全国の基地周辺や国境離島の住民を監視する土地利用規制法案をめぐり、与党は週内にも衆院内閣委員会での採決強行を狙っています。しかし、法案は5月21日に実質審議入りしたばかり。短い審議の中でも数々の問題点が浮き彫りになっており、採決強行は許されません。
同法案は、(1)自衛隊・米軍基地、海上保安庁施設などの周囲おおむね1キロと国境離島を「注視区域」に指定。土地の所有者などを調査対象にし、「機能阻害行為」があれば中止を勧告・命令する(2)このうち、司令部機能などを有する基地周辺を「特別注視区域」に指定し、一定規模の土地の所有権移転で事前届け出を義務付ける―といった内容。従わなければ、最大で懲役2年の刑事罰となります。
どれだけの国民に影響が出るのか。内閣府は21日の衆院内閣委で、「注視区域」として四百数十カ所、「特別注視区域」として百数十カ所の自衛隊基地が対象になりうる―などと答弁しました。防衛省は既に基地周辺の土地所有者数を調査しており、日本共産党の赤嶺政賢衆院議員にリストを提出しました。調査対象は46都道府県に広がり(表)、防衛省の施設や司令部がおかれる主要基地に加え、無人のレーダー基地や分屯基地なども網羅しています。
これ以外にも、「重要インフラ」があります。政府は「原子力関連施設」などをあげますが、政令で指定されるため、無限定です。
東京・市谷の防衛省から1キロ圏内に事務所がある東京法律事務所の今泉義竜弁護士は「この区域も特別注視区域に指定されるだろう」と危機感を示し、こう指摘します。「安全保障上、外国人の土地取引を規制するというのが政府の説明だが、法案は1キロ圏に住むすべての人の財産権やプライバシー権を侵害するもの。すべての人にかかわることが知られていない」(しんぶん赤旗 2021年5月26日)