全国を戦場に
今月20日から実施される過去最大規模の実動演習「自衛隊統合演習」の全容が、防衛省が日本共産党の赤嶺政賢衆院議員に提出した資料から判明しました。29道府県(輸送の中継地点を含む)で実施され、自衛隊からは前回(2023年)の約3万人を大きく上回る約5万人が参加します。40以上もの民間空港・港湾・漁港が使用され、民間船が自衛隊の部隊や装備、実弾を運ぶなど、中国との戦争での全国の戦場化、国民の戦時動員も想定した演習です。
「防空」と敵地攻撃を一体化した「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」訓練では、攻撃を受けた場合など基地が使用できない場合を想定し、民間空港を使用します。南紀白浜空港(和歌山県)では、F15戦闘機などがタッチ・アンド・ゴー(連続離着陸)を実施します。
鹿児島県の鹿児島、奄美、徳之島の3空港では、航空機を一時退避・着陸させ燃料補給を実施するほか、奄美、徳之島空港では戦闘機の連続離着陸を「検討」しています。
さらに、鹿児島空港では、自衛隊基地が使用不可能になった状況を想定し、一時的な拠点として、弾薬搭載等も行われます。
民間船を使用した訓練でも各地の民間港を利用します。仙台塩釜港(宮城県)から大分港(大分県)を経由して鹿児島県奄美大島の名瀬港まで実弾など弾薬を含む装備と部隊を輸送します。運ばれるのは、12式地対艦誘導弾や88式地対艦誘導弾などの装備、部隊は、第4、第5、第8地対艦ミサイル連隊です。「12式」は来年3月以降、順次、射程1000キロ以上の「能力向上型」に切り替わります。
また、自衛隊が民間船を借り上げたPFI船舶を使用。弾薬・実弾を積んだ民間のコンテナトレーラーを北海道の苫小牧港から大分港に輸送する訓練や、別のPFI船が苫小牧港を出発して蒲郡港(愛知県)でパトリオットミサイル(PAC3)の発射機やレーダー装置、燃料タンク車などを搭載し、沖縄県の中城湾港(沖縄本島)、平良港(宮古島)に運ぶ訓練を実施します。
南西諸島に狙い
日本各地から“最前線”である南西諸島に戦力を投入する狙いが浮かび上がります。戦時に動員される民間船は、国際法上の軍事目標とみなされ、民用物としての保護対象ではなくなります。
九州や南西諸島の島々では、海外への“殴り込み部隊”である米海兵隊のような、海上から敵地への上陸作戦能力(水陸両用作戦能力)を持つ水陸機動団も参加して水陸両用作戦の大規模な訓練が行われます。
V22オスプレイが配備された佐賀駐屯地(佐賀県)から4機のV22が飛び立ち、相浦駐屯地(長崎県)を経由して水陸機動団約100人を上五島空港と福江空港(長崎県)に運びます。V22は両空港などで離着陸訓練も行います。
鹿児島県の奄美大島と種子島沿岸部では、それぞれ水陸機動団約250人がゴムボート(CRRC)20艇や水陸両用車(AAV)、ヘリコプター、ヘリコプター搭載護衛艦などとともに、艦艇や航空機と連携した着上陸訓練を実施。こうした訓練では自然海岸や漁港までもが使用されます。
今回の「自衛隊統合演習」で使用される空港・港湾には、自衛隊などが平時から民間空港・港湾を使えるよう整備される「特定利用空港・港湾」に指定された4空港、10港湾が含まれます。民間空港・港湾、民間船の軍事利用を行えば、「有事」に攻撃目標となり民間に重大な被害が及ぶことは明白です。
日米の一体化も
日米軍事一体化の動きも見られます。陸自隊員が米軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)へ展開し、連絡官として日米共同指揮所訓練を実施。自衛隊の基地が使用できない事態を想定し、自衛隊の戦闘機が嘉手納基地に、一時的に展開する計画です。外来機の飛来が住民を悩ませている同基地に自衛隊機が訓練目的で展開するのは初めてです。
さらに、陸自と海自の部隊が米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)や米陸軍横浜ノースドック(横浜市)に展開し、各部隊による基地等警備訓練(施設防護および対空援護)も行います。これは、首都圏の米軍基地が攻撃目標になることを想定したものです。自衛隊は米海軍佐世保基地(長崎県)でも基地警備訓練を行います。
空自の三沢基地(青森県)、百里基地(茨城県)、入間基地(埼玉県)、芦屋基地(福岡県)、那覇基地(沖縄県)では、有事に攻撃を受けたことを想定し、滑走路被害復旧訓練が行われます。(しんぶん赤旗 2025年10月13日)