国会質問

質問日:2016年 11月 25日  第192国会  安全保障委員会

米兵免責「修正求める」 事件示談書 赤嶺議員に防衛相

 

 

 米軍人・軍属による「公務外」の事件・事故で、被害者や遺族が米国政府から慰謝料を受け取る際に署名を求められる示談書に、加害者を免責する規定が盛り込まれている問題について、稲田朋美防衛相は「加害者を永久に免責するのは配慮が足りない。直ちに修正等を米側に働きかける」と述べました。11月25日の衆院安保委員会で日本共産党の赤嶺政賢議員に答弁しました。

 

 「公務外」の事件・事故の被害補償については、加害米兵などとの示談が原則とされていますが、米兵が上官の命令で随時国外に異動し、国内に十分な資産を有していないために、日米地位協定に基づき米国政府が慰謝料を支払う制度が設けられています。赤嶺氏は、免責規定のために米国政府との交渉が滞っている事例があることを指摘。直ちに米側との交渉を開始するよう求めました。

 

 一方、日本政府の免責規定について防衛省の深山延暁地方協力局長は「その必要がないと判断し、15年7月以降に作成された示談書からは削除している」と明らかにしました。

 

 赤嶺氏は、1996年のSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意に基づき、米国政府による慰謝料の支払いが裁判所の確定判決額に満たない場合に、その差額をSACO見舞金として支払っている問題についても質問しました。

 

 被害者の相続人が複数人おり、そのうちの一人が加害米兵を被告として提訴し、確定判決を得た場合、提訴していない相続人について深山氏は、「委任状を得て請求を行った場合には、支給対象としている」と答弁しました。稲田氏は、見舞金の支給対象となり得ることをホームページなどで周知徹底する考えを示しました。(しんぶん赤旗 2016年12月4日)

 

 

■米兵の公務外事故・見舞金

支払いは0.1%未満 防衛省回答

 

 1996年のSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意以降の約20年間で、米軍関係者が「公務外」に起こした事件・事故が1万9555件にのぼる一方、SACO合意に基づく見舞金が支給されたのはわずか13件と、全体の0・1%にも満たないことが分かりました。25日の衆院安保委員会で、防衛省が日本共産党の赤嶺政賢議員の質問に答えました。

 SACO合意では、米国政府による慰謝料の支払いが裁判所の確定判決額に満たない場合に、日本政府がその差額を支払う仕組みが盛り込まれました。しかし、実際はほとんどが泣き寝入りであることが浮き彫りになりました。一方、日本政府が支払った見舞金は今年9月現在で4億2850万円でした。

 赤嶺氏は「泣き寝入りする人を出さないために(米軍関係者の特権を定めた)日米地位協定を抜本的に改定すべきだ」と求めました。(しんぶん赤旗 2016年11月26日)

質問の映像へのリンク

米兵犯罪、高江オスプレイパッド建設について質問(衆院安保委)

議事録

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 きょうは、最初に、米軍関係者による事件、事故の被害補償の問題について質問をします。
 来月の二日でSACO最終報告から二十年になります。SACO最終報告には、米国政府による慰謝料の支払いが裁判所の確定判決額に満たない場合に、日本政府がその差額を支払う仕組みが盛り込まれました。SACO見舞金と呼ばれているものです。
 まず、防衛大臣にこの仕組みがつくられた経緯について御説明いただきたいと思います。

○稲田国務大臣 今委員が御指摘になったSACO最終報告の日本政府による差額の補填でございますが、これは、米軍人等による公務外の事故等における補償に関する地位協定第十八条第六項の運用改善措置の一つとして、平成八年十二月のSACO最終報告に盛り込まれたものでございます。
 この措置は、SACOの検討過程において、沖縄県から、日米地位協定第十八条第六項による補償について、加害者側である米軍人等が無資力であるなどの理由により、最終的に米国政府から補償を受けることとなった場合、米国政府による補償額が確定判決を下回る事例があるとの問題提起がなされたことを踏まえ、SACO最終報告において、日本政府がその差額を埋めるよう努力をする旨が盛り込まれたものであると承知をいたしております。

○赤嶺委員 今の御説明のとおりなんですね。それで、当時アメリカの方は、そういう過去の事例は極めて少ないとまで言いながら、被害者救済の強い訴え、そういう沖縄側からの要望で入っているわけです。
 一点確認しておきますが、被害者の相続人が複数人いて、そのうちの一人が加害米兵を被告として提訴し、確定判決を得た場合、提訴していない相続人の方はSACO見舞金の支給対象になりますか。

○深山政府参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘のような場合ですと、米軍人が起こした事件等により亡くなられた被害者の相続人の一人の方が提起した事案、こうした場合において、訴訟を提起していない被害者の相続人の方でありましても、ほかの相続人からの委任状を得て日米地位協定十八条六項に基づく請求を行った場合には、SACO見舞金の支給対象とさせていただいているところでございます。

○赤嶺委員 今の答弁は、提訴に伴う御遺族の方々の負担を考えた場合に、非常に大事な点だと思います。
 防衛省のホームページを確認してみましたが、その点についての説明はありませんでした。ぜひホームページや手続案内などへの記載を御検討いただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。

○稲田国務大臣 御指摘の点につきましては、今までも、SACO見舞金の対象となり得る被害者等について、個別に説明は申し上げておりました。
 しかしながら、防衛省といたしましては、民事訴訟を提起していない被害者の相続人でもSACO見舞金の支給対象となり得ることが広く周知されるよう、御指摘のホームページ等で紹介することなどについて検討したいと考えております。

○赤嶺委員 ぜひお願いしたいと思います。
 それで、今度はSACO見舞金の支給実績について伺いますが、まず、SACO最終報告以降、米軍関係者による公務外の事件、事故がどれだけ発生しているか、そのうちSACO見舞金が支給された件数と総支給額はどれだけか、これを明らかにしていただけますか。

○深山政府参考人 お答え申し上げます。
 SACO最終報告が発表された平成八年度から平成二十八年度九月末までの米軍人等による公務外の事件、事故の発生件数については、交通事故、航空機事故、刑法犯等を総じてお答えいたしますと、防衛省が日米地位協定十八条六項に基づく損害賠償等業務等の関係で知り得た件数ということになりますけれども、一万九千五百五十五件となっております。
 防衛省としては、事件、事故のうち、損害が発生し、当事者間での示談が成立せず、日米地位協定十八条六項の規定により被害者側から補償請求を受け、かつ被害者が加害米国人等を相手に訴訟を提訴した場合、その確定判決額と米側支払い額との差額をSACO見舞金として支払ってきております。その支給件数及び支給額については、平成二十八年九月末までにおいて十三件で、合計額は約四億二千八百万円となっているところでございます。

○赤嶺委員 SACO以降、公務外の事件、事故は一万件を超えているわけですね。それで、今、提訴して被害額を受けたというか被害額を得た被害者の方は十三件。一万件の発生と、実際に得られる十三件というものの開きというのがあるわけです。
 念のために聞きますが、SACO最終報告に、「米国政府による支払いが裁判所の確定判決による額に満たない過去の事例は極めて少ない。」と書かれています。米国政府による慰謝料の支払いが、確定判決の元金、要するに確定判決どおりのお金、あるいはそれ以上になったケース、これは何件ありますか。

○深山政府参考人 日米地位協定十八条六項に基づく損害賠償に関する書類の保存期間が五年間とされておりまして、米軍人等の公務外の事件、事故で網羅的に確認できるのは平成二十三年度以降となっておりますが、このうち米軍関係者による公務外の事件、事故について、裁判に至り、確定判決額が示された事案は三件ございます。
 その三件のうち、日米地位協定十八条六項に基づき、米国政府が慰謝料として支払った額が裁判所の確定判決額を上回った事例、事案というのはございません。
 なお、二十三年度以降、加害者本人による支払い額と米国政府が慰謝料として支払った額の合計が裁判所の確定判決額と同額だった事件は一件ございます。

○赤嶺委員 米兵犯罪の被害者遺族や、沖縄で長年その救済に当たってきた弁護士の新垣勉先生が出した「日米地位協定」というブックレットがあります。
 そこには、米軍関係者による四つの交通死亡事故について、損害賠償請求額のほか、確定判決額、米側の支払い額、日本政府による差額の支払い額が書かれています。いずれのケースにおいても、アメリカの支払い額は確定判決額にはるかに及びません。
 その四つの事例の中で、儀保さんという方の事件を一例挙げておきますが、最もひどい儀保さんのケースでは、確定判決額が七千五百九万円に対し、アメリカ側の支払い額は一千三百四十万円、日本政府の支払い額が六千百六十九万円です。
 なぜ、確定判決額とアメリカ側の支払い額との間にこれほどまで開きがあるんですか。

○深山政府参考人 お答え申し上げます。
 米国政府が被害者に提示する慰謝料の額につきましては、米国政府みずからの判断に基づいて決定していることから、確定判決額との差額、なぜ差額が出るかという理由等について私どもの方の立場として確たることを申し上げることは困難でございます。
 いずれにいたしましても、防衛省としては、SACO見舞金の支給を含め、被害者の方々が適正な補償を受けられるよう努力してまいりたいと考えております。

○赤嶺委員 米側がどんな基準で補償額を示していて、確定判決額との間の開きがあるか、それはわからないが、いずれにしても、一生懸命やると言ってみても、被害者の救済はできないんですよ。
 同じ事故を取り扱いながら、これほどまでに金額に開きが出ている。これまでにアメリカ側の算定基準が日本側に示されたことはないんですか。

○深山政府参考人 お答え申し上げます。
 米国政府が支払う慰謝料の額は、先ほど申しましたように、米国みずからの判断で決定したものと承知しておりますが、その算定基準等が日本側に示されたことはないと承知しております。
 一方、私どもが算定いたします際には、防衛省において、被害者側からの補償請求を受けまして、内容を審査し、その結果を米国政府に送付しておるところでございまして、米国政府もそうした内容は理解しているのではないかと考え得るところでございます。

○赤嶺委員 理解の上で少なくしているというぐあいになったら、これは確信犯になってくるわけですよね。
 それで、一点確認をいたしますが、そもそも、米軍兵士の特性として、日本に駐留しているのは一時的で、上官からの命令で、随時、国外に移動する立場にあります。また、いわば体一つで日本に派遣されていることから、日本国内に十分な資産を持っていません。
 一般的に、米軍兵士にはこうした特性があると思いますが、この点についての政府の認識はいかがですか。

○深山政府参考人 制度の趣旨に関するお尋ねと承りましたが、日米地位協定十八条六項の規定に基づけば、公務外の事案については、加害者たる米軍人等に支払い能力がない等の理由によって当事者間で示談解決が困難な場合、米国政府において補償金の額を決定し、被害者側に対し示談書を提示した上、その同意を得て支払うという仕組みになっておるわけです。
 このように、米軍人等が公務外で不法行為を行った場合であっても加害者に支払い能力がない場合に米国政府が補償を行うこととしておりますのは、米軍人等が頻繁に移動すること等によって被害者が救済される機会を逃すような事態を避けるためであると認識しております。

○赤嶺委員 頻繁に移動したり、資産を持っていない、体一つで駐留しているというのがあるわけですね。そうした米軍兵士の特性からいって、加害米兵に損害賠償を求めても、そのための資産を持っていなかったり、裁判中に本国へ帰ってしまい、被害補償が十分になされないという実態があります。
 政府は、公務外の事件、事故の被害補償は示談が基本だとしていますが、そもそも、加害米兵の個人責任を追及するための基盤が成立していないということではありませんか。大臣、いかがですか。

○深山政府参考人 先ほど制度の趣旨につきまして私どもの知るところを申し上げたわけでございますが、先生から基盤がないということはないかという御指摘もございましたが、先ほど申しましたように、米軍人が頻繁に移動する等の事実は、それはそのとおりであると思っております。
 今のこのような制度がありますのは、ちょっと繰り返しになりますけれども、そうした中にあっても被害者等の方が救済されることを担保するためということであろうと認識しておるところでございます。

○赤嶺委員 いや、ですから、公務外の場合は加害者との示談というのが基本なんですよ。その加害者に示談を求める、あるいは示談が成立する基盤がないのではないかということを言っているわけです。
 それで、外務大臣にお伺いいたしますけれども、被害者や御遺族が、加害米兵から被害補償を受けることができずに、泣き寝入りを余儀なくされる現状は改めなければなりません。
 公務外の被害について、加害米兵の個人責任の問題としている現行日米地位協定を改正して、米軍を駐留させている日米両政府が被害補償に責任を持つ制度に変える必要があるのではありませんか。

○岸田国務大臣 先ほど来やりとりをしていただきましたように、公務外の米軍人の作為、不作為によって生ずる請求権について、まずは基本的に地位協定十八条6があったわけですが、平成八年のSACO最終報告によって、御質問がありました見舞金に加えて、無利子融資制度、そして前払い制度、こういった制度が設けられた、これが現状であります。
 その現状に対して、さらにこの改定を求めるべきではないか、こういった御質問かと思いますが、今の現状についてさまざまな意見がある、これはもう当然承知をしておりますが、政府としましては、この地位協定について、手当てすべき事項の性格に応じて、効果的に、そしてさらには機敏に対応できる最適な取り組みを考えていかなければならないと考えます。
 一つ一つ具体的な問題に今日まで対応してきたわけですが、今後も、こうした問題意識に基づいて、具体的な対応、すなわち効果的で機敏な対応について、しっかりと検討していきたいと考えます。

○赤嶺委員 外務大臣、効果的に機敏に対応してきたという認識で、しかし、公務外の米兵による被害者が圧倒的多数が泣き寝入りしているという現状が何も変わっていないわけです。ですから、今のように、加害兵士に示談を求めても、それが成立する基盤がない、アメリカ政府が出てこざるを得ない、そういうことであれば、公務中の米兵等の事件と同じように、公務外の米兵の事件についても、日米両政府が責任を持つべきだ、泣き寝入りする人が一人もいない、こういう状態をつくる責任が外務大臣にもあるということを強く申し述べておきたいと思います。
 事件、事故、犯罪は公務外の方が圧倒的に多いんですよね。そのことも強く申し上げておきたいと思います。
 次に、やっと加害者の米兵を見つけて示談に至ります。そこまで来るのも大変なんですよ。相手は基地の中ですからね。
 今度は示談書の文言について伺いますが、被害者や御遺族が慰謝料を受け取る際に、米国政府から防衛省を通じて署名を求める示談書には、米国政府に加え、示談の当事者でない日本政府や、加害米兵を免責するようにということが書かれています。
 これに対して、神奈川県内の米兵犯罪被害の救済に携わってこられた弁護士の方々が、示談書の文書の修正を繰り返し求め、日本政府を免責する文言については外されました。
 防衛省に確認をいたしますが、今後、米国政府が米兵犯罪被害者に対して慰謝料を支払う際に提示される示談書には、日本政府を免責する文言は入らない書式になったという理解でよろしいでしょうか。

○深山政府参考人 お答え申し上げます。
 地位協定十八条第六項に基づき、日本政府が公務外の事案に係る補償金の支払いを行う際、請求者に対し提示する示談書については、米国政府が当該補償金の支払いを行うかわりに、米国政府や加害者たる米軍人に加え、かつては日本政府を免責する旨の文言が記載されておりました。
 このうち、日本政府を免責する旨の文言につきましては、日本政府としてその必要がないと判断をいたしまして、平成二十七年七月以降に作成された示談書からは削除されておるところでございます。

○赤嶺委員 つい最近まで、関係のない日本政府まで免責ということにサインをしなければ見舞金をもらえなかったわけですね。
 しかし、問題が残ります。米兵犯罪に巻き込まれ、家族の命を奪われた御遺族の怒りと無念、これは本当に察するに余りあります。その心情からすれば、加害米兵を免責することなどできるはずがないんですね。しかも、加害米兵にかわって米国政府が支払う慰謝料は、確定判決額にはるかに及びません。
 なぜ、慰謝料の受け取りに当たって加害米兵を免責しなければいけないんですか。大臣、いかがですか。

○稲田国務大臣 御指摘の免責条項については、これまでも米側と協議してきましたが、米側は、米国政府が支払いを行う根拠である外国人請求法第二千七百三十五条に基づけば、事件に係る請求に米側が応じる場合、その解決は最終的かつ決定的なものとされており、被害者が米国政府による支払いを受領することにより、米国政府及び被用者が免責されることを明らかにする必要があることから、同免責条項上できないとの立場をとっております。
 一方、防衛省といたしましては、今委員御指摘の被害者やその御家族の心情への配慮が必要と考えており、こうした条項の文言について修正等を米側に働きかけるなど、適切に対応してまいりたいと考えております。

○赤嶺委員 今のは、加害米兵の免責条項を示談書の中からなくするよう米側に求めていくという答弁ですね。

○稲田国務大臣 繰り返しになりますけれども、米側が請求に応じる条件として、その解決が最終的、決定的なものである必要があると外国人請求法に書かれておりますので、そのこと自体は明確にすることは必要でありますが、一方、被害者の遺族等の心情を考えますと、加害者を永久に免責するかのようなそういった文言については、委員も御指摘のとおり、被害者やその御家族の心情への配慮が必要であり、修正等を米側に働きかけるなど、適切に対応してまいりたいと考えております。

○赤嶺委員 日本政府の側の態度は今わかりました。働きかけてぜひ実現できるようにしていってほしいと思うんですよね。
 何で加害米兵を許さなきゃいけないのか。許すんだったら、米国政府は判決どおりに満額よこせというのは、これは被害者の当然の心情でしょう。だから、そういうようなことで交渉が滞っている事例もたくさんあります。
 私は、ぜひこれは、本当に国民を守るというか、国民の心情の方に心を寄せるという立場に立てば、直ちにやるべきだ、直ちに交渉に移っていただきたいと思います。いかがですか。

○稲田国務大臣 被害者の御家族の気持ちを考えますと、法的な点はともかくも、加害者を永久に免責するというのは非常に表現としても配慮が足りないと考えますので、直ちに修正等を米側に働きかけるなど、適切に対応してまいりたいと考えております。

○赤嶺委員 稲田大臣と初めて一致したかもしれませんが、それはそれとして、ぜひお願いしたい。
 法律上のいろいろなやりとりもありますが、それは米国政府相手のもので、米兵、兵士を相手にしたものではありませんから、これはきちんと、引き続き、この点はどうなったかということを委員会等でも確認していきたいと思います。

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