在日米軍の軍属が公務中に起こした犯罪について日本側による裁判に道を開いたとされる、日米合意(23日)の地位協定運用見直し――。日本共産党の赤嶺政賢議員は11月30日の衆院外務委員会で、「運用の『改善』どころか『改悪』だ」と追及しました。
赤嶺氏は、日米地位協定上「公務中」の軍属の犯罪は米側に第1次裁判権があるものの、1960年に平時において軍属を軍法会議にかけることを違憲とする米連邦最高裁判決が出されたため、60年代から日本側が裁判権を行使してきたと説明。ところが、米国が2000年に軍事域外管轄権法(MEJA)を制定し、平時でも軍属裁判が米国内で行えるようにしたと強調しました。
権利奪わねる
○玄葉光一郎外相 米国の法律などについて調査させてもらいたい
赤嶺氏が、「裁判権が奪われる事態になったのに何の危機感も持っていなかったのか」と畳みかけると、玄葉外相は「当時の状況はきいていない」としか答えられません。
米有利の合意
赤嶺氏は今回の日米合意が、公務中に犯罪を起こした軍属に対する第1次裁判権は米側にあり、MEJA法に基づき米国内で裁判を行うことまで認めてしまったと指摘しました。
●赤嶺 実質的には日本側が裁判権を行使してきたものを、米側が第1次裁判権を行使し、米国で裁判にかけることまで認めてしまったものではないか。
○外相 合意が十分かといわれれば…一定の前進という評価だ。米側に裁判権はもともとあった。
原則譲り渡す
赤嶺氏は、83年に外務省が作成した機密文書「日米地位協定の考え方・増補版」で、軍属の犯罪について日本が「専属的裁判権を行使しているごとき現象を呈している」として、その実態に合わせ「日米合意を改めるべきである」と明示していたことに言及。「その改定作業を怠り、『軍属は日本側で裁く』という原則まで譲り渡したのが今回の合意だ。『運用改善』どころか『改悪』だ」と強調しました。
玄葉外相は、「改悪とは思っていない」と繰り返すだけ。赤嶺氏は、MEJA法でさえ、接受国(駐留国)が軍属犯罪を訴追するかどうか判断することを認めているが、今回の日米合意はそれさえないと批判。玄葉外相は、「MEJA法に優先して、日本による裁判権を創設的に認めねものではないと考える」と釈明しました。(しんぶん赤旗 2011年12月1日)