沖縄県の先島諸島への自衛隊配備をめぐり、地元住民対象の説明会で防衛省が「中国脅威」を公然と展開していたことが判明しました。4月1日の衆院外務委員会で日本共産党の赤嶺政賢議員が取り上げました。
赤嶺氏は、昨年7月に宮古島の自衛隊協力隊が開いた住民説明会で、沖縄地方協力本部の山根寿一本部長が中国の国防予算増額などをあげ「10年以内には米国を追い越し、世界一の軍事大国になる」と述べていると指摘。政府見解との関係をただしました。
鈴木敦夫防衛政策局次長は「(山根氏の説明は)正式な見解ではない。防衛省は特定の国を脅威としない」と表明。赤嶺氏は「いたずらに中国脅威をあおる説明はやめるべきだ」と指摘しました。
2014年11月に日中両政府は「対話と協議を通じて情勢の悪化を防ぐ」と合意しています。赤嶺氏は、防衛省が尖閣諸島周辺を射程に収める地対艦ミサイル部隊を先島諸島に配備する計画は合意に矛盾すると指摘。「どんな問題も平和的に話し合いで解決する立場に徹するべきだ」と主張しました。(しんぶん赤旗 2016年4月4日)
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議事録
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
きょうは、先島諸島への自衛隊配備について質問をいたします。
防衛省は、昨年五月以降、副大臣らが宮古島、石垣島を訪れ、新たな陸上自衛隊の部隊を配備する方針を明らかにしました。
宮古島の候補地とされた地元の福山、野原という自治会組織は、いずれも配備反対の決議を上げています。石垣島の開南、嵩田、於茂登という地元の三地区も、配備反対の抗議文を決議し、説明会を拒否することも確認しております。地元住民は、配備に反対であります。
自治体については、宮古島、石垣の両市長は、いずれも正式な態度表明には至っていません。これまで市として住民説明会の開催を求めているわけでもありませんでした。ところが、そうしたもとで、一部住民を対象とした説明会が行われ、防衛省・自衛隊の担当者がそこに赴いて説明を行うということが繰り返されております。
防衛省に聞きますが、昨年五月以降、宮古島、石垣島のそれぞれ現地に赴いて、市長や市議会、住民に対する説明を、いつ、誰が行ったか明らかにしていただけませんか。
○谷井政府参考人 お答えいたします。
防衛省といたしましては、我が国周辺の安全保障環境が一層厳しさを増す中、南西諸島の防衛体制の充実は極めて重要な課題だと考えておりまして、昨年五月、左藤前防衛副大臣が宮古島市長に対し、また、昨年十一月には、若宮防衛副大臣が石垣市長に対し、それぞれ警備部隊、地対空誘導弾部隊、地対艦誘導弾部隊の配備、配置を申し入れております。
先島諸島への陸上自衛隊の部隊配置につきましては、これらの申し入れ以降も、沖縄地方協力本部長あるいは沖縄防衛局企画部長等が、市長、市議会及び住民の方々に対して理解と協力を得るべく説明を行ってきており、宮古島に関して申し上げれば、直近で、平成二十七年九月六日、十月八日及び二十八年一月二十一日に説明を行ってきています。また、石垣島に関して申し上げれば、平成二十八年二月十一日、同月十二日及び同月十五日に説明を行ってきております。
なお、市議会議員の方々や市民団体の方々から先島諸島への陸上自衛隊の部隊配置に係る要請がなされた場合には、沖縄防衛局長等が対応させていただいております。
○赤嶺委員 そこで外務大臣に伺いますが、外務大臣は、昨年の安保法制の審議の際に、日本政府として中国を脅威とみなしていないことを明らかにしています。この立場、今も変わりありませんか。
○岸田国務大臣 御指摘の去年八月五日の参議院平和安全法制特別委員会での答弁ですが、答弁させていただきましたように、我が国は中国を脅威とみなしておりません。中国が平和的に発展することは日本にとっても大きなチャンスであると認識しており、かかる認識は今も変わっておりません。
ただ一方で、中国の不透明な軍事力の強化、海空域における活動の活発化は、地域共通の懸念事項になっている、これも事実であると考えます。
ぜひ、さまざまなレベルで対話を積み重ね、安定的な友好関係を発展させていきたいと考えています。
○赤嶺委員 防衛省も同じ見解ですか。
○鈴木政府参考人 お答え申し上げます。
我が国の防衛政策は、中国を含め特定の国を脅威とみなし、これに軍事的に対抗していくという発想には立っておりません。
その上で、中国の軍事動向等に関する認識を申し上げれば、中国は、十分な透明性を欠く中で、軍事力を広範かつ急速に強化し、その活動を質、量ともに急速に活発化させています。
また、それらの活動には、東シナ海や南シナ海における現状を一方的に変更し、事態をエスカレートさせ、不測の事態を招きかねない非常に危険なものも見受けられます。
このような中国の動向は、我が国を含む地域、国際社会の安全保障上の懸念となっていると認識しております。
○赤嶺委員 去年の七月に、宮古島の自衛隊協力会が開いた住民説明会があります。その説明会で、沖縄地方協力本部長の山根氏は次のように説明をしています。ちょっと読み上げてみたいんですが。
最も彼らが厄介なのが何かといったら、これです、国防費。十年で四倍、そして二十年で十倍になっています。これはなぜ厄介かといいますと、国防費がふえているということは、それだけ能力が上がっているということです。今は世界最強の軍隊は間違いなくアメリカです。アメリカをあと何年かで追い越します。間違いなく数年のうち、十年以内には多分世界第一の軍事大国になると非常に我々は思っています。こう述べているわけですね。
防衛省に聞きますが、中国が十年以内にアメリカを追い越して世界第一の軍事大国になる、これは防衛省の見解ですか。
○鈴木政府参考人 中国の防衛力に関しまして、シンクタンクを初めさまざまな認識があることは承知しております。その中で、今委員御指摘のような指摘があることも存じ上げておりますけれども、それは防衛省としての見解ではございません。
また、なおかつ申し上げれば、我が国の防衛政策というのは、どこか特定の国を脅威とみなし、これに軍事的に対抗していくという立場はとっておりませんということは繰り返し申し上げます。
○赤嶺委員 山根氏はさらに引き続いて、中国が沖縄本島と宮古島の海峡を抜けて海洋進出を進めている事例として、小笠原の中国漁船によるサンゴの密漁を挙げています。しかし、この問題も、日本政府と中国政府が連携して対応に当たっていた問題であります。
地元の住民団体が反対を表明しているにもかかわらず、一部の住民に対して、しかも中国の脅威をあおって説明を繰り返すというようなやり方は、やめるべきではありませんか。
○真部政府参考人 若干繰り返しになって恐縮でございますが、防衛省といたしましては、南西地域の安全保障環境が厳しさを増している中で、島嶼部の安全、安心の確保が重要な課題となっておりますこと、それから、南西諸島の防衛体制の強化の観点から地理的にも重要な場所に位置していることなどから、宮古島、石垣島に部隊を配置して、力を背景とした現状変更の試みは許容しないとの意思をより一層しっかりと示していくことが必要だろうというふうに考えております。
そのような観点から、地元の関係のこういった市町村あるいは住民の方々にも、さまざまな機会を活用いたしまして、そういった部隊配備の必要性といったことについて丁寧に御説明をしてまいることが重要だろうというふうに思っておる次第でございます。
今後とも、御理解いただけるように努力をしていきたいと思っております。
○赤嶺委員 その防衛省から宮古島で説明している人が、政府見解と違うような、中国は世界一の最強の軍隊を持つようになるんだとか、サンゴの密漁をとってみても軍事的な対応が必要になってくるんだとか、いわゆる脅威をあおるような説明をしているわけですね。そういう説明でいいわけですか。いかがですか。
○真部政府参考人 恐縮でございますが、今委員御指摘の、山根地方協力本部長の説明ぶりといったものを紹介いただいたわけでございますけれども、私どもとしては、先ほども鈴木次長なりが申し上げているような私どもの基本的な考え方、この方面の防衛に関する考え方に沿って説明をいたしているものという認識でございます。
○赤嶺委員 いや、山根さんは政府の代表として説明に行ったわけでしょう。それが先ほどの政府の説明と違っているじゃないですか。それを聞いているんですよ。そういう説明の仕方、やめるべきじゃないかということを聞いているんですよ。いかがですか。
○真部政府参考人 繰り返しになって申しわけないと存じますけれども、山根地方協力本部長の説明ぶりは、基本的に私どもの防衛省の考え方に沿って説明をしてきているものというふうに認識をいたしておる次第でございます。
○赤嶺委員 世界最強の軍隊になるとか、小笠原のサンゴの密漁の対策の上でも中国の脅威に対して軍事的対応をするというのが政府の立場ですか。
○鈴木政府参考人 御答弁申し上げます。
山根本部長からのお話の中で、恐らく、先ほど申し上げた中国の軍事動向、過去の事実等申し上げれば、公表国防費というものが八九年以降ほぼ一貫して二桁の伸び率を記録して、二十八年度で約四十四倍に拡大ですとか、それは今の日本の防衛関係費の約三・七倍の水準になっているというようなことは事実でございます。
その中で、さらに、先ほど申し上げましたような将来予測みたいなことにつきましては、各種のシンクタンク等々で公表されているような、そうしたものを山根本部長の方から紹介したものだというふうに認識しております。
○赤嶺委員 シンクタンクの見解の一つ一つを政府見解だということで、そういう立場で向こうでしゃべっているわけですね。これは政府見解とも違って、いたずらに中国の脅威をあおるようなやり方ではないかと思うんです。私たちはその文書全体について持っております。防衛省としても、ちゃんと把握の上、そういう問題について検証していただきたい。これは引き続き取り上げてまいります。
そこで、最近の日中間の合意との関係について伺いますが、日中両政府は二〇一四年十一月、日中関係の改善に向けた話し合いを行い、尖閣諸島など東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し、対話と協議を通じて、情勢の悪化を防ぐことに合意をしました。
一方、石垣島や宮古島には自衛隊の地対艦ミサイル部隊を配備するというのが防衛省の計画です。射程は百数十キロとされ、尖閣諸島周辺を射程におさめるとされております。一月の安保委員会でも、ヘリ部隊の配備も白紙的に検討しているというのが防衛省の答弁でした。
外務大臣に伺いますが、こうした部隊の配備は尖閣諸島をめぐる最近の日中間の合意に矛盾しませんか。
○岸田国務大臣 御指摘の二〇一四年十一月に発表された文書ですが、日中関係の改善に向け、両国政府間で静かな話し合いを続けてきた結果、日中双方の意見が一致した内容、これをまとめたものです。
四項目が含まれていますが、その中の三項目め、委員の方からただいま御指摘がありました。この項目については、東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有している、こういった認識が示されています。
このことについては、二〇一三年十一月の中国によるいわゆる東シナ海防空識別区の設定、あるいは東シナ海における中国の一方的な資源開発によって、尖閣諸島等、東シナ海の海域において緊張状態が生じている、このことについて異なる見解を有している、こういった内容であります。
よって、先島諸島への新たな部隊配備につきましては、この発表の内容と何ら関係なく、矛盾もしないと考えております。
○赤嶺委員 異なる見解、そして緊張状態、これを対話と協議を通じて情勢の悪化を防ぐというのが日中間の合意であります。
どのような説明を行ったとしても、現実には、尖閣諸島をにらんだ対応であることは明らかであります。とるべきは、日中間の平和的、外交的な解決の努力を強めること。軍事的な対応を強めることは、日中双方が厳しく戒めるべきであります。
防衛省に確認をします。
昨年十一月に、宮古テレビの特集番組が放映をされました。それによると、独自に入手した政府の内部資料に基づいて、昨年五月に副大臣が候補地を公表する前に、宮古島の下地市長が防衛省関係者と複数回懇談し、候補地の一つである千代田カントリークラブの用地取得を働きかけていた事実を明らかにしています。
千代田カントリークラブに係る調整状況という見出しで、昨年一月十五日には地方協力本部長との懇談が行われ、防衛省側に、千代田カントリークラブを駐屯地用地として使用することについて検討をお願いしたいと発言したことが記載されているとしています。昨年三月十三日、沖縄防衛局企画部長、地方協力本部長との懇談では、千代田カントリークラブを全て取得してほしい、使用方法は防衛省に任せる、このように市長が発言したとしています。
こういう事実があったんですか。
○谷井政府参考人 お答えいたします。
先島諸島への陸上自衛隊の配備、部隊の配置について申し上げれば、平成二十六年六月十二日に、当時の武田防衛副大臣が宮古島を訪問し、宮古島市長に対して、宮古島は重要な候補地の一つであり、今後さらなる現地調査を行っていきたい旨説明し、理解と協力をお願いいたしました。
ただ、この場合、具体的な配置先や用地買収について話し合った事実はございません。
○赤嶺委員 武田副大臣の来島の後に、一月十五日の地方協力本部長との懇談、三月十三日の沖縄防衛局、地方本部長との懇談で、先ほどのような、用地について取得してほしいと市長が言ったと、これはテレビの画面に映っているんですよ、文書の文字も全部。
そういう事実は確認しているかということなんですが、いかがですか。
○谷井政府参考人 お答えいたします。
繰り返しになって恐縮でございますが、防衛省といたしましては、一昨年六月十二日に、当時の武田防衛副大臣が宮古島を訪問した、その際、理解と協力をお願いしたということだと承知しております。
○赤嶺委員 それでは、資料を要求したいんですが、昨年の五月までに宮古島市長と防衛省側が面談したことはあったかどうか、そして、その日時、出席者、面談内容、これを明らかにしていただけますか。
○真部政府参考人 今の御要請でございますが、宮古島市の方ともよく調整いたしまして、確認できるものについて調べてみたいというふうに考えます。
○赤嶺委員 どんなふうに候補地を選定していったのか、配備の大前提にかかわる問題です。非常に不透明な過程があります。
宮古島市長と防衛省との会談の記録を明らかにするよう求めまして、質問を終わります。