昨年秋、中国漁船の衝突事件以後、政府が宣伝する「沖縄の負担軽減」と逆行する事態が進んでいます。一つは沖縄周辺海域での米軍の訓練強化、もう一つは南西諸島地域での自衛隊強化の動きです。
この間題は日本共産党の赤嶺政賢議員が2月3日の衆院予算委員会で取り上げました。
沖縄の漁業にとって重大なのは、米軍基地の存在です。周辺海域には、日本の領海、排他的経済水域にもかかわらす、合計で29カ所、約5万5000平方㌔㍍もの広大な米軍訓練水域が周辺海域に設定されています。尖閣諸島にも2カ所射爆撃場と水域がおかれています。
さらに昨年12月の日米統合演習では、区域外での訓練まで実施されました。先月も、米軍が15日前までの通告義務を果たさず、航行警報によって区域外を含む海域で爆撃訓練を実施することが判明。県と地元漁連の抗議で中止に追い込まれました。
「米軍訓練水域は沖縄本島の4倍の面積だ。またなぜ区域外での訓練を行うのか」との赤嶺氏の指摘に、北沢俊美防衛相は「(先月の)演習はなくなった」との答弁に終始しました。
菅政権は昨年末に決定した新「防衛計画の大綱」に基づき、与那国島への陸上自衛隊・沿岸監視部隊の設置、航空自衛隊那覇基地の戦闘機部隊の増強など南西地域への軍備拡大を打ち出しました。
負担軽減とは反対の軍備拡大の動きに県民の懸念は強まり、与那国町では昨年9月の町議選で、自衛隊誘致に反対する議員2人が当選し、推進派町長の〝オール与党体制″に変化が生じました。
名護市辺野古への新基地押し付け、広大な訓練水域や区域外での演習、南西地域への自衛隊増強――。赤嶺氏は「これでは沖縄の『軍事要塞(ようさい)化』ではないか」と追及しました。
周辺海域の漁業事情
沖縄周辺海域の漁業事情はどうか――。
尖閣諸島近隣の石垣島、宮古島の漁業は、尖閣周辺より南の海域深海でのマグロ漁が主です。沖縄県全体でも、魚種別生産量はマグロが52%と半数以上を占め、次いでイカ、カジキ、カツオなど(県農林水産部)。石垣島などの漁民が尖閣諸島で操業しないのは、燃料の高騰、漁価の低迷などが理由で、尖閣周辺まで移動し魚を捕っても採算が取れないためです。
対して中国漁船は、夏期休漁期があける一定時期に尖閣周辺の浅い海域でカワハギ漁を行うといい、日中の漁船は共存共栄してきました。
日中両政府は1997年、漁業協定を結び、両国が主張する排他的経済水域で、お互いの漁業者が安全に操業できるルールづくりを進めてきました。今回のような事件を繰り返さないための両国間の話し合いが必要です。(しんぶん赤旗 2011年2月8日)