日米両政府が沖縄の米海兵隊普天間基地(宜野湾市)に配備を狙う垂直離着陸機MV22オスプレイ。日本共産党の笠井亮、赤嶺政賢両衆院議員が15日に国会で行った追及は、同機が持つ危険性、普天間配備の問題点をいっそう明らかにしました。
沖縄全域で訓練
防衛省は13日、オスプレイの普天間配備にかかわる米軍の「環境審査(レビュー)」を公表しました。
赤嶺氏が衆院安全保障委員会で指摘したように、環境レビューは、普天間基地を飛び立ったオスプレイが伊江島補助飛行場、北部訓練場、中部訓練場など沖縄本島全域で訓練を行うことを明記しています。
さらにオスプレイが訓練で使用する「戦術着陸帯」は50カ所にのぼります。
赤嶺氏は、狭い沖縄にこれだけの着陸帯があるのは異常であり、撤去すべきだと主張。それとは逆に日本政府が東村(ひがしそん)高江地区を取り囲むようにして新たに6カ所の着陸帯を建設しようとしていることを批判し、取りやめるよう求めました。
高くなる事故率
日本政府はこれまで、海兵隊のMV22オスプレイの事故率について、現在使われているCH46ヘリコプターよりも低いとし、その「安全性」を宣伝してきました。
しかし、赤嶺氏が指摘したように、米軍提出資料によれば、今年4月にモロッコで起きたMV22の墜落事故を含めると、10万飛行時間あたりの事故率は1・93となり、CH46の1・11を上回りました。
加えて、空軍のCV22オスプレイは2010年に続き、今月13日にも墜落事故(米国フロリダ州)を起こしています。これらを含めれば事故率はさらに高まることになります。しかし、政府は「海兵隊用(MV22型)と空軍用(CV22型)のオスプレイは別」とし、両者を合わせた事故率は示してきませんでした。
赤嶺氏は、米軍の環境レビューでは、CH46ヘリの場合は、「CH型」だけではなく、「H46」という形で、その他のモデルを合わせた事故率も示していることを指摘。オスプレイも、海兵隊・空軍を合わせた「V22」の事故率を示すべきだと迫りました。
森本敏防衛相は「(MV22とCV22の)基本設計は同じだ。どういう方法で説明すればよいのか速やかに検討したい」と答弁しました。
「どこにでも墜落」
オスプレイには「オートローテーション(自動回転)」機能が欠如しているという構造的欠陥も指摘されています。
自動回転機能とは、ヘリなどの回転翼航空機のエンジンが停止した場合、機体の落下で生まれる空気の流れで回転翼を回し、揚力をつくりだして緊急着陸する能力です。
笠井氏は衆院外務委員会で、米国防長官が設置した「V22プログラム審査専門委員会」の報告書を紹介。同報告書は、「V22は他のどのヘリよりも自動回転能力が劣っている」とし、「エンジン停止時の運航方法を見直すべきだ」と提起しています。
笠井氏はさらに、オスプレイの技術データの元主任分析官レックス・リボロ氏が「オートローテーション機能の欠如による事故はいつか起こり得る」「(エンジンが停止すれば)MV22は操縦不能になり、どこにでも墜落する」と指摘していることを紹介しました。
笠井氏は、米軍ヘリの普天間基地上空の飛行高度は1000フィート(約300メートル)未満に設定されていると指摘。ヘリモードのオスプレイのエンジンが万一停止すれば、固定翼機モードに移って滑空することもできず、墜落する危険は避けられないと述べ、「2004年の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故の二の舞になりかねない」と強調しました。
夜間飛行も増加
米軍の環境レビューによると、普天間基地での夜10時~翌朝7時までの飛行回数が現在のCH46では年76回となっています。ところが、MV22オスプレイが配備されれば、280回と3・7倍も増加します。
赤嶺氏は、この時間帯はそもそも同基地の騒音防止協定(1996年)で飛行を最小限に制限することが合意されたはずだと指摘。「これまでも米軍の『運用上の所要』を理由に守られてこなかったが、これでは『騒音防止協定など最初から守る気などない』ということではないか」と批判しました。
防衛省の山内正和地方協力局長は「増加の理由について米側に確認を行っている。できる限り夜間飛行を行わないよう米側に強く働きかけたい」と答弁。赤嶺氏は「米軍はいままでの協定さえ守っていないのに、もっと増大させるという。政府は『絶対に受け入れられない』と言うべきだ」と強調しました。(しんぶん赤旗 2012年6月16日)