趣旨を踏まえ、フロートについては撤去につき前向きに検討してまいりたい旨御回答したと承知をしております。
○岸委員長 赤嶺君、時間が過ぎております。
○赤嶺委員 法的根拠も全く曖昧なままです。
終わります。