日本共産党の赤嶺政賢議員は3月19日の衆院沖縄北方特別委員会で、沖縄県の国民健康保険制度の問題を取り上げ、「沖縄戦の影響という特殊な事情に着目した財政支援の検討を」と求めました。山口俊一沖縄担当相は「しっかり厚労省にお願いをし、交渉させていただく」と明言しました。
那覇市の国保事業は、2008年度に10億円近い赤字になったのをはじめ、ここ数年は毎年10億円近い赤字が発生しています。赤嶺氏は、保険料の収納率が全国平均よりも高く、1人当たりの医療費も少ない那覇市の国保会計の実態を紹介。「これでなぜ赤字が増えるのか」とただし、赤字の発生は、「前期高齢者交付金制度の実施(08年度)と関係が深い」と指摘しました。
前期高齢者交付金制度は、前期高齢者(65歳~74歳)の偏在による医療費負担の不均衡を是正する目的で設けられた制度のことです。
赤嶺氏は、同交付金による前期高齢者医療費の補てん率が、他県と比べて極端に低くなっている実態を告発。その要因として、「前期高齢者世代の多くが、あの沖縄戦で犠牲になったために、前期高齢者の加入率が、他の自治体に比べ低くなっている」と指摘しました。
「全国一律の制度を沖縄に当てはめた結果、沖縄だけが極端に交付金が少なくなる」とのべ、沖縄の事情に配慮した財政支援の検討を求めた赤嶺氏。これにたいし、厚生労働省の吉田学大臣官房審議官は「十分認識を深め、検討する」と答弁。山口沖縄担当相も「しっかり厚労省と交渉する」と答えました。(しんぶん赤旗 2015年3月20日)
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沖縄の国保に財政支援を 赤嶺衆院議員が「戦争の影響」を指摘 20150319衆院沖特委
議事録
○赤嶺委員
それで、きょうは実は、沖縄の国民健康保険税の問題について取り上げたいと思います。いろいろな方々が努力されていることはよく認識した上での質問であります。
資料をお配りいたしました。この資料が五枚にわたっておりますが、資料の多さは、私が沖縄の国保税にかける思いのたけとして、もっとふやしたかったんですが、これにとどめているということで御理解いただきたいと思います。
この資料の一は、沖縄県の那覇市の作成した資料で、本土に復帰した一九七二年以降の那覇市の国保財政の推移についてまとめたものです。沖縄では、国民健康保険制度も米軍統治下ではありませんでした。その年から始まりました。数字だけではなんだろうと思いまして、この数字をグラフにしたのが次の二ページ目の資料であります。
実は、私は那覇の市会議員を務めていたこともありまして、この国民健康保険制度には大変苦労をしたんです。本土復帰後、国保財政は那覇市では赤字が続いておりました。ところが、一九九三年、グラフでいうと平成五年以降、改善傾向にありました。しかし、二〇〇七年度、グラフでいいますと平成十九年度にも一度赤字が出ていますが、その後の二〇〇八年度、平成二十年度以降にいきなり赤字の幅が十億円に上る。その後も、極端な赤字を出しています。
私にとっては、那覇市の国保財政が黒字になっているということ自身が、私の市会議員時代に比べたらとても考えつかないような事態で、大変驚いておりました。本当に改善されているんだなということを見ていましたら、突然、最近赤字がふえている。
この赤字が出始めたのが、前期高齢者交付金制度が実施され始めてからであります。赤字額が十億円を超え、ここ数年では毎年十億円近い新たな負債額も抱えるようになってきました。
那覇市では保険料の収納率、これは、私が那覇の市会議員をやっていた時代は収納率が九割になることは一度もなかったんですよ。それでペナルティーを受けて、国保税が高くなる、こういう苦しみを経ておりましたが、ここ十年、九〇%を超えているわけです。九二%にもなっております。
この那覇市の収納率というのは、全国平均と比べても高いと思いますが、いかがですか。
○吉田政府参考人
お答えいたします。
市町村国民健康保険の保険料収納率については、平成二十五年度の速報値で、全国平均値は九〇・四二%のところ、那覇市は九三・一六%というふうに承知をしてございます。
○赤嶺委員
これは、那覇市の国保加入者の実態や国保の運営を知る者にとっては大変驚くべき数字なんですよ。全国平均を超える。やはり国保の当事者は一生懸命頑張ったんだなと、最初聞いたときは信じられない数字でありました。
収納率は上がった。しかし、赤字は大きくなる。しかし、一人当たりの医療費はどうかといいますと、全国に比べて沖縄県は最下位であります。那覇市も高くはありません。医療費もかからないのに、そして保険料の収納率は高いのに、大幅な赤字が続く事態になっている。
これは厚労省、どんなふうに考えておられますか。
○吉田政府参考人
お答えいたします。
にわかな御質問でございますので、那覇市の国民健康保険の状況そのものをどう評価するかについては、今御指摘がございましたような、収入の面そして支出の面、総合的に判断をさせていただきたいと思いますけれども、まず、関係者の方々のお話もよく伺わせていただきたいと思います。
○赤嶺委員
にわかな質問と言われましたが、それじゃ、やはりちょっと資料を説明させていただきます。
那覇市も赤字が続いておりますが、沖縄県も全体として赤字が続いております。その赤字が出始めた時期というのが、前期高齢者交付金制度の実施の時期と関係があります。
資料三をごらんになっていただきたいんですが、これは厚労省がつくられた資料をもとに作成したものであります。具体的に、那覇市と、前期高齢者の人数や前期高齢者にかかっている医療費が大体同じ値である佐賀市と比較してみました。
左下のグラフをごらんになっていただきたいんですが、那覇市と佐賀市、前期高齢者にかかっている給付費の総額はほとんど同じでありますが、前期高齢者を対象にした交付金の額は、佐賀市が六十二・七億円なのに対し、那覇市はわずか約三十五億円であります。那覇市は、佐賀市の半分近くしか交付金を支給されていません。
さらに、この交付金が前期高齢者にかかった医療費をどれだけカバーしたか、その補填率を見てみました。佐賀市は六八・七%、七割近くも補填しているのに、那覇市は三五・〇%しか補填できていません。佐賀市が特別多いというわけではなく、都道府県別に見た補填率の全国平均は六九%です。沖縄が際立って低いわけです。
それで、資料四もごらんになっていただきたいんですが、都道府県別に全国の交付金の補填率を見たところ、沖縄県は、二番目に低い東京都の二分の一以下であり、他県と比べて沖縄だけに極端な格差が生じていることがわかります。
前期高齢者交付金制度、これをつくったときの、国保改革の際の、二〇〇三年、平成十五年三月二十八日に閣議決定で基本方針が定められております。そこには、基本的な方向としてどのように書かれておりますか。
○吉田政府参考人
お答えいたします。
今御指摘のありました平成十五年三月二十八日の閣議決定、「健康保険法等の一部を改正する法律附則第二条第二項の規定に基づく基本方針について」というものでございますが、その中では、「前期高齢者については、国保又は被用者保険に加入することとするが、制度間の前期高齢者の偏在による医療費負担の不均衡を調整し、制度の安定性と公平性を確保する。」と書かれているところでございます。
これに基づきまして、高齢者の医療の確保に関する法律で、今御指摘いただきました前期高齢者の医療費に関する財政調整の仕組みを設けたところでございますけれども、これは、保険者間で、六十五歳から七十四歳、いわゆる、今先生御指摘いただいております前期高齢者が偏在することによる医療費の負担の不均衡を是正するということでございまして、国民健康保険あるいは被用者保険、各保険者が前期高齢者加入率に応じて負担するという財政調整でございます。
幾つか御指摘いただきましたけれども、今私どもの手元にございます平成二十四年度の賦課ベースの前期高齢者の加入率を拝見いたしますと、被用者保険、国民健康保険を通した全制度の全国平均が一二・九、それに対して、市町村国保だけを取り上げますと、そのグループの前期高齢者加入者率が三二・三、そのうち、今都道府県別で御指摘いただきました市町村国保を沖縄県でまとめますと、その沖縄県国保の前期高齢者加入率が一八・一という数字になってございまして、このあたりの違いが反映しているものというふうに理解をしてございます。
○赤嶺委員
ですから、六十五歳から七十四歳までを前期高齢者と呼び、その交付金を創設するに当たっては、偏在が起こり得るので、公平に、制度の安定化と公平性を図っていきましょう、こういう閣議決定をやったわけですね。
ところが、沖縄が極端な形になって、その制度が始まった途端、制度が不安定になり、そして前期高齢者交付金が公平に支給されていないというような実態が生まれてくる。
これで、先ほどの資料三の右下のグラフに書いておきましたが、那覇市と佐賀市では、前期高齢者の人数はほぼ同じなんです。国保の加入者総数に大きく差があるため、前期高齢者の加入率は、佐賀市が三一・五、那覇市は一九・〇、これが国保制度の不安定につながっているということになるわけです。
沖縄だけが極端に加入率が低いんです。なぜ低いかといえば、やはりその時期の世代の人たちがあの沖縄戦で大きな犠牲になり、ちょうど七十歳が戦争体験ゼロ歳児ですから、戦争の最中に生まれて、今、沖縄では、戦後七十年、ゼロ歳児が戦争体験を語る、そういう運動が起こっております。
そういう戦争の影響で前期高齢者の加入率が低くなっている、この認識は共有できると思うんですが、いかがですか。
○吉田政府参考人
沖縄県の国保について、前期高齢者の数が、それより年少世代に比べて相対的に少ないということについては、今御指摘もいただきましたように、これまでも沖縄県の国保関係者の方々から、戦争の影響があるというお話を伺っているところでございます。
○赤嶺委員
戦争の影響があることは明らかなんですよ。七十歳から七十四歳までの人口が沖縄では少ない。したがって、そういうもので、全国一律の制度に沖縄を当てはめた場合に、沖縄だけが極端に交付金が少なくなり、沖縄の国保制度、せっかく収納率も全国に追いつけ、追い越そう、収納率が低いときに、私も当時胸が痛かったですよ。低所得者の多い国保の加入者、それに対して収納率を上げなければ国からペナルティーがやってきて、さらに国保税を上げなきゃいけないという悪循環。しかし、そういう国保の値上げを何とかして下げようと一生懸命頑張ってきた。
私は、沖縄の収納率が高くなっているということは、厚労省も、それから山口沖縄担当大臣は直接の担当者でなくても、声を大にして誇っていいことだと思いますよ。沖縄の市町村はよく頑張った、そして戦争の影響を受けて人口が少ないために交付金が少なくなっていると。
いろいろな考え方があるんでしょうけれども、そして政府や与党の中でも検討されているという話も伺っておりますが、戦争の影響による沖縄の特殊な事情に着目した財政支援、これを明確にしたものを、例えば特別調整交付金でそういうメニューを設けるなどと検討していただきたいんですが、いかがですか。
○吉田政府参考人
委員の御指摘にありましたように、国民健康保険、いろいろな課題を抱えてございますので、現在、国会に関係法律の改正案を提出してございます。国保改革を今進めようとしてございます。
その中におきまして、平成二十七年度から低所得者対策として約千七百億円の保険者支援制度の拡充、あるいは、平成三十年度以降、子供の多い自治体、あるいは医療費の適正化など取り組みを進める自治体に対するさらに千七百億円の財政支援を実施するということを盛り込んでございます。
このような毎年三千四百億円の公費の拡充を通じて沖縄の国保の改善も図られるものと思っておりますけれども、引き続き、沖縄の国民健康保険が置かれている状況についても十分に認識を深めて、検討してまいりたいというふうに思っております。
○赤嶺委員
最後に山口大臣にお伺いいたしますが、特別調整交付金の中で、前期高齢者が少なくなった場合に、それを手当てするメニューというのは現にあるんです。
これは、東日本大震災に伴う失業者等の一時的な市町村国保への加入により、前期高齢者交付金が一時的に一定以上減少した岩手県、宮城県、福島県の市町村国保に対し、保険料負担の急増を回避しつつ財政運営の安定化を図るため、前期高齢者交付金の一時的減少に伴う負担増加分を財政支援する、こういう制度が今実施されております。
大臣、宮城県や岩手や福島のような、そういう制度があるじゃないかということで、厚労省や財務省にもかけ合っていただいて、やはり戦争を原因として前期高齢者の加入率が少ないというものに特化した制度をつくるべきだよと声を大にして後押ししていただきたいんですが、いかがですか。
○山口国務大臣
ただいま委員御指摘の件につきましては、私も十二分に承知をいたしております。知事さんの方からも御陳情いただいておりますし、南城市長さんの方からもお話はお伺いをしております。
そこら辺は、先ほど来、厚生労働省の方の答弁にもありましたけれども、一つには、ちょうど国保改革の時期でもございまして、そういう中でということと、今先生御指摘の件もございますので、あわせて、私からもしっかりと厚生労働省の方にお願いをしていきたい、交渉をさせていただきたいと思っております。
○赤嶺委員
終わります。