厚生労働省の先進医療会議は1月14日、脳脊髄液減少症(髄液漏れ)の「ブラッドパッチ療法」(硬膜外自家血注入療法)について、医療保険適用が適切と判断しました。今後、中央社会保険医療協議会(中医協)で了承を得られれば4月から保険が適用されます。
脳脊髄液減少症は、交通事故やスポーツ外傷など体への強い衝撃を受けたことをきっかけに、脳と脊髄の表面を循環している脳脊髄液が、脊髄を覆う硬膜から外へ漏れ減少することで、激しい頭痛、頚(けい)部痛、めまい、倦怠(けんたい)感など多岐にわたる症状を呈する病気。患者は推定で数十万人とされます。
ブラッドパッチ療法は患者自身の血液を漏れている部分に注射し、漏れを止めるもの。厚労省の研究班が作成した画像診断基準にもとづき脳脊髄液減少症の一部を「脳脊髄液漏出症」とし、2012年、「先進医療」に認められました。
同会議では、昨年6月末までの1年間の治療577件で、同療法の有効性83%との結果が示されました。厚労省は、保険適用の対象は、子どもも含む「脳脊髄液漏出症」だとしています。
この日、同会議の傍聴にかけつけた患者や支援者らは、「長いたたかいでしたが、ホッとした」と一様に笑顔を見せました。「保険適用により医療費の自己負担が減り、また、多くの医療機関で治療を受けられるようになるメリットは大きい」との声が聞かれました。
12年前、交通事故に遭い発症した女性は、「委員から診断基準を厳しくという意見が出て不安もあるが、とりあえず風穴を開けた思い。多くの人が救われる道がほしい」と語りました。
「脳脊髄液減少症全国ネットワーク架け橋」の石田千絵代表は、「患者、家族、支援者らによる長年のとりくみと努力があってこそ保険適用に結びついたとうれしく思っています。まだ課題はいっぱいあり、これからがスタートです」と話しています。
大きな前進
日本共産党の高橋千鶴子衆院議員の話 日本共産党は赤嶺政賢衆院議員の質問以来、ブラッドパッチの早期の保険適用を一貫して求めてきました。私も4回質問し、患者・家族のみなさんと政府交渉にもとりくんできました。ここまでこられて本当によかったです。
健康保険が適用されないもとでは、「病気」でも「障害」でもないとされ障害年金がとりにくい、交通事故の補償が困難、学校では「不登校」扱いで何の対応もない、生活保護世帯は医療扶助の対象にならない―など、問題はさまざまに波及しています。
今回、子どもも含めて保険が適用されることになり、大きな前進です。保険適用が全体の課題の解決を進めていく力になるよう、今後もしっかり見守っていく必要があります。(しんぶん赤旗 2016年1月16日)