国会質問

質問日:2020年 1月 17日  第200国会  安全保障委員会

自衛隊中東派兵中止せよ 衆参委員会で閉会中審査

 

 衆院安全保障委員会と参院外交防衛委員会は17日、それぞれ閉会中審査を開き、昨年末、国会審議を経ずに強行された自衛隊の中東派兵をめぐる最初の論戦を行いました。国会の承認が不要な防衛省設置法を根拠としての派兵に対して、野党側は「脱法的」などと厳しく批判。一方、自民党からは派兵に明確な根拠を与える特措法制定の要求も出されました。日本共産党から赤嶺政賢衆院議員、井上哲士参院議員が質疑に立ちました。

情報提供、「一体化」の危険 衆院委で赤嶺氏

 赤嶺氏は、自衛隊が中東地域で収集し、米国と共有する情報について、イランの航空機や船舶などの軍事情報は含まれるかと質問。河野太郎防衛相は、「特定の国の情報を排除する考えはない」とのべ、イランに関する軍事情報を提供する可能性を否定しませんでした。

 また、河野氏は「米国のニーズに基づくものではなく、一般情報として提供する」と弁明。これに対して、赤嶺氏は「提供した情報をもとにどのような行動をとるかは米軍次第。自衛隊が提供する情報が、アメリカの武力行使につながる判断材料になる。憲法上許されない武力行使との一体化になる危険がある」と強調しました。

 

 

 トランプ米政権がイラン革命防衛隊幹部のソレイマニ司令官を殺害した問題で、赤嶺氏は、米政府が国連安保理に提出した書簡で「(殺害は)イランによるさらなる攻撃を抑止するため」だと主張していると指摘。「将来の攻撃を抑止するために軍事攻撃を行うのは先制攻撃そのものだ」と追及しました。

 外務省の岡野正敬国際法局長は「過去の武力攻撃に対して行われた措置だと書簡に書かれている。われわれはそう読んでいる」とのべ、“自衛権の行使”とする米国の主張を擁護する姿勢を示しました。赤嶺氏は「アメリカを弁護するにも余りある」と批判しました。

核合意離脱が緊迫の元凶 参院委で井上氏

 井上氏は、2018年5月に米国がイラン核合意から一方的に離脱したことが中東情勢を緊迫化させた出発点だと指摘。核合意は国連安保理決議で米国を含む全会一致で承認されたもので、「米国の一方的離脱は安保理決議違反だ」と強調しました。茂木敏充外相は「特定の国もしくは問題によって現在の状況が生まれたと評価するのは困難」と述べ、米国を免罪しました。

 井上氏は、「政府はイランに核合意の順守を求めているが、米国に対して核合意への復帰を求めたことはあるか」とただしましたが、茂木氏はまともに答えませんでした。

 井上氏は、米国が核合意離脱とともに「最大限の圧力」としてイラン革命防衛隊のテロ組織指定やイランからの石油を購入する国々の制裁など緊張をエスカレートさせてきたと指摘。「米国に核合意に復帰せよと正面から言わない。国際法違反の事実関係を確かめない。米国にモノを言わず『エスカレーション(深刻化)を回避すべき』と言っても事態はよくならない」と訴え、緊張を高める自衛隊派兵を中止するよう強く求めました。(しんぶん赤旗 2020年1月18日)

 

質問の映像へのリンク

中東への自衛隊派遣を追及(衆院安保委)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 アメリカのトランプ政権がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を空爆によって殺害した問題から質問をいたします。
 外務大臣に伺いますが、これまで日本政府は、いわゆる先制攻撃や予防攻撃は国際法上認められていないとの見解を表明してきました。この見解に今も変わりはないですね。

○茂木国務大臣 一般論として申し上げますと、国際連合憲章上、自衛権の発動が認められますのは武力攻撃が発生した場合であることから、何ら武力攻撃が発生していないにもかかわらず、いわゆる先制攻撃や予防攻撃を行うことは国際法上認められない。
 こうした国際法上の評価は従来より申し上げているとおりであります。

○赤嶺委員 アメリカ政府は、今回の空爆の国際法上の根拠、これについて、自衛権の行使だと説明しているわけです。しかし、トランプ大統領が具体的に挙げたのは、ソレイマニ司令官がアメリカの外交官や兵士に対する攻撃を計画していたということだけです。
 計画していたことを理由に空爆に踏み切るのは、先制攻撃そのものではありませんか。

○茂木国務大臣 我が国、先ほどから答弁させていただいておりますように、直接の当事国ではなくて、また、詳細な事実関係、これを十分把握する立場にないことから、確定的なことを申し上げるのは差し控えたいと思いますが、その上で申し上げますと、御指摘のありました、米軍によりますソレイマニ司令官の殺害に係ります国際法上の整理につきまして、米国は、一月八日、国連安保理議長宛てに、自衛権の行使として行ったものである旨の書簡を提出したと承知をしております。
 どんな内容かということでありますが、書簡においては、最近数カ月のイラン・イスラム共和国とイランによって支援されている民兵による米国又は米国の利益に対する、エスカレートしている一連の武力攻撃に対して行ったものでありと説明しておりまして、いわゆる先制攻撃としてではなく、既に発生をした武力攻撃に対する自衛権の行使と説明している、そのように承知をいたしております。

○赤嶺委員 外務大臣から丁寧に、アメリカが先制攻撃でないと説明しているというくだりだけを今説明していただきました。
 当事国ではないとこのようにおっしゃいますけれども、アメリカ政府は、憲章五十一条に基づき、先ほど外務大臣も申し上げました国連安保理に提出した書簡、これには、先ほどのことに加えて、イランによるさらなる攻撃を抑止するためだとはっきり書いてありますよね。そのために、イランとイランが支援する武装組織の攻撃能力を低下させると言っています。
 将来の攻撃を抑止するために軍事攻撃を加えるのは、先制攻撃そのものではありませんか。安保理に提出した書簡で法的評価というのは明確にできるのではありませんか。

○岡野政府参考人 委員から御指摘のありました書簡の中では、武力攻撃に対して行ったものということが明確に書かれております。その中で、どういう形で行動をとることの目的が何かということが羅列されております。
 一番大事な書簡の部分について申し上げますと、一連の武力攻撃が実際に行われた、これに対して今回の自衛権の行使をしたというふうに書かれているのがアメリカの書簡だと我々は理解しております。

○赤嶺委員 書簡を持ってきましたけれども、そこには、イランが米国と米国の利益に対しさらなる攻撃を実行又は支援するのを抑止し、イランとイラン革命防衛隊のコッズ部隊が支援する民兵が攻撃を実行する能力を低下させるため、将来の攻撃に備えて今のソレイマニ司令官を殺害した、そういうこともはっきり書いてあるじゃないですか。それは先制攻撃じゃないですか。先制攻撃でないということでアメリカを擁護するんですか、外務大臣。

○岡野政府参考人 先ほどから申し上げているとおり、書簡にはこういうふうなことが書かれているということを申し上げているわけでございます。
 そこで書かれているのは、一連の武力攻撃があったということを前提に、それに対して今回の自衛権を行使したものということが書かれているわけでありまして、過去の今まで行われた武力攻撃に対して行われた措置だということをアメリカの書簡が書かれている。それを我々はそういうふうに読んでいるというだけでございます。

○赤嶺委員 将来の計画に備えて攻撃したというところは読めないんですか、外務省は。そこを読んだら、それが先制攻撃だということがはっきりするじゃないですか。アメリカを弁護するにも余りある。そういうことを強く指摘しておきたいと思います。
 重大なことは、今回の攻撃が、イラク政府に対する事前の説明も同意も一切なく、イラク国内で実行されたことであります。空爆によってイラクの武装組織の副司令官らも殺害をされました。イラクのアブドルマハディ首相は、公職につくイラク軍人の暗殺はイラクに対する侵略行為であり、明確な、明白な主権侵害だとこのように厳しく非難をしております。
 今回の攻撃というのは、イラクの主権をも侵害するものではありませんか。

○高橋政府参考人 今のイラクのアブドルマハディ首相のステートメントは私たちも承知しておりますので、イラクはそう見ている、そういうことだと思います。

○赤嶺委員 イラクはそう見ていて、日本政府はどう見ているんですか。主権侵害だと、明らかな主権侵害を見逃すようなことがあれば問題じゃないですか。いかがですか、外務大臣。

○岡野政府参考人 米軍の行為についての米軍の説明の仕方については先ほど申し上げたとおりでございますが、米軍の行為についての我々の評価ということは、先ほどから申し上げておりますとおり、直接の当事者ではなく、また、詳細な事実関係を十分把握する立場にないことから、確定的なことを申し上げることは差し控えたいということでございます。

○赤嶺委員 日本政府は、アメリカを擁護するくだりはちらちら説明しながら、それが明らかに先制攻撃につながっている根拠は国会の中でも説明しようとしない。そして、日本政府の立場を一切明らかにしようとはしないわけです。
 アメリカ政府は、大使館が攻撃されるおそれがあるなら、一時退避し、イラク政府に安全確保を求めるなどの対応をとるべきであります。事前に攻撃があったからすぐ反撃だというような話ではないはずです。主権国家の頭越しに空爆に踏み切るなど、絶対に許されません。
 つけ加えて言えば、だから、イラクの民衆からも米軍基地撤去の話が出てくるわけですよ。
 今回の軍事攻撃は、どこからいっても、国連憲章と国際法に明白に違反する先制攻撃そのものであります。その基本認識をしっかり土台に据えない限り、緊張緩和に向けた日本政府の取組、形だけのものになる。そういうことを強く申し上げておきたいと思います。国際正義に立たないで仲介ができるなどというようなものは、およそ受け入れられるものではありません。
 次に自衛隊派遣について伺いますが、政府は、今回の派遣について、特定の枠組みに参加するものではなく、我が国独自の取組だと強調しております。しかし、その一方で、諸外国との必要な意思疎通、連携は行うとしているわけです。
 防衛大臣は、エスパー国防長官との会談で今回の派遣について説明し、長官からは謝意が示され、情報共有などを通じて日米が緊密に連携していくことを確認した、このように報じられております。
 防衛大臣に伺いますが、具体的にどういう情報を共有するのですか。イランの航空機や船舶などの軍事情報、これは共有するんですか。

○河野国務大臣 アメリカを含む、沿岸国とさまざま意思疎通をしていこうと思っております。
 我が国が独自の取組を行うという政府方針を踏まえながら、アメリカは同盟国でございますので適切に連携をしてまいりたいと思っておりますが、さまざまな、航行する船舶の種類ですとか速度ですとか、恐らく、そういう情報についてさまざま意思疎通が行われることになろうかと思います。

○赤嶺委員 それだけに限られるんですか。
 先週、この問題で野党合同ヒアリングをやりましたら、防衛省の方から、米中央海軍司令部に連絡官を派遣し、これは先ほどもありましたけれども、連絡官を派遣し、イランの情報を共有する、こう述べておりました。
 収集したイランの軍事情報、これも米軍に提供するということではないですか。

○河野国務大臣 バーレーンの米中央海軍司令部に一名、海上自衛官を連絡要員として派遣をいたしますが、護衛艦はイラン海軍の情報を収集するのではなく、オマーン湾を始めとする対象海域におけるさまざまな船舶の情報など、日本関係船舶の航行の安全に資するような情報を収集する。それを必要に応じてアメリカと共有をし、あるいは沿岸国と意思疎通をしていく。そういうことでございます。

○赤嶺委員 日本が収集した軍事情報、これはアメリカに提供しないという意味でおっしゃっているんですか。

○河野国務大臣 別に軍事情報を収集するということではなくて、海域を航行しているさまざまな船舶の種類や速度、そうした、船舶の航行の安全に資するような情報を収集をするということを申し上げているわけでございます。

○赤嶺委員 航行の安全に資する情報の中に、これは、軍事情報というのは非常に貴重だと思うんですよ、民間船舶にとっても。そういう情報は共有するわけですよね。

○河野国務大臣 さまざまな情報を収集する中で、特定の国の情報を排除するということは考えておりません。

○赤嶺委員 最初からそう言っていただければいいんですけれども。
 中東情勢は、武力衝突がいつ再燃してもおかしくない状況にあります。自衛隊が提供した情報をもとに米軍が武力を行使する可能性、これは排除できますか。

○河野国務大臣 自衛隊の情報収集は、米国のニーズに応じて行うものでもなければ、米国の指揮のもとで行われるわけではございません。日本の自衛隊が収集した情報を一般情報として提供することはあり得る、そういうことでございます。

○赤嶺委員 極めて、武力衝突がいつ再燃してもおかしくないあの中東地域で貴重な情報といえば、やはりあの軍事情報です。軍事情報の収集だけを目的にするわけではないとおっしゃっておりますが、収集する情報の中には軍事情報もあります。
 どんな軍事情報であっても、アメリカがその情報に基づいて直ちに武力行使をするとは言っておりません。ただ、日本が提供した情報をどう使うかというのは、これはアメリカが決めることですから、絶対にそれを武力行使の情報の資料にはやらないでくれと日本側が言っているわけでもありませんから。
 提供した情報をもとに米軍が軍事行動をとるかどうか、これは米軍の判断次第になっていきますよね。

○河野国務大臣 自衛隊が共有するのは一般的な情報でございますから、それをそのまま何か直ちに軍事的な行動に使うという、あるいは使えるというものではないというふうに思っております。
 先ほど答弁が事務方からありましたように、軍事行動を行う前にはさまざま一般情報をもとに新たな情報をつけ加えなければならないわけでございますから、自衛隊が共有する情報が直ちにアメリカの軍事行動にそのまま使われるということではございません。

○赤嶺委員 日本だけの情報に基づいて情勢判断するわけではなく、いろんな国の情報提供の協力がアメリカにとって極めて重要なわけです。その情報の積み上げがあって、また、軍事情報の軍事緊張があって武力行使につながっていく。やはり情報で協力するということは、将来の武力行使にアメリカがつなげていくその判断材料になっていく。そういうことにもなるわけですよ。
 それはもう本当に、有志連合に参加しないと言ってみても、軍事情報の提供を通じてアメリカのそういう武力行使、すなわち、これは憲法にやはり違反していく行動につながっていく危険を今度の自衛隊派遣は大きく持っていると思います。
 アメリカとイランが緊張関係にあるもとでイランの軍事情報を米軍に提供すれば、イランの側からすれば、これは敵対行為になります。我が国独自の取組だと言いながら、実質的にはアメリカの側に立つということになるのではありませんか。

○茂木国務大臣 恐らく、前提条件がかなり違っているんだと思います。
 先ほどから答弁申し上げておりますように、これはアメリカの側も、そしてイランの側も、事態のエスカレーションを回避したい、このように明確に述べております。今にもアメリカが軍事行動をとるために何らかのオペレーションを行っている、こういう状況にはないと考えております。
 そして、先ほど来、何か日本が、政府がアメリカの肩を持っているような話をされますけれども、私の答弁でも、アメリカの攻撃についてはアメリカはこう言っています、自衛権の行使だ。イランについても、自衛権の行使だ。適正にそれぞれの立場について述べているところでありまして、米国とは同盟関係にあり、そしてイランとも長い間友好関係にある日本の立場、こういったものを通じた粘り強い外交努力を続けていきたいと思っております。

○赤嶺委員 紛争をエスカレーションする根本の問題に政府は全く努力を放棄しているわけですよ、先制攻撃の問題でも。例えば核合意の復帰の問題についても、イランには求めているけれども、アメリカには求めない。

○西銘委員長 時間ですのでまとめてください。

○赤嶺委員 そういう努力をなしにやるということは、決してあの中東情勢の平和解決にはつながらない。むしろアメリカの肩を持っていることははっきりしているということ、自衛隊は撤退すべきだということを申し上げて、質問を終わります。

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