高里鈴代さん(基地・軍隊を許さない行動する女たちの会共同代表)の話】
「今年4月末にうるま市の20歳の女性が行方不明になり、嘉手納基地で働く元海兵隊員の軍属が容疑者として逮捕され、実は、その前の3月13日未明に、キャンプ・シュワブ所属の海軍兵士が那覇のホテル内で観光客女性を襲い、準強姦容疑で逮捕されています。その3月の事件を受け、女性たちは抗議の記者会見を行っていました。私は、『労働情報』に書いた原稿で、この事件について、『沖縄への過重な米軍配備から起こる人権侵害』と指摘しました。そして、そのことを可能にしているのが日米安保であり、不平等な日米地位協定があり続けていることです。そのことをよしとしているのが政府なわけですから、私はこの文章の最後の方で『加害者は、明確に日米両政府である』と書きました。…
そういうなかで4月の事件がありました。沖縄県議会議員選挙の目前、ラジオで、事件の容疑者が逮捕されたという情報が入った直後に、ワシントンが反応しました。『彼は軍属だ、アクティブ兵士ではない』と、軍の直接的な責任はないかのようなコメントが出たのです。これは責任があることをあえて消し去ろうとする彼らの常套手段だと怒りを覚えました。しかも、ニコルソンが2カ月前の事件に対して、『再発防止をやります』と言った矢先なのです。浦添市以南は外泊を禁止するという防止策を出していた。その後に起こった軍属の犯罪に対し、米軍側は『それは関係ない』と慌てて対応した。あるいは消し去ろうとしているのを感じました。
言いようのない虚しさを感じました。私たちは、1995年の事件から、沈黙は暴力を補完してしまうと、沈黙するのをやめ、発言を続けてきました。しかし、もう心が折れてしまうような気持でした。…
私が、辺野古や高江に行き続けている理由も、第一に軍隊が駐留し続けていることから暴力が起こってきた、だからこそ新たな基地の建設もNOなのです。新たな基地の建設そのもの、あるいは軍隊の駐留そのものが、事件発生を継続させていくことにつながるのです。辺野古の新基地建設も高江に新たなオスプレイヘリパッドをつくるのも、軍隊の増強、強化のために必要だからです。沖縄の戦後71年を、女性への暴力と向き合うという視点でみると、国の軍事化への方向は、日常で暴力をふるう加害者がさらに増産されていくのです。そこには暴力に砕かれてしまう状況に生きざるを得ない女性たちが必ずいる。…
女性たちが自由に声をあげられる社会、その声をしっかり聞き取れる社会であってこそ、女性は『自分らしく生きる』ことができます。そうした社会になってこそ、沖縄も日本も変わる。そうした視点で、基地というものを見据えていく。そのためにいま頑張ってやっています。」
(「沖縄・性暴力事件が問いかける人権と基地」から引用/『前衛』2016年10月号)