エッセイ

水曜随想  軟鉄打たれ鋼鉄になる

 

 国が翁長雄志知事を訴えた「代執行裁判」と、沖縄県が国を訴えた「係争委裁判」が2月29日に結審した。

 

 前回の翁長知事につづき、結審の日は稲嶺進名護市長が証人尋問にたった。激励のための集会には1500人の県民がおしかけた。

 

 集会が開催されている裁判所付近は、米軍統治下の頃は沖縄刑務所があった場所だ。人民党弾圧事件で投獄された瀬長亀次郎さんが、出獄する日、刑務所前には大勢の県民がおしかけた。当時の光景は写真でしか見たことがないが、今の集会と同じ雰囲気を感じる。

 

 翁長県知事が法廷に向かうとき、「おながコール」が起こる。稲嶺市長が証人尋問にたった時は、法廷にはいる直前まで「ススムコール」だ。

 

 今回の裁判は、当初から国は迅速な判決を求めていた。証人尋問も認められないまま敗訴判決になるのではと懸念していた。ところが実際には、知事と名護市長の証人尋問も認められるなど、県民のたたかいを反映した進行になっているという専門家の評価がある。もちろん司法の現状は甘くはない。

 

 当日、経済界を代表して「オール沖縄県民会議」の共同代表の呉屋守将さんがあいさつに立ち、「苦難の歴史を体験している沖縄県民は打たれ強い。軟鉄も打たれて鋼鉄になる」と県民のいっそうの団結を訴えた。呉屋会長は鉄鋼会社の経営者でもある。宜野湾市長選挙の結果を念頭においた発言だ。

 

 宜野湾市長選挙は、辺野古新基地建設が直接問われた選挙戦ではなかったから、民意にはいささかの変更もない。しかし、勝てば辺野古強行の安倍内閣にとどめを刺すチャンスだっただけに、勝利を逃がした悔しさはいまも残る。呉屋会長はひきつづきオール沖縄の強化とたたかいをよびかけたものだ。

 

 裁判闘争と辺野古ゲート前、海上闘争とならんで5月には県議選挙をむかえる。参院選挙の前哨戦だ。翁長知事を支える与党議員の過半数の絶対確保、日本共産党7名の全員当選をかちとって、野党共闘でむかえる参議院選挙勝利への跳躍台にしたい。安倍内閣打倒のたたかいは続く。(しんぶん赤旗 2016年3月2日)

 

このページをシェアする