「海賊対処」派兵新法案の再議決を求める動議に対し、日本共産党の赤嶺政賢議員が19日の衆院本会議で行った反対討論は次の通りです。
本日参議院で否決された、「海賊対処」法案、租税特別措置法案、国民年金法案の三つの法案について、政府・与党が、参議院の意思を一顧だにせず、ただちに衆議院で再議決し成立させようとしていることに強く抗議するものであります。
参議院で与野党の議席が逆転して以降、福田内閣での新テロ法をはじめ、3分の2の多数による再議決が計6回行われましたが、今回は、たった1日で、内容の異なる重要法案を3本まとめて押し通そうとしています。前代未聞の暴挙であり、断じて容認できません。
本法案は、「海賊対処」を口実にして、自衛隊の海外活動と武器使用権限を拡大し、憲法9条が禁ずる海外での武力行使に道を開くものであり、断じて容認できません。
この間の審議ではっきりしたことは、軍隊の派遣でソマリア沖の海賊問題を解決できないことです。
そもそも、ソマリアは、欧米列強やエチオピアの植民地として分割・統治され、1960年の独立後は、米ソが競い合って軍事政権を援助し、大量の武器の流入を招きました。
91年に内戦状態に陥って以降は、国連の平和執行部隊の派遣が失敗し、「対テロ戦争」の名による米軍の空爆と軍事介入が行われてきました。その下で、外国船による違法操業、有毒廃棄物の不法投棄が横行し、追い詰められた漁民らが海賊に動員される状況を生み出したのです。
外部勢力の不当な介入に翻弄(ほんろう)されてきた歴史をもつ国で、「海賊対処」と称して軍隊を派遣することは、ソマリアの人々にさらなる不信をひろげるだけです。
昨年から、各国がソマリア沖に軍隊を派遣しましたが、海賊事件は減るどころか、増えているのが実態です。4月には、米軍が人質救出のために海賊3人を射殺し、海賊が「報復」を宣言する事態になりました。力でねじふせるやり方は、事態を悪化させるだけです。
ソマリア沖の海賊問題を解決する道は、軍隊を派遣することではありません。長期にわたる内戦を終結させ、人々が生活できる環境をつくる、そのための支援こそ必要です。
ソマリアでは、地域主導の粘り強い和平努力が行われ、昨年8月、暫定連邦政府とソマリア再解放連盟の穏健派グループが武力行使の停止などで合意しました。いま、かつてない広範な勢力が結集した暫定連邦政府を中心に、さまざまな問題を抱えながらも、内戦終結と国民的和解に向けた努力がつづけられています。
憲法9条をもつ日本は、こうした地域主導の和平努力への支援、民生支援こそ積極的に行うべきです。船舶の安全確保は、航路の迂回(うかい)などで可能であり、現にそうした方法をとっている商船も少なくありません。
それでも政府が自衛隊派遣に固執するのは、結局、米軍支援が目的と言わなければなりません。
シーファー前駐日米大使は、1月の講演で、オバマ新政権に対し、日本ができることを自ら提案するよう促し、その一つに海賊からのシーレーン防衛をあげました。
海上自衛隊のP3C哨戒機の派遣は、米軍の要請を受けたものであり、対アフガン作戦に哨戒機を集中させた米軍の肩代わりにほかなりません。
P3Cによる情報提供は、「海賊対処」だけでなく、対テロ戦争、ソマリア本土への空爆など、米軍の軍事作戦全体を支援することになるのです。
しかも政府は、治安の安定が指摘されるジブチに、海外派遣の中核部隊として新編した陸上自衛隊中央即応連隊を派遣しました。インド洋で給油活動を行う海上自衛隊と合わせ、陸海空3自衛隊約900人がアデン湾周辺に展開する事態になっているのです。
アメリカ言いなりで、自衛隊を海外に派遣するのは、やめるべきです。法案を押し通し、自衛隊海外派兵恒久法への突破口にするなど、言語道断です。
法案は廃案にし、海賊問題の解決に逆行する自衛隊派遣はただちに中止するよう重ねて求めます。(2009年6月20日(土)「しんぶん赤旗」)