国会質問

質問日:2017年 3月 16日  第193国会  憲法審査会

緊急事態条項 独裁と人権制限もたらす 衆院憲法審 赤嶺・大平氏が批判

 

 衆院憲法審査会が3月16日、開かれ、各党代表が「参政権の保障」をテーマに意見表明、自由討議を行いました。自民党の上川陽子議員が緊急事態条項を設ける憲法改定を強調したのに対し、公明党を含め各党から慎重または反対の意見が相次ぎました。

 日本共産党の赤嶺政賢議員は「緊急事態条項は戦争遂行や内乱鎮圧を目的とするもの」で、「憲法の原則である『権力分立』と『人権保障』を停止し、政府の独裁と際限のない人権制限をもたらすもので、憲法停止条項だ」として反対しました。

 さらに、自民党改憲案は「緊急事態と政府が宣言し続ける限り、時の政権を自由に延命」でき、「民意を問う機会を奪うものであり、まさに国民主権の侵害だ」と強調。「東日本大震災の教訓は、現場に権限、財源、人材を集中することが必要だということだ。被災自治体からも内閣に権限を集中することには疑問が出ている」と指摘し、大規模災害への対処を口実に必要性を強調する自民党を批判しました。

20170316 憲法審

 自由討議で共産党の大平喜信議員は「国会議員の任期延長は選挙権の停止に他ならず、戦前、特例法で延長を決め、戦争へと突き進んだ歴史の反省から、国民主権を確立した日本では、一時の権力者の思惑で簡単に動かせないよう国会議員の任期を憲法に規定した」と述べました。

 民進党の枝野幸男議員は、緊急時の国会議員の任期延長を憲法で規定することに慎重姿勢を示し、公明党の北側一雄副代表は「議会制民主主義の根幹に関わる事柄であり、慎重な議論が必要だ」と述べました。

 赤嶺氏は、参政権獲得の歴史に触れ「重大な問題は、民意の反映を著しくゆがめる小選挙区制だ」と指摘し、小選挙区制廃止と民意を公正に反映する選挙制度への抜本改革の必要性を訴えました。また、憲法審査会での議論について、「改憲発議につながる。国民の多数は改憲を求めておらず、審査会を動かすべきではない」と主張しました。(しんぶん赤旗 2017年3月17日)

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憲法審査会で意見表明

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 私たちは、憲法審査会は動かす必要はないという立場です。憲法審査会は、憲法改正原案、改正の発議を審査するための場です。ここでの議論は、改憲項目をすり合わせ、発議に向かうことにつながります。国民の多数は改憲を求めておらず、審査会を動かすべきではありません。
 今日の憲法上の最大の問題は、現実の政治が憲法の平和、民主主義の諸原則と著しく乖離していることです。その観点から、今回の参政権というテーマについて述べたいと思います。
 我が国の参政権は、民撰議院設立建白書を口火として、国民のたゆまぬ運動によって獲得されてきたものです。女性参政権は戦後にようやく実現し、昨年、十八歳選挙権が実現しました。
 国民主権を確立した日本国憲法の前文は、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」と始まります。これは、議会制民主主義、代議制民主主義の原理をあらわすものであり、その根幹をなすのが選挙権だということを示すものです。したがって、選挙権は、国民の多様な民意を正確に議席に反映するものでなければなりません。
 ところが、一九九四年、政治改革と称して現行の小選挙区比例代表並立制が導入されたもとで、民意の反映が著しくゆがめられていきました。
 この二十年間、小選挙区制のもとで七回の総選挙が行われました。小選挙区において、第一党は四割台の得票率にもかかわらず、七から八割もの議席を獲得しています。一方で、少数政党は、得票率に見合った議席配分を得られず、獲得議席を大幅に切り縮められております。議席に反映しない死に票は、各小選挙区投票の半数に上っています。
 今の自民党安倍政権も、三百に迫る議席を占めていますが、絶対有権者比で見れば一七%の支持にすぎません。まさに、民意を反映しない小選挙区制の根本的欠陥を浮き彫りにしています。民意の反映をゆがめる虚構の多数で安保法制の強行など、平和、民主主義を破壊する強権政治が横行しています。
 小選挙区制度は廃止し、国民主権の趣旨に沿う、民意を公正に反映する選挙制度へと抜本的に改革する必要があります。
 次に、参政権と緊急事態条項についてです。
 大規模災害時など必要だとして緊急事態条項が議論されていますが、二〇一六年五月に行われた東日本大震災三県の自治体首長四十二人へのアンケートによれば、緊急事態条項がなかったことで人命救助の活動に支障があったと答えた人は一人もいません。多くの首長が既存の制度や法改正で対応可能だったと述べ、釜石市長は、災害対応は一刻を争う現場に権限移譲すべきと答えています。被災市の担当者なども、内閣に権限を集中することに疑問を呈しています。
 東日本大震災の教訓は、現場に権限、財源、人材を集中することが必要だということです。緊急事態条項など、全く真逆と言わなければなりません。災害に対する備えが必要だというなら、一度事故が起これば大惨事を引き起こしかねない原発に頼らない日本社会にしていくことこそ、国民の大多数が望んでいることです。
 緊急事態条項は外国の憲法でもほとんど盛り込まれているといいますが、そのほとんどは、戦時における緊急権、非常事態宣言として規定されたもので、災害を理由にしたものではありません。
 イギリスの国家緊急権は、戦時法規で、戦争中に国民を軍の統制下に置くものとしてつくられました。フランス憲法が想定するのも、戦争や武装反乱を目的としています。自民党改憲草案を見ても、外部からの武力攻撃と内乱等による社会秩序の混乱が真っ先に挙げられています。
 緊急事態条項は、戦争遂行や内乱鎮圧を目的とした国家権力の統制を強める規定にほかなりません。
 自民党改憲草案によれば、緊急事態は内閣が必要と判断すれば宣言できることになっています。宣言を行えば、人権は制限され、内閣の一存で法律と同一の効力を有する政令を制定できます。国会も司法も事実上停止され、内閣が強大な権力を行使できる、まさに政権独裁をつくり出すものです。米軍占領下の沖縄でも、高等弁務官による布告、布令が事実上法律になっていきましたが、それをほうふつとさせる規定です。
 しかも、宣言中は衆議院を解散せず、国会議員の任期を延長するとしています。これは緊急事態だと政府が宣言し続ける限り、時の政権を自由に延命することになるものです。選挙によって民意を問う機会を奪うことは、戦争などの事態を引き起こした政府をかえる機会を奪うものであり、まさに国民主権の侵害です。
 憲法制定時に金森担当大臣は、緊急事態条項を置かない理由を次のように説明しています。「民主政治ヲ徹底サセテ国民ノ権利ヲ十分擁護致シマス為ニハ、」「政府一存ニ於テ行ヒマスル処置ハ、極力之ヲ防止シナケレバナラヌノデアリマス、言葉ヲ非常ト云フコトニ藉リテ、其ノ大イナル途ヲ残シテ置キマスナラ、ドンナニ精緻ナル憲法ヲ定メマシテモ、口実ヲ其処ニ入レテ又破壊セラレル虞絶無トハ断言シ難イト思ヒマス、」金森氏は、非常という道を残せば、国民の権利を制限し破壊する口実を政府に与えてしまう危険があることを指摘しています。
 明治憲法下で、治安維持法の重罰化法案が議会で廃案になったにもかかわらず、緊急勅令によって改悪されました。こうした緊急勅令の濫用によって挙国一致体制が築かれ、戦争へ突き進んだのであります。日本国憲法は、そうした痛苦の歴史と決別することを明確にし、再び戦争をしないと定め、国民主権と民主主義を貫く日本社会の進むべき道を示したのであります。
 緊急事態条項は、憲法原則である権力分立と人権保障を停止し、政府の独裁と際限のない人権の制限をもたらすもので、まさに憲法停止条項と言わねばなりません。前文や九条によって戦力を持たず戦争を放棄した日本国憲法とは相入れないことは明らかです。
 以上で終わります。

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