日本共産党の志位和夫委員長は19日、国会内で記者会見し、新型コロナウイルスによる感染爆発、医療崩壊が深刻化するもとで、政府がとるべき対応として「症状におうじて必要な医療をすべての患者に提供する」「感染伝播(でんぱ)の鎖を断つために大規模検査を実行する」「パラリンピックを中止し、命を守る対策に力を集中する」の3点にしぼった菅義偉首相あての「コロナから命を守るための緊急提案」を発表しました。志位氏は、西村康稔経済再生担当相を通じて、菅首相あてに同提案を届けました。
記者会見で志位氏は、「新規感染者が急増し、感染爆発と医療崩壊が極めて深刻な事態となっている」として、「目の前にある命をどうやって救うかにしぼって3点の緊急課題を提起することにした」と説明。
第1の「症状におうじて必要な医療をすべての患者に提供する」について志位氏は、重症患者や重症化リスクの高い患者以外は「原則自宅療養」とした政府の方針転換(2日)を批判し、いまだに「原則自宅療養」の方針は撤回していないのが現状だと指摘。東京都のコロナ全療養者に占める入院患者は10%で、宿泊療養施設の5%と合わせても15%にすぎず、圧倒的多数が「自宅療養」を余儀なくされており、実際に家族全員がコロナに感染し死者が出るなどの痛ましい出来事が連日のように報じられていると告発。
●「原則自宅療養」の方針を公式に撤回し、症状におうじて必要な医療をすべての患者に提供することを大原則に据える。
●限られた医療資源を最も効率的に活用することを考慮して、医療機能を強化した宿泊療養施設や臨時の医療施設などの大規模な増設・確保をはかる。入院病床をさらに確保し、往診や訪問看護など在宅医療を支える体制の抜本的な強化をすすめる。
●医師・看護師の確保のために、すべての医療機関への減収補てんと財政支援、すべての医療従事者に対する待遇の抜本的改善を図る――よう要求しました。
第2の「感染伝播の鎖を断つために大規模検査を実行する」について志位氏は、「どんなに医療体制を強めても、新規感染者が次々と増える状況では、その破綻は免れない」と指摘。事業所から家庭に持ち込まれた感染が学校や保育園、学童保育などで広がり、また事業所に持ち込まれるという感染伝播の悪循環を断つために、大規模検査の実行が必要だと主張。(1)感染拡大が顕著な事業所、学校、保育園、学童クラブなどに対する政府主導の大規模検査の実行(2)行政検査の抜本的拡充とともに、集団検査に対しては国が思い切った補助を行うことを求めました。
第3の「パラリンピックを中止し、命を守る対策に力を集中する」について志位氏は、「東京五輪の開催を強行したことが国民に誤ったメッセージを伝え、いまの感染爆発を招いたことは、火を見るよりも明らかだ」として、(1)五輪開催への反省にたって、パラリンピックの中止をただちに決断し、命を守る対策に全力を集中する(2)感染爆発のもとで、子どもたちをパラリンピック観戦に動員するなど論外であり、直ちに中止する――ことを求めました。
このなかで志位氏は、「今日の午前中の(参院内閣委での)質疑で、パラリンピックでは、ピーク時に医師120人、看護師150人と300人近い医療従事者が必要だという答弁だったが、パラリンピックを中止して、医療従事者を臨時の医療施設などにふりむけるならば、たくさんの方々を救うことができる。その一点をとっても、こんな感染爆発、医療崩壊のときにパラリンピックをやっている場合ではないことは明らかだ」と主張。中止の決断を強く求めました。
さらに、「都の教育委の多数が反対しているのに、子どもたちを観戦に動員することにいまだにしがみついているのが政府と東京都だ」と批判しました。
志位氏は、「わが党は、自粛に対する十分な補償などを強く求めていく。同時に、目の前にある命をともかく救わなければならない。この3点の実行を強く求めていきたい」と表明しました。
記者団から、菅政権のコロナ対策について問われた志位氏は、「行政検査の拡大や企業、学校などの集団検査への思い切った補助を出すには、検査を推進するという強い意志が必要だが、これが政府にない」「1年半たってPCR検査数は人口比で世界の143位というのは、どんな理由をもっても許されない」と批判しました。
また、菅首相が17日の記者会見で、対策の筆頭に「急増している自宅で療養されている方への対応」をあげたことについて、「原則自宅療養」の方針に縛られた姿があらわになったと指摘し、「必ず連絡が取れるようにする」といったことについて志位氏は、「連絡が取れていないから亡くなっている」と指摘。「酸素ステーションをつくるというが、これは治療ができる施設ではない。医療機能をもった臨時の施設を大規模に増設することが必要だ」と強調しました。
志位氏は、緊急事態宣言の拡大・期間延長について問われ、「これは感染拡大抑止に失敗したということだ」と指摘するとともに、菅首相が、その原因をもっぱら「デルタ株」の責任に転嫁したことに言及。「すでに3月にインドではデルタ株のまん延であれだけの犠牲者が出た。いまごろになってすべてをデルタ株の責任にし、自らの失政を認めようとしない。いまの感染爆発をつくった原因は東京五輪の開催を強行したことにある」と重ねて批判しました。
コロナから命を守るための緊急提案
日本共産党幹部会委員長 志位和夫
日本共産党の志位和夫委員長が19日、菅義偉首相あてに届けた「コロナから命を守るための緊急提案」は次の通りです。
全国各地で、新型コロナの新規感染者数が急増し、感染爆発、医療崩壊が深刻になっている。いま政府に求められているのは、命を守ることを最優先にした対応である。3点にしぼって緊急提案を行う。
1、症状におうじて必要な医療をすべての患者に提供する
政府が、8月3日、重症患者と重症化リスクの高い患者以外は「原則自宅療養」という重大な方針転換を行ったことは、コロナ患者を事実上「自宅に放置」する無責任きわまるものであり、断じて認められない。政府は、大きな批判に直面して、「中等症は原則入院」との「説明」を行ったが、「原則自宅療養」という方針を撤回していない。
こうしたもと、全療養者に占める入院患者の割合は10%、宿泊療養患者の割合は5%にすぎず(東京都)、圧倒的多数の患者が「自宅療養」を余儀なくされ、手遅れで亡くなったり、重症化したりする方が後をたたない。こうした事態は、政治が招いた重大な人災そのものである。
●「原則自宅療養」の方針を公式に撤回し、症状におうじて必要な医療をすべての患者に提供することを大原則にすえることを強く求める。
●そのために、限られた医療資源を最も効率的に活用することを考慮して、政府が責任をもって、医療機能を強化した宿泊療養施設や、臨時の医療施設などを、大規模に増設・確保することを求める。
あわせて、入院病床をさらに確保すること、在宅患者への往診や訪問看護など在宅医療を支える体制を抜本的に強化することを求める。
●政府が責任をもって医師・看護師を確保する。すべての医療機関を対象に減収補填(ほてん)と財政支援にふみきり、安心してコロナ診療にあたれるようにする。コロナ治療の最前線で日夜献身している医療従事者をはじめ、宿泊療養施設や臨時の医療施設、訪問診療に携わる医療従事者も含めて、すべての医療従事者に対する待遇の抜本的改善をはかる。
2、感染伝播の鎖を断つために大規模検査を実行する
感染伝播(でんぱ)の鎖を断つための検査を「いつでも、誰でも、何度でも」の立場で、従来の枠にとらわれず大胆かつ大規模に行う。とくに――、
●感染拡大が顕著になっている事業所、学校、保育園、学童クラブ等に対する大規模検査を、政府が主導して実行する。
●行政検査を抜本的に拡充するとともに、事業所、学校、保育園、学童クラブ等が行う集団検査を国が思い切った補助を行って推進する。
3、パラリンピックを中止し、 命を守る対策に力を集中する
東京五輪の開催を強行したことが、国民への誤ったメッセージとなり、感染爆発を招いたことは明らかである。
●五輪開催への反省にたって、パラリンピックの中止をただちに決断し、命を守る対策に全力を集中することを強く求める。
●感染爆発のもとで、子どもたちをパラリンピックの観戦に動員するなど論外であり、ただちに中止すべきである。
(しんぶん赤旗 2021年8月20日)