日本共産党の赤嶺政賢議員は6月10日の衆院外務委員会で、国立国会図書館で昨年6月から閲覧禁止になった米兵犯罪に関する法務省のマル秘資料(核心部分を黒塗りにして昨年11月から一部閲覧可)について質問しました。
同資料は、法務省刑事局が1972年に作成した「合衆国軍隊構成員等に対する刑事裁判権関係実務資料」。日本の米兵犯罪での日本側の裁判権の大部分を放棄するなど米側に有利な仕組みをつくった日米間の取り決めなどが記されています。
法務省は、米国との信頼関係に影響を及ぼすことなどを理由に昨年5月に国会図書館に圧力をかけました。
赤嶺氏は、「一部閲覧可にする経過でどの省庁と協議したのか」と質問。法務省の甲斐行夫大臣官房審議官は外務省と協議したと述べ、外務省の梅本和義北米局長は「資料には米国との間で不公表とする部分もあったので相談を受けた」と答弁。両省の協議によって黒塗り部分を決めたことを認めました。
赤嶺氏は、黒塗り部分に、米兵が「公の催事」やそれ以外に飲酒して車で帰宅途中に交通事故を起こしても、日本側が裁けない「公務」とする記述があることなどを指摘し、「この合意は生きているのか」と追及。梅本北米局長は「合意は変わっていない」と答えました。
赤嶺氏は「こんなことでは米兵犯罪は防げない。黒塗り部分を国民に明らかにせよ」と批判しました。(2009年6月11日(木)「しんぶん赤旗」)
議事録
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
最初に、国際通貨基金協定及び国際復興開発銀行協定の改正の関連について質問をいたします。
今回のIMF協定、国際通貨基金協定の改正は、基金の投資権限を拡大するとともに、これまで課題だった新興市場国や途上国の発言権をわずかに高めることになりますが、アメリカを中心とする先進国主導の意思決定や人事運営を変えるものでなく、途上国に対し、融資と引きかえに、米英流の市場経済化、規制緩和、社会保障予算の削減を押しつけるIMFのこれまでのあり方を改めるものではありません。
また、IBRD協定改正も、途上国の発言権をわずかに高めるものになっておりますが、IMF協定同様、米国の事実上の拒否権ともいうべき一五%以上の投票権を握るなど、先進国中心の運営を変えるものでなく、途上国側からも発言権の拡大が不十分と指摘をされております。
両機関とも抜本的な改善が求められていることを踏まえ、我が党は協定承認には反対であります。
以上の立場を踏まえて、政府の見解を確認しておきたいのですが、世界的な金融経済危機が深刻化し、その影響が、先進国のみならず、新興国、途上国まで広がりを見せている中で、特に、新興国、途上国などに十分な支援、融資が行えるようIMFの資金基盤を拡充することや、危機に有効に対処できるような融資手法の改善を図ることが必要とされております。
この間の金融サミットでは、世界経済における経済的な比重の変化をより適切に反映するため、最貧国を含め、新興市場国及び途上国がより大きな発言権及び代表権を持つべきで、危機対応において重要な役割を担うよう行動すべきとする声明を採択しておりますが、この新興市場国や途上国の発言権の拡大について、今どのような進捗状況にあり、政府はどのように対応していくつもりですか。
○中尾政府参考人 お答えを申し上げます。
今委員から御指摘ありましたように、四月二日のロンドンにおけるサミットの宣言の中にも、新興市場国の代表権を高めていくというような文言が入っておりまして、二〇一一年の一月までに次の見直しを行うということになっておりますので、そうした中で、世界の各国の経済的な力というものに応じたIMFの出資を決めていくということを日本としても目指していきたい、その中で、もちろん日本の発言権の向上も図っていきたいというふうに考えております。
○赤嶺委員 それでは次に、領事協定及び刑事共助協定に関してでありますが、この二つの条約には私たちは賛成の立場であります。
この際ですから、日中関係に関連して外務大臣に伺いたいと思いますが、外務大臣は、今月の七日、第二回日中ハイレベル経済対話のために来日した中国の楊外相と会談をされましたが、日中関係や北朝鮮問題でどのような意見交換が行われたのか、簡潔に説明していただけますか。
○中曽根国務大臣 七日の日に私と中国のヨウケツチ外交部長との間で会談を行いまして、双方から、ことしもハイレベルでの意思疎通が不断に行われて、そして特に麻生総理の訪中も多くの成果を上げたということを評価いたしまして、ことしも引き続いて、このよい関係を保ち、そして信頼関係をさらに政府レベルのみならず国民レベルにまで広げていこう、そういうことが大事であるということで一致をしたところでございます。
日中間では、戦略的互恵関係ということで、この構築を目指しているわけでありますけれども、その基礎となるのが国民間の交流であると考えておりまして、外相との間で、そういう意味で相互信頼、また相互理解を深めていこうということが一致をしたところでございます。
また、北朝鮮問題につきましても意見交換が行われたわけでありますけれども、七日の日の会談では、安保理は北朝鮮に対しましては、核実験は容認できないということをしっかりと北朝鮮に理解させるということが大切である、そのためには強い内容の決議をできるだけ速やかに採択しなければならないということで、私からそのようなことを楊外交部長にお伝えいたしました。
楊外交部長からは、北朝鮮による核実験やそれから核保有には断固反対するとの中国の立場を改めて述べられた上で、できるだけ早期に適度でバランスのとれた決議を採択することに賛同する、そういう表明がございまして、引き続いて、ニューヨークにおいて安保理決議の採択に向けた協議を協力しながらやっていこうということで一致をしたところでございます。
ちょうど現在、この数日間、関係国による精力的な協議が行われているわけでありますが、できるだけ早い時期にこれが採択されるよう期待をしておるところでございますし、ニューヨークに対してもそのような努力をするようにこちらからも伝えているところでございます。
○赤嶺委員 北朝鮮による核実験の強行は、国連安保理決議や、あるいは北朝鮮みずからも合意をしました六カ国協議の共同声明に明白に違反する暴挙であり、そして、今世界の中で起こりつつある核兵器廃絶の流れにも乱暴な挑戦だと考えます。
この問題の対応として何より重要なことは、北朝鮮に、核兵器及び核兵器開発計画を放棄すること、六カ国協議に無条件に復帰することを求めて、国際社会が一致結束した行動をとることが大切だと思いますが、外務大臣の見解を伺います。
○中曽根国務大臣 まさに今委員がおっしゃいましたとおりでありまして、さきの弾道ミサイルの発射、また核実験、これらは安保理決議の明確な違反でありますので、このような行為を二度と行わないように、そしてさらに、六者会合、これの再開を目指して北朝鮮も六者会合で関係国とともに協議を行うように、そういうような内容の決議を今協議中ということでございます。
○赤嶺委員 この際ですから、私たちの立場を手短に申し上げますと、北朝鮮が六カ国協議からの脱退を宣言しているもとで六者協議の無用論、無力論が出ておりますが、六者協議は、北東アジアの平和と安定に直接かかわる関係者が一堂に会する場として引き続き最良の交渉の枠組みだと考えます。困難はあっても、国際社会はこの枠組みに北朝鮮を引き戻し、再開させるためにあらゆる努力を尽くすべきだということを申し上げておきたいと思います。
それで、きょうは、先ほども共助協定にかかわりまして、辻元委員からも米軍犯罪などについてるる質問がありましたが、かかわって質問をしていきたいと思います。
まず最初に、外務大臣に所見を伺いたいんですが、去る五月二十日に、横須賀のキティーホークの乗組員に殺害をされました佐藤好重さんの夫、山崎正則さんら遺族がアメリカ兵と国に損害賠償を求めた訴訟の判決が実は横浜地裁で言い渡されております。
原告と弁護団は、判決の内容について、米兵犯罪の特殊性を考慮した高額賠償を認める勝訴判決という評価を行って、しかも、一般論としては公務外の事件であってもアメリカや国の監督責任はあるとしたことを、この判決の中身を評価しながら、今回の事件においては国と米軍の責任を認めなかったことについて直ちに控訴をしております。
実は、その裁判の中で、裁判長が判決要旨の言い渡しの後にこういう発言をしていらっしゃるんですよ。判決に込めた思いを関係諸機関が酌み取ってほしい、本件のような悲惨な事件が繰り返されないように祈っています。異例の所見をつけ加えているわけですが、私は、このことを政府が重く受け取るべきだと思いますけれども、外務大臣の認識を伺いたいと思います。
○梅本政府参考人 お答え申し上げます。
私どもも、米軍人軍属等による事件というものはあってはならないというふうに考えておりまして、これはいろいろな機会に、大臣から先方の司令官、あるいは私どもからも私どもの相手方に言っているところでございます。
そういう、いろいろ米側においても努力をしているわけでございますが、にもかかわらず、こういう事件が起きてしまったということで、私どもとしては、さらにいろいろな機会を通じて、米側にこういう事件の再発を何としても防いでもらいたいということを強く働きかけていきたいというふうに思っております。
○赤嶺委員 再発防止を求める日本政府の立場、姿勢にかかわって、日米関係、この問題について聞いていきたいんですが、法務省の刑事局が一九七二年に「合衆国軍隊構成員等に対する刑事裁判権関係実務資料」を発行しております。
きょうはその資料を持ってまいりました。外務大臣、かなり分厚いものでありますが、私は、二〇〇五年の五月十八日の当外務委員会で、この資料に基づいて沖縄国際大学のヘリ墜落事故の問題を質問いたしましたが、当時は町村外務大臣でした。そして、河相当時は北米局長でありましたが、この資料の性格がわからない、これ以上コメントできないと言って、まともに答弁を行わずに取り合ってもらえなかったんですね。
ところが、この間のこの資料の公開をめぐって法務省と国会図書館との間でやりとりがありました。どういうやりとりがあったんでしょうか。法務省、説明していただけますか。
○甲斐政府参考人 御指摘の資料でございますが、平成二十年五月に、国立国会図書館においてこの資料が所蔵されて、一般の閲覧に供されているということがわかりました。
この資料は、御指摘のとおり、法務省刑事局において作成をいたしたものでございますが、米国との間の協議の内容でございますとか、刑事裁判権の行使に関する記載というものがございまして、これを公にすることによって、米国との信頼関係が損なわれるおそれがある、また、捜査、公判の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるということから、秘密文書に指定されていたところでございます。
他方で、国立国会図書館の資料利用規則によりますと、「館長は、人権の侵害等により利用に供することが不適当と認められる資料の利用の制限をすることができる。」という規定がございます。また、内規によりますと、このような利用の制限は資料の著作者の申し出により行うという規定もございました。
そこで、法務省刑事局におきましては、二十年の五月に、国立国会図書館に対して、この規則等に従いまして利用制限の措置をお願いしたということでございます。そうしましたところ、六月中旬になりまして、同図書館におきまして本件資料につき閲覧禁止の措置がとられたものと承知しております。
ただ、その後、法務省におきましては、関係機関との間で協議をした結果、公開が可能と判断された部分については、さらに公開していただくように国立国会図書館の方にもまた申し出まして、同じ年の十一月に、同図書館において公開可能な部分について一般の閲覧に供されることになったものというふうに承知しております。
○赤嶺委員 この資料は国会図書館が法務省から手に入れた資料ではないんですよね。国会図書館がみずからの努力で入手した、そして購入した資料で、しかも、これまでだれでも利用できるようになっていた資料であります。私は、二〇〇五年にもこの資料を使って外務委員会で質問をいたしました。そのときは、この資料の性格がわからないと言って、そういう答弁を繰り返しながら、今度は法務省が、国会図書館にこの資料があるということで横やりを入れて、閲覧制限を加えさせているわけです。
今、国会図書館に行きますと、一般の利用者にはこの資料は黒塗りされたものが閲覧をされております。法務省、なぜこのような要請をしたのか。一体何を契機にこういう要請をすることになったんですか。
○甲斐政府参考人 この資料の存在につきましては、先ほども申し上げましたけれども、私どもも、国会図書館にこういう資料があるというのを存じ上げませんで、たまたまそういうものがあるということがわかりました。
これにつきましては秘密文書に指定されておりまして、捜査、公判への影響でありますとか米国との信頼関係の問題等々を考慮しますと、このまま一般の閲覧に供するというのは相当ではないのではないかというふうに考えて、国会図書館に利用制限の措置をお願いしたというところでございます。
○赤嶺委員 はっきりしないんですが、確かにこの本の表紙には秘という字が四角で囲まれているわけですが、今回の国会図書館とやりとりする上で、法務省はほかの関係省庁と協議したんですか。
○甲斐政府参考人 利用制限のお願いをするに当たっては、特段、協議等はしておらないと思います。
○赤嶺委員 利用制限は、あなた方が最初に国会図書館に申し入れたと。この利用制限を一部、ちょっとずつ解除していくわけですね。それでもまだ黒塗りが残っている。そういう過程の中で関連省庁と協議はしたんですね。
○甲斐政府参考人 御指摘のとおりでございます。
○赤嶺委員 どういう省庁ですか。
○甲斐政府参考人 外務省でございます。
○赤嶺委員 外務省と相談をしながら黒塗りの部分を決めていったということなんですが、外務省はどういうスタンスでこの問題の協議を行ったんでしょうか。
○梅本政府参考人 私ども、法務省の方から、このただいま御議論になっております実務資料の公開、国会図書館における閲覧について協議がございました。
その際、これは実務資料の公開が可能かどうかということでございますけれども、実務資料の中には、米国との間の協議というようなもので、米国政府との申し合わせによりまして不公表とするというようなものも入っているということもございますので、そういう意味で、何が公表可能か不可能かという観点から私どもも御相談を受けたということでございます。
○赤嶺委員 私たちも、持っている資料に基づいて、どこが黒塗りになっているかということを丹念に確かめてみました。黒塗りにされているのは、そのページは日米関係にかかわるものばかりで、しかも、黒塗りの中身を読んでいきますと、非常に屈辱的な日米関係を示すものばかりであります。
要するに、そうした日米関係を国民に知られないように隠した黒塗りをしているということではありませんか。
○梅本政府参考人 私ども、いろいろな協議というものあるいは会議をやる場合に、これはあくまでも不公表を前提として行っている場合がございます。そういう場合、先方との信頼関係ということもございますので、他国との信頼関係が損なわれるおそれのあるような場合等、公にすると支障があるものについては、私どもとしては、これは公表は差し控えることが適当であろうというふうに考えております。
○赤嶺委員 法務省に伺いますが、この資料は一九七二年に作成されたということになっています。米兵の事件処理について、一九五三年以降に法務省の刑事局や最高検察庁が作成した通達なども掲載、解説しております。
これは、一九七二年という年は沖縄が復帰したときでありまして、米軍基地が集中している沖縄が返還されてくる、その際に、米軍基地が引き起こす米軍犯罪にどう対処するか、そういう必要に迫られて作成したものなんでしょうか。いかがですか。
○甲斐政府参考人 この資料は、アメリカ合衆国軍隊の構成員等の犯した罪に対する刑事裁判権の行使に関しまして、これらの犯罪の捜査、公判を担当する検察官の執務の参考に供するために作成したものでございます。
日米地位協定の関係規定の内容でございますとかその運用上の留意事項について解説を加えるとともに、関係通達、かなり古いものも先生御承知かと思いますが、含めて、参考資料を収録しているというものでございます。
○赤嶺委員 先ほどの御議論にもありましたけれども、日米地位協定に、私たち沖縄県民あるいは神奈川県の基地の被害者の皆さん、大変不平等だ、日米関係は不平等じゃないかという考えを強く抱いております。だれが見ても不平等だと。そういう中で、日米関係にとって、しかも日本にとって屈辱的な中身が隠されて秘密にして、国民の前に明らかにすることを政府が一体となって防ぐために躍起になっている姿というのは、いよいよ日米関係は不平等だという認識を強めさせるものであります。
この資料の中身に、先ほども法務省ありましたけれども、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基づく行政協定十七条の改正についてとする刑事局長発、検事長、検事正あての昭和二十八年、一九五三年の通達が掲載をされております。ちょうど日米行政協定の見直しが終わった直後の通達でありますが、この内容は今でも有効ですか。
○甲斐政府参考人 現在も有効でございます。
○赤嶺委員 そうしますと、この中に、こういう部分があるんですよね。第一次裁判権、日本政府がいよいよ手に入れた、公務外の事件については日本の政府が行使できるというくだりの中で、「合衆国軍隊の構成員、軍属又は合衆国の軍法に服するそれらの家族の犯した犯罪に係る事件につき起訴又は起訴猶予の処分をする場合には、原則として法務大臣の指揮を受けることとしたのであるが、さしあたり、日本側において諸般の事情を勘案し実質的に重要であると認める事件についてのみ右の第一次の裁判権を行使するのが適当である。」こう書いてあります。
私たちは、普通、米軍犯罪は、公務の場合の第一次裁判権は米側に、公務外は日本側ということで、そういう裁判権を分けていることにも非常に批判的であるわけですが、この通達は、公務外の事件であっても、さらに実質的に重要であると認める事件に限定されているわけです。これはなぜですか。
○甲斐政府参考人 御指摘の昭和二十八年の刑事局長通達でございますが、これは先生も御指摘ありましたけれども、今はもう公開になっているものでございます。
ここに書かれてありますように、日本側において諸般の事情を勘案し実質的に重要であると認める事件についてのみ第一次裁判権を行使するのが適当であるという記載がございますが、さらにその内容を解説しておりまして、同通達で、我が国にとって実質的に重要でないと考えて差し支えないものとして、一つは、一般の基準に従い起訴猶予の処分を相当とするような事案、それから、合衆国の軍法に服する家族が犯した犯罪で、その被害法益が全く日本国または日本国民に関係のない事案など、実質的に見て、日本側において起訴を必要とする程度に重要であると認められない具体的な事例を示しております。
また一方で、形式犯であっても、犯情の重い犯罪は起訴すべきであるというような指示をしておりまして、起訴、不起訴について検察官が適切に訴追裁量権を行使するための指針を示したというものと認識をしております。
○赤嶺委員 いや、ですから、実質的に重要であると認める事件、これはどういうことですか。
○甲斐政府参考人 今申し上げましたが、この資料自体に、実質的に重要であるかどうかの認定基準をどう考えるのかということの記載がなされておりまして、今申し上げましたような一般の標準に従い起訴猶予の処分を相当とするような事案でございますとか、合衆国の軍法に服する家族が犯した犯罪で、その被害法益が全く日本国あるいは日本国民に関係のない事案等々の事案は実質的に重要でない、それ以外は重要というふうな区分けをしているものと承知しております。
○赤嶺委員 実質的に重要でないというところから説明が入るものですから、じゃ、実質的に重要であるというのはどういう事件で、どんな場合に第一次裁判権を行使することになるのかと。私たち、公務外の事件は専ら第一次裁判権を行使するものと考えていたものですから、実質的に重要であるとかないとかということで分けて行使するものなのかという疑問が出てくるわけです。
資料の中に、先ほど法務省が答弁されたように、実質的に重要ではないと考えて差し支えないものと思料するという説明の中にこういうくだりがあるんですね。日本国の当局において処罰するよりも、合衆国の軍当局においてその者を処罰することの方がより一層刑罰の目的を達し得ると認められる事情があれば、第一次裁判権を行使しなくてもいいということになるわけですが、これは何を意味しておりますか。
○甲斐政府参考人 この部分はまさしく記載のとおりでございまして、日本国の当局において処罰するよりも合衆国の軍当局においてその者を処罰する、実際にも合衆国の軍当局において刑罰あるいは懲戒処分等が行われる場合もしばしばございますので、そういったこととも踏まえまして、より一層刑罰の目的を達し得ると認められる事情があるようなことも考慮するということになっております。
○赤嶺委員 私、実際に今日の日本で起こっている事柄と重ねて考えますと、例えば、岩国で日本人女性に対する集団暴行事件がありました。被害者は警察の取り調べの中でるる訴えたわけですが、不起訴処分になりました。しかし、同様の事件で、今度は米軍が軍事裁判で犯人を裁いているわけですよ。刑罰は非常に軽い刑罰になっている。沖縄でフィリピン人女性の暴行事件、これも日本側の検察では不起訴になった。米側で裁かれている。どうなったかわからない。
こういうようなものが現に出ているときに、日本側の当局において処罰するよりも合衆国の軍当局においてその者を処罰することの方がより一層刑罰の目的を達し得ると認められるとなったら、全部何でも、いやそれは米軍で裁いた方が、処罰した方がいいんだということで、日本側が第一次裁判権を持っていても、米軍へ米軍へということになってしまうのではないかという危惧を持つわけですよ。
これまで日本の警察は第一次裁判権を、あるけれども行使してこなかった、こういう事例はありますか。どんな場合ですか。
○甲斐政府参考人 先ほども申しましたように、実質的に重要でない、その被害が米軍側等の方に専らあるというような場合等が考えられます。
それから、強姦等の例を挙げておっしゃられたわけでございますが、同じ案件でも、証拠関係によっては、日本ではなかなかうまく処分できないというような場合もあり得るわけです。そうではなくて、米軍側の規律によればきちんと処分がなされるという場合も考えられるのではないかというふうに思っております。
○赤嶺委員 ですから、どんな場合かと聞いているんです。
○甲斐政府参考人 不行使とちょっと今離れて申しますが、先ほどの証拠関係の話でいえば、例えば強姦事件については、和姦でなかったことの立証がなかなか難しいというような場合もあり得るわけでございまして、そういった場合に不起訴とせざるを得ないということも考えられるところでございます。
○赤嶺委員 今、第一次裁判権の不行使という発言もありましたが、皆さんの統計資料の中にも、第一次裁判権の不行使という欄があって、何件という数字が出ているんですが、どんな場合が不行使に当たるんですか。
○甲斐政府参考人 一つの例で申し上げますと、少年事件ということが考えられます。これは、日本で少年事件としての処分をいたしましても、保護観察等になることが多いわけでございますが、他方で、そういった継続的な処分をしたとしても、米軍側で軍上の命令でほかの国に移動するというようなこともありまして、日本の保護処分になじみにくい面があるということから、こういった場合に、刑事処分を求める場合は別でございますが、少年事件について、家庭裁判所に送致しないで、第一次裁判権不行使とする例があるものと承知しております。
○赤嶺委員 少年といっても米軍人であるわけですね。若い米軍の兵士がいきなり遠い外国に連れてこられて事情もわからずに犯罪に走ると。しかしそれは、米軍の軍規もあり、移動するという軍事上の任務、役割もあるから、日本は第一次裁判権の不行使として扱っている、こういうことになってくると、つまり、軍隊の構成員であるからそれは不行使ということになるということですね。
○甲斐政府参考人 軍隊の構成員であるからというよりも、日本の少年事件に対する処分、保護処分の一番典型は保護観察でございます。保護観察処分にした場合に、一定期間継続して保護司さんなり保護観察官が監督をしていく、こういうことになるわけでございますが、それが軍の関係者であった場合は、すぐにどこか別のところに行ってしまうということがしばしば予想されるわけで、そうしますと、そういった継続的な監督が期待しにくいということでなじみにくい、こういう意味でございます。
○赤嶺委員 日本で犯罪を犯したわけですから、すぐにどこかに行ってしまうなんて、遠慮しないできちんと処分した方が犯罪の抑止につながっていくと思いますよ。
この中で、実務資料の中に、「身柄拘束中の処遇」という項目があります。これも公開されている部分ですね。公開されているというよりは、皆さんが最近公開したというところですが、この中に、米軍人は「自己の意思で日本国に入国したのでないという点は考慮すべき」だという表現があります。これはどのように理解すればよろしいでしょうか。
○甲斐政府参考人 申しわけありません、全部を詳細に把握しておるわけでもございませんので、今御指摘を受けた部分は、ちょっと今すぐお答えできませんので、また改めて御返事させていただきたいと思います。
○赤嶺委員 そういう表現があるんですよ。あなた方はそれを指針にして今現に捜査をやるわけですよね。
それでは、ちょっとわかりやすいところで、地位協定の十七条五項(c)についても書いているくだりがあります。「日本国が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行なうものとする。」という、これは何度も当委員会で議論になった項目でありますが、私はその中で、常に「手中にあるとき」とは一体何なんだということを繰り返し聞いてまいりました。
この資料の中には、「手中にあるとき」というのは、身柄が拘禁されている意味というぐあいにしているわけですが、私たちがよく聞くのは、被疑者の米兵は、本来身柄は日本側の警察になければいけないのに、基地の中にあって、その基地の中を自由に動き回っているという声をよく聞きます。ところが、地位協定上は、手中にあるとは拘禁なりと言っている。何でそんなことが起こるんですか。
○梅本政府参考人 お答え申し上げます。
この地位協定第十七条五項の「その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、」ということで、これは英語では、「イフ ヒー イズ イン ザ ハンズ オブ ザ ユナイテッド ステーツ」ということでございます。
これは、まさにアメリカ側が管理をしている、アメリカ側の管理のもとにあるというふうなことだというふうに私ども理解しておりますが、ちょっとこの御質問、端的にこのことについて、厳密な解釈につきましては、事前に通報いただいておりませんでしたので、不正確なことを申し上げてもいけませんので、改めて調べた上で御答弁いたしたいと思います。
○赤嶺委員 ですから、本来身柄は日本側の警察にあるべきだのに、身柄は米軍が、今の北米局長の言葉をかりたら管理しているとおっしゃるわけですね。日本側が公訴するまでの間身柄は米側が管理していることを「手中にある」と言っている。この法務省の資料の中には、それは拘禁していることだと書いているんですよ。そして、しかし、軍属について「十分な拘禁措置をとりえない状況にあるので、「手中にあるとき」に該当しない場合が多いと思われる。」という文章もあるんですね。
ですから、実際には、十七条五項(c)では米軍側が管理していると言いながら、米軍は、公訴までの間その被疑者を基地の中で自由に動き回らせている、そういう結果になっているんじゃないですか。これは法務省、いかがですか。
○甲斐政府参考人 先ほど「手中にある」という意味について、拘禁されているという御指摘がございまして、確かに資料にはそのように書いております。
ただ、それに引き続いて、「もっとも、この「拘禁」には、」「禁足等の措置も含まれている。」というふうになっておりますので、必ず非常に狭いところに入っていなきゃいけない、入っていないとこれに当たらないというところまでは言っていないんじゃないかなというふうに思っております。
○赤嶺委員 ですから、今まで「手中にある」とはどういうことかというときに、今のような答弁は一切なかったんですよ。あたかも何か米軍側が拘禁している、どこかに閉じ込めているような答弁を言って、はっきりさせなかったものですから、きょうは具体的に聞いたわけであります。
今度は、皆さんがまだ黒で伏せている部分について伺いたいと思います。
これはもうよく御承知の上で黒塗りにしたと思いますが、「合衆国軍隊の構成員又は軍属の公務の範囲について」、これは酒気運転にかかわるわけですが、軍人軍属が宿舎または住居からその勤務場所への往復の途中に起こした飲酒事故を公務とするか公務外とするか、詳細なやりとりが一問一答で記録されております。
この部分は今でも黒塗りで閲覧が制限されているわけですが、これはなぜですか。そして、何で酒気運転が公務に当たるのか当たらないのかという議論が日米間で起きたんですか。
○梅本政府参考人 お答え申し上げます。
まず、今回開示の対象とされなかった部分の具体的内容については、これはお答えを差し控えたいと思います。
その上で申し上げますと、一般的に、勤務場所と住居との間の通勤については公務として取り扱われているというようなことで、日米間においても原則として同様であるというふうに承知をしております。また、個別の事案につき公務に該当するか否かが問題となる場合は、地位協定の枠組みを通じ米側と協議の上、適切に対処をするということでございます。
なお、米軍は、米軍人等による飲酒運転については、刑事罰及び行政処分を含め、厳格な取り締まりを行っているものと承知をしております。
○河野委員長 速記をとめてください。
〔速記中止〕
○河野委員長 速記を起こしてください。
○梅本政府参考人 まさに何が公務かということで、今申し上げましたように、例えば勤務場所と住居の間の通勤については公務として取り扱われているということもございます。
また、これは昭和二十年代、三十年代当時の社会通念からいって、例えば、公式の催し事なんかで少量のお酒を飲むというようなこともあったやに聞いておりますが、そういうものを公務とするかどうかというようなことも当時議論されているという記録がございます。
○赤嶺委員 私、それを全部読んでみたんですよ。皆さんが黒塗りにしているものですから、余計関心を持って読んでみたんですね。そうなりますよね、だれだって。そうしたら、やはり大変なことがわかったんですね。
当時、この合意に至る背景があるんですね。つまり、一九五四年から五五年にアメリカ兵が通勤途中で引き起こした四件の交通事故があるわけですが、それらは四人が死傷した、当時悲惨な事故で、二件は米兵が催事、催し事で酒を飲んだ上での事故でありました。日本政府も、さすがにこれを公務とすることには異議を唱えているんですね。議論となったけれども、結局米側に押し切られ、この事件では裁判権を放棄し、これらの米兵は、さっき厳格にやっていると言ったけれども、お手盛りの処分で終わっているわけですよ。
ですから、この合意の黒塗りの最初のところで、日米間で、催し事で酒を飲んで運転することについて、それを公務とするかどうか、いろいろな食い違いがあったけれども、合意に達した。やはり、催し事で酒を飲んで運転して、通勤途中運転するのは、これは通勤途中の往復行為に当たるので公務だといって、もう時間がありませんので文書を読み上げますけれども、この中では、勤務している日に単に飲酒しただけでは公務の性格を失わない、公の催事で、催し事で飲酒は公務である、催し事以外に勤務中で飲酒した場合も、勤務地と住宅地の往復の場合は、自動車を運転する判断力を損なわない程度であれば、公務としての性格を失わないこととしている、こうなっているんですね。べろんべろんに酔っぱらっていなければ、それは公務中の酔っぱらい運転であり、裁判権は米側が持つというぐあいに書いてあるんですね。
それで、これは黒塗りにしているということは、皆さん方は今でもそういう理解で米軍の酒気運転に臨んでいるということなんですか。いかがですか。
○梅本政府参考人 お答え申し上げます。
何が公務に当たるのか、特に、公の催し事における飲酒の場合、その結果としての往復の行為が公務たるの性格を失うかどうかということについては合同委員会合意がございまして、これは公表版もあるわけでございます。
ただ、その飲酒については、社会通念、いろいろなことが変わっております。これは当時の、五〇年代のものでございますので、現在はより厳しくこういうことについても対応してもらうということで、そもそもそういうことが起きないようにしてもらわないといかぬということでございまして、飲酒運転等、そういうことが起きないように厳しく指導してもらうということではないかというふうに考えております。
○河野委員長 答えはどうなんですか。現在もそのように取り扱っているかどうかということはどうなんですか。
○梅本政府参考人 合意そのもの、この合同委員会合意そのものは変わっておりません。
○河野委員長 変わっていないというのは、黒塗りのとおりだということですね。
○梅本政府参考人 合同委員会の合意は変わっておりません。
○河野委員長 変わっていないというのは、内容は何なんですか。質問にちゃんと的確に答えてください。
○梅本政府参考人 そこは、申しわけございませんけれども、アメリカ側との申し合わせにより公表できないということで、今私が申し上げました……
○河野委員長 速記をとめてください。
〔速記中止〕
○河野委員長 速記を起こしてください。
○梅本政府参考人 この合同委員会合意については仮訳がございます。そこの、「「公務」とは、合衆国軍隊の構成員又は軍属が、その認められた宿舎又は住居から、直接、勤務の場所に至り、また、勤務の場所から、直接、その認められた宿舎又は住居に至る往復の行為を含むものと解釈される。ただし、合衆国軍隊の構成員又は軍属が、その出席を要求されている公の催事における場合を除き、飲酒したときは、その往復の行為は、公務たるの性格を失うものとする。」
以上でございます。
○赤嶺委員 三原筆頭も御心配なさって、絶対今そんなことないよとおっしゃっていましたけれども、北米局長は期待に反して、今でもその合意は生きているという黒塗りのままで、しかも、当たりさわりのないところを読み上げられたんですけれども、非常に詳細に一問一答で、こんな場合どうなるか、こんな場合どうなるかと書かれております。
ちなみに、国会議員は、その黒塗りのところも、国会図書館に行けば国会議員に限って閲覧できる。国民には閲覧されない。その中には、判断力を失わない程度であれば、公務としての性格を失わない、つまり、それが公式の行事であれば酒気運転してもいいんだよと、そういうぐあいに認めようなということで、第一次裁判権について皆さんは合意しているわけですよ。こんなことで米軍の犯罪が抑止できるんですか。
これは、皆さんが、日米地位協定の合同委員会の合意、もちろんこの黒塗りを含めてですが、そのすべてを国民の前に明らかにするということを強く求めて、質問を終わります。
○河野委員長 それでは、外務省は、黒塗りを外したものを理事会に提出してください。
これにて各件に対する質疑は終局いたしました。