国会質問

質問日:2017年 6月 1日  第193国会  憲法審査会

憲法明記に疑義相次ぐ 新しい人権で参考人質疑 衆院憲法審査会

 

 衆院憲法審査会は6月1日、「新しい人権等」をテーマに参考人質疑を行いました。

 小林雅之東京大教授は教育の無償化について「現状では世論の支持が得られない恐れが強く、国民投票で否決されると実質的な無償化はさらに遠のく」と指摘。日本共産党の赤嶺政賢議員は「教育無償化は9条改憲の手段に使われている」と批判し、「教育の無償化実現に必要なことは、憲法を変えることではなく、教育予算を抜本的に増やし、学費の引き下げを行うことだ」と主張しました。

 小山剛慶応大教授は環境権について、「すでに一定の法体系が成り立っており、憲法に書くのは後追いになることから、環境権を憲法に明文化する意義があるか議論がある。環境権の実効性は法律にどう書き込むかによるもので、憲法だけで片付くものではない」と述べました。

 知る権利についてNPO法人情報公開クリアリングハウスの三木由希子理事長は「情報公開法に明記することで解釈運用の指針になる」と指摘。憲法に明記することについては「何を保障するのか、何を達成・実現するのか議論することが重要だ」と語りました。

 新しい人権について宍戸常寿東京大大学院教授は憲法13条を根拠に「憲法改正を待たなくても法律で新しい人権を実現したり、裁判所の解釈によって他の基本的人権と同じ憲法レベルで保障・実現したりすることもできる」とし、改憲を自己目的化することに否定的な考えを示しました。(しんぶん赤旗 2017年6月2日)

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新しい人権等で参考人質疑(衆院憲法審査会)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 参考人の先生方、本日は、大変含蓄の深いといいますか参考になる貴重な御意見を聞かせていただきまして、本当にありがとうございます。
 少し角度を変えてお聞きしたいと思いますが、宍戸参考人そして小山参考人の先生方の憲法に対する御意見、メディアや雑誌等でも学ばせていただきました。
 この間、五月三日に端を発しました安倍首相による改憲発言、これが問題となっています。
 安倍首相は改憲派の集会へのメッセージで、二〇二〇年を新しい憲法が施行される年にしたいと改憲の期限を区切り、具体的な項目についても、憲法九条に、九条一項、二項を残しながら、自衛隊を明文で書き込むと表明をいたしました。その後、ラジオでも、自民党案を年内にまとめる、このように発言されておりますが、憲法尊重擁護義務を負う現職の首相が改憲を主張するなど初めてのことでありますし、しかも、安倍首相は、自衛隊を九条に明記する必要性を、多くの憲法学者や政党の中には自衛隊を違憲とする議論が今なお存在していると発言されております。
 こうした安倍首相の発言についてどのように思われますか。宍戸参考人そして小山参考人、憲法学の専門家の立場からお伺いをしたいと思います。

○宍戸参考人 簡潔にお答えを申し上げたいというふうに思います。
 政党の党首である方が同時に内閣総理大臣を務めるということが想定されている議院内閣制のもとで、総理大臣であるところの与党党首であられる方が憲法改正をしかるべき場でしかるべきやり方でおっしゃるということは、これは一般的に私は憲法尊重擁護義務に反しないものと考えております。
 以上の一般論で、私のお答えは以上とさせていただきたいと思います。

○小山参考人 宍戸参考人がおっしゃったことにほぼ尽きます。
 あと、憲法改正の発議をするのは国会なわけですから、要するに、国会の憲法改正発議権を侵していないのであれば、侵していないわけですけれども、特に憲法上の問題はないのではないかというふうに私は思っております。

○赤嶺委員 私は、この憲法審査会で憲法学の専門家の先生方に専門的な知見を一般的に聞いたことでありますし、自分たちの政党の意にかなったら拍手をするとかしないとか、こういうのはもうちょっと冷静にしていただいた方がよろしいんじゃないかな、このように思いますので、よろしくお願いをいたします。(発言する者あり)ですから、まさに議題とルールに沿っての発言であることを申し上げたいと思います。ちょっと静かにしていただきたいと思います。
 宍戸参考人、小山参考人にさらに伺いますが、安倍首相は二年前、歴代政府の憲法解釈を覆して集団的自衛権の行使を容認した安保法制を、憲法学者や歴代の内閣法制局長官、最高裁判所長官を初め国民多数の反対を押し切って強行いたしました。安倍首相は自衛隊を明文で書き込むと言いますが、それは安保法制のもとで集団的自衛権の行使を可能にした自衛隊を書き込むことにほかなりません。こうしたもとで自衛隊を憲法に明記することになれば、日本社会の軍事化を一層推し進めることになるんじゃないかと私は懸念をしておりますが、宍戸参考人、小山参考人の御意見を伺いたいと思います。

○森会長 それでは、宍戸参考人、小山参考人の順で御答弁いただきますが、議題の範囲内で御答弁いただければ結構でございます。

○宍戸参考人 それでは、会長御指示でございますので、議題にかかわる範囲でお答えを申し上げたいというふうに思います。
 すなわち、具体的にどのような憲法改正の提案が例えばこの場で、あるいは国会として発議されるか、そして、その具体的な提案の内容を見ないと、先ほど来私が新しい人権についてお話ししているのと同じ、例えば憲法九条にかかわる問題についても、それがいかなる現状の変更をもたらすのか、もたらさないのか、それはちょっと、今のところ、私としてはいかんとも判断しかねるというのが私の考えでございます。
 以上でございます。

○小山参考人 ちょっと議題と結びつけるのは結構難しいんですけれども、例えば知る権利と結びつけますと、十分情報を提供するですとか、例えば自衛隊の諸活動についてですね、あるいは、ドイツでは国防軍は議会の軍隊などと言われていますので、議会そして国民が十分コントロールできるようにするとか、そういったたてつけが必要なのではないかというふうに考えております。

○赤嶺委員 ありがとうございました。参考人の先生方の大変貴重な御意見だと思います。
 それで、委員の発言中はできるだけ、できるだけじゃなくて、やじは控えるように、冷静な議論ができなくなりますから、そこは会長からぜひとも注意していただきたいと思います。
 三木参考人にお聞きいたします。
 この間、国会では、公文書の取り扱いをめぐって大きく問題となっています。森友学園の問題では、契約締結後すぐに売買の交渉記録が破棄され、加計学園に関しては、前事務次官が本物だと証言した文書の存在が確認されないまま、再調査されません。南スーダンの日報でも、陸自で保有していながら、破棄したと説明して公表せず、その後データを消去したという証言も出ています。
 このように、安倍政権下での一連の公文書や行政資料の取り扱いについて、三木参考人はどのようにお考えになるでしょうか。

○三木参考人 公文書の問題は、知る権利の問題に直結するという問題でございますので、非常に重要な問題だと思っております。
 この間問題になっておりますのは、短期保存文書ということが特に問題になっているかと思います。
 この短期保存文書については、行政組織として必要かということと、それからアカウンタビリティーを果たすためにどれだけ持っているべきかというところが整理されないままこの間来ているがために、短期に廃棄をされているものの、アカウンタビリティーを果たすためには必要であったという文書がかなりあるようだということがわかってきたということがこの間の問題から言えるかと思います。
 ですので、政府としてのアカウンタビリティー、それから市民の知る権利の保障、あと行政として文書を持っている必要性、ここの調整を十分に図っていく必要がある、それが図られないと、政府そのものの信頼性を落としていくことになるということであると思います。
 この間一貫して問題になっているのは、文書のあるなしだけではなくて、行政組織の仕事が信頼できるかというところが問われている問題でもあるというふうに考えておりますので、ここは、個別の法制だけではなくて、もう少し大局的に立って、国会においても御検討、御議論いただきたいというふうに思っているところでございます。

○赤嶺委員 小林参考人にお伺いをいたします。
 私は、教育の無償化実現のために必要なことは、憲法を変えることではなく、今すぐでも教育予算を抜本的にふやし、学費の引き下げを行う政策判断をすることだと思いますが、九条改憲の手段として教育無償化が使われようとしているのではないかと大いに疑念を持っているところです。
 こういう現状について、教育無償化が改憲論ということで出てきている現状について、小林参考人の御意見を伺いたいと思います。

○小林参考人 私がきょう申し上げたのは、憲法に書くかどうかということについては非常に難しい判断が、いろいろこれから検討していただきたいということを申し上げているわけでありまして、直ちに憲法に書き込むことに賛成であるとか反対であるとかということは申し上げておりません。
 その上で、教育の無償化については、これは国際人権規約等でも、批准しているわけですから、政府の目標として、まさに責務としてやっていかなければいけないということであります。
 その上で、今回申し上げたかったのは、今のままでは憲法に書いても国民投票で否決されるのではないか、そういうことを申し上げたのであります。それは懸念でありますから、今後十分検討していけばよろしいことだと思いますけれども、現在のままではそれは難しいのではないかということを申し上げているのでありまして、九条との関係というのは私のところでは判断ができかねます。

○赤嶺委員 どうもありがとうございました。
 きょうの私の質疑で、前段、一部委員からの勝手な発言で混乱、参考人の先生方に私の質問の意が十分に通らなかったなと思っておりますが、いずれにしましても、四人の先生方の貴重な御意見を参考にして憲法の調査をしていきたい、このように思います。
 私たちの立場は、憲法審査会は改憲につながり、動かすべきではないということでもありますので、そこもまた御理解いただけたらと思います。
 きょうは本当にありがとうございました。

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