内部メールを通じ日本共産党の赤嶺政賢議員が暴露した、沖縄・宜野湾市長選(12日投開票)への沖縄防衛局による介入問題。真部朗局長を招致した2月3
日の衆院予算委集中審議を通じて、米軍新基地建設の押し付けを狙った国家権力による選挙への介入であることが鮮明になりました。
新基地推進へ 投票迫る
「県内移設という局の立場で臨むことを、業務である『服務指導の一環』として徹底・指導したということですね」。職員に対する局長「講話」について赤嶺氏はこう追及しました。
「局の立場」とは何か。宜野湾市のど真ん中に位置する米海兵隊普天間基地に代わり、名護市辺野古に最新鋭の基地を建設するということです。それは単に沖縄防衛局の立場ということではなく、日米両政府が「新基地ノー」という「オール沖縄」の声を抑えて推進する政策です。
普天間「移設」問題が重要争点になっている選挙で、そのような立場で臨むよう、局長として服務指導していたのであれば、公務員に中立性・公平性を求める公選法・自衛隊法に明確に違反します。(防衛局職員の身分は自衛隊員)
真部氏は「局の立場で投票に臨めと言ったわけでなく、局の立場をよく勉強してくれ、ということだ」と弁明しました。
しかし、真部氏は防衛局の職員だけでなく、宜野湾市に親族を有する職員のリストを作成し、そのひな型には「家族2」「いとこ4」「親戚2」などといった記入例までありました。“票数”を数えているように読めます。
この問題について、真部氏は赤嶺氏との質疑に先立ち、こう答弁していました。「有権者と接触する機会のある職員にも、教育した方がよいと考えた」
家族・親族の票数を記入したひな型の真意を赤嶺氏がただしたのに対して、真部氏は「私の問題意識としては、親族がいるかいないかが分かればよかった。そこまでの情報が必要だったのか、と思う」と述べ、事実上、答弁不能に陥りました。
さらに、職員に提出した親族情報を「整理したのは事実」だと認めた真部局長。
「もはや、一般的な啓発活動でないことは明らか。防衛局トップの局長が職権を使って、職務命令で職員、選挙権を持つ親族を持つ職員のリストを作成し、局の立場で選挙に臨むよう指導した。国の出先機関、すなわち国家権力による選挙の自由への介入であることは明白だ」
赤嶺氏はこう断じ、野田政権の責任を厳しく追及しました。
「違法性」否定、口裏合わせ
政府側の対応はどうだったのか。
「(国家公務員法に抵触する可能性を)自覚している」。真部氏は1日夜、抗議に訪れた国会議員や県議を前に、こう述べました。
防衛省は現在、違法性の有無をめぐって調査を行っています。しかし3日の集中審議で田中直紀防衛相は調査結果も出ていないのに、「特定の候補者を支持したわけではなく、公務員法・自衛隊法に抵触しているわけではない」と言明。真部氏の対応の問題点については、単に「沖縄県民にご迷惑・心配をかけた」ことにとどめる考えを示しました。
真部局長も、「違法性を自覚している」とのみずからの発言について、「最終的には防衛省の調査で明らかにされる」と逃げました。また、「講話」について「誤解を招くような部分があったことは反省している」と述べるにとどまりました。
赤嶺氏の追及に野田佳彦首相は「政治的な中立性、公正性、こういう点で批判や懸念が出てこざるをえないような状況、事案だと思います。防衛省としては適正な判断をしたうえで対応していただきたい」と述べざるをえませんでした。
防衛局長が職員に対して「局の立場」で選挙に臨むよう教育し、宜野湾市内の有権者リストまで出させた行為を、「法令には反していないが、誤解を生む行為」に矮小(わいしょう)化させるわけにはいきません。
「どこが問題か」 自民・中谷氏 かばい立て
新基地推進の立場 政府・自公 違いなし
一時期は田中防衛相の責任追及に躍起になっていた自民党は同日の集中審議でどう対応したのか。中谷元議員は、沖縄県宜野湾市長選に対する沖縄防衛局の介入について「どこが問題なのか」とかばい立てる態度を示しました。
中谷氏は「選挙が近づいたら『投票に行きましょう』と呼びかけるのは当たり前のことだ」などと述べ、職権による違法な選挙介入を一般的な啓発活動であったかのようにねじ曲げて主張。「世間を騒がせたから処分では、あまりにかわいそうだ」と擁護しました。
さらに中谷氏は、自民党の橋本龍太郎元首相が米軍普天間基地の「県内移設」を決めたのに、民主党の鳩山由紀夫元首相が「県外・国外移設」に言及し「沖縄防衛局の職員は迷惑している。今まで血のにじむ努力をしたのが崩れてしまった」などと主張。「なぜ、普天間から辺野古に(米軍基地を)移転をしなければならないのかを総理が自らの口と態度で示すべきだ」と新基地建設を求めました。
また、公明党の東順治議員は、真部局長の行為の違法性について追及する一方、普天間基地の「移設」問題で首相が沖縄に行って、理解を得るよう要求しました。新基地建設推進という点では、政府と自公両党の間に違いがないことも浮き彫りになりました。(しんぶん赤旗 2012年2月4日)