日本政府が米軍「思いやり予算」に基づき建設した米軍家族住宅は1979~2015年度までで1万1383戸に達することが、防衛省が日本共産党の赤嶺政賢衆院議員に提出した資料で判明しました。単身兵用の兵舎も207棟建設しています。(関連記事)
東日本大震災から5年が経過した今なお、14万人もの被災者が応急仮設住宅で生活を余儀なくされる一方、米軍にはいたれりつくせりの逆立ち政治です。政府は、今後5年間の「思いやり予算」支出の根拠となる特別協定を22日にも衆院を通過させ、月内の国会承認を狙っています。
資料によれば、家族住宅1戸あたりの建設費用は、最も高価な上級将校用住宅で1戸あたり9650万円に達します(表)。基地内に建設されるため、地価は含まれていません。面積は約250平方メートルで、標準的な家族住宅でも約150平方メートル(いずれも岩国基地の場合)もの広さです。被災者用仮設住宅に比べ、約5~8倍(2DKで30平方メートル)もあります。
防衛省が日本共産党の宮本徹衆院議員に提出した家族住宅の間取り図によれば、すべて浴室が2カ所、トイレが3カ所も設置されています。若宮健嗣防衛副大臣は「外国の方は1人が1個のおふろ、トイレというのが一般的だ」と述べ、当然視しました(3月16日、衆院外務委員会)。
政府は今後、池子住宅地区(神奈川県)に家族住宅171戸を建設するなど、さらに建設を拡大する計画です。
「思いやり予算」に加えて、06年5月の在日米軍再編合意に基づく家族住宅建設も狙われています。米海軍厚木基地(神奈川県)の米空母艦載機部隊の米海兵隊岩国基地(山口県)への移駐に伴い、岩国市内の愛宕山に米軍家族住宅262戸を建設する計画です。
政府は1978年度以降、「思いやり予算」に7兆円近くを支出。米軍再編経費などを合わせると約8兆円に達します。これらは日米安保条約上の支払い義務はありません。同じ米同盟国でも、北大西洋条約機構(NATO)諸国は家族住宅を建設していません。
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「思いやり予算」
日本政府は1978年度以来、米軍基地で働く日本人従業員の給与、基地内の施設建設、水光熱費、訓練移転費を負担しています。日米地位協定24条では、米軍の活動経費は基本的に米側が負担することになっていますが、解釈を拡大して日本側が負担。当時の金丸信防衛庁長官が「思いやりの心だ」などと述べたことで、「思いやり予算」の名称が定着しました。(しんぶん赤旗 2016年3月22日)